ヒトミミウマ息子がゆくウマ娘プリティーダービー   作:コウハクまんじゅう

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 お久しぶりでございます!
 なんとか今年が終わる前に投稿できる…というかもう今年も終わりなんですね。早いものです。
 今回は(レース)ないです。



マミー・ザ・クリーク

 

 

 どうやらこの世の中には『事実は小説より奇なり』という言葉があるようだ。実際に起きる事の方が小説よりも変わっているという意味らしい。

 どこぞの英国紳士が言った言葉らしいが、詳しい事は忘れた。

 さて、何故俺がこんな事を考えているかと言うと、これがなかなかどうして的を射ていると最近、というより今まさに身を持って体感しているからだ。

 

「ふふ、楽にしていてくださいね〜」

 

 慈愛に満ちた聖母のような顔でこちらを覗き込み、栗毛の長髪が右肩にしなだれかかる。鼻腔には実家特有の落ち着く匂いを、後頭部には柔らかな太腿を感じながら、俺は小さく呻いて返事をした。

 

 それに満足げに頷くと、おもむろに額に手を当ててゆっくりと撫で始めた。その心地よい感触に身を委ね、薄れゆく意識の中に赤子をあやすが如く優しげな歌声を聞きながら俺は静かに意識を手放した。

 

 日が落ちるにはまだ早い、夕方の河川敷。俺は大の字になりながら、スーパークリークに膝枕をしてもらっていた。

 

 

 

 

 なぜこんな事になっているのか。時は少しばかり遡る。

 

 

 今日に限って俺は、いつもより少しばかり早く家を出て河川敷でランニングをしていた。特に理由はない。家に籠もっているのは落ち着かなかっただけだ。

 

「はっ…はっ…はっ…」

 

 走りながら考える。あの感覚について。

 アレが来るときは決まって最終直線、しかも自分の前を誰かが走っている時だ。

 しかもいつも来るわけではなく、自分が文字通り全身全霊で走っている時にしか来ない。だが、もしもアレが自分の意のままに発動できるとしたら…

 

 そんなことを考えながら体を温め、走る準備を整えていく。今思い返せばこの時の俺はいつもなら周囲へ意識を配る事など容易いはずなのだが、連日のレースで注意力が散漫になっていた。

 

「はっ…はっ…は…うおっ!?」

 

 足元が狂い、道を踏み外してしまったのだ。そしてそのまま河川敷の坂を転がり、地面に投げ出された。うめきながら立ち上がろうとするが、足首をひねったのか痛みで立ち上がれない。

 助けを呼ぼうにも周囲に人がいないので万事休すかと思われた、その時だった。

 

「大丈夫ですか?」

 

 おっとりとした声が響き、栗毛の艷やかな髪をした誰かが覗き込んできた。

 

「…ちょっと、足首捻っちゃって…って、あんたひょっとして…」

 

「あれ?もしかして源治くんですか?」

 

 それは、先日の聖蹄祭で会ったスーパークリークであった。しかしスーパークリークと言えば、お世辞にも良い印象を持っているとは言い難い。なにしろ…

 

(この人、タマを赤ん坊のようにしちまったからな…関わったら何されるか分かったもんじゃねぇ)

 

 そう。スーパークリークと初めて出会ったとき、彼女はタマモクロスを攫って、文字通りまるで赤ん坊のようにしてしまったのだ。

 

 タマは未だにあの時のことを頑なに話そうとしない。相当堪えたようだ。

 できることならさっさとこの場を立ち去りたかったが、痛む足首がそれを許してはくれない。どうしたものかと考えていると、スーパークリークが無言で地面に座り込む気配がした。

 

「…なに、を…??」

 

 ふいに頭が持ち上げられ、後頭部に柔らかな感触を感じた。視線を上に持っていくと、こちらを心配そうに覗き込む顔が現れた。

 

「源治くん、最近無理していませんか?さっき走っているときも体がフラフラしていましたよ?」

 

「………」

 

 見透かされたように言われ、何も言い返せなかった。そしてよくよく思い返してみるとここ最近はずっと走ってばかりいて、ろくに休んでいなかったかもしれない。

 

 しかしそれはそれとしてこの膝枕はなんとかしないと。この前のスティルとは違って、今は俺が起きているし、誰かが通りかかるかもしれない。

 

「…だからといって膝枕してくれなくても…」

 

「あら、じゃあ源治くんを抱えてお家までお邪魔してもいいんですか?」

 

「…いや、いい」

 

 その光景を想像し、震え上がった。それを言われてしまったら、俺はもうこの体勢から動けなくなってしまう。仕方なく俺はスーパークリークに膝枕をされるのだった。

 

 

 

─冒頭に戻る─

 

