ウマ娘SS集   作:SS制作マシーン

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丁度開催された、アグネスタキオンの因子研究&“あっち側”のウマ娘達が秘密裏に集まる幹部会的なの見たい……&生徒会のメンツがずっと変わらないことにいつか踏み込んでしまいそうだな。
というレスが元になっています。


アグネスタキオンは記さない

 アグネスタキオンとマンハッタンカフェの教室と言えば、普段立ち入る者が片手の指で数えられる場所だ。一方は実験狂いのマッドであり、一方は心霊専門のオカルト屋となれば近づくことに勇気が必要となるのも理解できるだろう。

 それでも最近は相談事を持ち込む生徒が増え、以前よりは人気が増え始めている。意外なことにタキオンもカフェも人付き合いが苦手ではないため、リピーターや噂を聞いてくる生徒が繰り返し訪れていることも来客が増える要因の一つだ。

 そしてそんな教室に、多くのトレーナーが押し寄せる日がやってきた。

 

「タキオン、俺の担当のデータだ!」

「名前を書いてそこに置いておいてくれたまえ!

 わかっているとは思うが、順番を飛ばしたり書類を崩したりすれば最後に回すよ!」

「タキオン、今回は専門書を頼む!」

「まだデータが足りないから、担当の練習を記録してきてくれたまえ!」

「タキオン、因子研究のレポートはまだ仕上がらないのか!?」

「どさくさに紛れてもデータ量はおまけしないよ!

 きちんと担当のデータをそろえてから来たまえ!」

 

 トレーナーが室内に駆け込んで書類を指定の位置へ置いたかと思えば、タキオンと二言三言だけ言葉を交わしてすぐに退室する。中にはタキオンの指示に従ってなんらかの物品を持って出ていく者もいるが、全体から見ればごくわずかだ。

 

「タキオンさん、ここ数日間トレーナーさんたちが途絶えませんが」

「すまないが今しかできないものなんだ、大目に見てやってくれないかい?」

 

 遠回しに告げられた苦情を、原因はトレーナーたちだと切り捨てるタキオンにカフェは大きな溜息をついた。

 そうしている間にも書類の標高は高さを増し、タキオンは眼前の書類に情報を書き込み続けている。

 

「まったく、ひとつひとつはそう長くかからないとはいえ流石に手が足りないねぇ!」

「私は手伝いませんからね。自業自得とは言いませんけど、原因は少なからず自分にあるということを自覚してください。

 頼られたからといって、全て引き受けていてはこうなると目に見えていたでしょうに」

「わかっているよ。とはいえこちらを頼ってきた相手を突き放すのも後味が悪いじゃないか」

「……」

「どうしたんだい?」

「変わりましたね、タキオンさん」

「?」

「タキオン、これが今回の分だ!」

「ああ、これなら時計を渡せるよ!」

「そうか、1つ貰うぞ!」

 

 微笑むカフェに、疑問符を浮かべるタキオン。そうしている間にも、トレーナーたちはひっきりなしにやってきては資料を置きその内数人は物品をもって退室する。その処理の間に、タキオンはカフェとのやり取りを忘れてしまった。

 

 

 

 数時間後。夕焼けが照らす教室で、タキオンとカフェはゆっくりとカップを傾けていた。

 

「いやあ、とりあえず一区切りついたね。明日のことを考えると今から頭が痛いが」

「ずいぶんと人が来ていましたが、何を置いていっているんです?」

「これは、各担当バの練習データさ。個々人のデータを私に提供する代わりに、私なりの練習理論を書いたレポートを渡すというシステムになっているんだ。

 情報の精度や量に応じて、便利グッズやちょっとした小物にも交換可能だよ」

 

 そう語るタキオンは得意気に、先ほど書き上げたレポートの束をばさりと仰いだ。興味を惹かれたカフェが視線を向けると、そそくさと表面を隠しクリアファイルへと仕舞いこむ。

 

「すまないが、流石に個人情報が多分に含まれる文章だ。競技者として知られては致命的なデータもあるし、いくら君とはいえ見せるわけにはいかないね」

「ああ、すいません。流石に不作法でした」

 

