ヒトミミウマ息子がゆくウマ娘プリティーダービー   作:コウハクまんじゅう

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 待たせたな!(cv大塚明夫)
 後日談だ!ほのぼのだ!ちょっと他の組も出てくるぞ!



後日談

 

 

 

 一人の青年が、とあるレーシングゲームマシーンにかじりついていた。あまりの集中力により、額から流れ出た汗が顔を伝っていくことにさえ気づいていなかった。

 周囲には青年の様子を固唾をのんで見守っているギャラリーが大勢おり、ただならぬ熱気が漂っていた。

 

 

「─…」

 

 ガチャガチャとシフトレバーを動かしながらハンドルを小刻みに動かす。手慣れたその動きを見るに、どうやらここに通い詰めている玄人のようであった。

 青年がハンドルを、シフトレバーを動かすたびに画面に写った景色が目まぐるしく動いていく。

 舞台はどこかの山の峠のようで、左上には刻一刻と進んでいくタイムが表示されていた。

 時刻は真夜中のようで、空には満月が輝いていた。

 

「─!」

 

 うねり倒した癖の強いカーブをようやく越え、最後の直線に入った。アクセルを思いっきり踏み込み、グングン加速していく。

 周囲の景色があっという間に後ろに吹っ飛んでいき、街灯の明かりが流れ星のように流れていく。

 ゴールまで残り600を切った。

 

─500

 

─300

 

─100

 

今、通過した。

 

 

 

「ふぅ…」

 

 ゴールを駆け抜けたと同時に脱力し、張り詰めていた緊張の糸を解きほぐした。肩を回してほぐしていると、観客がどよめきざわついた。

 

 画面を見てみると大きな文字と仰々しいフォントで「RECORD TIME」という言葉を添えてタイムが表示されていた。

 点滅する決定ボタンを押すとランキングが表示され、そこには「全国1位」と表示されていた。

 

「…うし」

 

 青年はそれに満足そうに頷くと、我に返ってようやく気づいた額の汗を拭い、いつの間にかできた観客の中を拍手されながらゲーセンを後にした。

 

 

 人混みの中を某白い稲妻譲りの身のこなしでスイスイ進んでいると、ちらりと見た店の中に知っている顔が見えた。

 気になってそのまま店に近づいてみると、ちょうど知人の一人と目が合い、手を振られた。

 

「おーい、源治ー」

 

 多くの人でにぎわっている店の中においても目立つ、栗毛の髪が光った。

 

「よぉポッケ。ジャパンカップおめでとう」

 

「へへっ、さんきゅーな。どうだどうだ?オレすごかったろ?」

 

「ああ。とんでもなくすごかった!…あれ?そっちの3人は?」

 

 視線を隣へと向けると、そこにもまた見覚えのある顔が並んでいた。

 

「ど、どどどうもこんにちは源治さん!」

 

「こんにちは…」

 

「ふぅン、こんなところで会うとは奇遇だねえ」

 

 わたわたと慌てている者、ペコリと淑やかにお辞儀をする者、顎に手を当てて興味深そうにこちらを見る者といったように三者三様の反応を見せている。 

 みんなラフな格好をしており、手には買い物をした袋が握られていた。

 

「確か…ダンツフレームにマンハッタンカフェ、それにタキオンだったか。」

 

「あ?なんだよ、カフェとタキオンの事知ってんのかよ?」

 

「まぁ、いろいろあったからな。」

 

 主にお前が原因で、とは口には出さなかった。しかしポッケが喋っていなければ知り合うこともなかったのも事実である。

 この3人と初めて出会ったのは聖蹄祭の時。その時はマンハッタンカフェとタキオンは何か訳ありのようだったが、今は距離が縮まった…ように感じる。ダンツフレーム…は相変わらず頬を赤らめてこちらをチラチラと見ている。

 

「あ、あの!」

 

「うん?どうした」

 

「で、できればなんですけど…ダンツって呼んで欲しいなぁ、なんて…」

 

