ヒトミミウマ息子がゆくウマ娘プリティーダービー 作:コウハクまんじゅう
モチベ爆上げなので、爆速投稿です。バクシンバクシィーン!
アンケート、しっかり見てます。ダンツがダントツ一番人気で笑っちゃうんすよね。やっぱ皆さん好きなんですねぇ(結果チラ見)
え?じゃあお前はどうだって?もちろん好きです(即答)
─ざわざわ、ざわざわ…
肩を寄せ合い、口々に自分の予想を、推しの魅力を語る。あるいはたった一人で腕を組み、波打つ芝をじっと睨む。
老若男女問わず多くの人々でその場は溢れかえっていた。
そんな喧騒に周りを囲まれている俺は、萎縮して縮こまっていた。
「こーりゃすげぇな…ほんとすげぇ…いやもう、なんか…すげぇ…」
トゥインクルシリーズについてほとんど知識を持たない俺でも知っているジャパンカップ。その知名度からかなりの人が訪れることは予想できた。しかしこれほどまでとは。
「想像以上だな…ジャパンカップ…」
右を向いても人。左を向いても人。
人、人、人。見渡す限り全て人。
ここまで多くの人が一堂に会する光景は見たことがない。俺が無名としてポッケと初めて戦ったときでさえここまで多くはなかった。
観戦に来た観客の人数の時点で、フリースタイルとは格が違うことをまざまざと見せつけられ、俺は圧倒されていた。
お陰で位置取り争いに於いて大きく後手に回り、結果一番後ろに立っての観戦となってしまった。
「ちょいと甘く見すぎたな…」
ちょうどいい高さの柵に組んだ腕を置き、そのまま体を預ける。位置取り争いに負けたとは言えど、上から眺める景色は中々に良いものだった。
朝日を浴び、風を受けて漣のように波打つターフ。吹き込んで来た風を頬に浴びると、風に乗って土の匂いが鼻を包んだ。
そのまま無心で揺れる芝を眺めていたが、突然周囲が大歓声に包まれた。何故観衆が騒ぎ始めたのか、その理由はすぐに分かった。
ターフに目をやると、そこには出走するであろうウマ娘達が続々と出てきていた。出走ウマ娘の名前を読み上げる実況の声に耳を傾けると、全く知らない名前もあればどこかで聞いたような名前も聞こえてくる。
「……異次元だな。」
本バ場入場をしたウマ娘達を見て、率直にそうつぶやく。遠目からでも分かるほど、強い。一人一人が数多の修羅場をくぐり抜けてきた猛者の風格を漂わせていた。オールスターとはまさにこのことを言うのだろう。
全身の産毛が逆立ち、鼓動が速くなっていく。
右足が無意識の内にコツコツと床を打ち鳴らす。
「走りてーな」
自分では立つことのできない舞台に立って輝く彼女達を羨む。
少しでも気を抜けば今にも動き出しそうな体を抑えつけるように柵に強く寄りかかる。何かが軋むような音がしたが、気のせいだろう。
(俺もウマ“娘”だったらなぁ)
叶わぬ願いを腹に抱え、足を絶え間なく動かし、より一層柵に重くのしかかった。ますます悲鳴を上げるように軋んでいく。知ったことか。
ターフに立つ彼女達を眺めていると、一人のウマ娘が集団の中から抜け出してきた。
反射的に片耳がピクリと動く。体に稲妻が落ちたが如く衝撃が走った。
(……なるほど。)
こいつか、と。俺は本能で感じ取った。ポッケが言っていた、トゥインクルシリーズ最強…
ターフのウマ娘達を見ながら聞いていた実況の盛り上がりも最高潮に達し、興奮して叫ぶ。
「─何よりも注目は、やはり彼女を打ち破るものが現れるかどうかでしょう!世紀末覇王、テイエムオペラオー!」
「騎士達よ!」
この喧騒の中でも、その声はハッキリと聞こえた。
俄に人々が騒ぎ始め、一斉にターフへと視線を向けていた。
そのウマ娘は猛者達の前に躍り出て身を翻し、登った太陽を背負った。自身こそが覇王であると示すように。
「誇りたまえ!─ボクの前に敗れ、覇道の軌跡の1ページとなることを。」
観客は大いに沸き立ち、相対する
覇王はターフに躍る。観客の歓声を、
「すげぇ……すげぇ…!!」
体が前のめりになり、柵からずり落ちそうになる。俺は完全に熱気に乗せられ、飲み込まれていた。
─本物だ。
実際に目の当たりにして、そう感じずにはいられなかった。これがG1、そして世紀末覇王、テイエムオペラオー…!
