…日記が無くなった件について。
何か日記が無くなったんだけど? いやいや一日任務で空けていたら何か机の上にあったはずの日記がないんだけど。
まあいい。明日くらいにクロージャさんの売店にでも買いに行くことにしよう。
「…」
それよりも、だ。今は朝七時。朝食を取りに食堂に来たらドクターと出会い、一緒に食事を摂ることになったのはともかく、そこにラップランドさんとチェンさんまで合流してきた。
あ、チェンさんはロドスとの協力体制を築くために龍門から出向してきてくれたのでロドスに居ます。代わりにアーミヤさんが龍門行ってます。
いやいや、そんなこと話してる場合じゃない。合計四人でのお食事、さぞ会話が弾み楽しいものになるだろう、と思っていたのに…
「…」
「…」
「…」
なぁんで黙りこくってるの? いや、目線を向けたら笑顔で返してはくれるんだよ。無言だけど!
え? なに、ロドス無言デーみたいのがあるの? 何も聞いてないよ?
というかラップランドさんはともかくドクターとチェンさん、あんたら仕事の話とかあるでしょ? 何か距離を詰めようとかあるでしょ? なのになんで無言なんだよぉおおお。
「…あのぉ、皆さんは先日告知された『ロドス最強決定戦』に参加されたりとかはしないんですか?」
ダメ元で話題振ってみるけど、多分ムリだ─
「ああ、あれね。僕は参加するつもりだよ。テキサスに僕の勇姿を見せてあげないと」
「私も一応参加しようとは思っている。最近出向してきた身だがロドスのオペレーターであることには変わりない」
「私は役員の方で参加するよ」
─もしかして全員シャイだった? 凄い饒舌に喋りだすじゃん。
「…」
「…」
「…」
まただんまり!? 楽しい食事が拷問の時間になってんだけど。
「へ〜、お二方は参加なさるんですね。これは楽しみですね」
「ん? 君は参加しないのかい?」
ラップランドさんが聞いてくるが、当たり前でしょうが。国際トランスポーターの誇れるところは逃げ足の速さと金払いの良さだけなんだよ。
「な、なんだと! ヴィネは出ないのか?」
「アーツも巧みに扱うし全然行けると思うけど…」
「いやぁ、買いかぶりすぎですよ。あんなトーナメント形式で一対一なんて俺の本領じゃありませんって」
「ん? ヴィネ、トーナメント以外にも宝探しとか鬼ごっことかそっち系のもあったじゃないか」
「へ?」
なにそれ、聞いてないんですけど。
「自分のところにはトーナメント以外のお知らせはありませんでしたけど?」
「…どういうことだ? 私のところには二つお便りが来ていたが…」
おっと? 嫌な予感がするぞ。機械の不具合だよな、これ?
「…ちなみになんですけど、このロドス最強決定戦の発案者って─」
「─私よ」
後ろからカツンカツン、と革靴の音が聞こえてくる。
「ドクター、すいません少し席を外させてくださ─」
「あら、食事がまだ残っているじゃない。貴方らしくはないわよ? それとも─」
ちょ、肩を掴むな。くそ、なんていう馬鹿力だ。全く立ち上がれない!
「私のことが嫌いになってしまったのかしら」
「いえ、そんなことは…」
スカジさんがなんかタルラたちとおんなじ目してるんだけどぉおおおお?
──
「ああ、あなたにはトーナメントの方しか送ってないわよ?」
なんでだよ? 俺、鬼ごっことかなら全然参加したかったよ? わー、ヴィネさんカッコいい! とかチビッ子供に言わせたかったのに〜。
「まず、私達って最近の作戦に参加できていないじゃない?」
まあそうだね。あんたらバケモンみたいな火力を持ってるもんね!
「フラストレーションが貯まるでしょ?」
そうかも。
「なら、ロドスのオペレーター同士でやるしかないじゃない」
…う〜ん、そうなのか?
