私はエレベーターの中で深呼吸をしながら気持ちを整える
あいつらがダミーの地下を見つけるまでに落ち着かなくては
ここを悟られてはいけない悟られれば全てが終わる
私の夢も浪漫も全てが奪われてしまう
私は強く手を握りしめて止まったエレベーターから降りる
重厚に作った鉄の扉を開けて私はダミーの研究室へ足を踏み入れた
そして椅子に座り私は待つ 最後の時を
ブラックマーケット 爆発した武器屋
爆弾と弾薬の連鎖爆発により火の海となった武器屋とその周辺、火の海となった武器屋の瓦礫が崩れ、その下からアイオロスと店主が出てきた。
『だ、大丈夫ですか店長・・・』
『・・・・』
『店長?』
『・・・燃えている・・・』
店主は、まるで他人事の様にそう呟きながら周りを見渡す。現実を受け入れたくないのか何度も何度も、しかし確認する度に現実を直視してしまう。
『あぁ…俺の…俺の店がぁ…俺の『夢』が…燃えている…』
『店長!しっかりしてください!!まだ引火してない火薬があるかも知れませんから逃げますよ!!』
俺はまだ呆然としている店主と近くに落ちていた弾薬箱を引っ張りながら爆発した武器屋から離れた場所に腰を下ろした。それと同時に見回りをしていたであろうマーケットガードが走って来た。
『貴様達!!何をやっている!!ブラックマーケットで騒ぎを起こせばどうなるか分かっていながらの行動か!?』
『俺達じゃない!俺達が店の中で話していたら急にグレネードを投げ込まれて!!』
『その様な嘘が通じるか!!話は支部で聞かせてもらう!!来い!!』
『うっ!!』
マーケットガードが店主の腕を掴み無理矢理立たせようとする
『やめろ!!その人から手を離せ!!』
『なんだ?私の対応に何の問題がある?怪しい人物が目の前に2人もいる、その人物はブラックマーケットの治安を崩すかも知れない、だから支部へ連れて行く、この行動に何の問題がある!!』
『だとしても店長の回復を待ってくれ!!それに本当に俺達はやっていない!!』
『まだ言うか!!』
俺達が口論をしていると、何人ものマーケットガードが走って来た。最初のマーケットガードが走って来たマーケットガードに向かって敬礼した所を見ると、後から来たマーケットガードは上司らしい。
『お前達は消火を優先!周りへ水を撒く事も忘れるな!・・・アイオロス!!一体何があったんだ!!』
『え?ガードさん?』
驚いた事に走って来たマーケットガードの1人は配達の仕事ですれ違うマーケットガードその人であった。
『せ、先輩、この巨大な人物と知り合いなのですか!?』
『あぁ、お前はここに配属されたばかりだったな、巨大なロボットはアイオロス、俺のパトロールのルートでよく会う人物だ、もう1人は…嘘だろ、あの武器屋が爆発したのか・・・』
ガードさんは武器屋のほうを見てびっくりしていた。
『…んん!それで、一体何があったんだ?話してくれ。』
『あぁ、俺は配達の仕事であの武器屋に来ていて、店長と世間話をしていたんだ、そしたらいきなりグレネードを投げ込まれて・・・』
『あんな事になってしまったか・・・まさかここのブラックマーケットにも現れたか…』
『・・・どう言う事ですか?これは同一犯が起こした事なんですか?』
ガードさんは少し悩むと話してくれた
『いや違う、犯人は複数犯でな、様々なブラックマーケットの武器屋で武器弾薬が奪われる事件が多発している、客の対応をしている時にスタンを投げられて目を潰され、無力化してから全て奪っていくらしい、今回は何故かグレネードだったが手口は似ている。』
『ちょっと先輩!なぜ部外者に話しているんですか!!』
『言わなければ相手も落ち着かないだろう、それに俺は特に問題は無いと思っているぞ。』
『・・・ハッ!奪うっていう意味では合ってるな、何もかも消し炭にしやがって・・・』
