ヒトミミウマ息子がゆくウマ娘プリティーダービー   作:コウハクまんじゅう

7 / 29

待たせたな!cv:大塚明夫

さて、この小説のタイトルがいつの間にか変わっていて「なんじゃこりゃ!?」ってなった方も多い事だろうと思います。念の為言っておくとこの小説は元「トレーナーじゃないけどなんかウマ娘育ててます」です。

実は活動報告の方でチラッと言っていたのですが、思ったよりも見てくれている人が少なかったのでこちらでも改めて言おうと思います。

まず、「トレーナーではないが、ウマ娘を育てる」というコンセプト自体に無理があるかなと感じ、書きにくいため変更した、というのが大きな理由です。

そもそもこのタイトルは「なんか目を引くタイトルないかなー…あっ、閃いたっ!」といった具合に何も考えず適当に決めてしまったので、書いている途中で他にいい名前が思いついたらすぐさま変更する予定ではありました。

突然の変更で申し訳ありません。そして今後もこのように突然何かをポンと変えるかもしれませんので、その時も寛大に受け止めてくださると幸いです。


※注意※
今回オリウマ娘出ます。




リベンジ〜後編〜

 

 

 

 

─数年前、源治が来なくなる前の最後のレース─

 

 

 

 

 耳をつんざく大音声、そのあまりの大きさによって空気と地面をも揺り動かしている。

 ここは、東京都府中市のフリースタイルレース場。ここを訪れるのは走るのが趣味のアマチュアウマ娘から引退した元競走バまで、その実力は大きく振れている。

 そして今、伝説の府中二強と呼ばれる者達が激しくぶつかりあっていた。

 

 

「さあ、最終コーナーを回って最初に立ち上がってきたのはやはり"無名"だ!漆黒の服を靡かせて恐ろしい加速力で後続を振り切らんとしているぞ!」

 

「しかし後続も追いすがる!虎視眈々と無名を狙うのは"闘叫の鬼、ジャングルポケット"だ!」

 

 

「ッラァ!!」

 

 

ズン

 

 

 

「おおっと、ここでジャングルポケットが仕掛けたぞ!自慢の末脚が炸裂したァ!!」

 

 

「ふっ…!!」

 

 

ズン

 

 

「しかし無名も加速する!差を詰めてくるジャングルポケットを寄せ付けまいと懸命に走る!!やはり最後はこの2人の真っ向勝負になるのか!?すでに後続とは5…いや、6バ身近く差が開いているぞ!!」

 

 

「ウラァァァアアアアアア!!」

 

 

「ウォオオオオオオオオオ!!」

 

 

 

 両者もつれ合いながらゴールまで必死に駆ける。

 

 

「今、ゴォォオオオオル!!!一着は…」

 

 実況が声を張り上げて叫んだ。歓声が収まり、場が静まる。両者とも荒く息を吐き出し、呼吸を整えて着順を耳を澄ませて聞く。

 

 

 

「一着は…"無名"だァアァアア!!クビという僅かな差で闘叫の鬼、"ジャングルポケット"を退けたァアア!!」

 

 

 ギャラリーが堰を切ったように大歓声を上げ、勝者を称える。その中にはあともう少しでジャングルポケットが勝ったのを惜しむ声も聞こえてくる。それを聞きながら悔しげに顔を歪めるジャングルポケット。

 

「ポッケさん!お疲れさまです!」

 

 スポーツドリンクとタオルを抱えてこちらへ駆け寄ってくる仲間達に礼を言って受け取る。体をつたう汗をタオルで拭い、スポーツドリンクを喉へ流し込んでいると、額に黄色のバンダナを巻いた仲間が同じ差し入れを持っておずおずと近寄ってきた。

 

「あ、あの、ポッケさん…」

 

「あ?どうした?」

 

「アタシ、ちょっと行ってくるっす」

 

「それってどういう…あぁ、そういうことか。行ってこいよ」

 

 許しを貰ったL/Roarsメンバーはぺこりと頭を下げ、源治の傍まで行くと、スポーツドリンクとタオルを差し出した。源治はそれを「ありがとう」と言って受け取ると、スポーツドリンクを一気に半分近くまで飲み干し、タオルで汗を拭き取った。

 黄色いバンダナの仲間はそれを耳をピコピコさせながら見惚れていた。

 

「仲いいよね〜あの2人。」

 

