ヒトミミウマ息子がゆくウマ娘プリティーダービー   作:コウハクまんじゅう

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into the battlefieldが似合うようなレースの導入を書きたい(願望)



聖蹄祭その3

 

 

「よぉ。タマ、オグリ」

 

「む?ふぇんひは(源治か)?」

 

「おお源治!…うん?源治、お前ちょっと顔色悪いんとちゃうか?何かあったん?」

 

 下から顔を覗き込み、こちらの体調を気遣うタマモクロス。それに礼を言ってから心配は無用だと伝えると「体調悪くなったらすぐに言うんやで?」と念押しされた。オグリもどっからか手に入れたドーナツを一息で飲み込んだ後に俺の体を気遣ってくれた。それにも礼を言った後に心の内で(いや、やばいのはむしろ体より心の方っていうか…)とひっそりつぶやいた。

 アグネスタキオンの襲撃とマンハッタンカフェからコーヒーを頂いて一服ついた後、俺はタマとオグリに合流して屋台や校内の店を回っている。

 

「にしてもすげぇなートレセン学園って。施設の規模もえぐいし、ここにいるウマ娘はどいつもこいつも速そうなのばっかだな。」

 

「あったりまえやで!なんたって中央(ここ)は日本一のウマ娘育成機関なんやからな!」

 

「あぁ。ここに来てから新しい仲間もできて、毎日楽しいんだ」

 

 俺の言葉をきっかけに2人してトレセンでの思い出を俺に語ってくれた。それを聞きながら俺は心の内で(まぁ、その中央の中でもお前らは頭2つか3つくらいは飛び抜けているがな…)と思った。2人の思い出に耳を傾けながらも俺は周囲の様子を観察していた。

 

 やはりここのウマ娘はどいつもこいつも只者ではない。見れば見るほどそう感じさせる…が、それ以上に個性が強いのも事実だ。……うん?あそこにいる葦毛のウマ娘は確か…メジロマックイーン、だったか?なんかバズーカを持ったもう1人の葦毛のウマ娘に追いかけ回されているが…まぁ楽しそうだしいいだろう。お、向こうにいるのはポッケとルー、メイ、シマ、ルマか?なんかイケイケなサングラスかけてすんごいはしゃいでいやがる。

 

 2人の思い出を聞きながら歩いていると、突然タマが「あっ!」と声を上げて固まった。何事だ?と思いタマの視線の先を辿っていくと複数人のウマ娘がいるのが目に入った。向こうもこちらに気づいたらしく、駆け寄よってきた。 

 人数は4人。鹿毛の艷やかな髪を三つ編みにして肩に垂らしているウマ娘と、赤い風車のような髪飾りをつけているウマ娘、それから桜の花びらの髪飾りをつけ、まるで犬の耳のような独特な髪型をしたウマ娘。最後に青みがかった美しい銀髪をしている清廉さを感じさせるウマ娘。

 

「おぉ、みんな!ここで会えるとは思わなかった」

 

 どうやらオグリは4人のことを知っているらしく話しかけたが、4人の視線はオグリやタマではなく真っ直ぐに俺の方を向いていた。俺を見る4人の瞳は皆一様に好奇心に満ちており、今にも「キラキラ」と星が散りそうなほど。そしてタマはと言うと、鹿毛のウマ娘を見て怯えているのか体が小刻みに震えていた。

 

「こんにちはオグリ先輩!あの、この人は…?」

 桜の髪飾りをつけたウマ娘がオグリに訊ねる。垂れた犬の耳のような独特の髪型と人懐っこい声色も相まって、まるで犬のような愛嬌がある。

 

「私の友達だ。」

 

「源治だ。よろしく」

 

「げ、源治さん…!あ、わ、私、サクラチヨノオーって言います!」

 

 ふさふさと髪を揺らしながら元気よく自己紹介をするサクラチヨノオー。あまりの愛嬌の良さに思わず髪をモフり頭を撫でたい衝動に駆られそうになるがぐっと堪える。他の3人の方へと目線を向けるとまず赤い風車の髪飾りをつけたウマ娘がぺこりと頭を下げた。