 なんで?とは思ったが、特に断る理由もないので「じゃあ…ダンツ」と呼ぶと顔を輝かせて「はいっ!」と元気な返事を返してくれた。

 ポッケとマンハッタンカフェが何かを察したような表情をしていたのは、腑に落ちないが。

 

「お前らは何しに来たんだ?」

 

「ああ、オレのジャパンカップの祝いで遊びに行こうって話になったんだ。まぁ、タキオンが来たいって言ったのには驚いたけどな…心外だなぁポッケ君。うっせ。んで、その途中で良い服を見つけたんで買ってたってわけだ。そういう源治は何しに来たんだ?」

 

「ゲーセン。」

 

「え、1人でか?」

 

「おう…ってなんだその顔は。おい、なんでお前らまで悲しそうな顔してんだ、別に友達くらいいるわ。1人で楽しみたいだけだ」

 

 1人と言った途端に悲しそうな顔で目を逸らされたので急いで弁明した。何も大人数で遊ぶだけが楽しいとは限らねぇんだぞ。いや、ほんとに。

 

「あ、そうだ!わたし達、これからお昼を食べに行くんです!よかったら一緒にどうですか?」

 

「おお、いいな。だがいいのか?これは4人のお出かけじゃないのか?」

 

「お、いいなそれ!いいぜ、一緒に来いよ!」

 

「はい…私も構いませんよ」

 

「私も構わないよ。ふぅン…ダンツ君は源治くんの事を…ちょ、何するんだポッケく─

 

 俺がいても邪魔だと思ってさっさと退散しようと思っていたが、どうやらそうでもないらしい。ちょうど腹も減ったし、了承も得たので4人と共に昼食を取ることにした。タキオンとポッケが揉めていてるのはこの際気にしないことにする。

 

 フードコートに行ってみるとかなり混んでいて、とても座れる席が確保できる状況ではなかった。

 そこで、俺の提案で近くにある美味いラーメン屋へ行くことになった。穴場なのでお昼の時間帯でも人は少なく混雑は避けれるはずだ。

 

 ということで件のラーメン屋へと赴いた。

 年季の入った白い暖簾を潜り、ガタが来ている引き戸を開ける。

 

「うぃ〜、入るぜオヤジィ」

 

「…おお、ゲンか」

 

 入って早々に目に入るのは深い皺が刻まれた無骨なバンダナを額に巻いた頑固そうな(おとこ)。彼こそがこの店の大黒柱である店主だ。

 

 この店と店主との付き合いはそれなりにある。

 というのも、小さい頃によく父さんに連れてきてもらっていたからだ。たまに1人で来ることもあり、気づけば「オヤジ」、「ゲン」と呼び合うような仲になっていた。

 父さん曰く、店主は元々実家のラーメン家を継ぐべく勉強していたそうだが、たまたま見たレースでウマ娘に脳を焼かれてトレーナーになった…らしい。引退してからはここでひっそりとラーメン屋を営んでいるんだとか。

 父さんがここに来る理由も、昔のよしみで色々話しに来るからだそうだ。

 

「いつもの」

 

「あいよ」

 

 言いながら、すっかり俺の定位置となったカウンター席に腰を落ち着ける。出された水を飲みながら体をひねって後ろを見た。

 

「ほら、早く来いよ」

 

 遠慮がちにカラカラと戸を開けながら入ってきたポッケ一行に声をかける。4人は店の中を見渡しながら俺の隣へと座った。

 

「おお?その子たちは?」

 

「俺の友達。飛び切り美味いの振舞ってやってくれ」

 

「へぇ…こりゃあまたすごい友達をもったなぁ、ゲン…」

 

 座った4人を見ながら目を白黒させる。

 オヤジに言われて、この4人が第一線で活躍しているトップアスリートということを思い出した。

 

「オレ醤油ラーメン!」

 

「じゃあ…私は味噌ラーメンで!」

 

「私は…豚骨ラーメンで…」

 

「私は源治くんと同じものを頼むよ」

 

「ええっ!?じゃ、じゃあ私も源治さんと同じものお願いします!!」

 

