『・・・そうですか。』
『あれ?なんか反応が薄い・・・』
『あなたと喋っていると疲れるんですよ。』
『そんなに疲れる?・・・それで?君のお名前は?』
『あなたみたいな人には言いたく無いです。』
『酷いなぁ・・・それじゃあこうしようか!今私は、一から『オートマタ』を作っているんだけど、その子が完成したら改めてアビドスに来るよ!だからまた会った時に自己紹介してよ!』
『はぁ!?なんでそうなるんですか!?』
『だってこうやって喧嘩したから自己紹介したく無いんでしょ?だったらまだピンク頭の事を知らない私の『親友』を連れてくれば君は私の親友に挨拶しないといけなくなる!!くくく!まさか無言になるなんて言わないよねぇ?挨拶を待っている人に向かって無言は失礼!そうなれば君は名乗らざるおえなくなる!そして私は君の名前が分かるって戦法!だあっはっはっ!勝ったな!第3章完!!』
『呆れた…なんでそんなに名前を聞きたいんですか…』
私が呆れ顔でした質問に対して、彼女はとびっきりの笑顔で言った。
『だって出会いは大切だよ!一期一会!会うのがたった一回でも大切にしないと!!』
『・・・はぁ、分かりましたよ。私はアビドスを転校する気なんてありませんから、安心してその『オートマタ』をちゃっちゃっと作って来てくださいよ。』
『本当!!やったぁ!友達が増えた!!』
『誰が友達ですか…』
本当は…俺は心細かった。右を見ても左を見ても生きていた時の常識が通用しない、ひとつ間違えたら銃弾が飛んでくる世界、俺はあのビルを出た時そんな世界に心が折れそうになった。だからあのビルに戻ろうとした時は怖かったんだ、あんな事言ったのに戻って来た俺は撃たれて、本当にこの世界から居場所が無くなってしまうんじゃないかって…だけどあの人達は、ヘルメットの皆んなは、また戻って来た俺に銃を向けなかった。『アニキ』と呼んで嬉しそうに迎えてくれたんだ。その言葉を聞いて、俺はこの世界にいてもいいんだと安心出来たんだ・・・彼女達は…友達であり
俺の心を救った命の恩人
『今、あの人達の事をなんて言った?』
アイオロスの体から凄まじい程の蒸気が噴き出し、アイオロスの周りに蒸気が漂っている。それは、まるで雲の鎧を着ているようであった。
『
アイオロスは低くノイズの入り混じる音声で喋り出した。
『一つは『夢』を笑う事…もう一つは』
アイオロスの視線はセリカに集中する。セリカは雰囲気が変わったアイオロスに対して、目に涙を光らせながら唖然と見ていた。
『お世話になった人を馬鹿にされた時だよ…なぁ?オイ』
アイオロスは雲の鎧を纏わせながら一歩、また一歩と重々しい足音と機械音を響かせながらアビドス組へ接近する。
【アイオロス君!!落ち着いて!!】
先生がアイオロスの前で両手を広げ、必死な形相で叫んだ。
『どいてください先生、俺はあんたを傷つける気は無い。』
【ならなおさら動かないよ!!命の恩人同士が傷つけ合う所は人生で見たく無い光景第一位だからね!!】
『・・・先生、俺はあんたに感謝している…初めて会ったあの日、疑われていた俺を庇ってくれたのは先生だけだったからな…』
【アイオロス君・・・】
『だけど、この件とは別だ…あいつが俺の友人達をクズ呼ばわりしたのは事実。あの人達は、右も左も分からず心が折れそうになっていた俺を助けてくれた命の恩人。侮辱されたまま黙っている事は出来ない!!』
アイオロスが先生を通り越して行こうとしたその時
『いやぁ、ごめんねアイオロス君。セリカちゃんは思い込んだら一直線なところがあるから、本当にごめんね?』
『ホシノ先輩!?』
ホシノが頭を下げた。
『・・・だからさ、ここはおじさんの謝罪で許して欲しい。君はセリカちゃんを助けようとしてくれた。そんな人を撃つなんて事はしたく無い。』
アイオロスの体から噴き出していた蒸気が少しづつ減少していった。
『・・・最悪な気分だ』
そうアイオロスが言うと体を真反対、つまり便利屋と傭兵がいる方へ向けて歩き始めた。
【アイオロス君!!待って!!】
先生の声は確実に聞こえている筈だが、アイオロスは振り向かない。体から蒸気をフシュフシュと噴き出し歩き続け、便利屋と傭兵の前まで迫った。
『お、おい!どうするんだよ!撃ったほうが良いのか!?』
『・・・・』
傭兵がアルに発砲許可を求めるが、アルは苦い顔をして黙ったままであった。
『おい!雇い主!!』
『社長!!』
『・・・違う…』
『あ、アル様!!撃ちますよ!!』
『アルちゃん!!』
『違う!!』
アルは大声を出し、苦い顔が更に歪む。
『私は・・・!こんな…『夢』も『浪漫』も無い…こんな!三流の悪党がする様な事をしたかったわけじゃ無い!!』
