とあるロドスの日記帳   作:セニョール・大介

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 考えました。主人公との馴れ初めが知りたいという意見とヴィクトリア繋がりのキャラを出して欲しいという意見。



 どっちも採用すればいいんじゃね?


 ということで頑張りました。


番外編! リードさん!

 

 

「いやぁ…、やっぱりヴィクトリアの小麦は美味い」

 

 以前ハーモニーさんとヴィクトリアに訪れた際、仕入れてきたヴィクトリアの、それも肥沃な渓谷地帯のクソ高い小麦。クルビアとかの色々いじられた小麦が一キロ三十龍門弊なのにヴィクトリアのは─

 

 

「五百龍門弊…。それを三十キロくらい仕入れたから、一万五千龍門弊…。高い買い物だった」

 

 結構ロドス所属オペレーターの中でも資金だけは上位二割には入るはずの俺でも厳しい値段。そりゃあ貴族とかならいくらでも買えるだろうけど、生憎俺はただの一般人。でも─

 

 

「美味しいよこれ! ヴィネは料理も得意なんだね!」

「はは、ドクターにそう言ってもらえると嬉しいですね」

 

 俺のピッツァに舌鼓を打つドクターに─

 

「あの、ヴィネさん。このピザの作り方とかって教えてもらったり…」

「いいですよ、アーミヤCEO。まずは材料からですね。このレシピに書いてあるのが─」

「…え? 材料費だけでこんなに…?」

 

 何故か青ざめた顔で俺とレシピとピッツァを見回すアーミヤCEOに─

 

「…」

「どうかしましたか、ケルシー先生?」

「どうしたもこうしたもない。このままではせっかくのヴィネの料理が冷めてしまう。早くあーんするんだ」

「…ケルシー先生?」

「待って、ケルシーにするなら私にも」

「─ッ!? ドクター、何をとち狂ったことを言うんですか?」

 

 何故かあーんを強要してくるケルシー先生と悪乗りするドクター。そういう楽しんでいる様子を見られただけで大赤字がちょっとの赤字に感じられる。ただ─

 

「…」

 

 扉の影からこっちを見つめる存在のせいで全く楽しめない。え? 誰? 入ってきなよ、拒んだりとかしないし、小麦粉の在庫とか充分あるよ?

 

「あの? そこの扉の人? まだまだあるし、入ってきては?」

「ッ!?…失礼するわ」

 

 

 扉の向こう側から現れたのは─

 

 

「…リードさん?」

 

 ロドス所属オペレーターの中でもトップクラスに立場がややこしいことで有名なリードさん。

 

「アレク、もしよかったらそのピザを私にも─」

「あ、勿論です。何枚くらい行きます?」

「違う、あーんしてくれ」

「………」

 

 

──

 

 私はドラコとして異質な存在なのだろう。

 

 皆が言うドラコは─

 

 忍耐強いくて─

 

 戦いが大好き─

 

 少なくとも私は戦闘なんかよりは文字を書くほうが好き。それか─

 

「…これはみんなして私のことをからかっているんですか?」

 

 アレクと一緒にいるのが好きだ。

 

──

 

 あれは両親が笑顔を見せてくれていて、姉さんもほんの少しだけ険の取れた優しい顔をしてくれていたような、そんな幸せな時間が終わり─

 

『─ターラー人は路頭に迷う、お前はどうするつもりなのか』

『手を伸ばし、彼らを灰燼の中から引っ張り上げる』

 

 第二の親と決別し─

 

『お前は何を望む?』

『…』

 

 自分が思っていたよりも自分に確たるものはなく、姉さんに依存していたのだと気付かされ─

 

『望みがないなら、私と同じように考え、行動してみるといい』

 

 自分というものを失っていく日々。

 

 ダブリンの人たちは私のことを姉さん…第二のエブラナのように扱うなかで─

 

 

『─どうしたんです? ラフシニーさん』

 

 アレクという異物が現れた。

 

──

 

 

「紹介しておこう、ラフシニー。最近雇った傭兵だ。偵察やら情報収集やらなんでもこなすらしい」

「…」

「どうも、よろしくお願いします」

 

 ある日、突然姉さんに呼ばれたかと思ったら、かなり若い、多分十代前半くらいの少年を紹介された。

 

 姉さんがうまく使うのなら、私に関係はないとその時は適当に挨拶を流していた。実際、姉さんの指揮のもと扱き使いふるされて─

 

『こんな重労働は間違っている! 傭兵にも人権を!』

 

 なんて抗議して─

 