「あいつ、無名とのレースに負けてからは落ち込んでたけど、ポッケと無名のタイマン後はウチらが知らない内に仲良くなってたしねぇ…」

 

「一体何があったんだろ」

 

「本人に聞いても『色々あった』の一点張りだからねぇ…」

 

 

 ギャラリーの興奮冷めやらぬ中、黄色いバンダナの仲間にタオルとスポーツドリンクを返し、静かにレース場を離れようとする無名……源治。バンダナはそれを名残惜しそうに見つめながら立っていたが、すぐにこちらへと戻ってきた。

 そのまま歩き去ろうとしている源治の背中に声をかける。

 

 

「おい」

 

 

「ん?」

 

 

こちらを振り返る源治に拳を突き出した。

 

「次はオレが勝つからな。」

 

 

その拳を見た後に、源治も無言で拳を突き出したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─レース開始直後─

 

 

 

 

 

ズン

 

 

 

 両者好スタートを切った。再び伝説同士のぶつかり合いを間近で見られることへの興奮からギャラリーは大歓声を上げてレースの開始を迎えた。だが、その中には人間がウマ娘とさも当然のように走っている事に驚く者も少なからずいた。

 

 

「こ…れは、一体…?」

 ジャングルポケットの雄姿を見届けに来た、このフジキセキもそのうちの1人である。彼女は、ジャングルポケットがライバルと戦う事は察していたがまさかそれが人間だとは少しも思っておらず、唖然としているようだった。

 

「おお!フジも来とったんやな〜」

 

「君は…タマ?それにオグリも…」

 

「やあ、フジ。君も来ていたとは知らなかった」

 

「あ、あぁ…」

 

 知人の2人に会っても空返事のフジキセキ。それも当然といえば当然であろう。何しろ、目の前で人間がウマ娘と一緒に平然と走っているのだから。

 

「…彼は、一体…」

 

「なんや?ボーっとした顔して…あぁ、そういうことか。」

 

 呆然とした顔で今この瞬間も動いているレースの状況を眺めるフジキセキ。その様子を見てなぜ戸惑っているのかを察するタマモクロス。

 

「あいつ…源治はなぁ、なんでかは分からへんが人間なのにウマ娘と互角にやり合えるくらい速いやつなんや。」

 

「ああ。初めてみた時は私も驚いた。」

 

「"源治"…彼が、あの3人が言っていた源治か…」

 

 タマモクロスの解説に相槌を打ちながら、フジキセキは自身が持ち合わせていた情報をすり合わせていく。

 

 

「源治…面白そうな人だね」

 誰に言うでもなく呟いた。そのまま色々と考え込んでいる様子だったが、続くタマモクロスの声によってフジキセキは現実へと引き戻されるのだった。

 

()()()()()はゆったり進んどんな。」

 

「あぁ。()()()()()はな。」

 頷き、源治とジャングルポケットの様子を注意深く観察するオグリキャップ。今しがたタマモクロスが言った通り、レース自体はゆったりと進行している。だがなぜ2人ともレース自体と強調したのか、その理由はジャングルポケットが源治に対して遠くからでも見て取れるほど圧をかけているためである。

 

「うわぁ…ポッケさん、バチバチしてるなぁ…」

 

「うん?君たちは…」

 

「あ、フジさん!」

 

「「「お疲れ様です!」」」

 

「ん?なんや?お前の後輩かいな?」

 

「うん。右から順にルーちゃん、メイちゃん、シマちゃん、そして…おや?そこの子は誰だい?」

 

 見慣れた3人組の他に1人見慣れない顔があるのに気づく。丸みを帯びた顔立ちに、額に巻いた黄色いバンダナと一房輝く流星が特徴的な栗毛のウマ娘だ。

 

「あっ…アタシ、ルマっていいます。」

 

「私はフジキセキ。よろしくね、ポニーちゃん」

 

「うぇ?ぽ、ポニーちゃん??」

 

 ウインクを飛ばし、クールに自己紹介をするフジキセキ。今しがた自己紹介をしたというのにポニーちゃんと呼ばれ困惑した様子を見せるルマ。

 

「君もポッケの友達?」

 

「は、はいっ!フジさんの事はメイ達からかねがね…ポッケさんとメイ達がお世話になってますっ!」

 

 ぺこり、と行儀良く頭を下げるルマ。その礼儀正しさは初対面のフジキセキに好印象を与えていた。フジキセキは微笑みながらルマの頭を撫でた。

 

