とあるロドスの日記帳   作:セニョール・大介

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レユニオン再び!

 

 

 

 ロドス最強決定戦が大盛況の末に閉幕し、運営のドクター、ケルシー、アーミヤは食堂の一部に集まり祭りを振り返っていた。

 

 

「…ん? あれ、スカジさんはどうしたんですか?」

 

 

 若きCEOの疑問は当然のことであった。なぜならスカジは発案者であり、ロドス最強決定戦の優勝者でもあったのでお祝いを兼ねて今回の振り返りをする予定だったからだ。しかし…

 

 

「ああ、スカジなら部屋に籠もっているよ」

「なぜです?」

「ん〜、ヴィネとの戦いの余韻に浸りたいんだって」

「?」

「私達は武人のように戦闘行為自体に意味を見出さないのでわからない感情ではあるが…、ラップランドが搦手に逃げ、チェンが純粋な打ち合いを拒否した中、ヴィネは唯一人真っ向勝負を選び、スカジの攻撃を真正面から受け止めた…。まあ、その結果が─」

「─左肩の脱臼、全身の筋肉痛、一部筋繊維の断裂などなど…、ボロボロだね」

 

 

 スピードスター同士の頂上決戦の第三回戦という名勝負の次に行われた準決勝。速度のヴィネと力のスカジと皆が予想していたところ、ヴィネがまさかまさかの不退転の姿勢。

 

 両者が剣を合わせる真っ向勝負となったが…

 

「─駄目だって! まじで規格外過ぎるって!」

「フフ。楽しいわね、ヴィネ」

「こっちは楽しくなんかねえってさぁッ!」

 

 誰がどう見ても非力なヴィネがスカジに必至に追い縋る。

 

 前の試合と並んで準決勝は今回のベストバウトと謳われる結果となった。

 

 

「まあ、自分を受け止めてくれる人(物理的に)が居て嬉しいんじゃない?」

「へぇ、そうなんですね」

 

 

──

 

 

 一方その頃、全身ぼろぼろなヴィネがロドスに休暇願を出し、国際トランスポーターとしての依頼を受けようとロドスから離れようとしていたところ─

 

「─ヴィネさん!? そんな状態でどこに行こうとしてるんですか?」

「大丈夫、肩が外れてるだけだから」

「それは大丈夫とはいいません!」

 

 

 ロドスの医療オペレーターの激しい足止めを食らっていた。いかにロドス最速といえどテラ屈指の医療から逃げ出すことは不可能だったらしい。

 

 

──

 

 

 そして自室に籠もったスカジは一人静かに思いを馳せていた。

 

 スカジとヴィネが出会ったのは二年ほど前の事。ロドスの同僚の代わりに参加したトーナメントでスカジはヴィネと初顔合わせを行った。

 

『ほい、受け取りな』

『衆人監視の中、堂々と賄賂? 肝が座っているのね』

『いや、お金が無いんだろう? そんな大きな穴があいたズボンを履いて』

 

 本人にそのつもりはなかったのだろうが、正面から煽られたのはそれが初めてだった。そして─

 

 

『─あっぶね!』

『…』

 

 陸上の人間に負けたのもそれが初めてだった。

 

 自分に初めてをくれた人。故にスカジはヴィネに執着する。だってヴィネは─

 

 

「─私の宝物だから」

 

 

 今日も唯一人だけ一切避けることなく、一切合切全てをぶつけに来た。シーボーン以外ではあり得なかったことだ。

 

「明日はきっといい日になるわ」

 

 さて、明日はどんな初めてをくれるのだろうか。

 

 

──

 

 数日後、執務室にはドクターと若きコータスの少女アーミヤが深刻そうな顔で顔を合わせていた。

 

 

「ウルサスのチョーリ・ルドナヤにレユニオンが?」

「はい。トランスポーターの皆さんに協力してもらったところ、レユニオンの次の目標はチョーリ・ルドナヤだと」

 

 

 ウルサス帝国の貴族ゲオルギー・スコベレフ伯爵が治める移動都市、チョーリ・ルドナヤ。この都市には大きな特徴を持っていた。

 

 

「感染者たちの都市、か…」

 

 

 住人の大半が感染者という特異な都市である。

 

 

──

 

 

「ねぇアーミヤ。このスコベレフ伯爵ってどんな人なの?」

「実際にお会いしたことがないので詳細は分かりませんが…、強烈な差別主義者です」

 