 ちょっとした好奇心で覗き込もうとしたカフェだったが、タキオンの一言に素直に謝罪を述べた。

 何とも言えない沈黙が場を満たす中、突然教室の扉が開かれた。

 

「タキオン、いるんだろ?」

「おじゃましまーす☆」

 

 やや厳しい表情をしたゴールドシップと、いつも通りぺかっとした笑顔のマーベラスサンデーが教室へと入ってきた。

 

「なんだい乱暴な。なにかあったのかな?」

「あーなるほど。こりゃ経験不足だな。

 マベさんや、係数はどんなもんよ?」

「うーん、まだ許容範囲内だね。私たちが手を出すとかえって変になっちゃうかも?」

「あの、何の話でしょうか?」

 

 困惑するタキオンとカフェを置いて、闖入者の2人は話を進めていく。

 

「じゃあとりあえず自力で何とかさせた方がいいか。経験にもなるしな」

「そうだね。でも、何かあったらすぐ連絡ちょーだいね?

 マーベラスが苦手なのは知ってるけど、何事も早い方がやりやすいからね☆」

「あいよ。好みの問題でグダグダ文句言うような餓鬼じゃないから安心しろって。

 じゃ、何事もなく終わらせるから安心してマーベラスしてな」

「じゃ、頑張ってね!

 マーベラース!」

 

 謎の会話を済ませた2人はにこやかに手を振り合い、マーベラスサンデーは教室を後にした。残されたゴールドシップはふざけた調子を崩さず、タキオンへしなだれかかる。

 

「さてタキオンさんや、ちょっと話があるんだが。申し訳ないんだけど、お顔を貸してもらえませんこと?」

「なんだいゴールドシップくん。私は研究レポートの下準備で忙しいんだ。今も貴重な時間を割いて休憩中なんだが、また後日というわけにはいかないのかい?」

「それがけっこー切羽詰まった話になっててな。ほら、コーヒー豆の焙煎時間くらいには重要な話なんだなこれが。

 コーヒー好きならわかるだろカフェさんよ、この重要性がさ」

 

 キメ顔で頓珍漢な例えを披露したゴールドシップに、タキオンはあきれ顔を隠せない。

 

「ゴールドシップくん、いくらなんでもその例えはないんじゃないかい?

 なあカフェ、なにか言ってやりたまえよ」

「……」

 

 大ぶりに手を振って発言を促すタキオンだったが、カフェの反応がない。

 

「カフェ?」

「わかりましたゴールドシップさん、それほど重要な話なんですね?」

「えーっ!?」

 

 予想外の答えに、思わずタキオンはカフェの両肩を掴んだ。

 

「ちょっと待ちたまえよカフェ、なんだいその異様な物分かりの良さは!」

「いえ、豆の焙煎はコーヒーの命ともいえる重要な工程ですから。それに例えるとなれば、よほど重要な話なんだというのはすぐにわかりますよ」

「いやいや、そこじゃないだろう!」

「タキオンさんにわかりやすく言えば、紅茶の蒸らし時間と同じほどに重要だと言えばわかりやすいでしょうか?」

「例えがわかりずらいという話はしていないだろう、たしかに紅茶にとって蒸らし時間は重要だけれども!

 何か反応がおかしいぞ、変なものでも食べたのかい!?」

 

 友人の気が狂ったような反応にタキオンは取り乱すが、カフェは素知らぬ顔で荷物をまとめる。

 

「それでは、無関係の私がいては話しにくいこともあるでしょう。

 私はここで失礼します」

 

 そう言い残し、振り返りもせずに去っていった。

 

「……」

「あー……とりあえず本題に入ってもいいか?」

「いいわけないだろう、カフェがどうにかしてしまったんだぞ!」

「落ち着けタキオン、あれはたぶん防衛反応だ。それと例のお友だちとやらの干渉が合わさった結果だな」

「干渉、だって?」

 

 異常状態に慌てるタキオンだったが、ゴールドシップの指摘に動きを止めた。

 

