とある薄暗いビルの一室、そこにはピンク色の髪の少女、対策委員会のホシノと異形の存在が対峙していた。ホシノは普段のだらけた姿の面影はなく、攻撃的な鋭い目で目の前の存在、顔と思われる部分がひび割れ、黒いスーツをビシッと着こなした人型を睨みつけていた。
『ククク…やはり頷いてはいただけないですか?』
『当たり前でしょ、何回も同じ事を言わせないで。』
『おやおや、今日は一段と手厳しいですね?』
『・・・もう用が無いなら出ていくよ。』
ホシノは異形に背を向け、扉の取手を掴んだ。
『お気に召さないのでしたら…もう一つ、今度はあなたも、あなたの後輩達も、傷付かず幸せになれる提案があるのですが?』
扉を開きかけていたホシノの手が止まる。
『聞いていただき感謝します。その提案は、あなたが先日会ったアイオロスというオートマタを連れてきて欲しいのd』
異形の言葉は、額に押し当てられた銃口の冷たさに止められた。しかし異形は態度を崩さず、不敵に笑う。
『ククク、これ以上あなた達が傷付かず幸せになれる提案は無いと思いますが?ただ一度会っただけの赤の他人を差し出す…これだけ、たったこれだけなのですよ?』
『黙れ『黒服』!これ以上ふざけた事を言うな!!』
『・・・いや失礼、では今回はこれで以上になります。お足元に気をつけてお帰りください、小鳥遊ホシノさん…ククク。』
『チッ!』
部屋には黒服と呼ばれた異形の笑い声が不気味に響いた。
アイオロスside 砂漠
アビドス砂漠、今その場所には2人の人物が対峙していた。
1人はゲヘナ最強と言われている風紀委員長『空崎ヒナ』、
もう1人は3メートルの巨大蒸気機関ロボの『アイオロス』であった。
『ヒナ委員長!やった!ヒナ委員長が来てくれた!』
『私達が攻撃しても傷一つつかなかったあのオートマタに傷がついた!』
『ヒナ委員長ならあのオートマタにも勝てる!!皆んな!ヒナ委員長の援護を!』
風紀委員会の勝利の象徴、空崎ヒナが現れ、自分達では傷一つけることが出来なかったアイオロスの装甲に傷をつけた事で、アイオロスに迫撃砲をスクラップにされた迫撃砲部隊は勢いを取り戻し、アイオロスを包囲する。
『・・・更に撃たれる前に言いますけど、初めまして、アイオロスと言います。』
『あら、礼儀正しいのね、風紀委員長の空崎ヒナよ。それで?どうしてうちの迫撃砲にあんな事をしたのかしら?』
ヒナが目を向けた先には、無理矢理圧縮され、一つの鉄塊になった迫撃砲が転がっていた。
『なるべく早く答えてくれると助かるわ。』
『・・・自分はただ、理由が聞きたかっただけですよ。』
『理由?』
ヒナの疑問に対してアイオロスは続ける
『なんで自分のいた廃ビルに砲弾をぶち込んだのか?そしてアビドスに砲撃するのは何故か?…それを聞きに近くまで来たら、銃弾と砲弾に歓迎されまして、いつもなら銃とか奪って無力化するんですけど、流石に迫撃砲を全部担ぐほど腕はないのでこんな形で無力化しました。・・・流石にちょっとやり過ぎたと思ってます。』
『・・・ごめんなさい、私がゲヘナにかかりっきりになってしまったばっかりにこんな事に巻き込んでしまって。』
そう言いながらヒナは機関銃の構えを解く、それを見た迫撃砲部隊は驚きの表情になる。
『ヒ、ヒナ委員長!?なぜそのオートマタを無力化しないのですか!?』
『・・・ねぇ貴女達、
『えっ?何をおっしゃるんですか!ヒナ委員長から命令を受けたアコ行政官の指示の元、この作戦に参加しているのですよ?』
迫撃砲部隊の隊長と思わしき少女が、訳がわからないと言わんばかりに言う。
『
『『『・・・はぁ!?』』』
迫撃砲部隊員はヒナ委員長のカミングアウトに驚愕し、口が閉じないほど大きく開いた。
『私が出張から戻ったら風紀委員会は最低限残してほとんどいない、備品の迫撃砲は訓練目的で貸し出されていたけど訓練場まで運ばれた形跡がない、よくよく聞いたらアコが言った覚えの無い命令でアビドス自治区