地面に項垂れている店主からそんな声が聞こえてきた。
『まだ、ローンだって残ってたんだぞ・・・もっと作りたい銃だってあったんだぞ・・・昔の映画に出てくる武器商人のようなかっこいい奴になりたくて『夢』みてた・・・たった・・・たった一個のグレネードで全て・・・奪いやがって・・・』
店主から吐き出される言葉は悲しみに溢れていた。顔は見えないが声で理解できた。
『…心中お察しします。ですが犯人を確保して情報を引き出す為に少しお辛いですが、犯人の顔を見ていないでしょうか・・・?』
『・・・スケバンだ、しかもここら辺では見ない奴らだった。』
『成程、他の武器屋を襲った相手もスケバンだったという報告があった。だがスケバンは基本つるむ事はあってもこんな組織的な犯罪はしない・・・』
『すると先輩…』
『あぁ、この事件の裏には
そうガードさんが推理をしている傍ら、俺は店主を見つめ、ある感情が沸き出てきた。
それは『怒り』である、お世話になって世間話をするくらい仲が良くなった店主に起こった理不尽、俺はどうしてもそれが許せなかった。正義感からくる怒りではない、俺は店主と三船さんを重ねてしまったのだ。店主の口から語られた『夢』と三船さんが製作記録に綴った『夢』、全く方向性の違う『夢』だ、しかしその『想い』は変わらない、叶えようと努力する姿勢は同じである。そんな『夢』を踏み躙られた事に俺は怒りを覚えている。
俺は側に置いた弾薬箱を開き、相棒のタイラントに弾を込める。
『おい!何をしている!銃をおろせ!』
後輩のマーケットガードが俺に銃を向けた。だが俺は構わずガードさんと話す。
『・・・ガードさん、その犯人を捕まえたら…お金って出ます?』
『・・・出るかも知れない…相手は重要な情報を待っている可能性が高いからな、だがこれは俺達の仕事だ。』
『それでも、それでもお願いします。』
『・・・・・今裏路地の人員が不足している、そのスケバンを捕まえて金が出れば半分渡そう。』
『先輩!?』
『…ありがとうガードさん。』
『その代わりちゃーんと捕まえるんだぞ?失敗したら怒っちゃうからな?』
ガードさんは先程の堅苦しい雰囲気からいつものおちゃらけた雰囲気になる。
『はい!待っていてくださいね店長!』
俺はそう言って蒸気を吹き出しながら裏路地へと入って行った
『・・・アイオロス・・・』
その背中を、店長は見えなくなるまで見つめていた。
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ブラックマーケット 出口付近
『誰だお前は!!』
『俺?お前らを捕まえに来た奴だよ。』
『ハッ!捕まえるだって?笑わせるね!あんたは1人!こっちは3人!人数差すら分からないのかい?それともなんだい?その大砲みたいな銃があるから楽勝だと思ってるのかい?舐めるんじゃないよ!!』
『いや、舐めてないよ、そんな事より俺はちょっと聞きたい事があってな。』
『なんだぁ?どうやったら許して貰えるとかそんな事かぁ?』
『違う』
アイオロスの体からため息を吐くように蒸気が溢れる
『お前らに『夢』はあるか?』
『はぁ?何言ってんだお前?』
『だから『夢』だよ、いつか実現したい事、こんな風になりたいとかの『夢』だよ。』
アイオロスが答えると、スケバンのリーダーが吹き出し、それに便乗するように部下も笑った
『『『ぷっ!あっはっはっ!!』』』
『夢だって?ばっかばかしい!夢なんて所詮絵空事なんだよ!!夢見たところで良い暮らしができる訳でも腹が膨れる訳でもない!そんなアホらしい理想語る奴が私は嫌いなんだよ!!』
そう言いスケバンのリーダーはアイオロスに向かって手に持ったアサルトライフルをワンマガジン撃ちきる、しかしその弾丸はアイオロスの装甲の前では何のダメージも与えなかった。
『は?』
呆気に取られるスケバンリーダー
