ヒトミミウマ息子がゆくウマ娘プリティーダービー   作:コウハクまんじゅう

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そろそろプリティーを書きたくなってきた。



聖蹄祭その2

 

 

 

 メジロマックイーンと別れた後、俺は校内の店を見て回っていた。校内は校内で様々な店をやっており、外の屋台が縁日のようなものだとしたら、中は特徴的な店が多い印象だ。例えば、カフェやメイド喫茶、珍しいものでは美容室などがあった。それらを巡っている途中で入口に大勢の女性客が集まっている店があった。

 

 その店の看板を見てみると洒落た文字で「男装執事喫茶」と書かれており、その傍らには「チームリギル」と書かれていた。

 

 人だかり越しに店内を覗くと、ポッケとのレースの時に知り合ったフジキセキが客にお茶を出している所が見えた。

 

 執事服に身を包み、丁寧に接客する姿はかなり様になっており思わず見惚れているとちょうど目が合って手を振られた。こちらも振り返すとフジキセキが人の波をかき分けて─というよりかはフジキセキが近づいた途端、モーゼの海割りの如く人々がサァ…と横にはけた─こちらへやって来た。

 

「こんにちは!来ていたんだね。」

 

「今色々見て回ってる途中でな。そっちの店は…随分とお洒落な雰囲気だな。」

 

 その言葉を聞いてフジキセキは僅かに口元に笑みを浮かべ誘うように手をこちらへ差し伸ばしできたかと思うと

 

「あなたも入ってみますか?」

 御主人様、とウインクを飛ばして魅惑的なお誘いをしてきた。そのあまりの流麗な仕草に思わずドキリとしてしまい、まわりの女性客も何人か「ミ゙ッ…」と僅かに奇声を発したかと思うとバタバタと倒れていき、中には恨めしそうにこちらを睨む客さえいた。

 

「あ、お、俺はいいや!まだ回ってねぇ店もあるし!んじゃ、またな!」

 鼓動が速まるのを誤魔化すようにその場を慌ただしく後にした。なんとなく頬が熱い気がするのは気のせいだと思いたい。

 

「ふふっ、可愛いところもあるんだね」

 去りゆく背中を眺めながらそうつぶやいた。

 すると外の様子が気になった友人たちが店から出てきた。

 

「フジキセキ、今走っていった彼は知り合いかい?」

 

「はーっはっはっは!ボクの輝きに当てられて行ってしまうとは!なんて美しいボク!」

 

「ワーオ!今走り去っていった彼、とってもクールでした!」

 

「あら、照れちゃってかわい〜♪」

 

「おお?あいつなかなかいい走りすんじゃねーか!うっし、タイマンすっか!」

 

 それぞれの反応を聞きながら、私は再び店の中へ戻るのだった。

 

 

 

「ふぅ…つい全力で走っちまった…誰にも見られてないよな?」

 照れを誤魔化すために後先考えず走ってしまったが、もし見られてたら面倒な事になっていたのでは?と冷静になり始めた頃には時すでに遅し。どうやらすでに何人かに見られていたようだ。走っている時になんか声掛けられた気がするし…まぁ、いいか。

 

 そんな事を考えていると前方から声をかけられた。

 顔を上げると、そこにはポッケともう一人見知らぬウマ娘がいた。ピンク色の髪に、耳にはピンク色のカバーをつけていて、おっとりとし、柔和な印象を感じさせる。

 

「おぉ、ポッケ…とそっちは?」

 

「こいつはダンツフレーム。オレのダチだ。なっ、ダンツ…ダンツ?」

 

 ポッケがダンツフレームの肩をポンと叩き、仲の良さをアピールするが当の本人はそれを意に介さず─というよりも気づいていないのか?─何故かこちらを凝視している。それを不審に思ったポッケが何回か名を呼ぶがそれでも反応せず、それにカチンと来て声のボリュームを上げたところでようやく気がついた。

 

「…ぅあっ!?え、えと…なんだっけ」

 

「なんだっけっておま…大丈夫かよ??」

 