 

 

 

 すやすやと子どものように眠る源治くんの頬を撫でる。彼は聖蹄祭で会ったオグリちゃんの友人だ。    

 あの時は会ってすぐタマちゃんを甘やかすのに夢中になっていたので、また会って話してみたいと思ってはいたがこうも早く会えるとは思わなかった。

 

 大人のように整った綺麗な顔をしているのに寝ている姿は小さな子どもとそう変わらないことに愛おしさを感じさせる。

 

「ふふふ、とっても可愛らしいですね〜」

 

 今まで、小さな子どもや同級生、後輩、果てには大人でさえも甘やかしてきた私だが、彼のように男の子、それも恐らくは私と同い歳であろう人を甘やかすのは初めてだ。

 

 最初は異性として意識してドキドキしていたが、こうして寝ている姿を見ているとかっこよさよりも可愛さがある。まぁ、それはそれとしてかっこいいことに変わりはないのだが。

 

「それにしてもぐっすりと眠っていますね…疲れが溜まっているのでしょうか?」

 

 いくら友人の知り合いと言えども、ここまで無警戒に膝で眠れるものだろうか?

 そう思いながら彼を寝かせていると、背後から土を踏む音がした。振り返ってみると、そこには困惑した様子のオグリちゃんがいた。

 

「あら、オグリちゃん」

 

「クリーク、これは一体…というかなぜクリークがここに?」

 

 訪ねてきたオグリちゃんに、ランニングの途中だったこと、ランニングをしている最中に源治くんが転んだところを見ていて足首を捻った源治くんに膝枕をしていることを説明した。

 

「そうか…そういえば源治、最近走ってばかりだったかもしれない」

 

「おーい、オグリィ〜何して…ってうおッ!?クリーク!?…と、源治?なにしてん?」

 

 そうこうしていると、タマちゃんもやって来た。立て続けに2人が来るとは珍しいと思いながら、オグリちゃん同様に説明した。

 

「ほ〜ん、ほんでぶっ倒れてそのまんまクリークの膝でおねんねか、うりうり」

 

 言いながら源治くんの頬を面白そうに指でつつくタマちゃん。それに「私も触りたい…!」と目を輝かせながら彼の頬をぺたぺたと触り始めるオグリちゃん。

 

「うぅ…ん…?」

 

 寝ていながらも自分の頬に何かされているのを感じ取っているのか、むず痒そうに顔を歪めながら私の膝の上で寝返りをうつ源治くん。しかしそれでもタマちゃんとオグリちゃんの追撃は止まらず、しつこく頬をつんつんされていた。

 

「あらあら…」

 

 その様子を微笑ましげに見守っていたが、ふと2人がここへ来た理由を知りたくなり、訊ねた。

 

「そういえば、2人はどうしてここへ?」

 

「源治と走るためだ」

 

「え、ちょ、オグリ─」

 

「…へ?」

 

 どうやら今日は驚くことがたくさんあるらしい。

 

 

─────────────────────────────

 

 

 

「へぇ…そんなことがあったんですか…」

 

 ことの顛末を聞いた私は口では飄々とそんなことを言っていたが、内心はかなり驚いていた。

 

(人間なのにタマちゃんやオグリちゃんと走れる…!?とても信じられない…いや、でもさっきの走っている姿…)

 

 さっきはランニングだけではあったが、彼の走りは粗削りで、がむしゃらで、とても綺麗とは言い難いが、だからこそ惹かれる…そんな走りだった。

 

(正直まだ半信半疑ですが、もし彼がタマちゃんやオグリちゃんを相手に戦えるというのなら一度見てみたいものです)

 

 相変わらずほっぺを好き放題されている源治くんをみながらそう思うのだった。

 

 その後も続々と人が集まってきた。皆、気晴らしにここへ走りに来ているようだ。中にはこちらへ殺意に近い妬ましげな視線を叩きつけてきた子もいた。

 

「あの源治がこんな無防備に寝顔さらしてるとはな〜うりうりぃ〜」

 

「……膝枕は、私だけだと思っていたのに…許せナ─はっ!?だ、だめよこんな…はしたない…」

 

「ほう…源治さんも、こんな顔をするんですね…これは、これで…」

 

「や、ヤエノさん?ぶつぶつと独り言なんか言ってどうかしたんですか?」

 

 といった具合で、みんな様々な反応を見せていた。しかしそれでも源治くんは起きなかったので、この日はみんなでひたすら源治くんの寝顔を好き放題したのであった。

 

 尚、このあと起きた源治くんには寝ている間に起きたことを誰も教えなかった。

 

 





 さて、おそらくは今年で最後の投稿となります。少しばかり早いですが、皆様良いお年を〜

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