ヒトミミウマ息子がゆくウマ娘プリティーダービー   作:コウハクまんじゅう

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 お待たせしましたぁ…
 多忙とスランプもあり、なかなか進みませんでしたがようやく投稿です。



春のファン大感謝祭編(最終章)
①春のファン大感謝祭


 

 

 仰々しい校舎を見上げれば、蹄鉄を模したアーチがこちらを見下ろしている。

 アーチに沿ってつけられた看板には「春のファン大感謝祭」と書かれ、視線を根元へ移してみると、開放された門扉と「日本ウマ娘トレーニングセンター学園」の文字。

 大勢の客でごった返す中を緊張と期待と不安が綯い交ぜになりながら歩みを進める。

 

 

 

 トレセン学園を訪れるのはこれで2回目だが、今回は前とは事情が違う。どういう事かと言うと、どうやら俺はトレセン学園内でそこそこ知られている…というより噂になっているそうだ。例えば─

 

『タマモクロスとオグリキャプと親しげに話していた男子高校生がいるらしい。』

 

『その高校生はフジキセキとジャングルポケットとも交友関係があるらしい。』

 

『この前ダンツフレームと校門近くで話していた男の子は聖蹄祭の時と同一人物らしい。』

 

 などなど…これ以外にも多くの噂話が、少なくないトレセン生の間でまことしやかにささやかれているそうな。救いはレースについては広まっていない事と顔が割れていない事、名前等の個人情報が露出していない事か。

 

 しかし、このような噂話は本来ならグループなどの小さなコミュニティ内で完結したもの。なぜトレセン学園中で広まってしまったのか。

 

 原因は俺が交友関係にあるウマ娘の知名度と俺の軽率な行動にあった。

 まず、オグリやタマ、ポッケ達はトレセン学園内でかなり名の通った者たちなのだそうだ。そんな有名ウマ娘である彼女たちと親しげに談笑しているところを、聖蹄祭で多くのトレセン生に見られていた…と。

 

 そのあとに起こった事は言うまでもない。

 聖蹄祭後、謎の男子について問いただすトレセン生が濁流のごとく押し寄せたのだ。タマ達は釈明に苦労したそうで、申し訳ないことをした。

 言い訳にしかならないが、まさか彼女たちがそれほど注目されていたとは知らなかったのだ。

 

 ちなみに、この話はタマから聞いた。

 タマ達は俺に余計な気遣いをさせまいとして黙っていたようだが、俺が春のファン大感謝祭に参加すると聞いて知らせてくれたのだ。

 

 ということで、今日の俺は比較的目立たない服装で来ている。

 あいにく俺は服やファッションについて疎いので、わかる範囲で言うなら、黒風が逆巻くような模様と鴉の羽が散っている絵がところどころに描かれた白地のパーカーにスラッとした真っ黒なズボンとだけ。

 

(顔が割れてないとは言え、この格好で大丈夫…なのか?)

 

 今更ながら自身の服装に自信がなくなってきた。

 今回はダンツと一緒に回る約束をしている手前あまり地味過ぎても奇抜過ぎても興が削がれる。これでもファッションが苦手なりに雑誌やネットで調べて来たのだ。

 

(ここまできたらもう、なるようになっちまえ)

 

 不安を振り払うように、学園の中へ入っていった。

 

 

 

■□■

 

 

 

 

「バレー、フットサル、駅伝にバスケ…色々あるな。ダンツは確かバスケだったか?」

 

 春のファン大感謝祭は、聖蹄祭とは違ってスポーツ系の出し物が多い。ほとんどの競技は午前中に準決勝まで行われ、午後は決勝戦で締められる。

 

 聖蹄祭のときほど出店される屋台は少ないが、レース以外でウマ娘の活躍を見れるという事もあってそれなりに客は来ており、聖蹄祭の時と遜色ない盛り上がりを見せている。

 

「ダンツがバスケやってる姿か…想像つかねぇな」

 

 彼女がどのような活躍を見せるのか想像しながらLANEで所在地を聞いてみると、既に現地のギャラリー席にいると返ってきた。今からそっちへ向かうと伝え、足早に向かうのであった。

 

 

 

 会場に着くとすでに試合は始まっており、観覧席には各チームや観客が座って観戦していた。

 周囲を探してみると、ダンツは中間付近の座席でチームメンバーと思わしきウマ娘達と話をしており、その中にはポッケもいるのが見えた。LANEで到着した旨を伝えると彼女もこちらに気づき、ぱああと顔を輝かせて尻尾と手のひらをひらひらと振ってきた。

 

 その笑顔を見た瞬間心臓が跳ね上がり、ドギマギしているのを悟られないようフードを深くかぶる。

 ダンツは周りと二言三言交わした後にこちらへとやって来た。

 観覧席とコートを分けている壁に前のめりに寄りかかり、共に試合を眺める。

 横目でダンツのチームの方を見やるとポッケもこちらに気づいており、小さく歯を見せて笑っていた。

 

