ヒトミミウマ息子がゆくウマ娘プリティーダービー 作:コウハクまんじゅう
ルー、メイ、シマちゃんって何気に可愛いよね…育成実装しないかな…
新時代の扉、円盤出たら絶対に買います。
今回はポッケメインとなります。
時系列としてはスイーツ店で源治にタイマンを申し込んだ翌日、そしてタイマン当日…と言った流れになります。
では、ごゆっくりどうぞ。
─トレセン学園のレース場にて─
「はっ…はっ…はっ…」
鬼気迫る表情で走り込みを行う鹿毛のウマ娘がいた。彼女の名はジャングルポケット。走りで最強となり、
そんな彼女は、普段練習には真面目に取り組んでいるものの周囲を萎縮させるような凄みは出さない。だが今日の彼女は普段の様子から想像もできないほど真剣な表情で走り込んでいるのだ。そのあまりの迫力から彼女の近くにいるウマ娘は皆そそくさとレース場を離れていっている。
そんな様子を遠くから眺めている3人のウマ娘たちがいた。
「うわ〜、ポッケ気合い入りまくってるなぁ…」
鹿毛に青のグラデ髪のおかっぱと右耳の耳飾りが特徴の活発そうなウマ娘がつぶやく。
「そりゃ当然だろ。何しろ、
鹿毛と黄色のグラデ髪のお団子ヘアや左耳につけたポピーの花の髪留めが特徴の、背の高いクールなウマ娘が続いた。
「そうだよなぁ、そりゃあ気合い入りまくるよなぁ……というか源治さん、なんでレース場来なくなっちゃったんだろ。この間あったけど聞ける雰囲気じゃなかったし…」
左耳の耳飾り、二つ結びのおさげにした鹿毛とピンクのグラデ髪、首元の三連星のほくろや前髪につけた髪留めが特徴の小柄なウマ娘がつぶやいた。
この3人は喋った順番からルー、メイ、シマという。ジャングルポケットとはフリースタイル時代の頃からの付き合いで、常に彼女の周りにいる親しい友人達だ。
「さぁ…でも、次のタイマンで何かしら分かるだろ。」
「ポッケ、源治のことかなり気に入ってたからな…2人が最後に戦った時は源治が勝ったけど、その後すぐ源治がどっか行っちゃったからなぁ…」
「例え源治さんに何か事情があっても、あれは勝ち逃げと思われてもしかたないよね…」
「あの頃のポッケかなり荒れてたよな」
「初めてライバルに勝ち逃げされて、色々分かんなくなってたよな」
「そんな中私達が連れ出したレースでフジさんと出会って変わったんだよなぁ、フジさんには本当に感謝だな!」
「私がどうかしたのかい?」
「あっ、フジさん!」
「「「お疲れ様です!!」」」
3人の前に手を振って颯爽と現れたのは黒髪のショートカットのウマ娘。彼女の名はフジキセキ。ジャングルポケットがとても慕っている先輩だ。
ジャングルポケット共々世話になっていることもあり、3人はフジキセキの前だととても礼儀正しくなるのである。
「ポッケ、とても集中しているね。まるで重要なレース直前みたいだ。」
可愛い後輩の様子が普段とは違うことを敏感に感じとり、すかさず3人に訊ねる。
「何かあったのかい?」
「…実は、フジさんの言った重要なレース直前っていうの、当たってるというか…」
「おや、そうなのかい?でも、しばらくは出走予定のレースはなかったはずだけど…」
何気なく言った自身の一言が核心を突いていることに驚くフジキセキ。しかし、彼女の出走するレースをある程度把握しているがその中にもうすぐ始まるレースが無いので戸惑った様子を見せる。
「えーとですね…なぁ、源治の事どこまで喋っていいんだ?」
「うーん…無闇矢鱈に広めるわけにはいかねーだろ…あのタイマンの後わたし達も成り行きで聞いちゃったけど、後であまり広めるなって釘をさされたし…」
「いや、別に源治の事喋んなくても"強いライバル"とかでいいんじゃねーか?」
「"源治"?源治って誰だい?」
「あ!い、いえ!なんでもないっす!」
何やら気になる様子を見せる3人だが、それを訊ねてもはぐらかして答えようとしない。察しの良いフジキセキは3人の言う"源治"という人物こそがポッケがああして真剣に練習に打ち込む要因だとすぐに気づいた。
しかし"源治"という謎の人物の詳細を3人に問い詰めても喋ろうとしないので、直接本人に聞きに行くのだった。
「やぁポッケ!頑張っているね。」
「あっ、フジさん!」
ちょうど練習が一段落つき休んでいる所を話しかけに行った。スポーツドリンクを器用に回しながら差し出す。ポッケはそれを嬉しそうに受け取り、一気にぐびっと飲んだ。その様子を見ながら隣に静かに腰掛ける。
「ついこの間レースが終わったばかりだっていうのに、随分と精が出るね。何かあったのかい?」
「いやぁ、別になんもないっすよぉ〜」
にへら、とデレデレ笑う後輩を微笑ましく思いながらも、自分が慕う先輩から訊ねられて少なからず動揺したのか、声が僅かに震えたのをフジキセキは聞き逃さなかった。
本人の事情に踏み込むのは申し訳ないと思いつつも、先程の練習の様子を思い出しこのまま放っておけば怪我をしかねないと思い直して切り込むのだった。
「ふーん、そっか…でも、何か明確な目標がないとあそこまで頑張れないよね。そうだな…例えば、"絶対に負けられない宿敵"との戦いが間近に控えてる…とか?」
先程のポッケと親しいあの3人組の会話を思い出す。「重要なレース直前」「強いライバル」そして「源治」という謎の人物…恐らく鍵となるのはこの3つだろう。
ここからはあくまで推測だが、ポッケは何か事情があって「源治」という強力なライバルとのレースを間近に控えており、そのため先程の鬼気迫る迫力で練習に打ち込んでいたのではないだろうか?
