次話はもう少しお待ちを!
「いやぁ、久しぶりだねロドスも」
「…まさか裁判沙汰になるとは。アーミヤやクロージャにロドスのことは任せておいたが、はたして大丈夫だろ─ん? クロージャ?」
クルビアから戻ってきたドクター一行を迎えたのは─
「…」
張り詰めたような、どこか普段と違う様子のクロージャ。
「どうしたんだ? クロージャ、こんなところで─」
「ねえドクター。ヴィネのことを知りたい?」
「─!? どういう意味なの、クロージャ」
「…なぜヴィネがあんなことをしでかしたのか、ということか?」
「そ。まあ、もしかしたら二人には興味のない話かもしれないけど」
「いや、聞こう。ヴィネはあれでも主力級のメンバーだった。それがなぜかは気になっていたところだ」
「…良いんだね?」
「…ああ良いとも」
「─じゃ、自分たちが何をしたのか、よくよく考えることだね」
「クロージャ? 何を─」
あまりに不可解なクロージャの様子にケルシー、ドクターが訝しむ。が、クロージャは構うこと無く真っ白な源石を地面へと叩きつけた。
「─ッ!?」
「眩しッ!?」
地面に触れ、砕けると同時に瞼越しでも視認できるような閃光が炸裂。また、光にまみれて白いモヤがドクターたちの体を包む。あまりの光量に、ドクターたちは耐えることが出来ずに意識を手放す。
ロドスの廊下に倒れ伏すドクターたちを尻目にクロージャは踵を返す。いや、ドクターだけではない。訓練室でトレーニングに勤しんでいたオペレーターも、発電所に詰めていたエンジニアたちも皆が気を失っていた。
そんな異常事態を気にすることもなくクロージャは購買部のバックスペースに向かう。
ヴィネからはタイミングを見て解除、という話だったがドクターたちが本当のことを知ることに同意したのだからしょうがない。
そんな過ぎたことなど置いておいて、だ。今重要なのはヴィネの現状について調べること。刑務所に収監されることは知っているが、どこの刑務所、監獄に収監されるかはまだ発表されていない。クルビアで例のアーツについて調べてくれていたエリートオペレーターの二人がこのことに関しても調べてくれている。
クロージャにとってドクターたちの容態などその調査に比べたらどうでもいいことである。
──
一方その頃…。モンスフィールド監獄にて─
「え? 毎日自由時間があるんですか? ほんとに?」
「二時間程度だぞ?」
「二時間もッ!?」
「…?」
希望に満ち満ちたヴィネの姿があった。
──
「う〜ん…、ここは─」
ロドスの医務室、そこにあるベッドの一つから身を起こすドクター。
最近は全然休憩をとれていなかったので、久しぶりの熟睡で身も頭もすっきりである。そう─
「へ?」
記憶も思考もクリアになっているということ。
「へ? 嘘……、嘘嘘嘘嘘…嘘だ…。嘘だぁッ!?」
当然アーツに侵されていた時期の記憶も、ヴィネに恋心を抱いていた時期の記憶もすべてが同時にあふれてくる。
「…君も起きたか、ドクター」
発狂するドクター、それに気づいたケルシーが医務室に訪れる。
「ケルシー? これは何かの間違いじゃないの? 私がッ!? 本当にヴィネを??」
「…」
「何とか言ってよ…。これじゃ本当に…」
「…ドクター」
ケルシーの白衣を両の手でつかみ、縋りつくドクター。ケルシーはそれをただただ受け止めるだけだった。
泣きじゃくり、駄々をこねまくり数秒─
「そっかぁ…、私、本当にヴィネを殺すつもりで指揮を執ったのか」
ついに真実に至る。そして沈黙する。
「ドクター。君だけがおかしくなったわけではない。私を含め皆がおかしくなったんだ。自分だけを─」
「─ケルシー。ヴィネはどこに収監されてる? それと裁判から何日たった?」
さすがにこの異常事態でドクターを欠くことはできない、と判断したケルシーが落ち着かせようとしたが、ドクターが発した言葉はケルシーの想定を超えていた。ドクターは一瞬で思考を切り替えていたのだ。
「…収監先はクルビア、モンスフィールド監獄、裁判からは四日だ」
「よし、クルビアに行くよ」
「ドクター、強硬手段はクルビアとの関係が─」
「? 何言ってるの? 控訴…、いやクルビアの最高審判官が対応していたからあれ以上の裁判はない。再審だ。確か三十日以内ならいけたはず。ヴィネに再審請求してもらえばクルビアの法に則ってヴィネを助けられる」
「…」
──