「あとどんぐらいで出番なんだ?」

 

「この試合のぉ…次、ですね」

 

 試合は終盤に差し掛かっており、次のチームらしき集団も準備している様子が目に入った。

 

「そっか、がんばれ。俺はここで応援してるわ」

 

「えへへ、ありがとうございます!」

 

(と言っても、バスケのルールあんま分かんないんだよなぁ…)

 

 彼女が活躍している時に声を上げておけばいいかと考えていると、試合終了を告げるホイッスルが鳴った。

 

「あっ、終わりましたね。じゃあ行ってきます!」

 

「おう、頑張れ」

 

 別れを告げ、ダンツはトタトタと足音を響かせてチームメンバーと共にコートへと出ていった。

 

 

 

 

「……いい笑顔するよな、ほんと。」

 

 小さく跳ねる鼓動を服の上から抑える。実を言うとダンツと話している最中ずっと胸がドキドキしていた。

 

「宝塚からずっとだ…なんなんだろーな、これ」

 

 脳裏に絶え間なくよぎる答えに気づかないふりをするように、自分に言い聞かせて蓋をする。

 

「“LOV"だね。お互いに“CONECT”を感じるよ。」

 

「!?」

 

 びくりと体を震わせ、心臓が止まるかという衝撃が体を突き抜けた。首筋を一筋伝う嫌な冷たさをそのままに、首と視線をわずかに横へと向けた。

 

「“DKDK”だね。驚かせちゃった?ネオユニヴァースは『ごめんなさい』をするよ。」 

 

「…お、おお…」

 

 先ほどとは違う意味でドキドキしながらその少女の姿をゆっくりと視界に収めた。

 こちらを見つめるサファイアのような青い瞳。整った顔にふっくらとした頬、何らかの生き物の目を模したかのような髪飾りが照明に照らし出されキラキラと光っている。

 ペコリ、と目をつむって頭を下げると綺麗な金の長髪がふわりと揺れた。

 

「い、いや、もういい。俺は大丈夫だから」

 

 軽く手を振って気にしなくていい意を伝えると、目の前の少女…ネオユニヴァースは頭を上げた。

 

「あなたが、源治?」

 

「ああ…俺になんか用?つか、なんで俺の名前知ってんだ?」

 

「スティルインラブは、ネオユニヴァースの“クルーメイト”だから、わかるよ。そして、“ALARM"。スティルインラブが『寂しい』よ。」

 

「く、クルーメイト…?なんか一緒…なのか?仲がいいってことか?それにアラームって…」

 

 言い終わる前に試合開始のホイッスルによって俺の声はかき消された。意識が試合へと飛ぶ寸前に差し込まれるように、答えは返ってきた。

 

「そろそろ『ビッグバン』が起こるかも?気を付けてね。」

 

 奇怪かつ独特な言い回しの真意を訊ねようとして振り向いた時には、まるで最初からいなかったかのようにネオユニヴァースの姿は無かった。喉奥に魚の骨がつっかえるような心地の悪さに胸がざわめく。

 

「…俺はトレセンにいると騒ぎに巻き込まれる呪いにでもかかってんのか?」

 

 もしくはここがそういう場所なのか。いずれにせよ、平穏無事に過ごすことはできなさそうだ。

 せめてダンツに被害が行かないように注意しなければと気を引き締めつつ、彼女たちが激戦を繰り広げるコートへと目を向けたのだった。

 

 

 

 

■□■

 

 

 

 

「ま、負けましたぁ…」

 

「お疲れ様。よく頑張ったな」

 

「はひぃ…。」

 

 結局、ダンツのチームは準決勝まで勝ち進んだが惜しくも敗退してしまった。

 買ってきたスポドリを渡し、空っぽになったコーヒーの空き缶をひねり潰しゴミ箱へと投げ入れる。

 

「わわ…い、いいんですか?」

 

「いい、俺の奢りだ。少し休憩から行くこうぜ」

 

「はい!」

 

 そのまま2人で観覧席に共に腰掛ける。

 ちらりと隣を見ると、試合が終わった直後で息が荒く頬が上気していた。ほのかに流れてきた優しく甘い匂いに目を瞑って気づかないふりをする。

 

「惜しかったな」

 

「はい。でも、悔いはないです。全部出し切ったので」

 

「ああ。─屋台、どこから回ろうか」

 

「そうですねぇ…とりあえず縁日系から行きましょうか。」

 

「縁日…確か噴水周りに腐る程あったな」

(そういや、タマがイカ焼きの店出してるって言ってたな…そこも行くか。)

 

 それからしばらく他愛のない世間話を続けた後、バスケの試合観戦に興じ、決勝が終わったと同時に俺達も席を立った。

 

 既にいくつか向けられていた、自分への視線から目を背けて。

 

 





 今回は溜め回です。
 源治と認識のあるウマ娘全員登場予定。最後なんでブレーキ無しで滅茶苦茶やります。
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