しかし、ここではあえて「源治」という名前は出さない。先程の3人の様子を見るに、ポッケと源治の間では何かがあった事が察せたからだ。それを今聞けばポッケを傷つけてしまうかもしれない。私としても、それは本意ではない。
「…!」
ハッとしたようにポッケの目が見開かれた。
「図星かな?」
「……フジさんはすごいっすね、何でも分かって…」
「まぁ、ほとんど私の想像だけどね。でも、可愛い後輩があんな必死で練習していたら気にもなるさ。…それで、そのライバルとはいつ戦うんだい?」
「2日後、〇〇レース場で戦います。……フジさん、オレ絶対に負けられないんです!」
いつになく真剣な表情に思わず驚いた。ポッケが私に対してこれほどの表情を見せるのは滅多にない。それほどまでに、そのライバル─恐らくは"源治"─は強いのか。はたまた、絶対に負けられない理由があるのか。いずれにせよ、私もまだ見ぬポッケのライバルに興味が湧き、気づけばひとりでに言葉がこぼれていた。
「…私も見に行こうかな。」
「え、マジっすか!?フジさんが応援に来てくれたら超心強いっす!」
先程の真剣な表情から一転して、無邪気に瞳を輝かせてこちらを見つめてくる。自分を慕ってくるその可愛らしい様子に思わず口元が緩む。
「ただし、無理をし過ぎないこと。」
そう言い、微笑みながら小指を差し出す。
「約束できる?」
ポッケは差し出された小指とフジキセキの顔を交互に見た後、自身の小指を絡ませて元気よく「はい!」 と返事をしたのだった。
「よーし…」
勢いよく立ち上がり、天高く拳を突き上げ高らかに叫ぶ。
「待ってろよォ源治!」
闘志を滾らせリベンジに燃える鬼。一方、源治は─
「はっ…はっ…はっ…」
「すごい集中力やな…」
「あぁ…」
来たるべきかつてのライバルとの戦いに燃え、思わず話しかけるのも憚られるほどの集中力で身体を追い込んでいた。
ピシ…
─決戦当日、府中市某レース場にて─
ここは府中市にあるL/Roars管轄のレース場である。普通のフリースタイルレース場とは少し違い、L/Roarsが私的に使っているレース場である。滅多な事では使わないが、主に仲間内の揉め事の決着をつけるためのレースをする時等に使う。
観客席にはL/Roarsメンバーの他にそれなりの数のギャラリーがいた。その中にはトレセン学園の生徒や走り屋のチームなども多く見受けられた。
「まったく、どっから聞きつけてきたんだか…」
「まぁいいじゃないっすか。伝説の府中二強…ポッケさんと無名が再びぶつかるんだから、これでも少ない方っすよ。」
レース場の仕切りを担当しているL/Roarsメンバーが呆れたようにつぶやく。それもそのはず、今日ここで開催されるレースの事は僅かな者しか知らないはずだからだ。今しがたL/Roarsメンバーが言った通り、今日久しぶりに府中の伝説の二強がぶつかるのである。
そんなことが知れ渡ったら府中の走り屋達が一挙に押し寄せてくるに決まっている。そのため徹底した情報統制に加え、L/Roars管轄のレース場で密かに開催する…はずだったのだが、その壁をも掻い潜って嗅ぎつけた猛者どもというのはやはりいるらしい。
「うーんと?あれは
「どれもL/Roars傘下のチームや、ポッケさんのダチばっかりだな…」
「まぁ当然と言えば当然だが、L/Roarsやポッケさんと関わりのない一般ギャラリーは少ないな」
そうしている間にも観客席では久々の両者の対決を楽しみにする声が飛び交っており、どちらが勝つのか予想をする声も多く上がっていた。そんな中、突然大歓声が上がった。
「あ、ポッケさん!」
「「「「ゥお疲れさァアーッす!!!」」」」
「おう、おつかれ」
今日の主役、そのうちの1人─ジャングルポケット─の登場である。大歓声に包まれながら威風堂々とレース場に入場する。その周りを固めるように3人のウマ娘─ルー、メイ、シマ─がいた。ジャングルポケットはコースに入った後、近くにいたL/Roarsメンバーに訊ねた。
「まだ
「は、はい…」
「そうか」