「ふぇ!?」

 

「ちゃんと挨拶できて偉いね。よろしくね、ルマちゃん」

 

「ふ、ふぁい…」

 

 2人が話している間、レースはまだ大きな動きこそ見せていないが、ジャングルポケット、源治の両者は着実に仕掛ける準備を進めていた。

 

「源治は最終コーナーでイカれた加速をして、その勢いのまま最終直線に突っ込んで化け物じみた末脚でぶち抜くのが主流。」

 

「対してポッケさんは最終直線で鋭く切れる天性の末脚が持ち味…」

 

「コーナーで加速できる分源治の方が有利ではあるが…」

 

「ポッケの末脚はそんなもんで千切れるほど甘くはねーよ。」

 

 順にタマモクロス、シマ、オグリキャップ、メイが冷静に両者の武器を挙げ、どちらが有利になるのかを議論している。

 

「源治はコーナーで動くだろうけど、ポッケの仕掛けどころは最後の直線だからなぁ」

 

「コーナーで差をつけられたまま直線にもつれ込んだら苦しくないか?」

 

「かと言って、源治に着いていこうとしてコーナーで無理して加速したら大きなロスを負って取り返しのつかないことに…」

 

「あーもう!!どーすりゃいいんだよ!」

 

 果たしてこのレースを制するのは源治か、ジャングルポケットか。予想の結論が出ないまま頭を抱えている間に、早くも最終コーナー手前までレースは進行しているのだった。

 

 

 

 

────────────────────────

 

 

 

「頑張れぇえー!ポッケさぁーん!」

 

 

「おいお前らァ!気合い入れてけェ!ッスゥ〜…いっけぇええー!ポッケさぁぁああん!!」

 

 

「まだまだ行けるだろー!頑張れ無名ー!」

 

 

 歓声を背中に受けながら、前を走る源治の背を追い続ける。現在、最終コーナー手前に差し掛かった所だ。オレも源治も、まだ動かない。だが…

 

 

(きっと源治は、このコーナーで仕掛けてくる。その時に、オレがどこまで引き離されずに食いつけるかだな…)

 

 源治の強さは、最終コーナーでのデタラメじみた加速力にある。普通、コーナーを曲がる時は減速して少しでも滑らかに曲がろうとするものだが、源治は違う。むしろ速度を上げて突っ込むのだ。そんなことをすれば大きなロスを喰らって失速する、無謀な行為だ、と彼を知らない者は言うだろう。

 

 だが、そんなイカれた事をやれてしまうのが彼なのだ。間もなく最終コーナー。歯を食いしばって気を引き締める。気合いを入れ直し、最終コーナーへ突入する。

 

 

 

 

ズン

 

 

 

 

 

(来た…!)

 

 

 コーナーに入るのと同時に源治が大きく足を踏み込み加速する。ギャラリーからの歓声が上がった。それを聴きながら、前を走る背中が遠のきそうになるのを脚を動かして必死に食らいつく。

 

 

「くっ…!!」

 

「………」

 

 じりじりと距離が引き離されるのと同時に、こちらのスタミナも削られていく。このままでは脚が使えず、最後の直線で末脚を発揮できない…どうしたものか、と思考を巡らせる。

 

 

 彼に引き離されまいと走ればスタミナを持っていかれる。ならばいっそのこと、最後の直線まで脚を溜めたほうが良いのでは?そのほうが自身の末脚を遺憾なく発揮できる。ここで離されると厳しいが、かと言ってこのまま潰れるわけにもいかない。

 

 

 そう判断するやいなや、減速して息を整え、最後の直線にそなえる。見る間に距離が離されていくが、もう一度呼吸を整え、心を落ち着けさせて彼の背中ではなくゴール板を見る。

 

 

「ふぅ…」

 

 

 周囲の音が段々と聞こえなくなってくる。ギャラリーの歓声、体が風を切る音、脚が地面を踏み締める音…走るのに不要なものは全て無くなり、残った物はただ一つ。

 

 顔を下げ、再び上げる。ちょうどコーナーを終え、直線に突っ込んだ。彼の…源治の背中が遠く感じる。

 

 刹那、体に電流のような物が走った。

 

 

 

「ッ…!!」

 

 

 

 

 

 

 

ピシッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 脚を前に踏み出した。

 蹄鉄が大地を抉る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!?」

 