湧き上がる熱いモノに胸を高鳴らせながら、初めてフリースタイルの世界に飛び込んだ時を思い出した。後先考えずに、ただ目の前にある己を熱くしてくれるものに飛び込んだ、あの時を。
「ッハハ…!」
胸にこみ上げるモノが出場所を求め、小さい笑いが溢れた。
「続いて入場するのは、若き
再び会場が大いに沸いた。
その歓声に応えるように、ポッケがターフへとその姿を現した。真っすぐに前を見据え、威風堂々と歩みを進めるその姿は既に王者に相応しい風格を纏っていた。
そのまま真っ直ぐゲートに入り、各ウマ娘の出走の準備が整った。ここぞとばかりに実況が盛り上げる。
「さぁ、ゲートイン完了。絶対王者が盤石の力を示すのか─!?」
一呼吸置き、一言一言に熱を込めるがごとく言葉を紡ぐ。
「─偉大なる覇王を討ち取るものは現れるのか!?互いの意志と誇りを掛け、決戦の時です!」
観客席が、先程の盛り上がりが嘘のようにしいんと静まり返る。しかし溢れ出る静かな熱は限界を知らず、一刻ごとに勢いを増していくのを肌で感じる。
「ジャパンカップ、今─」
ガシャン!
「スタートが切られました!ほぼ揃いました綺麗なスタート、さぁ何が行くのか誰が行くのか!?」
耳をつんざく大歓声に包まれ、戦いの火蓋が切って落とされた。実況は進行していく状況を冷静に分析し逐一会場に響かせる。観客席においてもしたり顔で解説をする者がちらほらと見受けられた。
「─……」
あれだけの強者達に囲まれても物怖じせずのびのびと走るポッケの姿に、ある種の感動すら覚える。
共に走っていたあいつがこんな大舞台で日本中、世界中から集った猛者達を相手に走っている。その事実に、言いようのないモノが込み上げてくる。
レースは、未だゆっくりと進行している。
走っている彼女たちからは遠くからでも「勝ちたい」という想いがひしひしと伝わってくる。その熱がピリピリと肌を焼く。
自然と言葉も減っていく。元々、さほど喋ってもいないのだが。
そして、見る間にコーナーを曲がり終えると、先頭集団は直線に差し掛かった。
「さあ最終直線に入った!」
「「「うおおおおあああああああああ!!」」」
ウマ娘達が団子になって最終直線になだれ込んでくる。あらん限りの力を振り絞り、とてつもない勢いで観客席の前を駆け抜けていく。
真っ先に飛び出してきたのは、外から来たテイエムオペラオーだ。圧倒的な爆発力と末脚で見る間にぐんぐん伸びていく。だか他のウマ娘達も負けじと伸びてくる。
「私が!」
「私がぁああ!」
「まだ…まだまだァァア!!」
叫ぶ彼女たちの声が、耳に届く。
「う、うお、すげぇ…」
柵を握る手に力が入る。いよいよ悲鳴が聞こえてくるようだ。
実況の声にも熱が入り、観客もそれに乗せられ声を張り上げて叫ぶ。
「…行け……行け!ポッケ!!」
柵に両手を突き、体が飛び出す勢いで前のめりになる。俺の体を支えている柵はいよいよガタつき始めていた。
全身の力を込め、声を張り上げようとした、その時。一陣の風が観客席に吹き込んできた。そして、陽の光を受けた芝が輝き、七色の光が俺の目に飛び込んできた。
「うおっ…」
眩しさと、吹き込む風によって腕を柵から離し、顔を覆った。しかし腕の隙間は僅かに開け、目はハッキリと走る彼女達を捉えていた。
皆一様に前を向き、ただひたすら走る。目の前のゴールだけを目指し…
「…ん?」
いや、ただ一人だけ様子のおかしいウマ娘がいた。
観客席…特に上の方をちらりと横目で視線を飛ばした。