 

「ヤエノムテキです。以後お見知り置きを。」

 

「スーパークリークです〜よろしくお願いします」

 

「メジロアルダンと申します。」

 

 次々と自己紹介を貰った。どうやら、風車の髪飾りをつけているのが「ヤエノムテキ」、艷やかな鹿毛を三つ編みにしているのが「スーパークリーク」、青みがかった銀髪で穏やかなのが「メジロアルダン」らしい。3人とも個性は揃いのトレセンの中では比較的大人しいように見える。

 

「よろしくな。それでタマ…あれ?タマ?」

 

 タマに話しかけたのだが返事がない。それを不審に思った俺は辺りを見回すが見つからず、オグリに助けを求めた所俺の背後を静かに指さした。それに従って後ろを振り返ると、俺の背中にしがみついて小さく震えているタマがいた。

 

「……」

 

「………んん!?」

 

 「何やってんだ」という困惑と「俺に気づかれずにいつの間にか背中に回ってるとは…流石稲妻だな」とタマのスピードを素直に称賛する思いが混ざって何とも言えない感情になっていた。本来突っ込みはタマの役目なんだが…そう思いながら俺は何故か急に縮こまってしまった稲妻に話しかけるのだった。

 

「…何してんだ」

 

「うぇっ!?あ、い、いや〜これはその……ハ、ハハハハ!素早く後ろに回り込んだウチに気づくとは流石は源治やなぁ!ハハハハ!」

 

「ここで笑って誤魔化すのは無理があるぞ、タマ。」

 

 苦し紛れに誤魔化そうとするのを容赦なく切り捨てるオグリ。お前タマが必死に捻り出した言い訳をそんな容赦なく切り捨てていいのかよと意外と容赦無いオグリに驚きつつ、タマに小声でそっと訊ねる。

 

「で?本当はなんで隠れてたんだ?」

 

「う…じ、実はな…」

 タマが話し出そうとしたその時。

 

「あらあらタマちゃん。源治くんの後ろで縮こまってどうしたんですか?」

 と、おっとりとした声で訊ねるスーパークリーク。

 おお、この人仲間思いなんだなと思いながらオグリと他の3人を見ると、何故か苦笑いをしながらタマの方を見つめていた。どうやらタマを哀れに思っているような空気だが、なぜタマにそんな感情を向けるのか理解できずに困惑していると、タマが少々声を震わせながら話し出した。

 

「い、いやぁ〜…なんでもあらへんで」

 

「む〜、タマちゃん。無理をしたら、めっですよ?」

 

 右手の人差し指を立て、左手を腰に当てておっとりとした声でタマを叱るスーパークリーク。その姿は仲間の体調を気遣う学生というよりかは明らかに子供の体調を心配するお母さんである。え、この人本当に高校生だよなと困惑していると、タマが動揺した声でこたえた。

 

「か、かまへんかまへん!ウチは本当に大丈夫…」

 

 タマの言葉を最後まで言わせずに、スーパークリークは何かを取り出そうとする。まぁこういう奴は自分が限界の時でも大丈夫と言って周りには平気なフリするから多少強引にでも休ませないと何処までも頑張るからなぁと思いながら見ていると、タマの顔が青くなった。どうやら視線の先にはスーパークリークが取り出したものがあるようだが…一体何を取り出したんだ?

 そう思いながら視線を向けると、俺は自分の目を疑うものを見た。

 

「………えっ」

(が、ガラガラ…だと?)

 

 素でびっくりした。え、何だありゃ?あ然としながら2人の事を見守っていると、横から誰かが話しかてきた。

 

「あ、あのぅ、源治さん」

 

「ん?…ああ、サクラ…チヨノオーだったか?どうした?」

 

「タマモクロスさんなんですが…もう助からないかもです…」

 

「え」

 え?助かんない?どういうこと?