 しかし、こうしている分には年相応の少女にしか見えない。わちゃわちゃとしている様子を見ながら、俺は静かに水を飲み干した。

 

 

 

 

 

 

──────────────

 

 

 

 

 

 

「へい、お待ち」

 

 目の前にチャーシューとメンマがたっぷり入った塩ラーメンが目の前に置かれる。むわっと広がった湯気に含まれたスープの匂いがたまらない。

 

「うい、さんきゅー」

 

「ふぅン…塩ラーメンか、いいじゃあないか」

 

「わぁ、美味しそう!いただきま~す!」

 

 両手を合わせ「いただきます」とつぶやいた後に麵とメンマを一緒にすする。

 メンマ特有のコリコリとした食感と塩気のあるスープを含んだ麺の独特なハーモニーが癖になる。

 

「っぱ美味(うめ)ぇな。」

 

「……」

 

「いただきゃーす!─ゴ、ゴホッゴホッ」

 

ふぉいひいでふ(おいしいです)〜♪」

 

「んぐ、もぐもぐ……ふゥむ、これは美味しいねぇ」

 

 黙々と口に運びながらも、幸せそうな表情をしている者。豪快に麺をすすりむせている者。ハムスターのように頬を膨らませて麺を咀嚼する者。一口を小さくしてゆっくり味を楽しむ者。

 各々注文したラーメンを味わい、その美味しさに舌づつみを打っている。

 

 その様子を微笑ましく眺めた後オヤジの顔を見てみると、嬉しそうに口角が上がっているのが僅かに見えた。やはり自分の作った料理を「美味しい」と言って食べてくれるのは嬉しいのだろう。

 次いで、隣でラーメンを楽しんでいる彼女達を見た後にラーメンに向かい合い─

 

 

 

 

 

─ドバァ!!

 

 

「……えぇ?」

 

 変な声が出た。

 目の前には、今しがた俺が食べていた塩ラーメンの姿はどこにもなく、一面には真っ赤な粉が積もっていた。

 

「す、すすすすみませぇえええん!!!」

 

 隣から悲鳴にも近い絶叫が響いた。

 見るとそこには、頭から飛び出たくせ毛とぐるぐるとした目、「恵体」という言葉を地で行くウマ娘がいた。

 

「手が滑って唐辛子の粉を撒いてしまいましたああああああ!!」

 

「そうはならんやろ…」

 

 そう言わずにはいられない。

 彼女の隣を見てみると、そこにはカウンターに突っ伏した3人のウマ娘の姿があり、「す、すごくすごい辛い…です」「ふ…ふわふわ…」「はーっはっ…ゲホッゲホッ」と死に体の有様であった。

 

「げ、源治さん…?」

 

 鼻を抑え、涙目になりながら片耳をピクピクさせてこちらを不安そうに見つめるダンツ。彼女に呼ばれ、改めて塩ラーメンの惨状を見る。

 白く輝いていたあの姿はどこにもなく、地獄を連想させる赤色が一面を支配している。

 えげつない辛味が湯気に乗って鼻を突き刺し、目に染みる。

 

「………変えるか?」

 

 突然の事態でフリーズしていたオヤジが立ち直り、たった一言掛けてきた。

 

「………いや、このまま食うさ」

 

「金は取らねぇぞ」

 

「出されたもん残すのは嫌なんだよ」

 

 震える手を抑えて箸を握りしめる。

 視界が滲み、鼻の奥を刺すような痛みが襲う。

 今ほどウマ娘の身体能力を持っている事を後悔した瞬間はないだろう。

 

「まじか…それ食うのかよ」

 

「だ、大丈夫でしょうか…」

 

「ゲホッ…ゴホッ…す、少し失礼するよ…ゲホッ…」

 

「げ、源治さん…ゲホッ」

 

 心配してくれる面々を横目に、意を決して箸を入れる。朱に染まった蛇のような麺と、同じく血を浴びたようなメンマを掴んで一気にすする。

 

(こ、これは…)

 

「「「………」」」

 

 

