ヒトミミウマ息子がゆくウマ娘プリティーダービー 作:コウハクまんじゅう
皆さんお久しぶりです。なんとか形になったのでまずはこれを投稿します。ちょっと短めです。
それと、今は新しい小説も執筆しておりますので、今後はこっちの投稿速度が遅くなるかもしれません。よろしくお願いいたします。
あ、よかったら新しい小説も見てってね!(宣伝)ウマ娘とゴジラがクロスオーバーしたほのぼの日常物となっております。
襲撃
見渡す限り、果てしなく闇が広がっている。ここは…?そう思い体を動かそうとするも、思うように動かせない。金縛りだ、とすぐに思い当たった。経験があるわけではないが、直感でそう感じた。
何なんだここは。なぜ俺はこんな所に…そう考えていると、暗闇の中に僅かに光り輝くものがあった。か細い光なのに、俺の目をハッキリと捉えてくる。お陰で僅かな光なのにも関わらず、眩しかった。
「……何だあれ」
気づいたときには光に手を差し伸ばしていた。
あと少しで掴める…そう思った時だった。
「!?これは…」
突如、頭の中に走っている時の記憶が流れ込んできた。どうやら、スティルとレースをしている時の記憶のようだった。前を走る小さな背中と純白のヴェールが遠ざかっていく。俺はそれを唇を噛んで悔しげに見つめていた。だが…
ドクン…
「………」
鼓動が高鳴る。体中の血液が熱く滾り、体の奥底から力が湧き出てくる。目の前の景色がひどく歪んで見える。
脚を一歩前に出す。ひどく地面が柔らかい気がした。
「………」
思い出すのはタマやオグリとのレース。あの時の俺は何故だかあの感覚を掴むことができなかった。次いで思い返したのはポッケとのタイマンとスティルのレース。何故かこの2人の時は、俺は何かを掴みかけた。
タマやオグリとのレースには無くて、ポッケやスティルとのレースにある物…
「……あぁ、そうか」
なんとなく、なんとなくではあるが…
「何か、分かったかもしれねぇ」
俺がそれに気づいたのと同時に、意識が急速に引き戻されていくのを感じた。
後頭部に当たる柔らかく温かい感触と、頬を撫でる冷たい風。それによって俺の意識が完全に覚醒した。
「ん…」
小さく呻いて目を開けると、夜の空に映える白いヴェールと真紅の瞳がぼやけた視界の中に映り込んだ。
「…はっ!?」
勢いよく上半身を起こし、あたりを見渡す。どうやら自分は河川敷で寝てしまっていたらしい。寝る前には確か…
「…目が覚めましたか。ふふっ、もう少し寝ていても良かったのに…」
静かにこちらへ話しかけてくる。するりと耳に入る、甘く艷やかなこの声色は…
「…スティル。」
「私と走った後、すぐに寝てしまったんですよ?…私の膝で。」
「!?」
驚いてスティルを見やると、芝の上で正座をしているその姿と目を開けた時にスティルの顔がいの一番に目に入った事から自分は膝枕で寝ていたという事実をまざまざと突きつけられた。
「……悪いな」
「いえ。寝ている貴方の顔が可愛らしくて苦ではありませんでしたし……中々体験できないことですから……ふふふ…」
と、艶かしく笑う。自分の寝顔を見られたことと、少女の膝枕で寝てしまったことへの羞恥から黙っているとスティルインラブがスカートをはらって立ち上がった。
「さて、寮の門限はすっかり過ぎてしまいましたが……そろそろ帰りましょう。」
言いながらこちらに背を向けて静かに歩き出した。俺もそれに習って立ち上がり、自分の家への帰路についた。……去り際にスティルから「またお願いしますね」と甘く囁かれて内心ドキリとしたのは内緒だ。
「はぁ〜疲れた…いてて、久々に限界スレスレを行ったな…」
久しく全力で走ったので体に中々負担がかかっていた。だが、今日一晩寝たらおおかた良くなるだろう。
「…スティルのやつ、あの頃よりもすごかったな…色々と。」