「ああ。耳が異常に動いていたし、服の端が不自然によじれてたからな。

 たぶんだけど、あたしらに気取られないようにと警告と速やかな退室を促されてたんだと思うぜ。

 大切にされてるな、ほんとに」

「ゴールドシップくん?」

 

 どこか眩しそうな表情で呟くゴールドシップへタキオンがおそるおそる声をかけると、僅かにはっとしたような反応の直後強引に彼女はタキオンと肩を組んだ。

 

「まあとりあえずカフェの話は置いておいてだ。

 タキオンよ。今日の騒ぎはなにかおかしいと思わないか?」

「なんだいゴールドシップくん。なにかって、もっと明確に言ってくれないと困るよ」

「経験と警戒が足りないぜ、タキオン博士」

 

 疑問符を浮かべるタキオンに、ゴールドシップは笑いながらチョコ菓子を手渡した。

 

「疲れて頭が回ってないのかもしれんけど、少し状態を確認した方がいいぜ。少なくとも、普段のあんたならこの状況を見逃すってことはなかったはずだ」

「状態の確認って、いったい何の話をしているんだい?」

「まーだ自覚無しかい。ま、こればっかりは経験を積まないとどうにもならないもんだから文句も言いにくいな。

 ほれ、この書類見てみ?」

 

 差し出された書類には、タキオンのレポートを利用するトレーナーの人数が記載されていた。

 

「これがどうかしたのかい?」

「考えてみろ、中央トレセンのトレーナー数を超えてるじゃねーか。流石におかしいとは思わないのか?

 そもそも、書かれたレポートを連中は何に使ってるんだ。説明できるのか?」

「何に使ってるって、それは……」

 

 タキオンの言葉が止まった。

 

「たしかに、なにに使うっていうんだ。たかが一学生が書いたレポートをトレーニングに利用する?

 ばかな。もっと有用な論文や資料がこの学園には溢れている。それに、何故私はそんなレポートを書けるんだ。1人のトレーニング理論を構築するのだって、大量の資料とデータの洗い出しが必要なんだぞ。しかもつきっきりでだ!」

 

 一度違和感を覚えると、次々と異常性に気がついていく。なぜ自分がこんな簡単なことを見過ごしていたのかがわからないほどだ。

 

「ま、手助けありでも理解したんなら合格ラインだな。

 ほれ、とりあえず部屋から出るぞ」

 

 ゴールドシップに背を押されながら、事態を呑み込みきれていないタキオンは教室の外へと移動する。

 

「じゃ、ちょっと待ってろよ」

 

 そう言って扉は閉められ、間を置かずに再び開かれた。

 

「済んだぞ。ほれ、入りな」

 

 招き入れられた室内は、普段と何も変わらなかった。

 

「……ちょっと待ちたまえ、あの大量の書類はどこに行ったんだい?」

 

 まるで今日一日の作業などなかったかのように、室内は普段の様相を呈していた。

 

「ゴルシちゃんにかかればぱぱっとよ。

 別の世界がちと影響してたみたいだったぜ。便利屋も大変だな」

「何が便利屋なのかは知らないが、今回は助かったよ。

 しかし私が渦中になるとはね。オペラオーくんのとき、私たちのような存在は解決時以外に事件には巻き込まれないというような趣旨の発言をしなかったかい?」

「あれは巻き込まれても影響が出る前に内々で処理できるってだけさ。

 天気予報士だってにわか雨には濡れるもんだろ?」

「むう、納得できるようなできないような……」

 

 眉を顰めるタキオンの背を、ゴールドシップは快活に笑いながらバシバシと叩いた。

 

「あたしらのメンバーは、いざ巻き込まれても即座に解決できるってのが条件みたいなところもあるんだ。

 ま、こればっかりは経験がものを言うからな、そのうちできるようになるってもんよ。対応できなければ、できるメンツに即連絡すれば結果は同じだしな。

 今後はなんか違和感があったら対応してみるってのも重要だぜ?」

「なるほど、今回の私のように気がつかづにそのまま行動してしまうようではまだまだということか」

 

 鬱陶しそうにゴールドシップの手を払いのけながら、タキオンは吐き捨てるように呟いた。自らと眼前の存在の間にある距離を実感して、心安らかにいられるような者は競技者として失格だ。

 苛立ちのままに、以前にあった事柄についての文句をぶつける。

 

「そういえば、フクキタルくんの件の後に行ったカラオケ大会。参加メンバーが私の知る3人しかいなかったのはどういうことだい?

