とあるロドスの日記帳   作:セニョール・大介

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番外編! 続いてのアプローチ

 ロドス所属オペレーターのグラニは日々忙しなく働いている。誰に頼まれるでもなくロドスの見回りをし、周辺地域の防衛協力などの仕事も自発的に受けている。

 

 その姿を見た大体のオペレーターはグラニを働き者と見做し、彼女はすごいと称賛する。

 

 しかし、それは彼女の一部分を切り取っているだけに過ぎない。

 

──

 

 ロドスの廊下を歩くヴィネは、少し前にドクターやケルシーとの打ち合わせを終えたところだった。

 国際トランスポーターの仕事の関係でシフトの変更の必要が出たのでその打ち合わせ。その打ち合わせ自体はすぐ終わったのだが─

 

「手が止まっているぞ」

 

 頭を撫でるのを強要する医者に─

 

「…」

 

 笑顔でじっとヴィネを見つめる医者によって思ったより時間がかかってしまった。そんな時─

 

「─あ! 奇遇だね!」

 

 偶然、軽快な声とともに、明るい笑顔を浮かべたグラニが近づいてきた。

 

「あ、グラニさん。パトロールですか?」

 

 ヴィネは穏やかに挨拶を返すと─

 

「そっか、ヴィネもお仕事終わり? 大変だね~」

 

 グラニは柔らかな笑顔を浮かべながら、何気ない会話を続ける。

 

 だがその裏では――

 

(……誰と話してたのかな? ケルシー先生と……ドクター? それなら大丈夫……?)

 

 彼女の笑顔の奥では、ヴィネが誰と何をしていたのかを必死に推測する思考が渦巻いていた。

 

「……グラニさん?」

 

「あっ、ごめんごめん! ちょっとボーっとしてた」

 

 彼女は笑顔でごまかし、その場を穏やかにやり過ごした。

 

──

 

 高難易度任務を終え、少し疲れた表情でロドスに戻ってきたヴィネ。

 彼はドクターの指揮のもと、民間人の護衛任務に就いていたのだが思ったよりも時間がかかってしまった。そんな時─

 

「─あ、ヴィネ~!」

 

 またしても廊下で、偶然パトロール中のグラニが近づいてきた。

 

「パトロールですか。お疲れ様です」

 

ヴィネが敬意を込めて声をかけると、グラニは嬉しそうに笑う。

 

「えへへ、ありがと~。でも、ヴィネもお疲れ様! 大変だったよね?」

 

彼女の目は一見いつも通りの親しみやすさを漂わせているようだったが、その奥では――。

 

(高難易度任務……誰と一緒だったんだろう? ドクターだけ? 他のオペレーターは?)

 

ふとした表情の隙間に、鋭い視線が忍び込む。

 

「また会おうね、ヴィネ!」

 

そう言って去っていくグラニの背中は、どこか不自然に軽快だった。

 

──

 

 

 ヴィネがヴィクトリアでのハーモニーとの自覚のないデートを終えて返ってくると─

 

 

「─ヴィネ?」

 

 普段とは少し違う、低く静かな声が響いた。

 

 目の前に立っていたのはグラニだった。

 彼女の瞳は薄暗く、ハイライトが消えている。

 

「あ、グラニさん……」

 

 ヴィネは少し驚きながらも挨拶を返す。

 

「どこ行ってたの?」

 

 その問いに込められた圧力に、ヴィネは僅かに息を呑む。

 

「ヴィクトリアの方へ……少し旅行を」

 

 その答えを聞いた瞬間、グラニの微笑みが僅かに歪んだ。

 

「……ホカノオンナノニオイ」

 

 低く囁くような声に、ヴィネは聞き返す。

 

「え?」

 

 だがグラニはすぐにいつもの調子を取り戻したように見えた。

 

「あっ、ごめんね! そっか、旅行か~。楽しかった?」

 

 表面上はいつも通りの明るい笑顔。だが、その目にはかすかに影が残っている。

 

(……ハーモニーだ。彼女と一緒だったんだね? どうしてそんなことするの? 私がいるのに……)

 

 

 

──

 

 まあ勿論、これらの出会いが偶然なはずがなく─

 

「ヴィネはこの時間帯はトレーニングルームだね…あと三十分もしたらシャワーを浴びに出てくるはず…」

 

 

 協定で規制されているラインを余裕で踏み越えた二十四時間体制の監視の賜物。そう、純真無垢、天真爛漫の彼女はもう居ない。いるのは…

 

 

「えへへ、ヴィネ旅に行きたいならボクに言ってくれれば良かったのに…。なんで他の女なんかと?」

 

 独占欲の塊である。

 

 

──

 

 

 そんな彼女は勿論くじ引きに参加する。初日こそ遅れを取ったものの─

 

 

「ケルシー先生がひいたのは偶然もあるけど、期待値とかを考えた位置取りをしていたから…」

 

 その勝因をつぶさに分析し、彼女なりの最適解を導く。

 

──

 

「じゃあ二日目ねー」

 

 ドクターの気の抜けた掛け声で始まる二日目の抽選会。グラニが選んだ場所は─

 

 

「グラニが先頭集団を譲った?」

 