「あ、うん!大丈夫!大丈夫…だよ!」

 

 ポッケの言葉にもどこかうわの空の様子。そしてその視線は尚もこちらに釘付けである。よく見るとほんのりと頬が赤いように見えるが…うーむ…俺に何かあるのだろうか…

 

「俺は源治だ。よろしくな、ダンツフレーム。」

 

「…!は、はい!よろしくお願いしましゅ源治しゃん!!」

 

 こいつほんとに大丈夫だろうか?めちゃくちゃ噛みまくってるしそれに気づいているのかいないのか。目もぐるぐると鳴門巻きのように回っていて混乱しているようだ。隣のポッケも友人の変わり様に驚いて目を丸くしている。

 

「お、おう。よろしく…んで、お前らは何してんの?」

 

「あ、ああ。オレ達は校内の店をある程度回ってきて、これから何か美味いもんでも買いに行こうかってところなんだ。お前も来るか?」

 

 ポッケの言葉にダンツフレームの耳がピーンと立った。

 

「せっかくのお誘いだが、あいにく俺はこれから校内を見て回るつもりなんだ。」

 

 俺の言葉にダンツフレームの耳がしゅん…と垂れた。

 随分と忙しないな。ウマ娘の感情は耳と尻尾に顕著に現れるらしいが、この短時間で何回も動くとは…ひょっとして情緒不安定なのだろうか?

 

「そうか、じゃあまたな!」

 

「おう。またな〜」

 

「ま、また後でっ」

 

 頬を真っ赤に染め、顔を伏せ気味のまま去るダンツフレームと友人の異変に終始目を丸くしながら付いていくポッケ。

 

「…何だったんだ?」

 

 分からない。が、これでまた校内を見て回れる。

 そう思った時だった。

 

「ふぅン…君がポッケ君が言っていた『源治くん』か…」

 

「!?」

 

 突然、真後ろから声が聞こえてきた。

 驚いて飛び退くと、そこにはさっきまで居なかったはずの白衣を纏った怪しげなウマ娘がいた。

 

「……誰だお前」

 警戒心を隠すことなく、訝しんだ表情を向けるがそれを気にした様子はなく「アグネスタキオンだ。」とあっけらかんと言い放った。

 

「なんで俺の名前を知ってんだ?」

 

「ポッケ君からよく聞いていたからねぇ」

 

 ポッケめ、随分と面倒なやつに話しやがったな。

 言葉には出さず心の内でそうつぶやいた。反射的に周囲を見渡し、人がいないか確認したが間が悪いことに誰もおらず助けは呼べなさそうだ。こちらの考えを知ってか知らずか、アグネスタキオンは一歩ずつこちらへ歩み寄ってくる。

 

「君のことはよく聞いているよ、源治くん。ポッケ君の末脚と真っ向から張り合えるなんてウマ娘でもそういない。君は…本当にすごい。」

 

「…そうか。」

 

 コツ…コツ…と靴音を響かせ、確実にこちらへ近づいてくる。

 

「なぜ君は人間でありながらウマ娘とレースができる?体を鍛えた?いいや、違う。どれほど鍛えようとも、生身の人間がウマ娘に勝つなどありえない。しかし君はそれを当然の如くやってのけている。なぜか?」

 

 言いながらもその歩みは止まることなく真っ直ぐにこちらを目指している。 

 

「以前、こんな話を聞いたことがある…『ウマ娘の身体能力は人間の子供にも遺伝する』という話だ。最初聞いたときから興味があってねぇ……色々と調べてみたがどうやら極稀にではあるが、人間の身でありながらウマ娘並の身体能力を得ている者はいるらしい。しかも、そのどれもがその時代の強者と渡り合えるほどに速かった…と」

 

 アグネスタキオンの目がにわかに輝き出した。

 まるで面白い物を見つけた子どものように。

 

「非常に興味深い!なぜウマ娘の血を引く人間はそれほどまでに速いのか?気になって仕方がない!」

 

「……」

 