後頭部に残る温かく柔らかい感触が未だに消えない。それに後から気付いたが、俺の体には彼女の独特な甘い匂いが付いていた。油断すれば酔ってしまい、今にも理性を手放してしまいそうな甘美な匂い…
「っとと、いけねえ。疲れて変なこと考えちまう…さっさと帰って寝るか。」
月明かりの僅かな光と、街灯から漏れ出た明かりが道をか細く照らし出す。息をするたび喉が凍りそうな夜風を吸いながら歩く速度を上げたその時。何か違和感を感じて思わず立ち止まった。
「…?なんだ?」
体が何かを察知したのか反射的にぞわぁ…と、鳥肌が立った。
今まで経験したことのない気持ちの悪さと悪寒。一瞬立ち眩みがしたが気力で持ち堪えさせる。
「………こいつぁやべぇな」
何かただならぬ物が近くにいる。近くにいて…こちらを見ている。
「…チッ」
ここに長居は無用。早々に立ち去るのが吉と判断すると瞬く間に駆け出し、すべてを置き去りにする勢いで加速した。
「…!?」
後方…恐らく6、7バ身は差があるが…足音が聞こえる。しかしこれは…
「……ハハッ、嘘だろ…おい」
手が震える。膝が笑う。心臓が踊る。
すべて凍えるような寒さから来るものではなかった。
あのスティルインラブでさえここまでのものではなかった。しかし今、俺を襲っているこれは…
「…クソッ!」
それを認めたくないがゆえに、振り払うように速度をグンと上げた。
しかし、全力で走ったあとの体には流石に無理があったようで思うように伸びなかった。
「ぐ…」
それに対して、後ろに控えている何者かは着実にこちらへ迫ってきていた。暗闇のせいで姿を捉えられず、音だけで位置を把握しているが徐々にスピードを上げてきている気がする。
この後ろからの強烈な圧迫感は、オグリのそれに似ているが遥かに後ろのやつが上回っているように感じた。
「一体何者なんだ…」
一気に抜き去るわけでもなく、こちらを手のひらの上で転がして楽しんでいるかのよう。
気に食わねぇ。
そう吐き捨てると、道の少し先を睨んだ。闇に紛れてあまりよくは見えなかったが、ちょうど右に大きくカーブしていた。いつまでもちんたらやっていたら埒が明かない。そう判断すると、俺は次のカーブで勝負を決めに行くのだった。
「ッラァア!!」
すべての力を使い果たす勢いでカーブに突っ込んだ。いくら疲労した体と言えど、これで流石に後ろのやつも引き剥がせるだろう。そう思ったときだった。
メギィイ…
刹那、背後から聞こえてきた地面を踏み抉る音。まさかこいつもコーナーが得意なのか?そう考えたときにはすでに俺の真後ろに着けられていた。
「!?」
いつの間に、なんて悠長に考えている暇はなかった。そいつは後ろにいてもわかるほど有り得ない加速力でぐんぐんと伸びていき、遂に俺の隣に並んだ。
「ッ…!!」
一瞬ちらりと横を見ると、そいつと目があった。まるで狂犬のように赤く光る目をギラつかせ、こちらを捉えていた。その目に俺が気圧されていると悟ったか、口の端が一瞬つり上がったように見えた。
「てめ─」
ズン
言い終える前に、そいつはまた加速した。
俺はそれを呆然としながら見つめることしかできなかった。恐ろしく華麗な身のこなしでカーブを駆け抜けていくと、あっという間に姿が見えなくなった。俺はそれを見届けると速度を落としてその場に立ち尽くしていた。
「……」
俺は、そのレースを俺が勝てるかどうかは別として、コーナーでなら誰にだって負けない自負がある。実際、現段階では最終コーナーで俺についてこられるのはタマぐらいだ。
「…ハハッ」
口から乾いた笑いが溢れる。
諦め、絶望、悔しさ…そのどれから来る物ではない。
「んだよ、府中にもまだいるじゃねぇか…バケモンが。」
楽しげな笑い声が、静かな夜に溶け込んでいった。
「……」
そしてそれを影から見ていた者が一人。しかし、源治は終始それに気づくことはなかった。
なんか日曜日を黙らせてそうな狂犬が来ましたね(すっとぼけ)