簡潔に、短くそう呟いた。だが、その一言に込められている迫力には計り知れない凄みがあった。訊ねられたL/Roarsメンバーはその迫力に思わず恐れおののいた。会場もその迫力に気圧されたのかさっきよりも幾分静まった。緊迫した雰囲気に空気が張り詰めていたその時。
「ポッケ〜!」
「あっ、フジさ〜ん!」
名を呼ばれた瞬間無邪気に顔を輝かせるジャングルポケット。周囲はあまりの変わりように呆気に取られていたが、そんな様子をお構いなしに声の方へ一直線に駆け出し、声の主の前で止まる。
「来てくれたんすね!」
「うん。大事な後輩が頑張っているのに応援しないわけにはいかないしね」
そのままジャングルポケットとフジキセキが談笑していると、突然叫び声が上がった。
「き、来ました!」
出入り口を見張っていたL/Roarsメンバーが声を張り上げる。その場にいる全員の視線が出入り口に向けられるのと同時に大歓声が巻き起こった。
その視線と大歓声を全身で受け止め、堂々とレース場へと歩みを進める源治。そしてその左右には2人の芦毛のウマ娘が並んでいた。
「なんでお前らもついて来んだ?」
「アホォ、面白そうやからに決まっとるやろ!…ま、気張れよ源治!」
「源治、頑張れ。」
「うん、頑張る。」
軽口を叩き合いながらコースへと向かう3人。源治がコースに足を踏み入れたあとは2人は離脱して観客席へと向かうのだった。
「なあ、あの2人ってタマモクロスとオグリキャップじゃねぇか!?」
「まじ!本物かよ!?」
「あいつすげぇ…」
と、観客席ではどよめきが広がっている間、ジャングルポケットもまたフジキセキに別れを告げ、コースに戻って源治とターフの上で睨み合っていた。
「お前、いつの間にレース場なんか手に入れたのかよ」
「まぁな。つってもここはL/Roars管轄のレース場だけどな。」
「マジかよ。L/Roarsってそんなにデカくなったのか?」
「色々あったんだよ……お前が居ねぇ内にな。」
「…!……そうか。」
瞬間、ジャングルポケットの眼光が鋭くなった。一気に空気が重くなり、両肩に岩を載せられたかのような錯覚に陥る。
(流石はポッケ、とんでもないプレッシャーだ…そして、やっぱ怒ってるよなぁ…勝手に居なくなったこと…)
何度も一緒に走っていたから分かるが、彼女はとんでもない負けず嫌いだ。フリースタイル時代、俺が勝った時はむすっとした顔で一日中口聞いてくれなかったなんてザラだ。そんで俺が負けた時はめちゃくちゃ煽られた。もうとんでもない勢いだったなぁ…とぼんやりと思う。
そんでもって確か…彼女と戦った最後のレース結果は俺の勝ちだったはずだ。そんでその後すぐに親にバレてフリースタイルレースに行かなくなった。それで結果的に俺はポッケに勝ち逃げする形でフリースタイルレースを去った…
(ポッケはそのことをずっと怒ってて、悔しかったんだろうなぁ…)
色々と話したいことはあるが、すべてはレースが終わった後だ。そう思い直し、ポッケにレースの詳細を訊ねる。
「コースは?」
「芝の2000m…オレとお前が十分に実力を発揮できるコースだ。」
「流石だな。それだけ分かりゃ十分だ…んじゃ、早速始めるか」
「あぁ。オレに勝ち逃げした事後悔させてやる」
「うーん、勝ち逃げしたつもりは…まぁ、全部終わったら話すか。」
2人の周りの空気が急速に歪んでいき、誰も近寄れないほどの重圧が周囲を支配した。
いよいよレースが始まることを知り、ギャラリーも騒ぎ始めた。
スタート位置につき、内に源治、外にジャングルポケットが構える形となった。
「位置について!」
両者とも腰をぐっと落とし、いつでも飛び出せるように力を溜める。伝説の府中二強が今…
「よーい…スタートッ!!」
弾かれたように飛び出した。
源治が自分のことを広めるなって言った理由は後々判明します。
1話で終わらせるつもりが長くなって2話になってしまった…
あとL/Roarsは府中を支配しているデカいチームで、レース場の一つや二つ持ってても不思議はないんじゃないかなっていうのが僕の解釈です。
タイトルを「前編」に変更しました。