蒸気機関ト青イ空   作:パラパラガス

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『良いじゃん!ナイスドリーム!』

そう言って彼女は私に向かって親指を立てる

『良い夢聞けて良かった。それじゃあ心置きなく私は帰るね。』

一歩を踏み出したその肩を私は全力で掴む

『いや、ちょっ、強い!?』

『何私の夢だけ聞いて帰ろうとしているんですか、さぁ、貴女の夢を聞かせてください。』

『いやん、恥ずかしい。』

思わず私はゲンコツを喰らわせた。

『暴力反対!?』

『ここを何処だと思っているんですか?学園都市キヴォトスですよ?』

『分かった!分かったよ!夢を聞かせるから!!』

先程殴った頭をさすりながら彼女は口を開いた。

『さっき言った『オートマタ』を作っているって話覚えている?』

『そのオートマタと関係が?』

そう言うと彼女は満面の笑顔を浮かべながら喋り始めた。

『私の夢はその子と一緒にこの世界を旅する事なんだ、色んな学園を旅して、色んな経験をして、色んな事を話し合って、笑ったり、泣いたり、喧嘩したり…ワクワクしない?』

彼女のその時の目を、こんな曇った目のおじさんになってもまだ覚えている。







とても無邪気で、眩しい程に輝いていた。



蒸気機関in地獄

 

先生side アビドス大通り

 

『ゲヘナの風紀委員長…『空崎ヒナ』・・・間違いありません。ゲヘナ学園のウェブサイトの写真と外観情報が一致します。』

 

タブレット端末とヒナ本人を目で往復しながらアヤネが報告する。

 

【あの子がチナツ達の上司…良かった。これで彼女達は進行をやめてくれるかもしれない。】

 

『先生、あまり楽観はいけません。彼女はゲヘナ風紀委員長…つまりは()()()()()()()()()()()()()()、私達はただでさえ風紀委員会の活動を妨害しています。こんな状況で彼女が…私達を制圧対象として判断してしまえば!』

 

私達は確実に負ける。その事実を理解した私の背中に、嫌な汗が流れる。

 

心の中で穏便に済ませる手段を考えながら私は話をしているヒナ達を見る、ヒナの側に立ち、アコをじっと見つめる大きな人型、ヒナを肩に乗せながらやって来たアイオロス君。その光景を見ていると背後から声が聞こえる。

 

『・・・なんであっちにあいつが居るのよ、さっきまで迫撃砲を壊して敵対していたじゃない…』

 

後ろを振り向くとセリカが不安そうな表情でアイオロス君を見ていた。

 

『私があんな事言っちゃったから…』

 

【セリカ】

 

不安そうに呟くセリカに声を掛ける、セリカは不安そうに目尻と耳を下げ、こちらに目を向ける。

 

【大丈夫】

 

『…なんで分かるのよ、あいつ…あんなに怒ってたじゃない。』

 

【私を信じて。】

 

私がセリカにそう言うと、セリカは私を少し見つめた後、静かに頷いた。

 

それから少しして、話終わったアイオロス君とヒナにシロコが戦闘を続行しようとした為慌てて止め、スーツの襟を正して向き直った。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

アイオロスside

 

風紀委員会vsアビドス組の戦いが始まりそうな雰囲気だったが、何故かヒナさんがホシノさんの名前を聞いた途端に驚いた表情になり、その瞬間今までこの場に居なかったホシノさんが遅れてやって来た。そのままヒナさんの横で状況が読めなかった俺はただ立っていることしか出来ず、気がついたらヒナさん達が撤収作業を開始していた。そんな俺は今…

 

『・・・じゃあ何?そっちに居たのは協力していた訳じゃなくて、ただ暴れ過ぎて風気委員長に怒られて、その埋め合わせについて話し合っていたから一緒に居ただけ?』

 

『… ハイ』

 

『・・・そして肩に乗せながら登場したのは、急いでそうだったから了承を得て乗せていた?』

 

『… ハイ』

 

『・・・紛らわしいのよ!!このバカァ!!』

 

『… ハイ』

 

すっごい怒られてます。

 

【ま、まぁまぁ、落ち着いてセリカ…】

 

『そーだよーほらほら、あんまり怒るとシワになっちゃうよー』

 

『ホシノ先輩は黙って下さい!!』

 

『ひぃん!セリカちゃんが怖いよー!』

 

『ん、怒るという事はそれだけ心配していたという事。』

 

『ち?!違う!心配なんてしてないんだから!!』

 

『でもセリカちゃん、さっき小さな声で…』

 

『わぁー!!言ってない!!言ってない!!』

 

一触即発の空気が漂っていたのが嘘だったかのようにここはワチャワチャとした。言うなれば安心しきった空気が流れていた。しかし、

 

『・・・もういいかしら?』

 

その言葉を聞いた途端、ホシノさん以外は真面目な顔をして、ヒナさんの方に集中する。

 

