ヒトミミウマ息子がゆくウマ娘プリティーダービー 作:コウハクまんじゅう
ぶっちゃけタマが一番好きっス。
そういえば、シングレがアニメ化するらしいですね。正直めちゃくちゃ楽しみで夜しか眠れません。
オベイの声優さん誰になるんやろか…
白い稲妻
夕暮れ。
昼間にはこれでもかと存在を主張していた太陽はすっかり大人しくなり、すごすごと大地へ身を沈めていく。その様子を草木たちは、夕焼けに染められながら名残惜しそうに見つめていた。が、やがて訪れる夜に備えて静かに眠りにつき始めていた。
そんな草木の様子を横目に、河川敷の斜面に寝転んでいる男が一人。
「やれやれ、ようやく日暮れか。」
と、雑草が生い茂る河川敷に身を埋めながらつぶやいた。ここ最近、日中の日の照りようが尋常ではないのだ。おかげで家に炭酸水を二本常備は当たり前、エアコンと扇風機をガン回し、アイスはストックのストックをしないと暑さを防げないとかいう頭おかしい状況になっている。おかげで出費が痛く、財政難がヒタヒタと足音を立てて近づいてきていた。
今は夕方とは言え、日中に太陽が猛威をふるった影響で地上には嫌な暑さが籠もっていた。
(はやく宇宙に飛んでってくれねえかなー。んでそのまま帰ってくんな。)
顔を顰め、心のなかでボヤきながらも、身を埋めた河川敷から一向に動こうとしない男。その身を大地に沈めながらも未練たらしく空にしがみついてなかなかを沈もうとしない太陽を横目に、今夜の飯を考え始める。
どうしようかなぁ、今日は自分で作る気分じゃないんだよなぁ…
かと言って3日連続カップラーメンも考えものだよなぁ…
………-イ
いっそのことどっか食いに行くか…?いやでもそれは金が…
……オーイ…
でも健康は大事だしなぁ、ましてや今体調崩すわけにはいかねーしなぁ…
オーイッ!オルンヤローッ!?
……アッ,イタ!
やっぱ今日は自分で作るかぁ、気乗りはしないけどなぁ…
「見つけたでー!こんなところにおったんやな!」
上から快活な関西弁の声が降ってくる。その声色は明るくカラっとしており、聞いているだけで自分の心をも明るく照らしてくるようだった。やれやれ、同じ照らすのでもジリジリとしつこく照りつけてくる太陽とは大違いだな。
「……おー、来たか」
その声の主に対し、気怠げながらもどこか嬉しさを滲ませた声色で返事を返す。よっこらせ、と上半身をゆっくりと起こす。長らく仰向けの状態だったのを急に動かしたため、めまいのような感覚に陥るのを頭を軽く振って散らし声が降ってきた方向を見る。
手を腰に当て、ふふん!と威勢良く胸を反らせている、見た目で言えば小学生ほどのはつらつとした少女。夕日の光を反射し、赤く染まりながらも美しく靡く銀髪。地平の遥か彼方をも見通しているかのような透き通った碧い瞳。青と赤のチャーミングなハチマキ。赤を基調として、白い線の模様が入っているジャージ……そして頭から突き出て、ピコピコと動いている赤いウマ耳。
その特徴的な姿から、少女はウマ娘だとわかる。
実はこのウマ娘こそが、暑い中男が河川敷から動かなかった理由である。男はゆっくりと立ち上がり、少女を見据える。少女もまた、男をまっすぐに見つめる。
「トレーニングお疲れさん。やりすぎて走る体力無ぇとか言うんじゃないだろうな?」
「おう!見ての通り元気いっぱいや!」
「お〜、元気そうで何より。んじゃ……今日もやるか」
「おう!今日こそうちがぶっちぎって勝ったる!!」
「さて、どうかな?」
瞬間、二人の周りの空気がにわかにうねりをあげはじめ、凄まじい重圧がその場を支配する。
少女の周りに白い稲妻が走る
男から漆黒の覇気が漂う
少女は先程の朗らかで柔らかい目つきから、雷神のごとく鋭く獰猛な目つきで眼の前の男を捉えていた。
男もまた、先程の気怠げさからは想像もできないギラついた目つきで眼の前の少女を捉えていた。
さっきのゆるい雰囲気はどこへやら。たった数瞬のうちに河川敷は戦場と化した。
