蒸気機関が大好きだ
見たまえあの蒸気!熱気!無骨な機械!
男の子の心が滾ってしょうがない!!
想像したまえ!
蒸気を吹き出しながら歩く巨大なロボを!!
黒煙が登り傍若無人に泳ぐ戦艦を!!
人々の生活を支える蒸気機関車を!!
あぁ素晴らしい!!蒸気機関!!あぁ蒸気機関!!
蒸気の浪漫よ永遠なれ!!
武器屋爆発事件が起こってから翌日俺は変わらず仕事をしている、ちなみに今は工事現場で鉄骨を運んでいる。
『ごらデカイの!!そっちの鉄骨じゃねぇ!!もっと太いのだ!!』
『すいません親方!!』
主に俺は重機の代わりに重たい資材などを運ぶ作業をやっている、この体は疲れ知らずなので現場の人からはかなりありがたがられている。
『デカイの!!次は西側に鉄骨を持っていけ!!今度も太いやつだぞ!!』
『へい親方!!』
俺の事をデカイのって呼んでいるのは現場の親方、犬の獣人でかなりの年寄りである、よく大声で喋っているが怒っている訳ではなく、耳が遠くて声の調整が下手くそなだけである。
『ごらぁ!もたもたするなよぉ!!』
『はい親方!!』
怒ってない・・・はずである。
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ブラックマーケット 居住区
誰も怪我をせずに今日の工事が終わり、次に俺は配達の仕事に精を出していた。今回の配達はいつもの区域ではなく、別の遠い区域を担当している人が風邪で寝込んでしまったのでその区域を担当しています。えーと、次の荷物は。
『
俺は陸八魔アルさんがいるであろう『便利屋68』と看板を掲げたビルに着いたのだが、そこは絶賛引越しの準備中だった。
『うちに何か用?』
『え?』
声を掛けられた方向を見ると、そこには白と黒のツートーンの髪の毛と後頭部からツノが生えた少女がいた。
『えーと、このビルの人でしょうか?』
『そうだけど…手に持っているそれって…』
『陸八魔アルさんにお荷物です。サインお願いします。』
『…はぁ、社長ったら、引越しの日に届く荷物は無いって言ってたのに・・・』
そう不満を漏らしながらサインを書き、少女は荷物を受け取った。そして彼女は何か用があるのかこちらの顔をじっと見てきた。
『?…何かご用でしょうか?』
『…いえ、なんでもないわ。』
『そうでしたか、ありがとうございました!』
『お疲れ様…はぁ。』
なんだか疲れてそうだなぁなんて思いながら、俺は次の荷物を運ぶ為に足を進めた。
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便利屋68オフィス 屋内
便利屋68のオフィスの中では絶賛荷造りを行っており、銀髪の少女と紫髪の少女、そして一際目立つコートを羽織った暗いピンク髪の少女がいた。
『アルちゃーん?どうして引越し当日まで片付けなかったの?』
『し、仕方ないじゃない!片付けていたら懐かしい物が見つかって…それでぇ…』
『手がつけられなかったと…アルちゃんらしいね!』
『だ、大丈夫ですアル様!全部、手伝いますから!』
『ありがとうハルカ…あとムツキ室長、例え引越しの途中でも私達は便利屋68、ちゃんと社長と呼んでちょうだい。』
『はーい!』
そんな事をしていると、先程アイオロスから荷物を受け取った白と黒の髪の少女が荷物を待って入って来た。
『社長、今日届く荷物は無いって言ってたよね?荷物が届いてたよ。』
『あ、あら?…あっーー!!この前注文した商品忘れてた!?』
スマホを確認したアルは自分の失敗に気づき
『ア、アル様!?その輸送業者潰しましょうか!?』
『や、やめなさいハルカ、これは私のミスよ。』
『・・・私もやめた方がいいと思う。』
『ん?カヨコちゃんどうしたの?』
『その荷物を持って来た人・・・噂の『巨人』だった。』