(……何を見たんだ?俺…じゃないよな)
気になって視線の先を辿ってみると、どうやら俺の隣りにいた人物へと向けられているようだった。レースに夢中になって気づかなかったが、そこには白衣を着たウマ娘が呆然とした様子で立っていた。
(何だ、こいつ……うん?待てよ、確か…)
どこかで会ったか。しかしどこで会ったのかが思い出せない。
(……あ、こいつもしや…)
記憶の中から手繰り寄せた、あるウマ娘の名前。その名は─
「………アグ─」
「ッ!!」
刹那、一瞬目を瞑ってうつむいたかと思うと、僅かに残る残光の輝きを残して俺の真後ろを白衣を翻して駆け抜けていった。
「うおっ!?」
あまりの速さに度肝を抜かれていたが、続く雄叫びに再びレースへ意識を戻された。
「うおおおおおおおおおおお!!!!」
「ッ…!ポッケ!!行け!!!」
ポッケの雄叫びに感化され、俺もまた叫ぶ。
それに感化され、他の観客も叫ぶ。そうして熱が伝播していき、観客席を大いに熱狂させた。
ズン
ここで、テイエムオペラオーが一気に突っ込んできた。一方のポッケは体力が限界に近いのか、かなりしんどそうだ。いや、体力よりもこれは…
(……あの時のレースのやつか。)
恐らくは、そのライバルとやらが目の前に立ち塞がっているのだろう。
脚が鈍る。
体が沈む。
僅かに、速度が落ちた。
「ッ…!!!─負けんじゃねぇぞ、ポッケ!!!!」
一方、突っ込んできたテイエムオペラオーはそのまま馬群から抜け出して一気にトップへと躍り出た。やはり、
ピシリ
「ああああああああああ!!!!」
メギメギメギィ!!
王者の喊声
絶叫に近い雄叫びを上げ、一気に
「「あああああああああああああああああ!!!!」」
最強と王者の、息を呑むほど激しい競り合い。
空気がねじれ、熱に歪み、全てが飲み込まれる。
激しい接戦の末、ゴール板を駆け抜けた─
「かっ、勝ったのは─」
「ジャングルポケット!!勝ったのは、ジャングルポケット!!!!」
─ワァァアアアアア!!!!
勝者の名を叫ぶ実況の声と、勝者を称える観客の歓声が混ざり、一つの大きな祝福の雄叫びとなる。
周囲がジャパンカップの覇者を称える中、俺はただ一人呆然とターフを、ポッケを眺めていた。
「─…」
言葉が、出なかった。
このジャパンカップが始まってから終わるこの瞬間まで、終始俺は圧倒され続けた。かひゅ、と口から空気が漏れ出、柵に背を預けた。
「……ははっ」
続いて出たのは、乾いた笑いであった。
ジャパンカップの熱量に、ポッケの果たした偉業に、圧倒された感情の発露であった。
「すげぇ…ほんとに、すごいな。ポッケ……」
身近にいたはずのライバルの存在が、とても大きく感じられた。
ふぅ、と一息吐き、再びターフへと視線を向けた。
そこではポッケが勝利の雄叫びを上げている最中であった。陽の光に照らされて叫ぶその姿は、まさしく王者であった。このレースを経て、ポッケは化けたのだと改めて感じさせられた。
まだ回りきっていない頭をフル回転させ、ここからポッケに言える事を精一杯考え─
「おめでとう、ポッケ。」
たった一言。友人でありライバルを称えた。
柵は、最早ガタガタであった。
Q新時代の扉編、まだ続くんですか?
Aあと一話です
Q誰が出るんですか?
A秘密です(鋼の意志)
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