場所は変わってクルビア。件の製薬会社の上層部はヴィネの逮捕、刑務執行などの一連の話を聞き、慌てていた。ロドス内部に協力者はいないがここまでの話を鑑みればウルサスに売った商品がロドスに使用されたこと、ヴィネがアーツの影響を受けていなかったことは明白。
過去の件でいろいろ一悶着のあったロドスのほうは全然いいが、問題なのは後者。ヴィネはただのロドスのオペレーターではない。国際トランスポーターとして名の知れているあの男には世界中に知り合いがいる。つまり、アーツの効果を受けていない人間だっているはずなのだ。
ただの逮捕ならともかく、今回の件はあまりにもことがこと。知人たちの中におかしいと思い、面会しようとするものが出てくる可能性がある。あの男の話を聞いてこの会社の裏商品に、違法行為に気づかれる可能性がある。
もし裏の情報を世間にばらされたなら…
研究凍結を命じたにもかかわらず研究を続けられたクルビアに温情は期待できない。ウルサスも裏取引だったせいで公式なかかわりがない。
絶対に研究の情報を漏らすわけにはいかない製薬会社はジャーナリズムにライバル企業対策に用意していた情報を流し、裁判所関係者に大金を握らせ何とかヴィネの投獄の件だけは国外に出さないようにした。結果、国外に、いや裁判所や製薬会社の上層部以外にはこの情報は出回らなかった。
苦心してこの状況に持ち込んだ上層部は一件落着と一息ついていた。が─
「俺に面会希望?」
ロドスからとある二人が来たことによって瓦解する。
───
「…」
「…ヴィネ」
「…」
クルビア、モンスフィールド監獄の面会室にはこれ以上ない沈黙、沈んだ空気が広がっていた。
面会希望するなんて誰だろう? クロージャさんとかかな? とウキウキで面会室に赴いたヴィネだが、面会室には悲痛な面持ちの二名。それも一人は法廷で対戦し、もう一人は相手側の証人として全力でヴィネを投獄しようとしていた人物。そう、ドクターとケルシーである。
ドクターやケルシー側も拘置所でようやく傷への処置を受け、体中包帯ぐるぐるのヴィネの姿を見てさらに悲痛そうな面持ちに。
しかし、このまま沈黙していては何も始まらない。なぜなら面会には時間制限があるのだから。
だが…
「…」
「…」
ドクター、ケルシーともに言葉を発することができなかった。何度も声を出そうとするのだが、喉元を超えてくれないのだ。
もしヴィネに拒絶されたら…。要するにいくら賢人で様々な経験を経たケルシー、ドクターといえども覚悟が決まっていなかったのだ。
「お疲れ様ですドクターにケルシー先生」
そんな二人の姿を見て、状況を打開するのはやはりヴィネだった。
「…正気に戻ったようですね。クロージャさんが頑張ってくれたみたいだ」
「…ごめん。本当にごめんヴィネ」
「大丈夫ですよドクター。みんながアーツの影響でおかしくなっていただけなんですから」
「でもッ! ヴィネは─」
「─ドクター。このままでは時間が来てしまう。謝るにしても後にするべきだ」
「ケルシーッ!」
「…」
ケルシーのあまりのいいように激高するドクターだが、ケルシーの表情を見て鎮静する。
努めて平静を保ってはいるが、よく見れば手は小刻みに震え、冷や汗もとどめない。
「…ケルシー先生の言う通りですよドクター。今日は何用で?」
「ヴィネ、君には再審請求してほしいんだ」
「? 何でですか?」
「君を無罪にするため。君が再審請求してくれれば私たちがヴィネに有利な証言をして判決を覆せる」
「…ヴィネ。君には私たちに思うところが多々あるだろうが頼む。私たちに少しでも罪滅ぼしさせてくれ」
ドクター、ケルシーというロドスのトップが同時に頭を下げる。その姿を見てヴィネは…
「すみませんドクター、ケルシー先生」
頭を下げ返す。
「な…なんで? ねえどうしてなの?」
「やはり私たちはもう…」
片方は困惑し、片方はもう嫌われてしまっていたのかと悟り、絶望している。が、そうではなかった。
「ドクターにケルシー先生。私はクルビアの道路や建築物に被害を出しました。その分は罪を償わないといけませんから」
「いや、被害を出したのは私たちのせいなんだよ? ロドスに責任があるんだよ? それを君が背負うことはないでしょ?」
「その通りだ。ヴィネ、一度落ち着いて考えてくれ。君にも責はあったかもしれないが、それ以上に君は被害者だ。我々に不当に貶められ、多大な被害を被っているんだ」
「ケルシー先生それはそれ、これはこれってやつです」
