ヒトミミウマ息子がゆくウマ娘プリティーダービー 作:コウハクまんじゅう
お待たせしました!
今回は主人公のフリースタイル時代のお話と、その時に関わったウマ娘が出てきます。一体どこの密林袋なんだ…?
最近忙しくなってきてまともに小説書けるのが夜と休日だけ…
あ、休日は本気出して頑張って書いてます。
そして今回のお話は少し長いです。
皆様も体を十分大切にしてお過ごし下さい…ではごゆっくり〜
闘叫の鬼
フリースタイルレース。それは自由気ままに走りたいウマ娘たちが開催する、文字通りフリースタイルのレースである。
フリースタイルレースが開催されている場所は全国各地にあれど、この東京都府中市を置いて強者が跋扈しているレース場は他にないだろう。
ここを訪れるほとんどの者は趣味や遊び感覚で走りに来るのが大半だが、たまに引退した元競走ウマ娘が息抜きで走りに来たり、とてつもない才能を秘めたウマ娘が転がっていたりするのだ。
そんな油断ならない府中のレース場だが、今でこそ特段目立った騒ぎはないが、かつての府中のフリースタイルレース場はあらゆる強豪チームが入り乱れ、縄張りが乱立していて統率が取れていない、まさに戦国時代の様相を呈していた。
そのため、府中の走り屋の誰もが全てのチームをまとめ上げ、
突然現れた新参に対して当初、周りのチームは静観して様子を見たり、果敢に挑みかかっていったりと様々な反応を見せていたが、破竹の勢いで勢力を拡大していくL/Roarsの様子が次第に周りに認知され始めると「もしかしたらL/Roarsが天下を取るのではないか」と噂されるようになったのを皮切りに、これを倒して名を上げようとする者が次々と現れ始めた。
強い者と戦う事を至上の喜びとする筋金入りの走り屋、自身の名を天下に指し示す野望を持った挑戦者…彼らは次々と挑んでいったが、その誰もが圧倒的な力を持つL/Roarsの前に敗れていった。
結果、L/Roarsの勢力は誰も手が付けられないほど巨大なものになり、天下に名を轟かせる最強のチームへと成り上がっていった。
もはや、フリースタイル界の覇権を握るのは時間の問題だ。そう思われていた時…ある者が現れた。
そいつは人間でありながらフリースタイルレースに出走し、間もなく次々と強者を打ち倒しており、周囲からは一目置かれている。しかし不思議なことに、有名なのにも関わらず素性が一切知られていない。知られていることと言えば、男であること、人間であること、そして上げた功績だけ…
そのあまりの情報のなさから、逆に謎の走り屋男は不気味がられ、同時に畏怖の念を集めることとなった。
その男は名前が不明のため「無名」や、そのあまりの速さから風のようだと言われ、黒を基調とした服を着ていることから「漆黒の狂風」、L/Roarsが優勢の中それに弓を引くかのように突然単独で現れたため「無名の
突然出てきた無名の走り屋、しかも人間が数多の強者を倒したとあれば話題の的にされるのは必然であり、そうして多くの者が話をしている中でL/Roarsもその存在を察知し、また無名の方も天下に名を馳せているチームの事を知り、興味を持った両者が戦うことになるのも必然であった。
まず最初に動いたのはL/Roarsからだった。メンバーの1人が無名に接触し、レースを仕掛けたのだが、そのレースでは無名が5バ身の差をつけての圧勝。この事がきっかけでレースを仕掛けたL/Roarsメンバーはショックで自信をなくしてしまい、それを総長が聞きつけ、仲間の敵を討つという形で正体不明の走り屋、無名にL/Roarsの看板を背負ってタイマンを挑むのだった。
L/Roars、その初代総長。通称…
両者がレースをすると決まった時は大きな反響が巻き起こった。かたや突如として出現し、強豪共を喰らい尽くしてフリースタイルレース界のトップとして名を轟かせた伝説のチームの総長。かたや人間でありながらレースに出走し、瞬く間に強者達を蹴散らしてその存在を大きく知らしめた得体の知れない走り屋。