『えっ!?きょ、巨人って、あの!?』
『うっそー、一目見たかったなぁ。』
『巨人・・・?カヨコ、それはどんな人なの?』
『社長…ここのブラックマーケットに住んでる人なら大体知っている噂だよ…最近このブラックマーケットに『蒸気の巨人』が現れて色んな仕事をしているって話、聞いた事ない?』
『えっ?えーと…あぁ!そんな噂ね!うん!分かってたわよ!』
『アルちゃん、分からないなら分からないって言った方がいいよ?』
『うっ!・・・分からないわよ…』
『じゃあ簡単に説明するね。』
カヨコはその巨人の話をした
曰く、廃墟のビルを拠点に構えるヘルメット団を制圧して配下にしている。*1
曰く、どれだけ攻撃しようとも傷一つ付かない鋼鉄の体。
曰く、その巨人は骨董品である蒸気機関で動いている。
曰く、疲れ知らずでブラックマーケットを走り回り、休んでいる所を見ていない。
曰く、その巨体にも負けない程巨大な銃を所持している。
曰く、昨日起こった武器屋爆発事件の犯人の集中砲火を受けても構わず歩き、その巨大銃で犯人を撃ち倒し、剛腕で締め上げてマーケットガードに突き出している。*2
『と、こんな話がブラックマーケットで噂になっている『蒸気の巨人』の噂だけど…殆ど噂で信憑性もないし、さっき会った時に話したけどそんな事するようには…』
『・・・いい』
『社長?』
『カッコいいじゃない!!』
アルは目を輝かせながら叫んだ
『まずはチンピラに立場を弁えさせて!更には巨大な銃で武器屋を襲った不届者を黙らせる!!最高にアウトローじゃない!!こんな近くに最高のアウトローが居たなんて!!』
『あの、社長?』
すっかり噂を信じ込み、自分の世界に入ってしまったアルを元に戻す為にこれは殆ど噂で信憑性なんてカス程もない事を言おうとするが。
『シィー、面白そうだからまたその巨人に会える時まで黙ってよう?』
ムツキのイタズラ心により止められてしまう
『あぁ…引っ越す前に挨拶したかったわ・・・』
『アルちゃん残念♪まぁまた何処かで会えるんじゃない?ホラホラ、挨拶も良いけどまずは荷造りしよ?』
『そ、そうね、早く荷造りしないと明日になっちゃうわ。』
そう言うとアルは荷造りを再開する、他のメンバーもアルの荷造りを手伝う為にアルの荷物に手をつけ始めた。するとメンバーの1人であるハルカがある荷物を見つける。
『・・・?アル様?これは何のDVDなんですか?』
ハルカの手にはケースに入ったダビング用の白いDVDが握られており、タイトルと思われる部分には『布教用』とだけ書いてあった。
『あぁ、そのDVDがさっき言ってた懐かしい物よ。』
『ふーん?布教用って書いてあるけど中身はなんなのアルちゃん?』
『古い子供向けアニメよ、でも子供向けだからと言っても侮れないわ!!そのアニメには友情!裏切り!別れ!感動!そしてなんと言っても『夢』と『浪漫』があるわ!特に私が好きなシーンは第10話で、敵のロボットの卑劣な罠に嵌められた主人公を助ける為に、相棒のロボットが体が壊れて内部パーツまで傷ついても主人公への愛と『蒸気』で仲間の助けが来るまで守り切ったシーン!あのシーンを初めて見た時はもう私泣いて泣いて!!』
『ちょ!ちょっとアルちゃんストップ!ストップ!!このDVDに入っているアニメが良いのは分かったから落ち着いて!!』
『ハッ!!私ったらごめんなさい、ついこのアニメになると口が動いてしまうわ…まぁとにかくとても良いアニメよ。良かったら次の引越し先で皆んなで観ましょう?』
『はっ、はい!もちろんですアル様!!』
『…社長、そのDVDは布教用なんだよね、誰かに貰ったの?』
『えぇ、あれは私が中学3年だった時…ゲヘナの街を歩いてたら不良に絡まれてね…その時にある人が助けてくれたの。』