 こいつはやばい。そう肌で感じていた。

 ここに長居しても碌な事にならない。素早く判断すると即座に動き出した。

 

「俺、もう行…」

 

「是非とも実験体(モルモット)にしたいものだねぇ」

 

「ッ…!?」

 

 顔に息がかかるほどの距離を一瞬で詰められていた。狂気で濁った瞳が鈍く光って俺を捉えている。

 

「お前…」

 

「私は知りたい。」

 

 こちらの言葉を遮って狂気の独白は続く。

 

「この肉体で到達しうる限界速度を。ウマ娘、その可能性の果てを。」

 全身の毛がよだち、目の前の景色が歪むような感覚に陥る。

 これ以上は本当に取り返しがつかなくなる。一刻も早く逃げなければ、という思いに駆られ、体を動かそうとする。

 

「ッ…!いい加減に…!」

 

「そこまでです。タキオンさん。」

 

 怜悧で凛とした低く落ち着つきのある声が狂科学者(マッドサイエンティスト)の一方的な独白を遮った。アグネスタキオンは声の主を知っているのか顔を気まずそうにゆがめて声の方向を向いた。

 俺もそれにならって同じ方向を向くと、腰まで届く黒髪のストレートヘアのウマ娘がいた。

 

「…やぁ、カフェ」

 

「……やりすぎですよ。」

 

 黒髪の彼女の登場で先ほどまで饒舌だったアグネスタキオンは人が変ったように静まった。

 

 彼女の参入によりなんとか難を逃れた…が。彼女何者だ?暴走していたをこいつを一声で制すとは…

 そんな事を考えていると少女から声をかけられた。

 

「源治さん…ですよね…?…大丈夫ですか…?」

 

「あ、あぁ。ありがとう。お陰で助かった…というか、何なんだよこいつ?」

 

「……その人のことは、気にしなくて…大丈夫です…」

 

 たった今気づいたが、この2人の間では何かあったのか、こうして話している間にも互いに目を合わそうとしなかった。

 聞いてみようとも思ったが、人の事情にはあまり踏み込みたくなかったのでそっとしておくことにした。

 

「お詫び…と言ってはなんですが……コーヒーでも飲んでいきませんか?」

 

「…頂く。というか君も俺の名前知ってるんだな」

 

 俺の言葉に目の前の少女はピクリと耳を動かし、申し訳無さそうに目を細めた。

 

「はい…ポッケさんから聞いています…あ…私はマンハッタンカフェです…」

 

「もう知っていると思うが、源治だ。」

 

 それに軽く頷くと黒髪のミステリアスな雰囲気の少女…マンハッタンカフェは「では、行きましょう」と先導して歩きだしていった。

 まったく、騒がしいことの連続でどうも気疲れしてしまった。コーヒーを頂いた後はタマとオグリに合流して一緒に回ってもらおうか?

 そんな事を考えながら俺はマンハッタンカフェとこちらを興味深そうに観察するアグネスタキオンに連れられ歩くのだった。

 

 

 

─────────────────────────

 

 

 

 

「お邪魔します…ってうおっ!?なんだこれ!?」

 

 部屋に入っての第一声がそれだった。なぜなら向かって右側のスペースではごみの山が天井にまで積みあがっており、床にも様々なものが散乱していたからだ。

 

「……こちらへどうぞ」

 

 そう手招かれ、向かって左側の整理が行き届いたスペースに通された。少女が座ってコーヒーを淹れるタイミングで俺は向かい側のこじんまりとした椅子に腰かけた。

 

「…すみません、このような場所にお招きしてしまい…そして、タキオンさんが…ご迷惑おかけしました…」

 

 言いながら、コーヒーが淹れられたマグカップをこちらに置いた。保護者?と言いかけたが恩人に向かってそれは失礼なのでなんとか飲み込んだ。

 

「何かあったのか?」

 

 そう問いかけると、マンハッタンカフェは気まずそうに目を伏せてそらした。聞かれたくないことなのだと即座に理解し、申し訳なく思いながらコーヒーに口を付けた。

 