この異質な2つの新星の対決のことで、府中のフリースタイルレース場はしばらく話題が持ちきりだった。なにしろ、この戦いの結果次第で、府中のフリースタイルレース場を支配する者が決まるからだ。
レース当日には大勢のギャラリーが世紀の対決を見に来ようとレース場に押し寄せてきた。その中にはL/Roars…特に闘叫の鬼や無名に敗れた者たちも数多くいた。観客席ではどちらが勝つのかを予想する声が多く飛び交っていた。
L/Roarsに敗れた者たちは実力を身を持って知っているゆえにL/Roarsの勝利を予想し、無名に敗れた者たちもまた実力を知っているゆえ男の勝利を予想し、両者の実力を知っている者たちはどちらが勝つのか予想がつかないと頭を抱えていた。
両者が本バ場入場するのと同時に大歓声が巻き起こった。その異様なまでの盛り上がりようは今までのフリースタイルレースの中でも類を見ないほどだった。そして、両者がターフの上に立って睨み合う頃には会場の盛り上がりは最高潮に達しており、観客の中にはあまりの興奮でぶっ倒れて病院に搬送されたものまでいた。
闘叫の鬼の眼光に睨まれたものは並大抵のものなら、文字通り尻尾を巻いて裸足で逃げ出すが、無名はこれから始まる最高のレースに胸を高鳴らせているのか、愉しそうに不敵な笑みを浮かべていた。
それに対して闘叫の鬼は自分を見ても怯える様子や怯む様子を見せないどころか愉しそうに笑っている無名に面食らっていたようだが、その根性を気に入ったのか面白そうに口元を歪めて無名を見ていた。
枠番をくじ引きで決め、ゲート入りが完了するとさっきまで異様な熱気に包まれていたとは思えないほどあたりが静まり返った。そして、鈍い音を立ててゲートが開き、世紀の対決が始まったのだった…
「そ、それで、どうなったの?」
目の前には興味津々といった様子で話の続きをソワソワしながら待っている友人の顔があった。オレはずり落ちてきたバッグの紐を再び肩にかけ直し、歩幅を合わせながら視線を隣から前方へ移した。
「……同着だ。」
「えぇっ!?ど、同着!?」
信じられない、といった様子で叫んでいる。その様子を横目に、オレはあいつと初めて戦ったあの時の事を思い返していた。
レースのきっかけとなったのは仲間の心を折った仕返しといえど、其の実少し前に人間なのにフリースタイルレースに出たいと言っていた面白いヤツがひょっとして本当に大成したのかと思い、興味半分で宣戦布告しに行っただけだった。
だが、直接やりあってわかった。アイツは、とんでもねぇ化け物だ。………今までオレは強えやつとたくさん
そこまで考えて、視線を前方から地面へと移す。
だが、アイツは別だ。走っている時アイツから感じた強烈なプレッシャー、最終コーナーでの恐ろしい加速、みるみる開いていく差……オレはその全てに圧倒されていた。だが、あの時のレースはL/Roarsの運命も掛かってて、オレはチームの看板
ゴール板を駆け抜けた後には大歓声が巻き起こり、府中のフリースタイルレース場を制するのはどちらか議論する声が飛び交っていた。が、さほど気にしていなかった。気にしている余裕がなかった。ゴールした後はただただ呆然としていた。
観客からの呼びかけにも、仲間からの呼びかけにも応じずに。
だが、胸の内で一つの決意を固めていた。
そこで足を止め、空をぐっと見上げた。
あいつに勝ちてえ。
生まれて初めて俺をあそこまでビビらせた、得体の知れねぇ走り屋のアイツを完璧にぶっちぎって勝ちたかった。腹の底からそう思えた。
決意を固めた後、あいつに話しかけに行った。健闘を称えるためと、あいつのことを色々知りたくなったからだ。最初は、オレがあいつをレースで走れるように面倒見てやったのを恩義に感じていたらしく、よそよそしくしていたが次第に打ち解けて色々と話してくれた。
『お前すげーな!