『中学生にお金をたかるなんて、『夢』も『浪漫』もない事よくやるね?そんなにお金が欲しいなら鉛玉なら出すよ?奮発してマガジン全弾、どう?』
『そう言ってその人はまるで赤子の手を捻るように不良をやっつけて私を助けてくれたの、しかも私を気遣って近くの公園で私が落ち着くまで一緒に居てくれてね、とっても嬉しかったわ。』
そう言うアルの目はとても優しい目をしていた。
『その時の話題で好きなアニメの話になってこのDVDを渡されたの、その人もさっきの私みたいに興奮しながら好きな回の話をしてね、不良を簡単にやっつけたかっこよさと興奮しながら好きな回を語るギャップになんだか可笑しくて笑ったのを今でも覚えてるわ。』
『へぇ、アルちゃんのそんな話初めて聞いたなぁ、所でその人は何処の学園の人だったの?』
『それが・・・分からないの。』
『分からない?』
『その人は制服じゃなくて私服を着ていて、学生証も着けて無かったから何処の学園の人か分からないの、分かるのは歳上なのと『名前』だけで…』
『どんな名前だったの?』
『三船イルカって名乗っていたわ』
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ブラックマーケット 廃ビル
『ただいま!』
『お帰りなさいアニキ!』
『『『『お帰りなさい!』』』』
『いやぁ今日も働いたわぁ・・・けどそのおかげで旅の資金が溜まってきたなぁ。』
『もうすぐ旅に出るんですか?』
『もうちょっとお金を貯めたら旅に出ようかなって、いやぁ、お世話になりっぱなしでごめんね?』
『いやいや!そんな事無いですよ!アニキが来てから私達ゴーゴーヘルメット団はとっても賑やかになって楽しくなったんですから!!』
『うぅ!アニキがもうすぐここを出ていっちゃうんですね!送別会うんと豪華にしないと!!』
『いやいや、別に手を振ってバイバイだけでいいから、そんな送別会なんて…』
その時、廃ビルの入り口に人影が現れた。それはいつも配達ですれ違うガードさんだった。
『おぉ良かった。いたんだなアイオロス、遅くなったけど金が出たから渡しに来たでぇ?』
『ヒィ!マーケットガード!?』
『ワ、私たちは何の問題も起こしてないよ!!』
『あー、落ち着け落ち着け、別にお前達が穏健派で問題をあんまり起こさないのは知ってるから、別に捕まえに来た訳じゃないからな?なっ?
ガードさんはそう言いながら分厚い茶封筒を渡してきた。
『えっ?こんなにお金が出たんですか?』
『いやぁ、あいつら結構重大な情報を持っていてな?かなりの額になっちゃったよ。』
『うわぁ、こんな分厚いお金の束見た事無いですよ。』
『それじゃあ俺はパトロールに戻るからな、ほなバイバーイ。』
そう言いながらガードさんはパトロールに戻った・・・気のせいならいいけどなんだか顔色が悪かったような…いやロボに顔色って…
『す、凄いお金ですねアニキ!何に使うんですか?』
『あぁ、使わないよ?これは武器屋の店長に渡す予定のお金だから・・・あれ?リーダー?』
『や!やっぱりアニキは凄い!!』
『え?』
いきなりリーダーが興奮しながら叫んだ
『こんな大金を貰っても家を失った武器屋の店長の為に何の未練も無くポンと全額渡すなんて!!やっぱりアニキは凄い!!』
『『『『『ア!ニ!キ!ア!ニ!キ!』』』』』
『いやいやいやいや!!これはただ単に俺が使う必要が無いと思っただけで!!』
『うぉぉぉ!!なんて謙虚なんですかアニキィ!!旅に出てもアニキの事を誇りに思いますぅ!!』
『『『『『ア!ニ!キ!ア!ニ!キ!』』』』』
『あぁ…もう勝手にしてくれ…』
アイオロスの顔はまるでFXでお金を溶かしたように無であった。
スチームパンク…スチームパンクがテーマの作品が少ないぃ…