まさに一触即発。いつ爆発するともわからない時限爆弾。
先に動いたのは、男の方であった。
ゆらりとした動作で斜面をくだり、舗装された道路の上に立つ。
少女もそれに続き、男の隣に並んだ。
「………」
「………」
両者とも無言で構えをとった。見据える先はどちらも同じ。
心なしか、日が沈む速度が早まった気がする。
「………」
「………」
気を練り上げ、
まだだ。
まだまだ…
陽が、沈んだ。
「ッッ!!!」
「ッッ!!!」
アスファルトが悲鳴を上げるほどの踏み込みが放たれた。
雷鳴が轟き、漆黒の風が吹き荒れた。
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「はぁ……はぁ……」
「も、もう動けへん……」
すっかり日が沈みきった河川敷。そこには、ふたつの死体が転がっていた。
「前よりも速くなったな…タマ…」
タマ、と呼ばれた少女はぜぇぜぇと息を切らしながらもこたえる。
「あ、あぁ…いつまでもアンタに負けてられへんからな…とは言っても、まだまだやけどな……つか、全力のウマ娘相手にレースで勝てるアンタはホンマに人間かいな…」
「当たり前だ。」
「無理あるで…」
あ゛ー、もう動けへんわあ゛…と絞り出すような声を最後に荒い息遣いしか聞こえなくなった。
「……ふぅ、…」
それを聞いて、男も荒い息遣いのみをするようになった。
……俺とこの少女との出会いは数週間前にまで遡る。
しかしその前に、少し俺の話をしようか。
俺の母親はウマ娘で、父親はその担当トレーナーだったらしい。なんでも両想いだったらしく、卒業と同時に結ばれたんだとか。
そして、俺は小さい頃から走るのが好きだった。この走り好きは幼稚園の時からだった。このときはまだ年相応のゆったりとした走りだったのだが、小学生になる頃には人並み外れた速度が出るようになり、周りの同い年のウマ娘と走っても十分勝負になるほどだった。そのため俺は、一時期「ウマ息子」と持て囃されていた。
しかし、小学生にしてウマ娘とまともにレースが出来てしまう程の身体能力は、ハッキリ言って異常だった。そのことを心配した両親に俺は病院に連れて行かれ、色々と検査を受けさせられた。その結果俺は母親(ウマ娘)の血を濃く受け継いで生まれたため、人でありながらウマ娘並の身体能力を得たのでは?と言われた。そして、このような事は極稀ではあるが発生するらしい。病気の類ではないと知った両親は安心したが、歳を重ねるごとに俺の走りへの情熱は増していった。
ある程度成長して大きくなったら、親に秘密でフリースタイルレースなるものにこっそり出て走ったりしていた。
ちなみにフリースタイルレース、とはURAや地方のローカルレースといったスポーツエンターテイメントとは異なるウマ娘の本能の向くまま走るスタイル、いわゆる野良レースのことだ。
前々から興味があって走ってみたかったが、ウマ娘達が走るレースなので、(当然だが…)人間が出走していいようなものではない。人とウマ娘との間には天と地ほどの力の差があるため、そもそも勝負にすらならないのと、ウマ娘達が走っている所に人間が紛れ込めばその圧倒的力の差で人間に危険がおよぶからだ。実際、バレて大騒ぎになった。
人間だとバレて追い出されそうになったが、俺が「どうしても走りたい!」と粘っていたら、鹿毛で前髪に黒い髪留めをつけたウマ娘が「そこまで言うのなら、お前の走りをみんなに見せてみろ。お前が走れるんだったら、自ずと皆はお前の出走を認めてくれる。」とギャラリーの前で一人で走らせてくれることを許してくれた。
ギャラリーのほとんどは俺に期待なんかしちゃいなかった。当然だ。人間である自分がウマ娘達のレースに出走するなどバ鹿げている。ギャラリーの中には「〇〇〇(名前は忘れた)さんも酷だよなぁ、皆の前で走れだなんて」「公開処刑もいいとこだ」等の話し声も聞こえた。
そんな声を無視し、準備体操を終えた俺はゆっくりとスタートラインについた。