『さっきの通信で分かっていると思うけど、彼は自衛の為に私達風紀委員会の備品である迫撃砲を破壊、しかしその破壊が過剰であると私は判断した。本来ならこのまま拘束して矯正局に収監、だけど今回の件はこちらにも問題があった為、彼にはゲヘナ学園で二週間の奉仕作業を行ってもらう。』

 

【もしかして、それがさっき言っていた埋め合わせ?】

 

『知っているなら話が早い、この事は彼からも了承を得ているわ。』

 

ヒナさんの言葉を聞いてセリカさんが勢いよくこちらに顔を向ける。

 

『ちょっ、ちょっと!二週間もゲヘナに滞在するなんて聞いてないわよ!』

 

『えっと、伝え忘れていました。ごめんなさいセリカさん。』

 

俺がそう言って謝罪したが、セリカさんはますます不機嫌になり。

 

『何が伝え忘れていたよ!!バカァ!!』

 

『待ってセリカさん!!大事な話が!!』

 

呼び止めようとしたが、セリカさんは物凄い勢いで高校の方へと走り去って行った・・・結局謝る事ができなかった。

 

『ねぇねぇ、アイオロス君、アイオロス君が良ければおじさんからセリカちゃんに伝言を伝えておくよ?』

 

『・・・いえ、自分の口から言わないといけない事なので…ありがとうございますホシノさん。』

 

そう言いながら俺の体からは弱々しい蒸気が立ち上る、するとホシノさんが声をかけてきた。

 

『おっけー、あとね、これはちょっとしたおせっかいなんだけどね?』

 

『なんでしょうか?』

 

そう言ってホシノさんの話を聞く為に姿勢を低くした俺は、驚きと、なぜか違和感を覚えた。

 

『奉仕作業が終わったら、なるべく早くアビドスに来て、セリカちゃん結構根にもつタイプだから、手遅れになる前に謝ったほうがいいよ?』

 

『えっ?よく自分が謝ろうとしているって分かりましたね?』

 

『うーん、おじさんの勘かな?』

 

『ん、間違えてグレネードをセリカに投げちゃった時はしばらく口を聞いてもらえなかった。アイオロスも早く謝ったほうがいい。』

 

『わ、分かりました。奉仕作業が終わったら大急ぎでアビドスに来ます。』

 

『うんうん、その方がいいよー』

 

相槌を打つホシノさん、しかし、さっき感じた違和感の正体を掴めずにいると、先生の側で話していたヒナさんがこちらに歩いて来ていた。

 

『撤収準備が完了したわ、予定通り部隊の後ろについて来て。』

 

『分かりました…あっ、ヒナさん。自分の荷物を回収してから合流してもいいでしょうか?』

 

『・・・許可するわ。』

 

そう言うとすぐ、ヒナさんはアビドスの皆んなと先生に向かって頭を下げ、後ろで待機していた風紀委員会の部隊へと歩いて行った。

 

『では先生、ホシノさん、ノノミさん、シロコさん、アヤネさん。迷惑をおかけしました。必ずアビドスに戻って来ますので!』

 

【気をつけて行くんだよ、何か困ったことがあればすぐに連絡してね?】

 

『ん、犯罪者の見送りなんて初めて。』

 

『ちょっとシロコ先輩、私達も人の事言えませんよ!んんっ!それではお元気で!アイオロスさん!』

 

『さよーなら☆、ゲヘナでもお元気で!』

 

『それじゃあ気をつけてねー』

 

それぞれの別れの言葉を聞きながら、手を振ってアビドスに一時の別れを告げた。その後は荷物を回収して、大急ぎで部隊と合流、風紀委員会の輸送トラックの後ろをついて行き、砂漠を走り続け、ついに俺はゲヘナへと足を踏み入れた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

イロハside 軍事車両庫

 

私は棗イロハ、万魔殿(パンデモニウムソサエティ)に所属している二年生…ねぇ、この紹介は本当に必要?めんどくさいから名前だけで良かったと私は思うんだけど・・・まぁ、自己紹介はここまでにして、早く虎丸を元の場所に戻して『イブキ』を『マコト先輩』の所に送らないと。

 

『あのー…戦車長。』

 

ふと、虎丸を運転している生徒が声をかけてきた。

 

『どうかした?』

 

『虎丸の駐車スペースの横って・・・何もありませんでしたよね?』

 

『そうだけど?』

 

『なんか物凄く大きなオートマタが檻の中で三角座りしているんですけど…』

 

『はっ?』

 

すると、ハッチから顔を覗かせていたイブキが興奮した様に声をあげた。

 

『うわぁ!!おっきなロボットさんだー!!』

 

『はっ?』

 

思わず私は一旦イブキを虎丸の中に入れてハッチから顔を出す・・・いる、虎丸の駐車スペース横に、巡回に出かける前には無かった檻とその中で大人しくしている巨大な旧型オートマタが…

 

『あぁどうも、えーと…こんばんわ。』

 

目の前のオートマタは、蒸気を吹きながら首を時計の方に向け、時刻を確認した後、再度虎丸の方へ向けて喋り出した。

 

『これはご丁寧に…てっ、違くて、あなたは誰なんですか?』

 