アルはそう言うとアビドス組とアイオロスから目を背けるように走り出した。
『お、おい!!何処に行くんだよ!!』
『社長!!』
『待ってよアルちゃん!!』
『アル様!!』
やがて便利屋と傭兵達は住宅の曲がり角に消えていった。
アイオロスも一切振り返る事なく、曲がり角へ消えていった。
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アイオロスside アビドス郊外 砂漠
夜の砂漠を歩く人影一つ、その人影はただ真っ直ぐ前を向いて歩いている。目線の先には砂嵐によりボロボロになった廃ビルがひとつ、周りに建物は無く、孤立していた。
人影から蒸気が登る、その蒸気は人影の考えが反映されているのか、弱々しい蒸気や勢い良く噴き出す蒸気が体のあちこちから出ていた。
人影が廃ビルの中に入り、背中に背負った箱を降ろす。人影は降ろした箱を見つめた後、心を落ち着かせるように箱を撫でる。
人影は歩みを進め、壁が崩れ空が見える一角へ姿を現す。人影が見上げた空は雲が空を覆い、星は一つも見えなかった。
『・・・・くそが…俺は何をしてるんだよ…』
人影がそう呟き、両手で顔を覆う。
(怒って、先生を困らせて、ホシノさんに頭を下げさせて…情け無い・・・)
人影は後悔する
(何が侮辱されたまま黙っている事は出来ないだよ・・・一番侮辱しているのは俺の行動じゃないか…)
人影は更に肩を落とし体から弱々しい蒸気が登った。
その時、置いた箱からジリリリリリとベルの音が聞こえる。
『・・・』
人影は肩を落としたまま先ほど置いた箱まで移動し、箱のシャッターを開けた。棚の上部、スマホから呼び出しのベルは鳴っていた。
スマホを手に取り、ホログラムで表示された呼び出し先を確認すると、そこには『リーダー』とだけ表示されていた。
人影は数秒悩んだ後、受話器を外しスピーカーモードのホログラムに触れた。
[お!繋がった!お話ししましょうアニキ!]
[[[[[お話ししましょう!!]]]]]
スマホのスピーカーから聞こえて来た声は、別れたあの時から変わらない調子であった。
[・・・アニキ?]
『・・・あっ、いや、なんでも無いぞ。反応が遅れただけだ。』
[そうですか…アニキ!アビドスはどうですか?砂ばっかりの印象しか無いんで、もしもアニキが見つけたおすすめスポットがあったら喋りたいです!!]
『おすすめ…無い。』
[あっさりですねアニキ!?]
『大体が砂と砂と廃墟と砂だよ、おすすめスポットがあれば
[聞きたかった?]
『あっ、いや、なんでも無い。』
[・・・アニキ、やっぱり何かあったんですか?今日のアニキおかしいですよ?]
『・・・』
人影は黙ったままである
[アニキ…話してくれませんか?アニキが話してくれたらアニキはスッキリしますし、私達はアニキが悩んでる事が分かって助ける事が出来るんですから。』
[[[[[話してください!!]]]]
人影は電話の向こうから聞こえる声に天を仰ぎ悩んだ、
[・・・アニキ、そんなに私達が頼りないんですか?]
その言葉を聞いた人影は勢い良く目線を戻し
『違う!!そうじゃなくて・・・分かった…話すから。』
俺は意を決してリーダー達に罪の告白を始めた。
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セリカside 翌日 アビドスブラックマーケット
私の名前は黒見セリカ、アビドス高等学校に通う一年生で廃校対策委員会に所属しているの・・・今は私達の学校に刺客を送る『黒幕』の正体を探る為に、対策委員会の皆んなと先生と一緒にブラックマーケットに来ている。正直言うと来たくなかった。ブラックマーケットですれ違うスケバンとかヘルメット団を見ると…アイツを思い出すから…
アイツ…名前はアイオロス、巨大な身長と蒸気機関で動く旧型オートマタ…この前までは友達になれそうだったんだけど・・・私が…いや!!違う!!アイツにキツく当たったのも!!あの後委員会の皆んなと先生から怒られたのも!!さっき『ヒフミ』って子を追いかけていた頭の悪いスケバンの弾が額にクリティカルヒットしたのも!!全部!全部!!詳しく自分の事を話さなかったアイツが悪いんだから!!!
『あのぉー・・・セリカさんはなんで百面相を…?』
『気にしないで、こっちの問題だから。』
『うへぇ、あの顔はなんとか自分が正しかったって正当化したい顔だねぇ。』
『あっ!今の表情面白かったです☆』
【あっ!今のネコミミがぺったんこになった時の表情可愛かったよ!】
『そこ!!面白がるな!!あとキモい!!』
【泣けるね!!】
・・・少し調子が狂っちゃった
【・・・ねぇ、セリカ】
先生が声を掛けてくる、またお説教?