いやなんで俺がトーナメントに参加しないといけないんだよ。
「いやいや、なんで俺が参加しないといけないんですか? ラップランドさんとかいるじゃないですか!」
「? 何を言っているかわからないわ」
「だーかーら、ラップランドさんやチェンさんがいるじゃないですか!」
「?」
だめだ、話が通じねぇよぉ…。
「ともかく、俺は参加しませんからね」
「あら、残念ね」
あら? 思ったより簡単に受諾された─
「自分の意志で参加してほしかったのだけれど…」
違う、実力行使だ。
ちょ、まじでムリ。ロドス最強クラス相手はムリ。逃げるしかないって。
──
「あら、逃げられてしまいました」
スカジが強引に参加を促してヴィネに逃げられている。いい気味だ。
「スカジ、良くないよ。そんな強引に行くのは」
「あらドクター。確かに強引が過ぎたかもしれないわね。…近頃、ヴィネにお熱らしいわね。進捗はあったかしら?」
「いや全く。でも君たちが足を引っ張りあっている間にゆっくり進展させていくよ」
ライバルは案外多く、かつ強力。だがそれを乗り越えるという高難易度の挑戦を達成したのならヴィネが手に入る。
「…ドクター、あなたの思い通りに行くとは限りませんわよ?」
「君が思う通りにもね」
──
いやー、無理無理。普通に鬼ごっことかの方に出よう、そうしよう。
そんなねぇ、みんながみんなバトルジャンキーではないのですよ。というか、最近仕事が、ロドスと国際オペレーターの仕事が忙しすぎる。今日も仕事が入ってるし体を休めたい。
そうだ、日記が無くなったと言うが、それ以来、他のオペレーターとの交友が復活したんだ。今まで避けられたりしたけど、逆に話しかけてもらえる。なんか、凄いプライベートなこともバレてたけど。さらにはたまに両手に花みたいな状態になることも。もしかして─
日記を貢物に神様が俺のボッチをどうにかしようとしてくれたのだろうか。どうしよ、ラテラーノとかでお祈りしたほうが良いかな? 今度アルケットさんらへんに頼も。
「ん?」
何やら俺の端末にメールが来たようだ。なになに?
「レユニオンより?」
普段ならノータイムで却下だが、今回ばかりはそうも行かない。なぜなら─
「愛国者より、か」
あの不器用な男は案外分別がついている。一度感染者側につくと決めたのなら絶対に非感染者の俺に依頼は愚か、話しかけることさえしないだろう。
だからこそ気になる。何故あの男が俺に依頼を出したのか。
近頃のレユニオンの動向は仕事と並行して集めているつもりだ。しかし、レユニオンはまともな組織ではない。非感染者への憎しみという一点のみで団結している以上、いくら交渉をかけようが「非感染者が」となるだけ。
活動を調べようが龍門がほんの少しきな臭いだけで表立った活動はなし。これは何か、でかいことをしようとしている。…一旦整理しよう。
レユニオンは虐げられている感染者の保護を第一の目標としていたはず。ならば今回の目標もそれだろう。
レユニオンはロドスを嫌っている。そして目障りな存在とも思っている。チェルノボーグでもロドスが邪魔をしてきたことは真新しいはず。
レユニオンは小さいながら龍門で動きを見せた。本拠地のウルサスから程遠い龍門でだ。
…龍門にロドスの目が向いている間に何か…、彼らが根ざすウルサスで何かをやろうとしている。…鉱山を襲うのか?
ウルサスの鉱山には感染者が人権も何も無い待遇で働かされている。彼らの救出でもするのか?
「まあ良いや。パトリオットの旦那にも聞きたいことがあったし受けるかこの依頼」
──
「ヴィネがロドス最強決定戦に参加するだって? いったいどうして、あんなにも嫌がっていたじゃないか」
「フフ、ドクター。やっぱりあれは照れ隠しだったのよ。ツンデレ、というやつね」
「ハハッ、やっぱり君も参加するのかい。いいよぉ、僕と君とがやり合う。うん良いねぇ!」
食堂で食事を取っていた三人(チェンは龍門への連絡などで不在。どっかのフラストレーションためてる化け物とは違って忙しい身)は突如来たヴィネからの参加申請に驚きつつ、喜びを見せる。
普段のおちゃらけた雰囲気で忘れそうになるが、彼は強力無比なタルラを抑えるほどの実力者。かつては傭兵として国際オペレーターとして世界を縦横無尽に駆け回った歴戦の戦士でもある。そんな彼の力を見たくないわけがない。
ロドス最強決定戦開幕まで後二日。
…もう無理、エタリそう…。
あ、皆様、作者の作品を読んでいただきありがとうございます。UAが3000とか超えたの初めて見ました。
エタらせないようにこれからも頑張っていきます!