 どんなメンバーが所属しているのか、けっこう楽しみだったんだけどね」

「タキオン、あんな急に決まった予定に全員が合わせられるわけないだろ?

 個々の用事だってあるんだぜ?」

 

 ゴールドシップに常識的な返答をされ、どこか屈辱的な気分を味わう羽目になったタキオン。

 

「今度は、所属している全員とコンタクトをとれるようにしてもらえると嬉しいね」

「ああ、できるだけ予定の調整をするよう言っておくさ」

 

 今度こそ全員の顔を拝んでやると気炎を吐く研究者。その様子をゴールドシップが楽しそうに見つめていることに気がつかなかったのは、彼女の精神衛生上幸運だったといえるかもしれない。

 

 

 

 誰も利用していないはずの会議室で、5人のウマ娘が机を囲んでいた。僅かに薄暗い室内の印象とは裏腹に、漂う空気は軽いものだ。

 

「とりあえず、今回の異常は収まったぜ。すこしばかり染み出してきた程度だったから、今後影響は無いだろ」

 

 軽い口調で報告するゴールドシップに、マーベラスサンデーが割り込んだ。

 

「結局呼んでくれなかった!

 1人で解決しようとするのはマーベラスじゃないよ?」

「そう言うなよマーベラスサンデー。ゴールドシップにも考えがあんだろ?」

「ありがとよエアシャカール。

 今回はほっといても収まる程度の規模だってネオユニヴァースから聞いてたから、経験としてタキオンにぶつけるには丁度良かったんだよ」

 

 エアシャカールの援護射撃を受けたゴールドシップは、ここぞとばかりにマーベラスサンデーへ言い訳を開始する。

 

「ほんとーに?

 最近ゴールドシップさん私に話を回してこないから嫌われてるのかと思ってたよ?」

「いやマジだって拗ねるなよ!

 ネオユニヴァース、言ってやってくれよ!」

「ゴールドシップの話は“トゥルース”だよ。あれは放置しても、一週間もあれば消失する規模だった」

「ネオユニヴァースが言うなら危険性はなかったにしてもだ。その規模とはいえ、悪化すればどうなるかわかったもんじゃねーだろ?

 人員補充を急ぐ理由があるわけでもない、もっと安全な方法がとれたんじゃねーのか?」

 

 エアシャカールの疑問に、ゴールドシップは手を宙で遊ばせながら答えた。

 

「とっととこっちに引き込みたいってのが本音だな。理由はわかんねーけど、ちと歪みに対して引き付ける力が強い。

 ある程度教えるなり経験を積ませるなりしないと、デカいヤマが来そうでな」

「やめろよ、そういう連中一本釣りするの。お前のその手の感覚はロジカルじゃないのにだいたい当たるから面倒なんだよ!」

 

 エアシャカールの悲鳴にも近い叫びを最後に、その場の全員が沈黙を選択した。話すべきことがなくなったのだ。

 

「議論百出、意見交流は十分できたようだね。それでは、内容の精査に入ろうか」

 

 残っていた最後の1人、シンボリルドルフが口を開く。生徒会会長として、いや、それ以上の威厳を発する7冠バに、場に並ぶ癖ウマたちも背筋を伸ばし視線を合わせた。

 

「ネオユニヴァース、今回のアグネスタキオン異変は最悪の場合どんな状態になっていた?」

「“アンサー”としては因子レポート提供が恒常的に、あるいは断続的に開催される形になっていたね。あくまでも余剰の影響だから、そうなったとしてもある程度簡単に『対応』できたはずだよ」

