ワールドライブ・リベンジ ~元ラスボス×負けヒロイン、光の主人公にリベンジします~   作:ウロコノ人

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とりあえず様子見お試し短編


第一話 『第一部ラスボス』ぐらいではあった人

 

第1回町内会ワールドライブコンテスト少年の部、優勝。

第6回全国ワールドライブ選手権大会中学の部西東京予選、優勝。

第6回全国ワールドライブ選手権大会中学の部関東地区予選、優勝。

第6回全国ワールドライブ選手権大会中学の部、優勝。

ワールドライブ"無能"倶楽部第一回懇親カスタム、優勝。

第7回全国ワールドライブ選手権大会中学の部西東京予選、優勝。

第7回全国ワールドライブ選手権大会中学の部関東地区予選、優勝。

 

第7回全国ワールドライブ選手権大会中学の部、"準"────

 

 

「ふぐ、ふぅ……! ふぅぅおおぉぉぉ…っくふっ…うううううおぉおぉぉぉぁあぁあぁぁぁあ……!」

 

 

うっかりと、記憶の底の禁断の扉に手がかかってしまった俺は、奇声を上げながら頭を抱えかぶりを振ってことなきを得る。

 

……ふう、危ない危ない。

過去の栄光がリストアップされたこれは、この世で俺しか唱えられない(唱えない)だろう心身調整の呪文だが。

気が乗って最新の大会結果までいってしまうと、途端に1D70ぐらいの正気度チェックが入るもろ刃の剣だ。

というか今の時点で、人に見られてたらだいぶアウトな絵面ではあったので、自室で一人であったのは幸いと言えるだろう。

 

『ワールドライブ』。

 

VR技術の隆盛が進みに進んだ日本で生まれたこのゲームは、理想の仮想体で実際に動いているかのように遊べる、と出た当初から一定の人気を博してはいた。

が、未だ解明されきっていない脳の変なところでも押されたのか、仮想体で火を操ったり空を飛んだり、果ては竜に変身したりといった姿が配信に映った日にはもう大変。

ゲーム側から一括で与えられた能力でなく、個人個人の適性で不思議な能力が開花した者。

彼らは「WD(ワールドライブ)適合者」とされ、そんな彼らの力比べは安全性と派手さを両立した人気スポーツとして、瞬く間に地位を確立させた。

 

そして俺、歩村 真麻(あゆむらまお)はそんなワールドライブで勝ってきた。それはもう勝ち続けてきた。

天才、絶対王者、神童……そんな褒め言葉など、ネットメディアでいくつもらったか分からない。

 

まあ、その中にあって一つ、『ラスボス』という謳い文句には、個人的には待ったをかけたくもなったが。

何しろラスボスなんて所詮敵側で、大抵のマンガだと最後はやられるためにあるような存在だ。

この先も勝ち続ける者を称える言葉としては相応しくない、それならば『主人公』と言ってほしいね。

……なんて、大真面目にそんなことを考えられる程度には、自分を疑っていなかった俺は。

 

 

中学二年で出た全国大会決勝で、本物の主人公様にボコボコにされた。

 

 

名を天音 久星(あまねくほし)と言う、恥ずかしげもなく光の剣なんてもので戦う、同い年の銀髪の女の子。

まさに輝く星のような明るい雰囲気と、いくつもの挫折を糧に這い上がってきた芯の強さみたいなのも感じさせる、王道の主人公。

 

そんな相手にめちゃくちゃ頑張って、追い詰めたっぽい雰囲気を出したまでは良かった。

謎の光に包まれて起き上がったかと思ったら、死ぬ気で与えたダメージも全快していて、なんかしらんけど服装まで変わってて。

最後はそんなん今までなかったやん、って出力のビームみたいなので薙ぎ払われて、俺は予定調和のように地に伏した。

必死なあまり聞こえなかったが、もしかしたら挿入歌とかも流れていたのかもしれない。

 

そして、ただの負け役ならそれでキレイに終えられてまだ良かったのかもしれない、が。

下手に致命傷を避けてしまったのが最悪だった。

 

どうしようもなくなった俺は、悔しすぎて、ショックすぎて、負けたくなさすぎて。

何よりあまりにもあまりな理不尽さに、脳がオーバーヒートして。

 

「ふぅっ……んぐぅっ! うんんぶぅぅううううッッ! んぬあぁぁぁあああああッッ!!!」

 

倒れたまま顔だけ見上げ、ボロ泣きした。

全国のワールドライブプレイヤーが注目している前で、生中継のカメラの前で。

ラスボスと称えられた男は、涙とよだれをまき散らして駄々をこねるように泣いた。

涙で滲んだまま見上げた対戦相手の表情は見えなかったが、正直見えなくてまだ良かったと思っている。

 

そうして泣いたあと、最後はどうなったか覚えていないが、負けたことだけは確かで。

これまで持ち上げていたネットメディアは、なんとか美談っぽくしようと『男泣き』だとか『ラスボス、勝利にかけた執念とプライド』みたいな見出しで頑張ってくれてはいたが、擁護されるのもそれはそれで辛くて。

 

後日、なんとか気を紛らわせようと掲示板を覗いてみたら、自分の名前のスレッドが複数立っていたのを目撃した。

やめとけばいいのに覗いてしまった俺は、ドアップで中継された自分の泣き顔や叫び顔が画像素材になって遊ばれていたことを知る。

特に叫んだ時の顔や角度が、今日(こんにち)まで脈々と受け継がれてきた『日本独自のインターネット文化』に通じるモノがあると、めでたくファミリー入りまでしていた。

何の話をしているかよく分からないという人は、そのままでいたほうがいいだろう。

 

そしてそれを見た俺は……「中学生素材にしてんのやばすぎだろ」と。

なんかもう逆に面白くなってしまい、久しぶりに笑った。

 

笑ったテンションのままスレに混じって一緒に騒いで、なんなら歩村 真麻を叩くレスまでつけていた。多分どうにかなっていたんだと思う。

 

そのまま自分も加担したスレッドは盛り上がり、上限の1000レスまで行って落ちて。

 

「はー、笑った笑った」なんて人心地ついて伸びをした俺は。

 

 

引退()めよ」

 

 

折れちゃった。

 

 

負けることで完成したワールドライブのラスボスは、人知れず、自分のクソスレが落ちると同時に滅んだのだ。

 

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