この時、ギャラリーは誰一人として予想できなかっただろう。この男がウマ娘顔負けの走りをすることを。後にこの男が、フリースタイルレースで伝説になる男だと。
しかし、そのお話はまた別の機会に。
ギャラリーの度肝を抜いた俺は見事に出走を認められた。「走り」がすべてのフリースタイルレースの良いところだ。あの鹿毛のウマ娘にも歓迎され、俺はしばらくフリースタイルレースを走っていたのだった。
思い返せばあの頃は随分と楽しかった。レースに出走するウマ娘達としのぎを削って一着を争い、大歓声に包まれながら駆け抜けたターフの感触は今でも忘れていない。
そして、いつの間にか一緒に走るようになってた、ギャラリーの前で走るチャンスをくれたあの鹿毛のウマ娘。あの人とも多くのレースを走った。多くのウマ娘と走ってきたが、あの人が一番強かった。
一度勝ったと思ったら、次のレースでは負けて、また次のレースでは勝って、そのまた次のレースでは勝ったがその次は負けて……といった具合に勝ちと負けを繰り返していた。恐らく、実力はほぼ互角か俺の方が僅かに上か…と言った所だろう。
だがしばらくすると、親にバレてフリースタイルレースに出走できなくなったので、近所を走るようになった。家を出てから魚屋さんの前を通って急勾配の坂を駆け上り、頂上からの景色を楽しみながら河川敷に向かって下っていき、その河川敷の周りを走る…というのを朝と夕方にするのが日課となっていた。
少々長くなってしまったが、ここまでが俺の話。ここからは少女との出会いを話そうと思う。
そんなある日の夕方、俺はいつものように河川敷を走っていたら、前を芦毛のウマ娘の少女が走っていた。「銀髪で綺麗だなぁ」と何も考えずそのまま抜かしたら後ろから驚いたような声が上がり、呼び止められた。
「な、なぁ!」
なんだ?と思い、止まって振り返ると今しがた追い抜かした少女がなにやら色々と喋っている。
「あ、アンタ…人間か?」
「うん」
「ならなんで走ってるウマ娘を余裕で追い抜かせんねん!?なんで人間なのにそんなに速いねん!?」
そこで俺はしまった、と思った。何の気なしに抜かしてしまったが、普通の人間には走っているウマ娘を抜かすことなんてできない。ここで「ウマ娘の血を受け継いで高い身体能力を得た」と言ってしまうのは簡単だが、今それを言ったところで目の前の少女をますます混乱させてしまうだけだろう。なので俺は適当な事を言ってさっさと逃げることにした。
「なんでって、そりゃあ…たくさん走ったから?」
「なんで疑問形!?ってそこちゃうわ!たくさん走ったって、ウマ娘を追い抜かすなんて普通の人間にはできひんで!」
「あとは…走るのが楽しいから。」
「…え、い、今なんて……?」
お?なんか俺の言葉が琴線に触れたっぽいな。これはチャンスだ。今のうちにゴリ押しで逃げるか。
「急いでるからもう行く。」
「えっ!?ちょ…」
少女に背を向けて歩みをすすめる。が、思わぬ言葉が少女の口から飛び出したのだった。
「な、なぁ!今からレースせぇへん?」
「えっ」
それから俺は、芦毛のウマ娘に半ば丸め込まれる形でレースをする事になった。まぁ、久々にレースをするって言うので俺も乗り気だったのもあるが。
コースとなるのは河川敷に整備された道だ。その距離は約2000mと中距離だ。普通の人間にとっては途方も無い距離、しかもウマ娘とレースをするというのだから、正気の沙汰ではない。だが、それは普通の人間にしてみれば、の話だ。
「それじゃあいくで!」
「おう。」
「よーい、ドン!」
「ッ!!」
「ッ!!」
こうして、第一回目のレースが始まったのだった。
「はぁ……はぁ……はぁ……ッ!!くそっ!なんでや…なんでウチは…!!」
「………」
レースを終えた俺達は最初の地点に戻って来ていた。ちなみに結果は10:0で俺の圧勝である。少々やりすぎたかとも思ったが、久しぶりに熱くなっていたので手加減などできなかったか。と思い直す。