 チヨノオーの言葉の意味がわからず混乱していると、タマがか細い声で何か言っている。よく耳を澄ませると…

 

「だ、だれかぁ……助けてぇ…」

 

「…あんな弱々しいタマ初めてみたかもしれねぇ」

 

 呆然とつぶやいていると、スーパークリークがタマに何か言っている。

 

「さあタマちゃん。保健室でおねんね、しましょうね〜♪」

 

「み゛ゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!゛!゛」

 

こいつやべえ。

スーパークリークはヤバい奴とこの短時間でハッキリ印象付けられたのであった。

 

 

─────────────────────────

 

 結局あの後タマは保健室に連れて行かれ、オグリやチヨノオー曰く「今頃はでちゅね遊びの餌食になっているだろう」とのことだ。なんだよでちゅね遊びって。実力面でも個性の面でもほんと中央(ここ)やべぇなと思うのだった。今日一日俺の精神が持つ気がしないね。さて、思わぬハプニングでタマとスーパークリークが離脱したが、俺はその後は何事もなかったかのように残りのメンバーで店を回るのだった。

 

「つかぬことをお伺いしますが、オグリさんとタマモクロスさんのお2人は源治さんとどこで知り合ったのですか?」

 

 4人と談笑しながらあれやこれやと店を回っていると、メジロアルダンからそんな質問が飛んできた。

 

「ああ、源治と会ったのはタマとレースしている所を偶然見つけて私も走ってみたいと言い出したところから…」

 

 と、正直に答えてしまったオグリ。

 おい待てェそれを俺のことを何も知らない人が聞いたって混乱するだけだろ、と言おうとしたが時すでに遅し。3人の耳にはしっかり「タマとレース」という言葉が入ってしまった。

 

「「「………は?」」」

 

 きれいに声を揃えて首を傾げる3人。おぉ、後ろに壮大な宇宙が広がっているように見えるぜ。何してくれたんだオグリィ。

 そんな俺の胸の内をよそにオグリはなぜ3人が首を傾げているのか理解できていない様子。こいつ俺と走りすぎて感覚バグっていやがる。

 

「……えーと、オグリさん。お訊ねしますが、今なんと?」

 

「えっ、だから源治とタマがレースしている所を…」

 言いながらハッとした表情になる。ようやく気づいたようだ。だが時すでに遅し。なんか今日手遅れになること多くないか?

 

「……ええと…ヤ、ヤエノさん。オグリさんなんと仰ってましたか?」

 

「聞き間違いでなければ、『源治さんはタマモ先輩とレースをしていた』……と。」

 

「わ、私もそう聞こえました…」

 

「「「………????」」」

 またもや背景宇宙になる3人。もういいッ…休めッ…!

 

「げ、源治…どうしよう…」

 わたわたと手を動かし、花瓶を割った子どものように慌てるオグリ。

 

「もう言っちゃったんだからどうもこうもないだろ。」

 まぁ、言ったところで信じるとも思えないし、適当に『あ、今私って夢見てんだな』で終わるだろ(軽率)

 

「あ、あの!」

 

 オグリとコソコソと話していたら、剛毅木訥少女…ヤエノムテキが話しかけてきた。お、夢か現実かの確認か?頬を張ってくれなんて俺に頼むなよ?

 

「よろしければお手合わせ頼んでもいいでしょうか!?」

 

「なんでだよ」

 

「えっ」

 

 なんでだよ。なんでそんな簡単に信じれちゃうんだよ。素直すぎんだろ。素直な子は好きだよ。

 

「あ、あのっ…だめ、でしたか…?」

 

 そんな潤んだ瞳かつ上目遣いでこっちのこと見ないで。俺は純真な眼に弱いんだ。

 

「だめなわけねーだろ。俺は夕方に近くの河川敷…〇〇河川敷って言ったほうが良いか。いつもそこで走ってっから、走りたくなったらそこに来い。」

 

 なんて事を言ったら目を輝かせて「はいっ!」と元気よく返事をしてくれた。この子大丈夫?将来悪い人に引っかかったりしない?