 

 チョーリ・ルドナヤはゲオルギー・スコベレフ伯爵がウルサス帝国の感染者対策を主題とした帝国議会にて提案したものである。公式資料として採られた議事録の一部を抜粋すると…

 

 

『臣はこの現状に心を痛めております。源石病に感染した、していないの差異あれど同じくウルサスの大地に住まうことに変わりはない。それなのに市井では差別が起きている。そこで臣は提案する。不幸にも感染した者を健全な精神、肉体を持つ者と隔離することを』

 

『都市内での感染の原因の一つは都市に住まう感染者である。感染者を都市から一掃することによって都市はその健全性を取り戻し、市井にも秩序と平穏が遍く広がる。同時に、都市に寄生していた感染者の一掃で問題となっていたスラム問題も多少の改善が期待ができる』

 

『また、感染したものを一箇所に集めていたほうが根絶が容易であり、複数地域での反抗も抑制できる』

 

『感染したものを都市に住まわせてやるといった寛大な処置を見せてやることで諸外国からくる陳情という名の下劣な、敗北主義的な甘言を一蹴することができる』

 

 

 といったことが書かれている。

 

 

「いやぁ、最初の部分だけ見ればまだ理解ができるんだけどねぇ」

「はい。感染者を各種問題の根源のように扱う言論には賛成できません」

 

 ここでドクターが一つの疑問に至る。

 

「…でも、この移動都市ってどうやって資金を拠出したんだろう。ロドス号とは違うとしても運営だけで一千万龍門弊はかかると思うんだけど」

 

 建設費、感染者の移住諸々にかかる費用もこれに合わさるので初期費用だけでその倍近い資金が必要だろう。

 

 ウルサス帝国は大国だが、国土には未開拓領土が点在し、他国との小競り合いやインフィ氷原から南下してくる脅威への対応などで国家運営に余裕はない。それにもかかわらず移動都市を用意したことには疑問が残る。

 

 

「それが…、採掘所をいくつか閉鎖し、そこに当てられていた費用をもって資金を確保した模様です」

「採掘所…、犯罪者、感染者たちを集めて強制労働させていた場所か」

「はい。一度採掘所を全て調査した結果、看守たちの非道な行為によって収容人数の大半が居なくなっている場所などが見つかり、とのことです」

 

 雪に囲われなんの娯楽もなく、なんの変化もない採掘所で精神をすり減らすのはなにも労働者だけではない。監視する側も…。

 

「…その看守たちは?」

「労働力を最適に扱わず、帝国の資源を無意味に浪費したと、多少の罰則が降りましたが…」

 

 一番重いものでも数年の禁固刑、軽いものでは軽い罰金だけで許されてしまった。感染者たちは数千人単位で殺されてしまったのに…。

 

「まあいい。じゃあ、その伯爵に会いに行って協力関係を築きに行きますか」

 

 気の進む進まないは関係ない。これ以上レユニオンが問題を起こし、感染者の立場を貶めないためにも悲劇は防がなければならないのだ。

 

──

 

「そういえばヴィネさんはどちらに?」

「ヴィネは…、あっ─」

 

『レユニオンから依頼が─』

 

「多分ウルサスにいる」

 

 

──

 

 

「…久しいな。アレクシ」

「ええ、そうですね、パトリオット」

 

 

 レユニオンの本拠地にてヴィネは今回の依頼主、パトリオットと顔を合わせていた。

 

 

「三年、ぶりか…。龍門、では、娘が、世話に、なった」

「ええ全く。氷漬けにされるところでしたよ」

「そうか、じゃじゃ馬、だからな」

 

 

 昔話、世間話に花を咲かせる二人。しかし忘れてはいけない。二人は相対する陣営に属しているのだ。いま本拠地にいるのがパトリオット麾下のものであったりが多数を占めているので大事にはなっていないが、メフィスト当たりに見つかってしまえば何かしら厄介なことになるのが目に見えている。

 

「本題に入りますが、今回のご要件は?」

 

 なのでさっさと本題に移ろうとする。

 

「まずは、感謝を。君と、再会し、タルラは、かつての、趣を、取り戻した」

「…」

「彼女は、変わった。理想を、求める、情熱に、満ちていた、彼女は、仄暗い、復讐の、炎に、囚われた」

 