『なんですか先生』
私が先生の顔を見た時、先生は普段の微笑みを浮かべた顔ではなく、真っ直ぐとこちらを見つめる真剣な表情をしていた。これには思わず私は背筋を正して真剣に聞くことにした。
【アイオロス君はなんで自分の事を詳しく話さなかったと思う?】
『えっ?』
私はドキリとした。
【
『は?』
【じゃあ、セリカは初めて会った人に、相手に全く伝わらない、仲間でしか共有出来ない話題を話すかい?】
『はぁ?する訳ないでしょう?』
【そういう事だよ、アイオロス君にとってそのヘルメット団は仲の良い友人で、わざわざ初対面の人に対して詳しく話す話題じゃ無かった。』
『・・・・・』
【・・・私が言えるのはここまで、後はセリカ自身が考えないとだめなんだ。】
そう言い終わると、先生は真面目な顔からいつも通りの微笑みを浮かべた顔に戻った。
『先生!早くしないと置いていってしまいますよ☆』
『ん、先生はいい身代金になる。』
[何言ってるんですかシロコ先輩!?]
『あっはは…人攫いにも注意ですね…』
『早くいこうよ〜』
視線を上げると先輩達は少し先の方まで歩いていた。
【今行くよ、それじゃあ行こうかセリカ?】
『・・・うん』
私は先生に言われるまま、先輩達の元へかけて行った。
自分はヘルメット団のアジトで居候していたんです。彼女達とは組織的な上下関係もありません。仲のいい友達です。
アイツが言った言葉を思い出しながら、ふと追いついた対策委員会の皆んなを見る。アイツの言うヘルメット団の友人は、私が今この目で見ている皆んなみたいなものかもしれない、そんな事を考えた。
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アイオロスside 廃ビル
『・・・』
廃ビルの瓦礫に腰掛け、アイオロスは指を折り曲げながら考え事をしていた。その原因は昨日の夜まで遡る。
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前日 廃ビル
『…これが俺の悩んでいた原因だよ…』
俺は今までの事をリーダー達に打ち明けた。
[・・・アニキ。]
『・・・なに?』
少し間を開けて電話の向こうにいるリーダーが話し始めた。
[最初聞いた時は嬉しかったです。私達の事をそんなに大事に思ってくれていたんだって…だけど、かっこ悪いです。]
[・・・そうだな]
顔を両手で覆う、周りが見えなくなり、ため息と連動した蒸気によりカメラが曇る。
[怒って、シャーレの先生が止めたのに止まらないで、その上今回の件とは関係無いホシノって言う人から謝られて、急に冷静になったけどその事を謝らずに逃げた。]
『・・・あぁ、そうだよ。』
[今のアニキ…かっこ悪いです。]
『・・・』
言葉は凶器と言うが、これ程痛かったとは知らなかった。
[・・・だから…]
何か言おうとしているリーダーの声を聞き、俺は両手を顔からどける、目の前には先程と変わらず連絡先と通話時間が表示されているホログラムが浮かんでいた。
[・・・今度は逃げないでください、逃げずにちゃんとそのセリカって人と向き合って、ちゃんと話してください。解決するまで私達のアジトの敷居は跨がせません。]
『・・・リーダー…』
[・・・待ってますからね!アニキ!!]
そう言って通話が切れた。
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現在 廃ビル
『・・・よし、心の決心はついたぞ…どの面下げてとか言われてもちゃんとセリカさんと話しあうぞ!!』
アイオロスは顔を両の手で叩き*1、バックパックの中に渡す筈だったお菓子を確認して背負った。
『目標アビドス高等学校!!行くぞ!!』
そう言って一歩を踏み出そうとした瞬間
ドォォォォォオオオン!!
謎の爆発と崩れた瓦礫により生き埋めになった
『目標に着弾!!崩壊を確認!!』
軍服の様な制服を着た生徒が双眼鏡を覗き込みながら報告する。
『ご苦労様、あの邪魔なビルを崩せたおかげで射線がよく通るわ。』
それに答えるのは
『それじゃあ私達は合図があり次第部隊を率いて便利屋の捕縛に向かう!!お前達!!配置につけ!!』
『『『『ハッ!!』』』』
『えぇ、それでは戦術の通りお願いします。』
『『チナツ』行くぞ。』
『えぇ』
救急バッグを持った衛生兵、D.U地区で先生と共にシャーレ奪還に協力した生徒であるチナツは銀髪ツインテールの少女と共に配置につく為駆けていく。
『・・・さて、
シャーレの先生、大人しく保護されていただけると助かるのですがね?』
『これで瓦礫に埋まるのは2回目だなぁ?』
次回予告
アビドスに進行する風紀委員会
戦う対策委員会
共闘する便利屋
迫撃砲をスクラップにするアイオロス
次回『突撃!隣のゲヘナ風紀委員会!』
蒸気を絶やすな
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難産続きなう