「ありがとう。

 マーベラスサンデー、今回はゴールドシップが強制的な剥離を行ったが、今後あの教室内に影響は出るかな?」

「もともと変な位相の教室だから、そこまで大きな異常は出ないと思うよ。影響があったとしても、ちょっとアグネスタキオンさんに相談事が流れやすくなるくらいかな?」

「留意しよう。

 エアシャカール、直近の異変関係者の予後はどうなっている?」

「ああ、特に大きな後遺症は無しだ。計器を通しても心理的観察でも異常は見られなかった。

 だがマチカネフクキタルの占いだけは影響が抜け切れてないな。ゴールドシップの読み通り、個人の才覚に関係してるから止めようがない。こっちに引き込んじまうのも手かもな」

「検討しよう。

 さてゴールドシップ、あまり偉そうなことは言いたくないが、アグネスタキオンは我らに加わるに足るかな?」

 

 各ウマ娘とやり取りを終え、シンボリルドルフはゴールドシップと向き合った。目の光は鋭く、偽りは許さないと言わんばかりだ。

 一流のウマ娘ですら委縮するであろう圧を受けたゴールドシップは、しかしニカリと笑った。

 

「まだ加えるには経験も技量も足りないけど、繋がりを持つには十分すぎると思うぜ。引き込んでから少しずつ鍛えていくのも、前例がないわけじゃねーしな」

 

 ゴールドシップの回答に、シンボリルドルフは両目を閉じた。僅かな沈黙の後にその目は開かれ、口元は弧を描いている。

 

「君がそう言うのなら、彼女にはそれに足る何かがあるのだろう」

「そーやってあたしが言ってるからって理由で決めるのよくないと思うぜ?」

「この場で一番の古株を尊重せずに、誰の意見を聞き入れればいいんだい?

 一日之長、経験者は参照にされるべきだと私は思うよ」

「それ言うなっての。あたしがおばさんみたいじゃんか」

 

 ウィンクと共に告げられたシンボリルドルフの一言に、ゴールドシップは口をとがらせる。それを見て笑みをこぼしたシンボリルドルフは、咳払いをして居住まいを正した。

 

「さて、直近で差し迫った事象の確認は済んだと思う。なにかこの場で話しておきたいことはあるかな?」

「あ、じゃあタキオンからの伝言を1つ。

 せっかくのカラオケ大会だったのに、知った顔しかなくてがっかりしたから今度は全員参加希望だってさ」

 

 その報告を聞いたシンボリルドルフは、今度こそ笑いを抑えきれなかった。

 

「ハッハハハハハ!

 たしかに、前のカラオケは私とエアシャカールが所用で参加できなかったな。今度は予定を会わせるようにしようじゃないか!

 さて、愉快な報告を聞くことができたが他に連絡はないようだね。

 では解散、また次回に!」

 

 そう言い残し、シンボリルドルフは意気揚々と退室した。

 その後ろ姿を見ながら、残された4人はぽつりぽつりと話し始める。

 

「……久しぶりにあんな機嫌のいいルドルフを見たぜ」

「そうだね。もっと力があれば、あの人も“アノマリー”から出られるのかな」

「あのままっていうのはちょっとマーベラスじゃないよね」

「いつまであの人は、会長として縛られ続けるつもりなんだろうな」

 

 エアシャカールの疑問に、答えを持つ者は1人もいない。

 

「じゃあ、私はそろそろ帰るね。また今度!」

「ネオユニヴァースも“スリープ”だよ。またね」

「おう、いい夢見ろよ!」

「よく寝ろよ。睡眠はホメオスタシスの重要事項だからな」

 

 退室した不思議組を見送り、ゴールドシップとエアシャカールが室内に残された。

 

「なあ、ちょっと質問いいか?」

「あんだ、エアシャカールから私に質問なんて珍しいじゃねーの」

 

 疑問符を浮かべるゴールドシップをよそに、エアシャカールの口から、どこか物悲しい雰囲気をぶち壊す一言が零れ落ちた。

 

「お前の報告に爆笑してるような様子を普段から生徒に見せてれば、目指してる慕われる生徒会長とやらになれると思うのはオレだけか?」

「シャカールよ、傷つくだろうからそれ本人の前で絶対に言うなよ」

 

 会議室に残ったエアシャカールとゴールドシップの間で交わされた会話を聞いた場合、彼女がどんな気持ちになるか?

 それは誰にもわからない。

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