「ヴィネッ!!」
「それに、今回の件はアーツによって引き起こされました。こんな悲劇がもう起きないようにロドスはアーツの研究なども急がないといけません。こんなことにかまっている暇はないでしょう」
「こんなことって─」
この一連のことをこんなことと、些事と片付けるヴィネにドクターが食って掛かるがそれは警備員に制止された。面会時間が過ぎていたのだ。
「また来るからね」
──
「もう何回目ですか? これ」
「君がうんと言うまで何度でも来るよ、私たちは」
4回目の面会にもかかわらず相も変わらずの調子で自分を説得しようとしてくるドクターらに苦笑しつつも、今日はどんな風に断ろうかと考えていると─
「爆発音…それに警報?」
何かが爆発したかのような轟音が聞こえてきたかと思うと警報がひっきりなしに鳴り響く。それに微かにだが銃撃音まで聞こえてくる。脱獄者でも出たのか、それとも─
「─襲撃者かな」
銃撃音が消えたかと思うと、何かを壊すような音が聞こえてくる。それも少しずつ大きくなっている。つまりはこっちに近づいてきている。
「ッ!?」
「なんだ?」
面会室のガラスを挟んだ向こう側、つまりドクターたちのほうの壁が大きな音を立てて崩れる。土煙でよくは見えないが、大きな影が見える。
「この怪物はッ!?」
「Mon3tr」
土煙を振り払い現れたのは一か月ほど前にロドスを襲い、今回の騒動の元凶となったあの怪物。
大方、製薬会社側が口封じにって感じだろうけど…
「俺だけじゃなくドクターやケルシー先生まで狙うのかよ」
──
ケルシーはMon3trを出したはいいものの怪物を倒すことができないでいた。どうしても脳裏に以前の、騒動のもととなったあのときを思えばこの怪物を倒せばまたアーツの影響を受けてしまうからだ。だからこそ守ることしかできない。そもそも、
「フゥ~…」
この騒動の元凶にはトラウマしかない。嫌悪感や恐怖に耐えながらケルシーは頭を回していた。
無力化しても爆発した前回のことを考えると妙案は思いつかない。
…戦闘中にそんな風にいろいろ思考していたからだろうか。Mon3trが防御に間に合わず、とっさに怪物を攻撃した瞬間、あの時のことがフラッシュバック。
「やめろMon3tr!」
わけのわからぬままに命令してしまった。
動きをやめてしまったMon3trを躱し、怪物がケルシーとドクターを襲う。
「…すまないドクター」
ケルシーがドクターの前に立ち、その凶刃を受け止めようと─
「なんだ??」
─覚悟を決めているとまたまた壁が粉砕される。
怪物もなぜか動きを止める。そして崩れた壁のほうを見やる。
皆の視線を受けながら、土埃を吹き飛ばし現れたのは─
「ヴィネッ!!」
ヴィネであった。
どこかから調達したアーツロッドを怪物に向けると─
「縺ェ繧薙□?」
突然怪物が身を丸くする。いや─
「これは、風が…?」
暴風が怪物を圧す。
「縺薙?驥朱ヮ繝?シ?シ?シ?シ」
危機を感じた怪物が爆発しようとするが─
「爆発が広がらない?」
爆発、爆風さえも抑え込むという離れ業。勝手に自爆したのをこれ幸い、とさらに圧縮させるヴィネ。
そんなすさまじい光景に気圧されていると、ヴィネが振り返り─
「よし! ドクター、ケルシー先生。こいつが暴れてたってことにしましょう」
──
機転により罪を製薬会社側に被せたことで、ヴィネは一転、犯罪者から晴れて実験生物の鎮静化の貢献者になった。
よって─
「じゃあドクター、ケルシー先生ロドスに帰りましょうか」
ヴィネのロドス復員が叶ったのである。
誰を曇らせるかはアンケートの結果とか見て決めます(未定なだけ)
曇らせたいキャラ募集! その他はちゃんとキャラ名書いてね!
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ラップランド
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ドクター
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ケルシー
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リード
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その他