 

「…というかなんでそんな簡単に信じたんだ?てっきり法螺話だって笑い飛ばされて終わるもんだと思ってたんだが…」

 俺が困惑した感じを出して尋ねると、ヤエノムテキはこちらの瞳をまっすぐ捉えた。

 

「オグリさんは嘘をつく方ではありませんし、そちらの様子からしても本当のことなんでしょう。なにより…」

 そこで話を区切って改めて俺をつま先から頭のてっぺんまで見ると、静かに口を開いた。

 

「……あなたから滲み出ているただならぬ覇気が、なによりの証拠です。」

 

「………」

 驚いた。てっきり100%純粋な子かと思っていたが、彼女は彼女なりに色々根拠というか…感じている物があったんだな。

 

「では、私も時々伺わせて頂きます。」

 

「えっ、ア、アルダンさん!?」

 メジロアルダンも口を開き、チヨノオーはそれに驚く形で続いた。

 

「ヤエノさんが言うんだから、きっとそうなのでしょう。ヤエノさんにそこまで言わしめた源治さんの走り、私も見たくなってきました。」

 

 こちらを見定めるような目で捉えるメジロアルダン。

 

「わっ、私も!私も源治さんと走ってみたいです!」

 2人に負けじと声を張り上げ、名乗りを上げるサクラチヨノオー。

 まじか、こんなことってあんのかよ。と驚きながら2人を見る。

 

「……まぁ、いいけどよ。やるなら明日にしようぜ。今日はもう疲れちまったよ」

 

「決まりですね。では、明日。お手合わせお願いします」

 そう話を取りまとめるヤエノムテキ。

 なんか今日…色々起こり過ぎじゃねーか?そう思う俺であった。

 

 

 

─────────────────────────

 

 

 

 俺がオグリやタマと走っている事が露呈した後も、俺含めて5人で仲良く店を回った。そんなこんなでもう夕方。タマとスーパークリークにはとうとう会えなかったが…4人曰く「まぁあの2人なら大丈夫だろう」とのことらしくこの日はこれにて解散となった。

 

 もう夕方ということもあって、人もだいぶ減っており閑散としているトレセン学園の中を歩いて校門を目指していると、不意に独特な甘ったるい匂いが鼻孔を刺した。

 

「!?……この匂い…」

 瞬時に辺りを見渡すと、視界の端に一瞬白いベールが見えたような気がした。

 もう一度探そうとするが、すでにどこかへ消えてしまっており見つけることはできなかった。

 

「……まさかな。」

 きっと疲れているんだろう。そうだ。そうに違いない。イケメンなウマ娘にからかわれたり、狂科学者(マッドサイエンティスト)に絡まれたり、果てには学生なのに母性の塊すぎて学生に見えないウマ娘に遭遇したり…こうして改めて並べるとすげぇな。さっさと家帰って寝よ。

 

 そう決めてさっさと歩き出そうとしたその時。

 

「……あの」

 

「ッ!?」

 

 突然背後から声をかけられた。なんか今日はやけに背後を取られるな。いや、それよりもこの声は…間違いない。

 

「…ひさしぶりだな、スティル。」

 背後を振り返ってその少女の名を呼ぶ。スティル、と呼ばれた少女はピクリと体を震わせると頬を紅潮させた。

 

「ッ…!!その声、やっぱり源治くんだよね…?ああ…この時を何年待ったことか…やっと会えたね、源治くん…」

 

 両手を頬に当て、恍惚とした表情を浮かべる目の前の少女。

 その少女は白いヴェールを頭に被っており、その姿は童話に出てくる花嫁を連想させる。お淑やかで丁寧な言葉遣いとは裏腹にその動作と妖艶な声色から滲み出る狂気。

 

「相変わらず、だな。スティル。」

 

 夕焼けに染まるトレセン学園。それは狂気に満ちた少女とそれに相対する男の行く末を見守っているかのようだった。

 

 





憂鬱な月曜日を乗り越えた。そんな貴方にスーパークリーク。

シングレ組登場。本当はシングレ組はさらっと流して、最後に出てきた愛が重い狂戦士を中心に書くつもりでしたがうまく行きませんでした。聖蹄祭自体はそろそろ終わりですが、その後日談的なものはまだ続くかと…

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