『喚くな。アレク、お前はやればできる子なんだ。私はお前のことを信じている』

『待ってエブラナさん! 俺はまだ死にたくないです! 限界ですってば!』

 

 

 姉さんに無理やり次の任務へと連れ出される。今思えば、姉さんは彼のことを気に入っていたのだろう。

 

 長らく見せることのなかった僅かな笑みに、ほんのちょっぴりだけ嬉しげな声。

 

 周囲の人達もワイワイ騒いでいて、みんなの心が上向いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …私はそんな姉さん達の蚊帳の外だった。

 

 

 ダブリンのみんなからコソコソと隠れるように、みんなの楽しげな様子を尻目に私は一人ぼっちで本を読んでいた。

 

 そんなときに─

 

「─こんな寒いのにお一人で読書ですか?」

「ッ!?」

 

 アレクは私のところに来た。

 

「なに? 私が読書を嗜むのがそんなにもおかしい?」

「…」

「わかってる。ドラコっぽくはないし、リーダーとしても情けない─」

「いや? 貴方らしくていいと思いますよ」

「…?」

 

 初めてのことだった。みんなが口を開けばドラコは、リーダーは斯くあるべし、なんてことしか言わなかったのに、アレクは肯定した。

 

 その夜から、アレクは私のところによく訪れるようになる。

 

「おい、人様の妹を籠絡しようとしているのか? お前が見るべきは私だ。そうだろ?」

「…」

「─あ、おい逃げるな!」

 

 私にやきもちを焼いた姉さんの姿はとても新鮮で─

 

「…フフ」

「あ! ラフシニーさんが笑った!」

「…気の所為よ」

「いやいや、絶対笑ってましたって」

 

 

 正しいと理解していて尚受け入れ難かったダブリンという組織も、血をもって改革を迫る部分ではなく、こんなふうに笑顔の絶えない温かい一面を見ると受け入れられる。

 

「ね、笑いましたよね? エブラナさん!」

「ああ笑った」

「姉さんまで…」

 

 

 自分というものが曖昧で姉さんの影に甘んじていた私だけども、初めて願いが言えそうだ。

 

 

「アレクと一緒に居たい」

 

 願わくば─

 

「なあアレク、笑ったほうが好みか?」

「…エブラナさん。本当に笑顔が下手くそですね─」

「─アレク?」

「あっ…」

 

 

 独り占めで。

 

──

 

 

 

 

 

 

 でも─

 

「アレク、今日はどこの国について教えてほしい?」

「…ラフシニーさん。すいません、明日からはこれそうにありません」

「…え?」

 

 そんな願いは無情にも崩れ去る。

 

「ラフシニーさん?」

「─なんで?」

「ッ!」

 

 私の至極真っ当な質問に驚くアレク。なんでそんな顔をするの?

 

『このターラー人が!』

 

 姉さんが、私が今まで命を奪ってきた相手が私達に向けるような恐れが含まれたような顔…。

 

「答えて? アレク、なんで来れないの? 姉さんのせい? それともあの口うるさいダブリンの老いぼれどもがなにかしたの? 教えて、私はダブリンのリーダーなの。絶対に守ってあげるから」

「違います。俺は自分の意志でヴィクトリアから出ます」

「…どうして」

 

 私達はあんなにも仲が良かったはずでしょ?

 

「俺は国際トランスポーターを目指します。真っ当な職について─」

 

 

 正直、あのあとアレクが何を言ったのかは覚えていない。

 

 呆然としていて気づいたら朝日が登っていた。

 

「─アレク?」

 

 いるはずも居ない愛おしい人の名前を呼んでも、やはり応える声はない。

 

 当たり前のように感じていた存在の欠落。それは私の心をにぽっかり穴を開けた。

 

 楽しかったはずのダブリンでの生活が色褪せたように感じられる。

 

 それは姉さんもみんなもおんなじで─

 

「やめてくれ! 俺達はターラー人には何もしていないじゃないかッ!」

「…知らん」

 

 今まで以上に粛々と機械のように血も涙も枯れ果てた集団へと変貌した。

 

 

──

 

 

「…もういやだ。もう…」

 

 

 それから更に数ヶ月。

 

 ヴィクトリアのターラー人に非寛容的な貴族たち、その私兵たちがダブリンを弾圧。

 

 親しくしていたメンバーも眼の前で殺され、姉さんの炎によって憎しみで動くだけの存在へと成り果てた。

 

 楽しかった生活が嘘のよう。

 

 いつだかしていたように、物陰に隠れて息を潜める。

 

