とあるロドスの日記帳   作:セニョール・大介

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前回でエネルギーを消費し過ぎたのでかなり短めです。あと薄味。


番外編! アプローチ解禁?

 突然だが、このロドスにはある協定が存在する。『対象者保護協定』というものである。

 

 ロドス所属のオペレーターの半分以上が所属するこの協定。ロドスが製薬会社であるため、この協定は感染者のためのものだと勘違いされそうになる。しかし、その内実は全く異なる。

 

 対象者保護協定、別名『ヴィネ協定』。

 

 別名が表すようにロドス所属のオペレーター『ヴィネ』を対象とした協定なのだ。

 

 ヴィネに向けられる恋愛感情は複雑怪奇。カオスが煮詰まったようなドロドロな状態である。

 

 そんな中、各々が好き勝手にしてしまえば血を見ることは必至。そこでロドスの頭脳ケルシーは考えた。

 

『ヴィネのファンクラブみたいの作ればいいんじゃね?』

 

 というわけで出来たのがヴィネのストーカー倶楽部、もといヴィネ協定である。その内容は─

 

『汚すな』

 

『バレるな』

 

『秘密なし』

 

 簡単な話、ヴィネに過度なアプローチするな、協定の存在を感づかれるな、わかったことはすべて共有しろ。その三本の柱を掲げることでケルシーはロドスの秩序をギリギリ保っていたのだ。

 

 しかし、この協定には明確な欠落があえて設定されていた。それは─

 

 協定所属の人間はヴィネに過度なアプローチが出来ないが、ヴィネからアプローチされることは禁じていないことである。

 

 

──

 

 

 とは言っても、みんながみんな自分が結ばれたいので牽制し合ってしまう。なのでこの欠落は有名無実のようなものであった。だが─

 

 

 ─その均衡崩れたり。

 

 

 均衡を破ったのは、まさかまさかのハーモニー、グラニという二人のオペレーターである。

 

──

 

 

 ハーモニーはロドス所属ではあるが警戒対象である。ロドスの各員はそれとなく彼女と一歩退いた距離感でやり取りをしている。だからだろうか─

 

『ハーモニーさん、ちょっとヴィクトリアの地理で聞きたいことが─』

 

 ヴィネも同じだと思い、彼女に対する協定からの警戒がほかよりも薄かったのは。

 

 

──

 

「なにかしら? ヴィクトリアの地理ならホルンあたりに聞けばいいじゃない」

 

 彼女自身、自分の置かれている状況に疎いわけではなく、むしろ、明瞭に理解していたがためにヴィネにそっけない態度をとる。

 

 彼女が協定に参加したのは、ひとえに面白そうだったからである。どこよりも崇高な目標を掲げるロドス。しかし、その人員はどこよりも煩悩にまみれていた。

 

 ケルシーたちもそのようなハーモニーの心情を把握していたので対抗馬にはなり得ないと高を括っていた。だが、環境が人を形作る。

 

 協定の中で過ごしていくうちにハーモニーはヴィネに惹かれていく。

 

「いや…、ホルンさんはちょっと…」

 

『私は貴方のことを信じています。なので貴方も私のことを信じてください』

『…』

 

「違うんですよ…」

 

 だからホルンではなく、バクパイプではなく…。リードでもない自分を頼ってくれたことに優越感を感じていた。

 

「…貴方も色々大変そうね。ヴィクトリアは─」

 

 ヴィクトリア軍の元情報将校としての知識をフル活用し、ヴィネが喜びそうな情報を厳選した。その結果─

 

「─本当ですか? ハーモニーさんありがとうございます!」

「…///」

 

 

 ヴィネは大満足。感極まり、滅多に見せないスキンシップを行うほど。さらには─

 

 

「そうだ、一緒に行きません? やっぱり案内してもらえるとありがたいですし」

 

 本人にはその気がないのだろうがデートの約束まで取り付けた。

 

 

──

 

 

 続いてグラニ。彼女はハーモニーとは真逆。人懐っこく、愛想が良い。あのスカジさえもその人懐っこさの前に陥落したほど。なので協定内でもトップクラス(スカジ、ケルシー並)に警戒されていた。

 

 だが警戒をすればするほど、どこか安心感が生まれる。ここまで警戒しているし流石に、という油断。グラニはそこを見逃さなかった。

 

『あ…』

『?』

 

 話しかけようとして、止める。その行為自体は協定側からすれば不自然なことではないが、ヴィネからしたら不自然極まる。

 

 (ああ、人見知りな人なんだろうなぁ)

 

 と勘違いして、グラニに積極的に話しかけるようになり、関係が発展。グラニは今日における優位性を獲得した。

 

「そうだ。最近食堂でスイーツの新メニューが出たそうなんですけど、一緒に行きませんか?」

「わぁ、それ本当? いいね、行こう行こう!」

 

 普通のものが見れば微笑ましい光景。しかし─

 

 

「「…」」

 

 出し抜かれた協定側の人間から見れば悪夢のような光景である。

 

 

──

 

 

 二人がオペレーターを出し抜いたことにより協定には激震が走った。

 

『このまま足を引っ張り合っていたら二人に利するだけでは?』

 

 そのような考えが生まれたのをこちらも要警戒対象ケルシーは見逃さない。

 

 ロドスの安定のため、かつ自分が結ばれるための協定によって、却って自分の恋路を邪魔されていたケルシーが協定に提案する。

 

 

『来月一日より一ヶ月の間、ロドス艦内におけるヴィネへの接触を許可する』

 

 

 当然、出遅れ組は遅れを取り戻すために賛成。出し抜いた二人も堂々とイチャコラできると賛成。その結果が─

 

 

「「「…」」」

「え? なになに? なんで皆さん無言なんです?」

 

 ヴィネとその周りを囲む、同業者への敵意を一切隠そうともしないヤンデレオペレーターたちという地獄絵図である。

 

 

──

 

 

「全くもう。君たちは何やってるの?」

 

 ヴィネを囲んでいたオペレーターズはドクターによって解散させられる。

 

 協定に属してはいないドクターだが、そこはロドスの頭脳その二。ケルシーの案を更に改良することで事態の収束を図る。

 

 

『くじ引きであたりを引いた者が一日だけヴィネにアプローチを仕掛けて良し』

 

 

ドクターが提案した「一日アプローチくじ引きシステム」は、ロドス艦内に衝撃をもたらした。ケルシーの提案した「接触解禁」案が生み出した混沌を収めるため、ドクターが採用したこのアイデアは、ある意味で革命的だった。

 

──公平性を保ちつつ、ヴィネに近づける。

 

オペレーターたちは、この絶妙なバランスに不承不承ながらも従うことにした。だが、その実態は――更なる混乱の幕開けでしかなかった。 

 

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