『初めまして、自分はアイオロスって言います。ちょっと風紀委員会と揉め事を起こして連れてこられました。』

 

『はぁ・・・要は犯罪者って事ね…めんどくさい、一体誰がこんな所に…』

 

『ヒナさんですね、風紀委員会の本部で収監出来る檻が無いので、以前にマコトさん?っていう人が作らせた特注の檻がここにあるからここでいいかしら?って事になって現在に至ります。』

 

目の前にいるオートマタの話を聞き、檻に目をやる、この檻はある日マコト先輩が突然『イブキの為にUMAを捕まえるぞ!』と言って作らせた檻で、結局この檻で捕まえる事が出来たのは、デモンストレーションでうっかり檻を閉めたマコト先輩だけだった、それに、この檻はいきなり作らせたせいで耐久性に難がある代物、そんな檻に犯罪者を収監するなんて、風紀委員長は何を考えているの…

 

『えーと、何か難しい顔をしていますけどどうかしました?』

 

『・・・めんどくさいから直球で聞くけど…なぜ大人しくしているの?』

 

『・・・はい?』

 

目の前のオートマタは訳が分からないという感じの声を出す…まさか、脱走する気が無い?

 

『あなたのおおよそのパワーを考えると、そんな檻なんて意味をなさないはず、なぜそこで大人しくしているの?』

 

『もしかして脱走とかそういう話してます?』

 

『そう言っている。』

 

『悪い事をしたのに脱走なんてする訳無いじゃないですか。』

 

『・・・頭がおかしいんじゃないんですか?』

 

『なぜ!?』

 

目の前で驚いている天然記念物(非常識)をよそに、乗組員に指示を出し、檻の横に虎丸を駐車させる、それぞれが手順を踏んで機器を停止させ、最後に私が巡回札を取り外して作業を終了した。その間、イブキは少し離れた所からオートマタと会話していた。

 

『ロボットさん…悪い人?』

 

『悪い…まぁ結果的に悪くなっちゃいましたけど、最初から悪い事をしようとした訳じゃないんですけどね。』

 

『うーん…イブキよく分からない!』

 

『うーん…説明が難しいなぁ。』

 

オートマタは蒸気を吹きながらうんうん唸ってなんとかイブキに分かりやすい様に説明しようと頭を捻っている…本当に犯罪者?

 

『ふあぁ・・・イブキ眠たくなっちゃった。イロハ先輩、マコト先輩の所に行こう?』

 

『長引かせちゃってごめんなさいねイブキ、マコト先輩の所に行きましょうか?』

 

私はイブキの手を握り、軍事車両庫の出入口を出で先輩が首を長くして待っているであろう万魔殿へ向かった。出でいく時にこちらに小さく手を振る、異質なオートマタを視界の端に写しながら。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ヒナside 風紀委員会

 

『・・・』

 

アイオロスを軍事車両庫で埃を被っていた特注の檻に収監した後、私は1枚の紙を見ていた。

 

『ヒナ委員長、あのタヌキからまたこんな書類が…ヒナ委員長?』

 

『・・・アコ、あなたは三船イルカという生徒を知っている?』

 

『三船イルカ?・・・いえ、どの様な生徒何ですか?』

 

私は折り目に沿って紙を折り直し、そっとデスクに置いた。

 

『私が諜報部にいた頃、この名前は各学園の要注意人物リストに載っていたわ。三船イルカ、ミレニアム学園のエンジニア部に所属()()()()生徒で、時代遅れな蒸気機関を好み、日々様々な発明を()()()()。』

 

『していた?今はどこでなにを?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『データセンターの一部を爆破した後、現在に至るまで行方が分からないわ。』

 

 

『・・・はい?』

 

 





次回予告

地獄の檻で一夜を過ごしたアイオロス
いよいよ奉仕作業が開始される
しかしアイオロスの意思とは関係無しに
更なる問題に巻き込まれる

次回『蒸気機関と温泉開発部』

蒸気を絶やすな

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ミニコーナー 教えて!ヘルメット!

『ゴーゴーヘルメット団リーダーでーす!』

『・・・』

『あれ?マサコちゃん?』

『あたいはいつ登場するのおぉぉぉ!!ミニコーナーの出演だけはもう飽きたぁぁぁ!!』

『お、落ち着いてマサコちゃん!そんなマサコちゃんに朗報だよ!今日の紹介はマサコちゃん!』

『・・・ならしばらく我慢できる。』

『よし!それじゃあ改めて紹介するのはマサコちゃん…あれ?写真は?…えっ?未登場だから撮ってない?銃の紹介も駄目?』

『・・・ぐすん』

スタジオの隅で『の』の字を描いている所を映される。

『ごめんマサコちゃん!ちゃんと登場する時はマサコちゃんの希望に沿った登場方法にするし、好きなコーラ買ってあげる!』

『の』の字を床に描きながら、片方の手で指を三本上げる。

『…3本?』

『3箱』

『できれば…2箱で…』

『・・・じゃあ2箱。』

『交渉成立!今回はここまで!』


ー 指輪ノマ 鉄マサコ
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