『…まぁ確かに、『夢』だけじゃ良い暮らしも腹も膨れない、なんなら『夢』が無くても生きていける、そこは認めるよ、でもな?夢を持つとそこに向かって頑張る事が出来るんだよ、俺だって夢が無かったよ、けどある出来事をきっかけにこのキヴォトスを見て回るっていう『夢』が出来たんだよ。』
アイオロスは蒸気を吹き出しながらスケバンに一歩ずつ近づく
『色んな都市を回って、色んな事を体験して、トラブルが起きるかも知れない、でも最近じゃそのトラブルはどんなものなんだろうっていうワクワクすらある・・・まぁ出来るだけ暴力沙汰じゃない方がいいけどな?』
アイオロスが一歩近づくたびスケバン達は後退りする
『来るな!!止まれ!!』
『ヒィ!!来ないで!!』
『撃て!撃つんだ!!』
スケバンリーダーの合図と共にアイオロスに銃弾が浴びせられる、しかし結果は変わらなかった。アイオロスの足元には装甲によって潰された銃弾が散らばる。
『俺はな?今とても怒っているんだ、お前らがグレネードを投げ込んだ武器屋の店主はな?『夢』があったんだよ。俺はその夢を踏み躙られて非常に怒っている。』
『なんでだよ・・・なんでお前が怒るんだよ!!赤の他人じゃないか!!』
『まぁ冷たく言えば他人だな、けど俺はあの店主に世話になったし仲も良かった。そして何より…』
俺はスケバン達に一気に近づき手に持った銃を奪い、手に力を込めて銃を破壊した。
『夢を笑ったお前らが許せない。』
スケバン達は壊された銃を見て涙目になりながら降伏の姿勢をとった
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ブラックマーケット 爆発した武器屋から離れた通り
『ははは!!まさか本当に捕まえちまうなんてな!ありがとなアイオロス!』
笑いながら礼を言うガードさんの足元には縛られたスケバンが転がっていた。そこに頑丈そうな装甲車に乗って後輩のマーケットガードがやって来た。
『先輩、輸送準備整いました!』
『おう!それじゃこいつら乗っけて支部で尋問だな!・・・覚悟しとけよ』
声が低くなったガードさんに怯えるスケバン達
『それじゃあアイオロス!金が入ったら今いる廃ビルにパトロールついでに持って来るからな?楽しみにしてろよ!』
そう言ってガードさんは装甲車に乗って去って行った
『・・・なぁ、アイオロス。』
側にいた店主が俺に話し掛ける
『どうしました?』
『その・・・ありがとうな、犯人を捕まえてくれて…』
『さて?なんの事ですか?自分はただお金が欲しかっただけですよ?あぁでも嫌いな暴力沙汰で稼いじゃったからなぁ〜?抵抗感があるなぁ〜?お金が入っても受け取れないなぁ〜?誰か受け取ってくれないかなぁ〜?』
そう言ってアイオロスはチラチラと店主を見る
『…あっはっはっはっ!!はぁ、全くお前は、くれるって言うなら貰ってやるよ。』
『どうもありがとうございます店長、その代わり『夢』、諦めないでくださいね。』
『言われなくても分かってるよ!あと小っ恥ずかしいからやめろ!』
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ブラックマーケット マーケットガード支部
『先輩!あいつら吐きました!』
『で?誰だ?ブラックマーケットの治安を揺るがす犯人は?』
『それが・・・』
後輩のマーケットガードが一枚の紙を渡す
『・・・おいおい、冗談かよ・・・』
『戦力は十分、一組捕まったお馬鹿さんがいますけど構いません』
さぁ 存分に破壊しましょう?
次回予告
事件がひと段落しいつもの生活に戻ったアイオロス
ある配達の仕事を受けてD.U地区に訪れていた
そしてある事件に巻き込まれ
1人の『大人』に出会う時
アイオロスの運命は動き出す
次回『プロローグ』
蒸気を絶やすな