蒸気機関ト青イ空   作:パラパラガス

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ふと、製作記録の手を止めてロイを見上げる。
完成まであと一歩という所まで組み上がった彼、
あとは少しずつ作っていたAIを搭載するだけ、
完成したロイとどんな場所へ行こう、
どんな友情を育もう、
そんな事を思いながら私は目を瞑り幼き日の思い出を振り返る、
夢中になって何度も何度も見返した


私の夢と浪漫の始まりを。





蒸気機関対ヘルメット団

 

『困った。俺が憑依転生しちゃったこのロボの名前と転生先はよく分かった。よく分かったはいいけど・・・この固定器具壊しても良いのかな?』

 

そう言いながらロボットはガチャガチャと腕の固定器具を鳴らす。

 

『見た感じかなり埃が積もっているから人が長い間来て無いのは分かるんだけどなぁ・・・・あぁもう!分からない事だらけだな!!』

 

『良し!こういう時は単純明快なあの方法に限るな!!』

 

そう言うとロボットは体の節々から蒸気を吐き出し、腕に力を込め始めた。幸いな事に固定器具は拘束を目的としたものではない為、力を入れ始めてすぐに器具は大きな音を上げながら粉々に砕けた。

 

『おあ!とっとっと!!・・・セーフ、勢いで倒れる所だった。こんなに脆いなら足の器具も・・・おっ!いけるいける!』

 

足の器具も取り外し、ロボットは凝るはずもない肩関節を回し、首を回しながら辺りを再び確認した。

 

『さっきから騒いでも人が来る気配がない、という事は人が居ない事が確定・・・けど妙だな、この製作記録を見たらこのロボットを作った人は苦労してでも完成させたかった筈、なんで肝心の本人が居ないんだ?』

 

ロボットは机に置かれていた製作記録を指でつまみ、もう一度上から下まで目を通す。

 

『完成前に何かあったのか、ここを去らなければいけなかったのか・・・謎だなぁ。まぁ今は外に出れるかの確認だな。』

 

ロボットは床に散乱した工具や機械を踏まないようにどけながら、この部屋のただ一つの扉の前に立つ。ロボットがドアノブを器用に捻るとそこはコンクリートで覆われた通路が続いていた。

 

『屈まなくても通れるくらい扉も通路も大きい、やっぱりこのロボットの事を考えて作られている。』

 

体から蒸気をフシュフシュと吹きながらロボットは闇が支配する通路を歩く、上に体を向けば一定の間隔で電灯が設置されているがやはり電気が来ていないのか光っていない。ふと違和感を覚えてロボットは周りを確認する。

 

『・・・やっぱりだ、ここには窓が無い…いや、

()()()()()()()()()()()?さっきから見覚えのある道だと思っていたけどここは…』

 

歩いていたロボットが足を止める、ロボットの目の前にはまるでロボットの事を待っていたと言わんばかりに、ロボットが乗れる大きさのエレベーターがその姿を見せた。

 

『やっぱり、ここは地下道だったか。』

 

ロボットがそう呟きエレベーターの手動扉を開ける、ボタンを見ると電気が来ているらしく上を指した矢印のボタンが光っている。

 

『ここだけ電気が来ている?別の電力源があるのか?』

 

ロボットが恐る恐るボタンを押すと、エレベーターは何事もなくキィキィと音を立ててゆっくりと上を目指し始めた。

 

『あの通路といい、このエレベーターといい、いろんな所からこのロボットの事を思っているのは確かだ、ますますこの製作記録を書いた人が居ないのが気にな・・・ん?』

 

ロボットは製作記録の裏の隅に文字が書かれている事に気づく、その文字は急いで書いたらしく所々読みずらいがこう書いてあった。

 

 

偶然でも奇跡でもなんでもいい この場所を発見出来たあなたにお願いがあります どうか目の前にいる私の親友と友達になって欲しい 私が彼に出来なかった色んな事を体験して欲しい 私が喋れなかった分彼とおしゃべりして欲しい あなたが知らない私からの図々しい最後のお願いです どうか どうか私が叶えられない夢の分彼と アイオロスと一緒に過ごして貰えないでしょうか ロイを 私の相棒をお願いします   三船イルカ