 こんな情けない姿、リーダーにふさわしくない。

 

 わかっている。でもなりたくてなったわけじゃない。

 

「ッ! ターラー人かッ」

 

 眼の前には貴族の私兵が一人。装備のわりには体が貧弱で、苦戦するような相手ではない。でも─

 

「…」

「なんだ? 俺を見くびっているのか?」

 

 もう楽になってしまおうか。もし姉さんの炎で蘇ったとしても、憎しみに囚われた私モドキができるだけ。そうなったらこの収集のつかない、苦しいだけの心も幾分か楽にはなるだろう。

 

「喰らえッ!」

「…ッ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ─来ない。覚悟していた痛みが来ない。

 

 その代わり、どこか懐かしい匂いがした。

 

 

「ラフシニーさん!」

「…アレク?」

 

──

 

 

「─そんな事になってしまってたんですね」

「…」

 

 愛おしく思っていた人との再会。今まで心内にとどめていたはずのことが堰を切ったように流れ出す。

 

 理念のために躊躇なく色々なことをするダブリンのみんなが怖い。

 

 アレクが居なくなって寂しかった。

 

 …変わってしまった姉さんが怖い。

 

 アレクは静かに全部聞いてくれた。

 

「アレク…私はどうしたらいいの?」

「ラフシニーさんはエブラナさんが変わったと言いましたね? 本当にそうでしょうか?」

「…どういう…こと?」

 

 実際姉さんは作り物の笑顔しか浮かべなくなった。より強行的な姿勢を掲げ始めた。変わってしまったはずだ。

 

「そんな血も涙もない人間になってしまったならラフシニーさんはとっくにダブリンから切り捨てられていますよ」

「…」

「性格が争いに向いていない、影武者のような存在。普通、それをリーダーの地位においておきますか?」

「…じゃあ、どういうこと?」

「医者を必要とするのは病人だけ。つまり、エブラナさんはラフシニーさんを必要としているんですよ」

「姉さんが?」

「…両親を失い、第二の親とも決別し、周りには同じターラー人というだけの見知らない他人だけ。唯一心を許せる存在として今も尚、ラフシニーさんに期待を抱いているんですよ」

 

 アレクの言う通りかも知れない。思えば、私は自分のことばかりで姉さんがどう思っているのかなんて気にしたこともなかった。

 

 両親や伯爵との別れに後悔がないはずがないのに。私とそんなに変わらない歳のハズなのにダブリンを率い、ターラー人の期待を一身に背負って苦しくないはずがないのに。

 

 いつからか、勝手に姉さんのことを完璧超人になったかのように思い込んでいた。

 

 

「さてラフシニーさん。『何事でも人々からしてほしいと望むことは、人々にもそのとおりにせよ』という格言があります。ラフシニーさんが読書好きな貴方を、平和を尊ぶ貴方を理解してほしいように、エブラナさんも誰かに理解して欲しがっています。なら─」

「─ありがとうアレク。私は姉さんのことをまるで理解していなかった。初めての姉妹喧嘩、全力で行ってくる」

「頑張ってください!」

「…アレク─」

 

 

 やはりアレクは私にはもったいないくらい優しい人だ。でも─

 

 

「待ってね」

 

 

 姉さんと向き合って、私に自信が持てるようになったらアレクともしっかり向き合える気がするから。

 

 やっぱり初恋は諦められない。

 

 

──

 

 

 その後、ロドス所属のエリートオペレータのOutcastに連れられ訪れたロドスにはなんとアレクがいるというのだから、このときばかりは運命というものに感謝した。

 

 感謝はしたのだが…

 

 

『美味しいよこれ! ヴィネは料理も得意なんだね!』

『あの、ヴィネさん。このピザの作り方とかって教えてもらったり…』

『どうしたもこうしたもない。このままではせっかくのヴィネの料理が冷めてしまう。早くあーんするんだ』

 

 

 こっちでもアレクに群がる奴らは居たらしい。

 

 でも恐れちゃだめ。姉さんと姉妹喧嘩をして初めてお互いを理解できたように、向き合わないと思いは伝えられない。そうアレクが教えてくれたから。




 引き続き出して欲しいキャラとか募集しているのでお願いします。


 後書きじゃなくて前書きでかくことかもしれませんが、作者はアークナイツですが、『この炎が照らす先』未プレイです。

 メインストーリーもパトリオットの旦那に阻まれて進められてません。

 なのでエブラナさんの口調は完全に妄想したものですので間違いなどがあると思います。その時は教えていただければ幸いです。
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