「…ん?これ美味いな」

 

 話題を逸らすために飲んだコーヒーだったが、これが予想外に美味しかった。それを聞いたマンハッタンカフェは嬉しそうに微笑んだ。

 

「…ありがとうございます…」

 

 次いで棚を見やると、いくつもの容器─キャニスターだろうか?─が保管されていた。よくにおいを嗅いでみると、コーヒーの独特な匂いが漂ってくるのが分かった。

 

「コーヒー、好きなのか?」

 

「はい…趣味で集めていまして…」

 

 それからしばらくはコーヒーについて語ってもらい、その博識さに舌を巻いていた。話している最中に一瞬、あの狂科学者(マッドサイエンティスト)の方をみやると、パソコンにかじりついて一心不乱に何かの映像を見ていた。

 それを横目で見ながらコーヒーを飲み干し、静かにテーブルに置いた。 

 

 

「んじゃ、俺はそろそろ行くわ。コーヒーごちそうさん、美味かったぜ。あと色々とありがとうな。ホントに助かった。」

 

「はい……お気をつけて……」

 

 ぺこりと頭を下げると、ごみの山の間からアグネスタキオンの方を見たが相変わらずパソコンに夢中になっておりこちらの方を一切見ようとしなかった。

 狂ったように画面に食い入るその姿に尋常でないものを感じ取り寒気を覚えた。それと同時にある違和感も覚えた。

 

(…?誰かいる?)

 

 俺と、マンハッタンカフェと、アグネスタキオン。部屋にはこの3人しかいないはずなのに、もう1人いるような気がしてならないのだ。

 

(…まいっか)

 

 小さな違和感に背を向け、俺は部屋を後にしたのだった。

 

 

 

 

 

───────────────────

 

 

 

 

 

「……うん?どうしたの?…うん…うん……ふふ、そうなんだ…」

 

 源治が去った後の理科準備室にて。マンハッタンカフェは虚空に向かって相槌を返し、突然笑った。まるで、そこに誰かいるかのように。

 

「……お友達には、追いつけたかい?」

 

「……」

 

 それに応じず、鋭く冷たい視線のみを返す。

 土足で自身の世界を踏み躙り、勝手に消えた光を睨む。

 

 しかし突然視線を外して驚いたかと思うと「ちょ、ちょっと…!?」と腕を伸ばして何かを引き留めようとする。それと同時に一陣の風が吹き抜けていった。

 

 

 

 

─────────────────────────

 

 

 

「あ~、あのコーヒーまた飲みてぇなー」

 

 誰もいない廊下でそう溢す。口内にはいまだにあの味が残っていた。彼女の作るコーヒーは飲んだ後の余韻まで完璧だった。

 

「さぁ~て、次は…ん?」

 

 ふと何かの気配を感じ取り、振り返るが誰もいない。不思議に思い再び前を向いて進もうとするが、突然風が背中に吹き付けた。驚いて辺りを見渡すが、窓は一つも開いておらず、風が吹き込む余地はどこにもなかった。

 

「……気味悪ィ」

 

 そう吐き捨て、何かに追われるようにその場を走り去った。

 廊下の奥に揺らめいた影を見ないふりをして。

 

 





またウマ娘ちゃんの脳を焼いちゃった源治くん。そしてカフェに命と人権を守ってもらった源治くん。この一件でカフェには感謝を、タキオンには畏怖の念を覚えたそうな。あ、ちなみに

源治の身長は175cm

タキオンの身長は159cm

つまりタキオンに上目遣いされながら「私のモルモットになってよ…」されてるってこと!?モルモットとしてはこの上なく羨ましいシチュであります(源治から目を逸らしつつ)

一応聖蹄祭はあと一話を予定しております…がひょっとしたらまだ続くやもしれません。
これからもゆるりと楽しんでいってくれたら幸いです。

【追記】
活動報告にも記載した通り、タキオンとカフェのところを変更しました。映画の世界観に即した物となっております。
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