 

 

ロボットは最後に書かれた名前を見て上を見上げる

 

 

『三船さん・・・あなたに一体何が・・・』

 

呟いたと同時にエレベーターが止まった。エレベーターを降りると目の前には重厚な鉄の扉が現れ、扉に付いたハンドルを回して扉を押すとそこには、デジャブのような光景が広がっていた。

 

『あれ?さっきの部屋?・・・いや、さっきの部屋よりもかなり荒れてる。』

 

目の前に現れたのは目覚めた部屋と全く同じと言っていい程似ている部屋であった。違うのは壁のあちこちに弾痕が残り、おそらく資料を入れてあったであろう棚が一つ残らずひっくり返され資料が一つも見当たらない所と、自分を固定していたのと同じ器具が壁にあり、固定器具が破損している所と、出入り口が瓦礫で塞がれて出られない所である。ちなみに今入って来た鉄の扉は固定器具の壁にカモフラージュされていた仕掛け扉である。

 

『酷いな、何もかもひっくり返されてる。』

 

そう言いながら出入り口まで進み考え始めた。

 

『見た感じ出入り口はここしか無いし、なんとか無理矢理退かせないかな?』

 

ロボットが瓦礫に手を当て、体の節々から蒸気を吹き出し、声を上げながら力を込めると少しずつ瓦礫が前に進み始めた。それと同時に瓦礫の外から声が聞こえてきたがロボットは瓦礫を退かすのに夢中で気付いていない。

 

『な!?なんだぁ!?アジトの地下から唸り声!?』

 

『おい見ろ!!地下を塞いでいた瓦礫が盛り上がってるぞ!?みんな離れろ!!』

 

やがて瓦礫を退けてロボットが現れた。ロボットはまるでいい汗かいたと腕で額を拭う動作をした。

 

 

『ふぅ!外に出れたぞ!』

 

『おいお前!!お前だよデカいロボット!!何いい汗かいたみたいな動きをしてるんだ!!』

 

『ん?・・・えーと、初めまして?』

 

ロボットはヘルメットを被った少女に挨拶を交わす。

 

『あぁ、これはご丁寧にって違う!!ここはゴーゴーヘルメット団のアジトである廃ビルだぞ!!誰の許しを得て地下から侵入して来た!!』

 

流されつつもヘルメットを被った少女は、周りにいるヘルメット団員に目配せしてロボットに銃の照準を合わせる。

 

『え、いや俺ここの地下で目覚めて…外に通じている道がこの瓦礫に埋まった所しかなくて、不法侵入してしまったのは謝ります。なのでその手に持った銃を向けるのはやめて頂けると嬉しいのですが・・・』

 

ロボットは、中身が銃撃なんて日常で起こらない世界の高校生であった為、完全に銃にびびっていた。

 

『あぁ!?虫のいい事言ってんじゃないよ!!不法侵入したならメーワク料払えよ!!』

 

『それは・・・そのぉ、お金ないです・・・』

 

もちろん目覚めたばかりでこの世界のお金も常識も持ち合わせていなかった。分かっているのは隣の吉田が言っていた朧げなブルアカの知識だけであった。

 

『持っていない!?ふざけやがって!!おいお前ら!!こいつにゴーゴーヘルメット団の恐ろしさを教え込んでやるぞ!!』

 

そんなヘルメットの少女の号令によりロボットに向かって一斉射撃が始まった、しかし銃弾は身を屈めて縮こまっているロボットの装甲を貫通することはなく、どれも装甲によって弾かれるか弾が潰れて落ちるかで全くダメージが入ってなかった。そんな銃撃の嵐に晒されながらロボットは前世の高校で隣の席であった吉田の事を思い出していた。

 

(思い出せ、確か吉田の話だとブルーアーカイブの世界って美少女だらけで、銃を携帯するのが当たり前で、頭の上に浮いているヘイローとか言うやつのおかげで体が頑丈な筈、確かこれのおかげで核にも耐えられる*1強度のはず・・・でも女子を攻撃するのは気が引けるから…そうだ、武器を奪って無力化すれば。)