 先頭集団から二十人ほど後ろ。しかし、ケルシーよりは前。

 

(ケルシー先生が外すのを期待しちゃだめ。ボクが先に決める)

 

 ケルシーは限界ギリギリまで確率を上げるために中盤以降に陣取っている。その後ろで、相手のミスを期待していてツキが回ってくるとは思えない。だからこそのケルシーの前。

 

 計算で可能な限りの差を埋め、後は自前の運次第。結果─

 

 

「─ッ! やったー!」

 

 グラニに軍配が上がる。

 

──

 

「あれ! 偶然だね、ヴィネ」

 

 いつも通り偶然を装って朝食を摂るヴィネのもとに現れるグラニ。

 

「この席いいかな?」

「あ、勿論ですよ」

 

 自然な流れで隣の席に座り込む。

 

 そして─

 

 

「あ、そのピザって?」

「はい、以前ヴィクトリアに訪れた際に買った小麦粉を使用して作ったやつです。一切れどうぞ」

「わー、ありがとう!」

 

 流れるような動作で─

 

「お返しにチキンのペルシャードをあげるね! はい!」

「…?」

「ほら、何してるの口を開けて?」

 

 カップルがするような行為にもっていく。このグラニ、やり手である。

 

「ありがとうございます。それで、ピザはどうでしたか?」

「すっごく美味しかったよ!」

「良かった。ハーモニーさんも美味しいと言ってくれましたけど、安心できました!」

「は?」

 

 グラニの声のトーンが下がる。心做しか目のハイライトも…。

 

「ねぇ、ヴィネ。今日は用事とかあるかな?」

「…、ありませんね」

「じゃあ、今日は─」

 

 

 

『デート』しようよ…

 

──

 

 

「ここがグラニさんの部屋…」

「ちょっと汚いかもだけど…」

「いやいや、そんなことありませんよ」

 

 苦節一年ちょっと、ついに俺にも春がやってきた。

 

 偶然朝食を一緒にする事になったグラニさんからデートのお誘いが来たんだ。ちょっと不穏な雰囲気を感じたけどそいつは気の所為だろう。

 

 

「ありがと。…はい、お菓子とか色々用意してあるから好きに食べてね」

「あ、ご丁寧にどうも」

 

 デートって言われたけどまさかのお部屋デートかぁ…。俺何にも知らないけど大丈夫かな。

 

 まあ、お言葉に甘えて一口─

 

「─ッ! 美味しい! とても美味しいですね、これ。グラニさん、これはどこで?」

「本当に!? 良かった、頑張ってつくった甲斐があるよ」

「手作りだったんですか?」

 

 まじで? 俺のピッツァよりも手間かかってるでしょ、これ。

 

 でも彼女の作った料理を味わう…、目指してきた夢の世界がここにある。感無量だ…

 

「じゃあヴィネ、今度一緒に料理しようよ」

「しますします!」

 

 いやあ、このままの勢いで脱独身を…。

 

「…?」

 

 あれ、おかしいな…なんだか…眠気が……。

 

「ヴィネ?」

「グラニ…さん…」

 

 

 どうしてそんな満面の笑みを浮かべてるんです?

 

──

 

「寝ちゃったの、ヴィネ?」

 

 ヴィネは何も答えない。ただ規則正しい呼吸音が部屋に流れているだけ。

 

「フフ、ケルシー先生の薬に助けられることになるなんてね。ケルシー先生には感謝しなきゃ」

 

 別用途と偽って手に入れた睡眠薬がしっかり効いたようで安心するグラニ。

 

 眠っているヴィネをベッドに運び、横にさせる。

 

 ガチャリ─と部屋の鍵を締め、自身もベッドへダイブ。

 

「ふわぁ〜〜♪ 安心する〜〜♪」

 

 愛する人のぬくもりとはどうしてこんなにも愛おしく感じて、安心できるのだろうか。

 

「〜〜♪ えへへ♪」

 

 

 ヴィネの体を少し動かし、向き合っているような体勢にする。腕も動かし、グラニを抱きしめているような形にするのも忘れない。

 

 

「…ごめんね、ヴィネ」

 

 ほんの少しの罪悪感が心を襲う。本当なら薬とかいう卑劣な手段に頼らずに…、起きている状態で愛し合いたい。

 

 しかし忌々しい協定の存在がある。それにうまく出し抜けたと思っていたのに─

 

『─一緒にヴィクトリアに行きませんか? 勿論私のおごりです』

『面白そうね。いいわよ』

 

 予想外の伏兵の存在。

 

「待っててね。私、頑張るから…」

 

 ちゃんと協定を下して、あの泥棒猫を始末して、怪しげな動きを見せるドクターを抑えてヴィネのことを迎える。そのためにも今だけはこのぬくもりを感じていたい。

 

 このぬくもりがあれば─

 

「私は頑張れる…」

 




 次のストーリーが思い付きません、助けてください(;´д`)


 感想とかで次はフロストリーフ、とか言って頂ければ…。

 因みに作者はヴィヴィアナさんを弊ロドスにお招きしたのですが(隙あらば自分語り)…、ちょっとレベル72くらいの私には扱えそうにありません。
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