ヒトミミウマ息子がゆくウマ娘プリティーダービー 作:コウハクまんじゅう
なんとなく思いついて勢いで書いた。
前回で主人公の名前が解禁されたので遠慮なく使っていきます。
実は1話目で名前を出せばいいものを変に伏せちゃったからどのタイミングでお披露目するか悩んでたなんて言えないよね…
お気に入り130件突破ありがとうございます!そして物凄い勢いで評価が付いていって思わず笑ってしまった。お陰でモチベがゲロ上げです。
あと誤字報告ありがとうございます。大変助かっております。
今日も今日とて、地面を踏みしめる鈍い音が河川敷に響き渡る。夕日に照らされた道の上を白い稲妻と漆黒の風が駆け抜けていく。
「はっ…!」
「ふっ…!」
素早く息を吸い、全身に瞬間的に力を行き渡らせ、爆発させる。
ドン
ドッ
男…源治の方が先に加速した。それに呼応するようにタマモクロスも踏み込む。源治はタマモクロスを突き放さんとするが、一向に距離が離れない。それどころか、じりじりと少しずつ差を詰められていっている。ゴールまであと僅か…両者は最後のスパートを掛けて、突っ込んだ。
「また俺の負けかよ…」
「へっへーん。どんなもんや!」
あれだけ走ったというのにまだ余力を残している様子のタマ。それに対して源治の方は息を切らしてはいないものの、だいぶ体には堪えたようだ。
「すごいなタマ。前よりもスタミナがついたんじゃないか?」
ゴールラインの近くに立ち、2人の勝敗を言い渡したオグリキャップ。その手にはストップウォッチが握られており、なかなか良いタイムなのにも関わらず息をほとんど乱していないタマモクロスを驚いた様子で見ていた。
「まぁ、毎日トレーニングした後にアホみたいに走り込んでりゃこうもなるわ」
スポーツドリンクをがぶ飲みしながら涼しい顔で答える。その答えに納得した様子で頷き、源治へと向き直った。
「じゃあ、次は私だな。」
「いや…ちょっと厳しい…」
そう言いながら地面に仰向けになって空を見上げる源治。タマモクロスはその様子を呆れたように見下ろしながら、「なんや、もうお終いかいな。情けないなー」と挑発するが、
「だめだめ…最近全力で走り過ぎ。体の負担がやばい…」
と弱気に返す源治。実は最近、夕暮れのレースで多く走りすぎて体に少々過剰な負荷が掛かり、その影響が源治の体のみならずタマモクロスの体にも少しずつ現れ始めておりレースの数を少し減らしていたのだ。その分レースでの競り合い等は激しくなったが。
「何も俺に拘らずともタマがいるんだからタマとやったらどうだ?」
「いや、君じゃないとだめなんだ。
「わからないってなんだよ…勘弁してくれよ…」
自分にこだわる理由がわからず参ってしまう源治。なんとかコイツの興味を俺から逸らさなければ…何か良いものは無いものかと思案していると、ある案が浮かんだのだった。
「そうだ、どっか出かけよう。」
「え?」
「うん?」
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「うーし、良さげなの食うぞぉ〜」
「おお、スイーツか!ええなぁ!もちろんお前の奢りやろ?」
「…!スイーツ…!!食べたい…!」
そんなこんなで、3人は源治の提案で近くのスイーツ店まで来ていたのだった。提案した源治は「まぁ、たまにはこんなのもいいでしょ」という思いと「なんとかオグリの興味を逸らせたようでよかった…」という一時の休息を得られた事を喜ぶ思いが胸のうちにあった。
まぁ、この後すぐに青い顔をして自身のこの提案を激しく後悔することになるのだが。
「俺の奢りだぁー?あぁ…ま、いいぜ。奢ってやるよ。」
こちらから誘った手前、奢ってくれなんて言えず、何より女の子に言えるわけもなく源治は2人に自分の奢りを約束するのだった。それを聞いて年相応の女の子のように喜ぶオグリと、したり顔でニヤリと笑うタマ。
その様子を見ながら源治はさっさと受付を済ませ、3人きっかり座れるテーブル席を確保するのだった。席について早速メニューを広げ、それぞれが頼みたい物を頼んでいく。
「まぁ、好きなの頼めよ。……っておいオグリ!?好きなのとは言ったが多少遠慮というものをだな…!?え、だめかって?いや…えーと…ああくそっ!いいぞ、頼め頼めッ!」
なかなかの値を張るスイーツを目をキラキラさせながら容赦なく頼んでいくオグリに悲鳴を上げる源治だったが、しゅんとした様子でこちらを見つめる目に負けてヤケクソ気味に叫ぶのだった。
その様子を面白そうに眺めながら「ま、自分から奢る言うたんやし、ええやろ。」と呟き、自分が家族と暮らしていた頃には見かけなかった目が飛び出るほどの値段のスイーツに目を白黒させつつ、ほどほどの物を頼むのであった。
「お待たせしました〜」
店員が名前と共にスイーツをテーブルの上に次々と並べていく。その光景を子どものように目を輝かせながら見つめるオグリキャップと、反対に血の気を失い顔が青ざめていく源治。それを相変わらず面白そうに見ながら自分が頼んだスイーツを堪能するタマモクロス。