 

早速行動に移ったロボットは立ち上がり、銃弾なんて気にせずにどんどんヘルメット団員に近づき、銃を奪っては他の団員に近づき、銃を奪っては他の団員に近づき無力化を続けて行った。しかし冷静になって考えて欲しい、このキヴォトスでは普通の市民である獣人やロボットも銃で撃たれたら痛みを訴えたり気絶するのが当たり前なのである。そんな世界に痛がるそぶりも見せず、無遠慮に近づいては自分達から銃を奪う3メートルの巨大なロボットを想像して欲しい。

 

『来るなぁぁぁああ!!ぐるなぁよぉぉぉぉ!!』

 

『ごべんなざいぃぃいい!!ごろざないでえ!!』

 

『おがねあげるがらゆるじてぇぇぇぇ!!』

 

地獄の誕生である。

 

『待て待て待て待て!!何で襲われた俺が悪いみたいになってんの!!俺はただ穏便に無力化していただけだよ!?』

 

『何なんだよお前!!痛がらないなんて化け物かぁ!!』

 

『失礼だな!!この体が頑丈なだけだから、

あぁもう!はい!銃は返すよ!』

 

『え?』

 

『わざとじゃないけど不法侵入して悪かったよ、それじゃあな。』

 

ロボットはヘルメット団員達に背を向け、蒸気を吐きながら出口へと向かった。そこに赤いヘルメットとガスマスクを着けたリーダー格らしき少女が声を掛けた。

 

『ま、待ってくださいアニキ!』

 

『は?アニキ?俺?』

 

『そうです!こんなにも酷い仕打ちをしたにもかかわらず、その剛腕で攻撃をせずにわざわざ銃を奪って無力化するなんて!!慈悲の心溢れるアニキの行動に感動しました!!しかも銃を奪わず返してくれるなんて!!一生着いていきます!!お前らもそうだよな!!』

 

『ア!二!キ!ア!二!キ!』

 

『いやいやいやいや!なんで急に俺をアニキ呼びするの!!』

 

リーダー格らしき赤い少女はとても良いキメ顔*2をしながら自信満々で言った。

 

『ゴーゴーヘルメット団のモットーが強い奴には媚びろですから!!』

 

『なんだそのモットー!?とにかく!!俺はアニキにならないからな!!』

 

『それなら!せめて名前でも教えてください!』

 

『え?名前?』

 

(名前・・・名前かぁ、二度目の人生だしどうせならかっこいい名前に!)

 

 

 

ロイを 私の相棒をお願いします

 

 

 

(・・・はぁ、今思えば前世じゃお願い事をどうしても断れなかったせいで損な立ち回りをしてたなぁ・・・俺が死んだ原因も吉田がトイレ行ってる間に吉田が買ったアニメグッツを持って待ってたのが原因だしな…2回目ならそんな事無いだろうなと思ったけど…

あんな置き手紙見ちゃったら断れないよ・・・)

 

 

『・・・アイオロス、俺の名前はアイオロスだ。』

 

『アイオロスのアニキ・・・アニキの名前!このヘルメット魂に刻みました!!アニキの事は絶対に忘れません!!』

 

『いやだからアニキ呼び・・・はぁ、それじゃあね。』

 

アイオロスは外に出る為に再び歩き出した。その背中にヘルメット団員達の熱い視線を受けながら。

 

 

 

 

(三船イルカさん、俺は何の因果かあなたの親友に憑依してしまった転生者です。ですが安心してください、友達を作る事は少し苦手で、もしかしたら出来ないかも知れませんが。この体に憑依してしまった者として、あなたがこの体、アイオロスとしたかったけど出来なかった事を体験してきます。なのでどうか、あなたの親友の体でこの地を歩く事を許してください。)

 

 

 

*1
無理です

*2
ガスマスクなので見えない




次回予告

この世界で生きる目的を定めたアイオロス
常識を学びつつこの世界を旅する為に仕事をこなしていた
しかしアイオロスを取り巻く運命は少しずつ音を立てながら回り始めていた

次回『動き出す世界』

蒸気を絶やすな
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