『お前の方こそすげぇよ。今まで戦った中で一番強かった。』
『ったりめーだろ、なんたって"最強"を目指してるからな』
『"最強"か…いいね、それ。なんか…かっこいいと思う』
『へへっ、だろ?』
『ポッケさぁ〜ん!』
オレ達が談笑をしていると、仲間達が駆け寄ってきた。
『おぉ、お前ら』
『お疲れ様っス!』
『す、すごかったっす!』
『なんかもう、言葉が出ないっつーか…』
総長の健闘ぶりをたたえ、労い、興奮した様子で口々に感想を言っていく。だが、感想会を終えると視線は無名に向けられた。
『そんで…どうします?』
『同着じゃあ
『このレースは名目上は仲間の敵討ちっすけど…もうウチらだけで収まりつく状態じゃないっす』
仲間の1人がそう言って観客を見渡す。皆もつられて見渡すと、観客席ではどちらが府中のフリースタイルレース場を制するのか議論が交わされていたが、段々と熱が入ってきており暴動が起きる一歩手前の危うい状態になっており、このままでは乱闘になりかねない。
『もう一回やるんですか?』
『………』
正直、今日のところはもう無名とやり合う気はない。だが放っておけばここが戦場になりかねない。自身のやる気とレース場の安全を天秤に掛けるなら、言うまでもなく後者だ。
仕方ない、もう一度やるか…そう思い、無名に向き直ろうとしたその時。
『じゃあ、
……一瞬何を言っているかわからず硬直した。仲間たちも目を見開いてフリーズしていた。どうやら観客も聞いていたらしく先程の喧騒が嘘のように静まり返っていた。
呆気にとられていたオレだが、少し遅れてようやく理解でき、口を開いた。
『お前…何言ってんのかわかってんのか?』
『うん。』
『うんって…お前本当にわかってんのか!?今まで誰も統一したことがない府中のトップだぞ!?なんでそんな簡単に…』
『別に俺は、府中制覇の為に走ってるわけじゃないから。ただ走りたいから走ってるだけだし…』
『な…』
『それに、俺はチームまとめ上げたり、仕切ったりするの苦手だし…』
『お…お前マジで言ってんのかよ!?』
怒涛の衝撃的発言に頭が混乱する。こいつ…こいつまじかよ?普通は
府中制覇目指してないって…ただ走りたいから走ってるだけって…そんだけのモン持ってて
『まあそれはそれとして』
衝撃的な発言に頭の中をぐちゃぐちゃにされているのにも関わらず、無名はマイペースに言葉を続けた。
『またやろうぜ。』
『ッ!?』
そう言ってこちらに拳を突き出してきた。
……はぁ、まったく。どこまでマイペースなんだ、こいつ。こんなに混乱してるこっちがバカみてぇじゃねえか。
そう思い、突き出された拳に自分の拳をぶつけた。
『おう!次はぜってー勝つからな!!』
その言葉に、無名はニヤリと笑って
『いいや、俺だね。』
と不敵に返したのだった。
『そういやお前、名前なんて言うんだよ。』
と、無名に訊ねた。無名は驚いたように少しだけ目を見開き、顎に手を当て何かを思案しているようだった。やがて、考え終わったのか顎から手を離し、たった一言。
『源治。』
『へぇ〜…源治、かぁ…改めてよろしくな、源治!』
『おう。そんで、そっちは?』
『へへっ、いいか?お前の胸によーく刻んどけッ!』
振り上げた拳を自分の胸にドンッと当て、高らかに叫んだ。
『オレが、ジャングルポケットだ!!』
『おう。よろしくな!えーと…ジャンケンバケット!』
ぴしり、と場が凍りついた。仲間達が青い顔をして冷や汗をかきながらギギギ、と壊れた玩具のように首をこちらに向けた。
オレは眉と血管がピクピク動いているのを感じ、抑えながら