『そ、それってまずいじゃないですかぁ!?』
『えぇ、かなり不味いから私が止めに来たのよ。』
『あのー・・・置いてけぼりなのでその作戦について詳しく話して欲しいのですが…』
俺は右手を控えめに挙げて質問する。
『貴方には悪いけど、機密事項があって話す事はできない。』
『アッハイ』
バッサリ切られたアンサーによって、俺は質問のために挙げた腕を下ろした。
『とにかく貴女達はここで命令があるまで待機・・・それとアイオロスだっけ?』
『なんでしょうかヒナさん?』
俺がヒナさんに目を向けると、ヒナさんの目は影がかかり見る者にとっては威圧感を与える眼差しでこちらを見ていた。
『巻き込んでしまったのは悪いと思う、でも風紀委員会の備品をスクラップにした事については移動しながら話し合いましょう?』
『イエス!マム!』
『そこまで身構えなくてもいいわよ…』
・・・俺はまたアビドスの土を踏めるだろうか、一体何を要求されるだろうか、頭の中が心配事で埋め尽くされ、勢いの無い蒸気を吹きながらヒナさんの後を追った。
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先生side大通り
アコが差し向けた風紀委員会を退けた私達、しかしアコの顔からは余裕の笑みが崩れず、私は長時間の戦闘により疲弊した対策委員会と便利屋の荒い呼吸を聞きながら、アコの次の一手を考える…このまま退却して欲しい所だけど、流石にそう上手くはいかない、そんな考えが現実になったのか、アコはダメ押しの一手を打った。
[なるほど、大体把握出来ました。シャーレの力、打ち破る為に必要な戦力、予想を遥かに上回っています。素晴らしいですね、しかし…]
アコの目が私を見つめる
[しかし決して無敵という訳ではありません、貴女達の弱点は把握しましたし、戦況も理解しました。この辺りを押し込めば、折れるのは時間の問題ですね?]
そう言うアコは手元の端末を操作し、インカムに向かって指示を出し始めた。
[第八中隊、後方待機やめ、前進開始。]
アコのホログラムの後ろから、待機していた部隊がゾロゾロと隊列を組み前進してきた。
『風紀委員会!第三陣を展開!』
アヤネの慌てる声が対策委員会と便利屋の間を駆け巡る。
『はぁ…はぁ…!まだいるの!?』
『このタイミングで更に投入!?』
『ぞ、増援なんて大した事ないわよ、まだまだ戦えるんだから!』
アルが気丈に振る舞うが、銃を握る手は疲れからか震えている。
『これはもう、アコの権限で動かせる兵力の規模を超えている。やっぱりこの襲撃は『ヒナ』が関わって…でも…』
『これだけ被害を出しているのに肝心の本人が一向に出てこないね。』
『ヒナが来ないならこっちのものよ!・・・来ないわよね?本当に来ないわよね?』
『社長…まだ確定した訳じゃないから。』
そんな話を聞きながら作戦を考える…このまま相手の補給が尽きるまで戦う事は出来ない、考えろ、考えるんだ私。この戦局をひっくり返す一手を・・・
[さあ、では…三度目の正直といきましょうか?風紀委員会、攻撃を開s』
[アコ]
聞いた覚えの無い声が響き渡った。風紀委員会は足を止め、アコは驚愕の表情のまま顔が固まっていた。アコの目線の先、いつの間にかホログラム装置から光が伸びて、ふわふわの髪と大きな角が特徴的な人物がホログラムで現れていた。少し間沈黙が続いていたが、アコがその人物の名前を叫んだ事で沈黙が破られた。
[ひ、ヒ、ヒナ委員長!?]
『委員長?』
『あ、あの通話相手が…?という事は、風紀委員会のトップ?』
『ん!そして先生誘拐未遂の容疑者!]
【シ、シロコ、落ち着いて。】
興奮するシロコを抑えながら、アコとヒナの会話の続きに耳を傾けた。
[い、い、委員長がどうしてこの時間に…?予定では…]
[アコ、今どこ?]