「いただきますっ!」
「い、いただきます…」
律儀に両手を合わせるともっさりもっさりとスイーツを幸せそうに頬張っていくオグリキャップ。さっきまで所狭しと立ち並んでいたスイーツ達があっという間に消えていく。その様子を悟ったような目で見ながら注文したパフェを口に運ぶ源治。
(もう絶対にオグリには奢らねぇ)
と、心に固く誓ったのだった。
ふぅ、と小さくため息をつき、目の前の現実から目を背けるべくパフェのトッピングのバナナにかぶりついて何気なく店の外を見た時だった。
「うん…?」
一瞬、見覚えのある頭髪と髪飾りを見たような気がした。
「……まさかな。いや、でも…」
「うん?どないした?」
店の外をきょろきょろと見渡し、落ち着きのない様子の源治に気づき声を掛けるタマモクロス。
「………いや、なんでもない。」
きっと気の所為だ。そう思うことにしよう。そう結論付けてパフェに戻ろうとしたその時。
ガチャリ、と扉が開いた。
「いらっしゃいませー!」
店員が客を迎える言葉が聞こえてくる。それと同時に聞き覚えのある懐かしい声が聞こえてきた。
「へぇ〜…いい雰囲気の店だな。…んで、そんなに美味しいパフェがあんのか?ここ」
「はいっ!ポッケさん絶対に気に入りますって!」
そんな会話をしながら4人組が入ってきた。4人にはウマ耳と尻尾がついており、さらに紫を基調とした特徴的な制服を着ていることからトレセン学園の生徒だと分かる。
親しげに話すグループの中心には、明るい鹿毛のカーリーボブに、前髪には黒いギザギザとした髪留めをつけ、右耳には切れ込みが、左耳にはピアスがついたウマ娘がいた。
……まじか…まさかこんなとこで会うとはな…
もう間違えようがない。あいつは俺がフリースタイル時代に鎬を削ったライバル。名を…
ジャングルバスケット…
あれ?なんか違った気がする。なんだっけ?ジャングルまでは覚えてるんだけどな…
「さてさて、どんな感じだ〜?……おおっ、すげぇなおい!!めちゃくちゃ美味そうじゃねぇか!!」
俺が名前を思い出そうとしている間に4人組は俺達のテーブルのちょうど真後ろに座っていた。鹿毛のウマ娘は店オススメの特製大盛りパフェを前にして嬉しそうにはしゃいでいる。
(そういえばあいつ、パフェめちゃくちゃ好きだったなぁ…初めて会った時名前を間違えて詫びにパフェ奢ったっけ……あ。)
昔の記憶を思い起こし、懐かしんでいると唐突に彼女の名前を思い出した。
そうだ。あいつは確か…
「ジャングルポケット…」
「あ?なんだお前?気安くポッケさんの名前を…って、ええ!?」
どうやら口に出して呟いていたらしい。4人の中の1番近い1人に反応された。こいつの名前は覚えていないが、常にポッケのそばにいたやつの1人だ。
「お、お前ひょっとして…」
「あー?どうした?」
ポッケが立ち上がってこちらを見る。俺もポッケに視線を合わせた。その瞬間、ポッケが固まった。周りの仲間たちはこちらとポッケを不安そうに交互に見ていた。
「?どないした?」
「?」
自分のスイーツを頬張っていたタマとオグリも異変に気づいたらしく、こちらを見てくる。
「……源治。」
「…久しぶり、だな。」
ようやく重い沈黙を破って両者が口を開いた。ポッケは源治を見てなにか言いたげに口を開けたり閉じたりするが、一向に言葉が出てこないようだった。源治も同様に、久々の再会なのに複雑そうな表情を浮かべているポッケに掛ける言葉が見つからないようだった。
やがてポッケが居心地悪そうに後頭部を掻き、口を開くのだった。
「……まぁ、色々言いてぇ事あっけど」
そう言うや否や源治に向かって拳を突き出した。
「3日後だ。〇〇レース場まで来い。そこでタイマンだ。」
源治は突き出された拳とポッケの顔を交互に見た後に、
「……おう。」
と静かに自身の拳をぶつけたのだった。
「うっし。そんじゃあな、源治。」
そう言い残し、パフェを全て頬張って店を後にしたのだった。
「なんや?あいつ。それに、源治って…」
「あぁ。俺の名前だ。……あれ、言ってなかったっけ?」
「言っとらんわ!つか、なんで言わなかったんや?」
「忘れてた。」
パフェを食べながらあっけらかんと言い放つ源治。
「な!?はぁ…もうええわ…」
ツッコむのに疲れ、スイーツを楽しむことに戻ったタマ。
「源治…源治か…うん。良い名だ。」
オグリは相変わらずマイペースにスイーツをもっさりもっさりと食べていた。
源治達もスイーツを堪能した後、店を出てそれぞれの帰路についた。
懐が一層寂しくなる源治であった。
めちゃくちゃ負けず嫌いで(恐らく)根に持つタイプなタマがボコられた恨みを晴らすがごとくオグリを連れて源治に奢らせる図。源治(のサイフ)は死んだ。
新しい娘と出会って、走って、また出会って…ばっかだとやっぱり物足りないからね、今回みたいな回もたまには入れていかないとね。