「くそ…くそぉおぉおお!!」
少女は涙を流し、血を吐き出すように悔しさを叫んでいた。そんな彼女の様子を、俺は静かに見下ろしていた。ちなみに俺は息を整えながら立っており、彼女は地面に仰向けで倒れていた。
「うっ……うぅ……」
ある程度悔しさを吐き出し終えたら、腕で顔を隠し、その中から嗚咽が聞こえてきた。そんな彼女の様子を見ながらふと思う。ウマ娘の彼女にしてみれば、人間である俺に走りで負けるのは屈辱以外の何者でもないだろう。そんな彼女の様子を見ているとなんだかいたたまれなくなり、背を向けてそっと立ち去ろうとした。
「ちょ…ちょっと待って!!」
不意に彼女が叫んだ。足を止め後ろを振り返ると腕で涙を拭いながらも彼女は立ち上がっていた。
「一つだけ…聞いてもええか?」
「なんだ?」
「そのう…あ、明日も今ぐらいの時間に、ここで会えへんやろか?」
「…え?」
「あ、明日も!ここで、ウチとレースしてくれへんやろか!!」
最初は言葉を詰まらせていたようだが、思い切った様子で俺に言葉を投げかけてきた。
「……マジ?」
最初聞いたときは驚いた。今しがた自分のプライドをベキベキにへし折った相手に、明日も一緒に走ってくれと頼むとは。どうしたものかと思ったが、ふと、レースをしているときの彼女の様子を思い出す。
走っているときの彼女の瞳には、ひたすらに勝利を求め、眼の前に立ち塞がるものを全てなぎ倒してでも勝ってやる、という強く純粋な勝利への渇望が渦巻いていた。それに、彼女の走りにも惹かれるものがあった。
(……あの瞬発力。)
彼女が走っている時の、稲妻が如き瞬発力。今日のレースを振り返ってみても、そのずば抜けた瞬発力にひっくり返されそうになった場面がいくつもあった。これほどの相手はフリースタイル時代に幾度も戦ったあの人以来だ。
この少女は、間違いなく素質を持っている。今はまだ荒削りなところが目立つが、しっかり鍛えていけば将来はとんでもない大物になるだろう。しかし、普通なら周りはこう言うだろう。「買い被りすぎだ」と。だがレース中の彼女にはそう思わせるのに十分なモノがあった。
……もしかしたら、この少女が成長するところを近くで見れるかもしれない。そして将来は自分を圧倒するほどの強者になるかもしれない。そう考えるととても…
血が沸き立つ。
「え、えと…だめ、やろか…?」
目の前で不安げにこちらの様子を伺う少女。ウマ耳は不安げに垂れ、尻尾も元気なくしおれていた。
いかんいかん、考え事に熱中して放ったらかしにしていた。さて、さっさと返事をするか。そう思い、目の前の少女に向き直った。
「だ、だめならだめで」
「いいぞ」
「え」
「明日もここでレースしよう。なんなら、お前さえ良ければ明日だけとは言わず何日でも付き合うが…」
「え、い、いや、でも…ええのか?」
「お前がいいならな。」
「!!あ、ああ!頼むわ!」
返事をもらった少女は嬉しそうに飛び跳ね、俺は少女の未来の姿を頭に思い浮かべていた。こうして、俺とこの少女が夕方にレースをする日々が始まったのだった。
「ちなみにだが、名前は何ていうんだ?」
「あぁ、ウチの名はな…」
「
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「もうこんな時間か」
時刻は午後7時。あたりはすっかり暗くなっている。
「久々にウチの勝ちかぁ〜、先週は2、3勝とかやったか?……てかアンタ、繰り返すようやけど全力のウマ娘相手にレースで勝てるって…それで人間は無理あるで?」
「俺は人間だ。」
「ふふっ、ホンマかいな…じゃ、ウチそろそろ帰るわ」
「また明日な〜」
「ほ〜い」
男は自分の家へ、タマモクロスは寮へ。それぞれの帰路に着いた。
ずっとこちらを見ていた、もう一人の芦毛に気づかずに。
「………」
騒がしくなりそうだ。
俺は(ウマ娘の血を濃く受け継いでいる)人間だ。
言葉が足らねぇ!