ヒナが質問するとアコは目を泳がせ、冷や汗をかき、途切れ途切れの言葉で答えた。
[わ、私ですか?私はぁ…そ、そのぉ、えっと・・・げ、ゲヘナ近郊の市街の辺りです!風紀委員会のメンバーとパトロールをしています!]
そんな苦し紛れの言い訳に、セリカは怒りの声をあげる。
『ちょっと!思いっきり嘘じゃない!』
『やっぱり行政官の独断行動だったみたいですね。』
[そ、それより委員長!確か予定では今の時間出張先で会議が…]
[もう終わった。・・・で?今どこ?]
[え?…で、ですからゲヘナ近郊でパトロールを]
[私は訓練をしていると聞いているけど?]
[そそそそそ、それは!訓練を兼ねたパトロールでして!]
[じゃあ迫撃砲は邪魔よね?]
[運搬の訓練用に持ち出しました!]
ヒナの言葉を返すたび、アコの目は更に左右に大きく泳ぎ、冷や汗は肌を滑り落ちていく。
『誤魔化すのに必死ですね…』
『ん、このままバレればいい。』
[その!私!えーと…そう!今すぐ処理しなければならない用事がありまして!後ほどまたご連絡します!い、今はちょっと立て込んでいまして!]
[立て込んでいる?パトロール中に珍しい。]
[えぇ…そのぉ。]
その時、ヒナの通信から『フシュー フシュー』と言う音が聞こえている事に気づく、アコも気づいた様でヒナに質問をする。
[?・・・ヒナ委員長、この音は何でしょうか…?]
[気にしないで、蒸気機関車の音だから。]
[じょ、蒸気機関車ですか?]
[そうよ、ゲヘナ発、甘雨アコ行きの列車よ。]
[・・・はい?]
アコはいきなり言われた言葉を理解出来ず首を捻る、すると、ここにいる全員がある音を聞いた。
ポッオォォォォォォ
『聞き覚えのある音が…』
ポッオォォォォォォォォォ!
【なんかデジャブだね】
ポッオォォォォォォォォォォォ!!
[な、何なんですか!?この音は!!]
ポッオォォォォォォォォォォォオオ!!!
音の出所を探すと、砂漠側の大通りから砂煙をあげながら何かが猛スピードで向かっているのが見えた。その
[さっきの旧型オートマタ!?そ、総員戦闘t]
『アコ』
その時、先程の通信と同じ声が聞こえてきた。皆が一斉に声の出所であるアイオロス君の肩に目を向けると、砂煙と蒸気の向こうに人影が見えた。やがて砂煙と蒸気が風によって流されると、アイオロス君の肩には、ふわふわの白い髪に、そこから伸びる黒い角、そして紫と黒のカラーリングが特徴的な大きな機関銃を持った人物、風紀委員長空崎ヒナ本人がそこに居た。
[・・・えっ?]
『っ!?』
『えっ?何で!?』
『!?』
『い、い、委員長!?なぜそのオートマタの肩に!?』
『!!』
『・・・ええええええ!?』
『アコ、どうしてこんな事になったのか、きちんと説明してもらうわよ。』
次回予告
アコの独断で行われた作戦は失敗に終わり
この問題は解決の方向へ進んでいた
しかし罪は償わなければならない
次回『蒸気機関in地獄』
蒸気を絶やすな
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ミニコーナー 教えて!ヘルメット!
『ゴーゴーヘルメット団リーダーでーす!』
『またまた未登場だけど副リーダーでーす!』
『このコーナーでは・・・前回説明したから以下略!』
『適当だね。』
『いーのいーの、ミニコーナーに文字数割いてもしょうがないから、早速ドン!今日は私!』
黒板に貼られたリーダーの写真
『ゴーゴーヘルメット団のリーダー!本名は指輪(さしわ)ノマ!』
『使用銃は短機関銃【アヒルの子】、モデルになった銃は【ステンガン】、アイオロスの事をアニキと呼んで友人関係を築いていて、普段は他の団員と一緒にジャンク漁りをしたり壊れた機械なんかを直して何とか生計を立てているよ・・・言っておくけど、あたいが今居ないのはサボっている訳じゃないからね!』
『分かっているってマサコちゃん、私達の為に今出かけているって事は理解しているから。』
『あっ、時間だよノマ!』
『それじゃあここまで!また次回!』
終
ー 指輪ノマ 鉄マサコ
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