 確かにそうだ。ヴィネの知る彼女は胃がもたれるくらいの理想主義者。環境のせいで少し排他的な部分もあったが、それでも感染者の楽園を求めて行動していた。感染者が傷つかないように、というのが彼女の原動力だったはず。だが今では国家に喧嘩を売り、同胞たちを死地に立たせ、同じく感染者のロドスの者さえも排除する暴君となった。

 

 …しかし、自分との再開でかつての趣を取り戻したというのはどういうことか。ヴィネは訝しんだ。

 

「君と、出会った、ことを、嬉しそうに、話して、いた。そして、初心を、取り戻した」

 

 

 パトリオットが言うには─

 

『─龍門への侵攻だが、これを取りやめる。我々はウルサス国内の感染者のほんの一握りしか救えていない。それなのに国外の者たちを救うなど片腹痛い。我々はウルサス内の感染者を救い、地に足をつけてから各国に手を伸ばす。幸いなことに、諸外国はウルサス帝国の内部のことだからと静観する構えだ。充分に勝機はある』

 

 

 とのこと。

 

 いや、それでも大国に喧嘩を売るのかよ。と、突っ込みたくなったのをヴィネはこらえて続きを促す。

 

 

「また、ロドス、にも言及、していた」

 

 

 曰く─

 

 

『ロドスなる存在は感染者にも関わらず、感染者差別蔓延る国家に迎合する態度を示している。これは感染者の明日を求めて戦う全ての感染者に対する裏切りであり、力を持ってこの下劣な者共に制裁を加えるものとする』

 

 

「…うちのCEOとかが聞いたら憤慨しそうなことですね。『感染者の立場を貶めているのはあなた達です』って」

「…本題に、入ろう。アレクシ、ゲオルギー、スコベレフの、逃走を、手引、してくれ」

「ッ!? まさかとは思いましたが、レユニオンの次なる目的はチョーリ・ルドナヤ! 感染者の街ですかッ!」

「そうだ」

「なぜッ? 感染者の街よりも採掘場で働かされている者たちの救出など、他にやるべきことがあるでしょう!」

「…」

「仮初とはいえ、街では安定した生活を送っているのです。その秩序をあえて破壊するなど、平時に乱を─」

「─アレクシ、君も、変わった。ロドスにて、多くを、経験、しただろう。しかし、君は、忘れている。非感染者が、与えた、秩序こそ、狂っている」

 

 

 感染者の街は安定している。感染者差別は起きないので大きな揉め事などは起きない。しかし─

 

 

「母と、離れ、離れの、子ども。その富の、大半を、失った大人。同じく、ウルサスに、根ざすにも、関わらず、感染者は、多くを、失う。これが、秩序か、これが、平穏か」

「…」

「なれば、その仮初は、狂っている」

「だから…、だから破壊するというのか。差別から隔離された地を再び表舞台へと引きずり出そうとするのかッ!?」

 

 ヴィネの叫びにパトリオットは答えない。

 

「なぜ、なぜ止めないのですかパトリオット!」

「…」

「なぜロドスを受け入れないのですかッ?」

「ロドスは、優れた、戦士だ。しかし、その理念は、受け入れ、難い」

「なぜです?」

「ここが、ウルサス、だからだ。話し合いも、協調も、この国では、意味が、ない。力こそが、道を、切り開く。それが、ウルサスだ」

 

 

 ウルサス帝国に根ざすものならば知っている。この国は戦争によって、力によって栄光を掴み、富を得てきた。

 

 他の国ではいざ知らず、そんな国で協調性、話し合いを旨とするロドスが先駆者となることはできない。だからこそ─

 

 

「ならば力で押し通す」

 

 

 流儀に沿って意見を通すだけのことだ。

 

 ヴィネは剣を引き抜き、パトリオットへその切っ先を向ける。

 

「ロドスは、力で、物事を、推し進める、ことを、否として、いるだろう?」

「ロドスの総意じゃない。あなたの依頼がレユニオンの総意ではなく、あなたの私情から来るもののように私の私情から来るものだ」

「力比べは、嫌いでは、ないな」

 

 

 その挑戦を、パトリオットは受け入れた。

 

 

──

 

 

「アーミヤ、伯爵にアポイントは?」

「取りました。歓迎するとのことです」

 

 

 ロドスの面々もウルサスのへと足を進める。役者は感染者の街へ集おうとしている。

 

 




 許してください。スカジさんの戦闘シーンが思い付かなかったんです。
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