『ジャングルポケット、だ』
と訂正したのだった。
それからというもの、源治とはよく一緒に走るようになっていた。勝っては負けて、勝っては負けて…を繰り返していてその実力はほぼ拮抗、悔しいが僅かに源治が上か…と言ったところだろう。
そして、「無名とL/Roars(闘叫の鬼)のどちらが府中のフリースタイルレース場を制するのか」という問題は、表向きにはL/Roarsが
だが其の実、源治…無名はたった1人でL/Roars、及び闘叫の鬼…ジャングルポケットと互角以上に渡り合っていたことで府中では畏敬の念を集めることとなり、L/Roarsと並ぶ最強の勢力として恐れられていた。チームを持たない単独の走り屋なのにも関わらず、だ。
そうしてレースを繰り返している中、ある事件が起きた。突然、無名がフリースタイルレース場に姿を現さなくなったのだ。
無名の失踪は府中のフリースタイルレース界に大きな衝撃を与えた。中でも1番衝撃を受けたのがジャングルポケットである。彼女は激しく動揺し、しばらくは落ち込んでいたが仲間に諭され気分転換で見に行った中央のレースにてフジキセキの走りに感銘を受け、トレセン学園に入学した。
こうして府中のフリースタイルレースは、「無名」と「闘叫の鬼」という二強を同時に失い、また混乱に陥りそうになったが残されたL/Roarsの活躍により、なんとか均衡が保たれていたのだった。
あいつら、元気にやってっかな。また久しぶりにフリースタイルレースのターフを走りてえなぁ。………源治とも。
「ポッケちゃん?どうしたの?」
突然立ち止まったオレに対して困惑の色を見せているダンツ。
「わりぃダンツ。なんでもねぇ」
そう言って進もうとしたその時。
「昨日河川敷で一緒に走っていた男の人はタマの彼氏か?」
「ブッフォオォオオ!?」
「ん?」
向こうの方が騒がしい。なんの騒ぎだ?と気になって見てみると、なにやら芦毛の2人が騒いでいる。あの2人は確か…
「タマモクロス先輩とオグリキャップ先輩?なにしてるんだろう…」
友人のダンツ…ダンツフレームはこくり、と可愛らしげに首を傾げた。だが、それよりもさっき聞き捨てならない言葉が聞こえた。
「一緒に走っていた…男?」
ウマ娘と一緒に走る男。普通ならばそれはただの法螺ばなしとして片付けられるだろう。
だが、オレはウマ娘の脚力についていける人間の知り合いを1人知っている。
「…?ポッケちゃん?」
「……まさかな」
もしも、もしも今の話が源治の事だったら…
「ぶっ倒してやるぜ。」
指をポキポキと鳴らし、闘志を滾らせながらこちらの様子を恐る恐る伺う友人を連れてその場を後にしたのだった。
ポ ゴゴゴゴゴ…
ダ「なんかポッケちゃん怖い…」
源「ジャンケンバケット!」
ポ「ブチッ(バチギレ)」
源「ゑ」
このあと(源治の奢りで)滅茶苦茶パフェ食べた。仲直りした。ちょろい。
ちなみに源治がフリースタイルレースに来なくなったのは1話であった通り、親に内緒でレースに出走しているのがバレたからです。父親からは叱られたそうですが、母親は小さい頃に源治と似たようなことをしているので叱るに叱れなかったそうな。
クローズとハイロー見ながら書いてました。(告白)
主人公の名前は源治ですが、(この作品においてクローズやハイローとクロスオーバーするつもりは)ないです。
なお、源治にボコボコにされたL/Roarsメンバーは源治とポッケのタイマン後、仲直りして仲良くなったんだとか。
【追記】
源治の「ここはお前が仕切れ」を少し改変いたしました。