 変な緊張感に包まれる。3人からの不安な視線が痛いくらいに突き刺さる。ついでに隣から先程のぐるぐる目の少女と、後始末をしているオヤジが見てくるのを感じ取った。

 

 ゆっくりと咀嚼し、飲み込んだ。噛み砕かれた麺とメンマが喉を通り、ゴクリと喉を鳴らす。

 

 

 

 

 

「………おお、美味(うめ)ぇじゃん。いけるいける」

 

 

 

 

 そう呟き、血の池地獄と化した塩ラーメンをズルズルとすする。某葦毛の怪物よろしく箸を進めていく。麺とその他諸々の具材達は見る間に減っていき、あっという間に平らげた。

 

「ふぅ…ごちそーさん」

 

 両手を合わせ、静かにラーメンとオヤジに礼を告げる。

 

「まじか…」

 

「す、すごいですね…」

 

「げ、源治さん…すごい……」

 

 若干引き気味の視線から顔を背け、水を一杯飲んで静かに息を吐き出す。ちょうど後始末を終えたオヤジと目があった。

 

「…」

 

「─!……。」

 

 目と僅かな手の仕草でメッセージを伝える。オヤジは急いで厨房の奥へと引っ込んでいった。

 

「だ、大丈夫ですか?源治さん…」

 

「余裕だよ、こんくらい─」

 

「おや、源治くん…え、まさかあれを全部食べたのかい?」

 

 遠くへ─恐らくは化粧室だろうか?─避難していたタキオンが戻ってきたようだ。驚いたように声を上げ、若干引いている。

 

 

 

─以下ダンツフレーム視点─

 

 

 

「というか、ダンツくんは平気なのかい?」

 

「や、すっごい鼻が痛いし、涙が止まらない…」

 

「これ、よかったら…」 

 

「あ、ありがとうカフェちゃん…」

 

 貰ったティッシュで涙を拭い、垂れてきた鼻水を拭き取る。それでも後から後から流れ出てくる。

 

(それにしても源治さんはすごいなぁ、こんなに辛いラーメンを表情一つ変えずに食べて…)

 

「隣に…ズビッ座ってるだけでも…ズビビ…こんなになっちゃうのに…」

 

 源治さんって辛いもの好きなのかな?

 そう想いながら、ようやく収まってきた鼻水を拭き取って隣を振り向いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ザクザクザクザクザク…」

 

「あ、あれ?源治さん?」

 

 そこにはガリガリ君を物凄い勢いでかじり倒し、水を飲んでいる源治さんの姿があった。カウンター越しに店主さんが予備のアイスを持って心配そうに見つめている。

 

 源治さんの顔をよく見ると涙目になっているし、鼻の先に水滴が輝いているのが見て取れた。

 それを見たポッケちゃんは吹き出して爆笑し、カフェちゃんは苦笑いを浮かべ、タキオンちゃんは何とも言えない微妙な表情を浮かべていた。

 

「やっぱり辛かったんだ…」

 

 現在進行系でアイスを頬張る源治さんの姿を見て、そう言わずにはいられなかった。

 

「…辛くないよ」

 

「でも辛いですよね?」

 

「辛くねぇって」

 

「辛─」

 

「辛ぇよ!!」

 

 

 滝のような汗と涙を流し、永遠に出てくる鼻水をティッシュで拭きながら、やけくそ気味にそう叫んだ。

 後日、源治は腹を壊して一日寝込んだ。

 





 ※この後、覇王世代はドットさんとJDAM組が協力して持ち帰った。源治は小一時間トイレに篭った。

 可愛い女の子が見ている手前、かっこつけたくなってしまった源治くん。なお消化器官は死んだ。

 日曜の昼に食べるラーメンって何で切なくなるんだろう。
 ということで、次回からはまたのんびり日常回やるつもりです。アンケートで断トツ人気のあの子のお話やりますよぉ

 それと、これから4月に向けて忙しくなるので、またガクっと投稿頻度落ちます。御了承くださいませ

投稿する時間いつがいいですか?

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