「ウラァァアアアアアアアアアア!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

王者の喊声

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 瞬く間に差が縮まった。さっきまで遥か後方にいたはずのライバルが突然自身の真後ろまで来ていることに動揺を隠せない源治と、背後から今にも追い抜かさんと目をギラつかせているジャングルポケット。

 

 

「まじかよ…!?」

 

 真後ろから迫ってくる宿敵にむけてそう呟いた。今まさに、死力を尽くして己を追い抜かさんとするその迫力に思わず気圧される。

 

 

「ウラァアアアアアア!!」

 

 

(この気迫…俺とレースしてる時のタマやオグリに似ている……まさかポッケも…!?)

 

 

 ポッケとの差はジリジリと詰められていく。3バ身、2バ身、1バ身…

 

 

 

 

 

 

 

今、追い抜いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(くそっ…!負けてられっかよ…!!)

 奥歯をギシリ、と噛みしめながら必死で脚を動かすも、ジャングルポケットの背中は無慈悲に離れていく。

 

 

 一瞬で大きく動いた状況にギャラリーはどっと沸いた。

 

「…!!ポッケ…!」

 

「ポッケさぁああん!!」

 

 観客席でジャングルポケットの雄姿を見守っていた一向も、怒涛の追い上げに大興奮している。そんな中、ジャングルポケットの異変にいち早く気づいたオグリキャップがタマモクロスに素早く耳打ちしていた。

 

 

「ッ!?た、タマ、これは…」

 

「…あぁ。」

 

 オグリキャップは、自身が気づいた何かを確認すると、それに賛同するように頷くタマモクロス。彼女たちが何に気づいたのか、それを理解する者も、ましてや気づいている者も、この場にはいなかった。

 

 

 

 

「源治さん…」

 

 差を広げられて苦しそうな源治を心配するルマ。そんな彼女の様子が気になり、「君と源治くんはどういう関係なんだい?」と訊ねるフジキセキ。

 

 その質問にルマは少し考えた後に「…ダチ、みたいな感じです」とだけ答えた。その答えに違和感を覚えたが、レースの行く末が気になり深く追求することはやめたのだった。

 

 

 

 

「うぉらぁああぁぁああ!!」

 

「くっ…!」

(追いつけねぇ…!)

 

 源治は、かつて鎬を削ったライバルと再び全力の勝負ができることに血を滾らせていたが、開いていく距離を見て焦りを感じ、呼吸は乱れ、フォームも崩れ始めておりやや掛かり気味であった。

 

 対してジャングルポケットは、直線に突入した直後からの驚異的な勢いが止まることなくぐんぐんと伸びていき、ギャラリーの大歓声も相まって絶好調であった。

 

 もはやポッケの勝利は明確であった。

 

 

(俺は、ここまでか…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

違ぇだろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドクン…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鼓動が高鳴る。

 

 唐突な感覚に戸惑いを覚えるが、困惑とは裏腹に体の奥底からふつふつと何かが湧き出てくるのを感じる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は泥を引っ被りに来たんじゃねぇ。

 

 

俺は…!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(…?なんだ?)

 源治の勢いが弱まった?スタミナ切れでも起こしたのだろうか?……まぁ、いずれにせよ、この好機を逃す手はない。

 背後にいるライバルの調子が上がらないことを察知し、さらにスパートを掛けて突き放す。

 

 

(行ける…!!)

 

そう確信し、さらにギアを上げて源治を突き放そうとしたその時。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゾワッ

 

 

 

 

 

 

「ッ!?」

 

 

 

 

 瞬く間にレース場を支配する悍ましい覇気。そのあまりの重圧にギャラリーはどよめいていた。そしてその効力はもちろん、ジャングルポケットにも届いていた。

 

 

 

 

(な、なんだ…?)

 

 

 

 

 

……ピシッ

 

 

 

 

 

 

 

 

後方からとてつもない重圧が襲いかかってくる。それと同時に、脚の動きが鈍くなった気がした。

 

 

 

(な、なんだよ、これ!!くそっ、動け!動けよオレの脚!!)

 

急に思うように動かなくなった脚に苛立ちを覚え、心の中で必死に叱責して立ち直らせようと試みる。

 

 

(うご…)

 

 

 

 

 

 

ぬるり

 

 

 

 

「よぉ」

 

 

「ッ!?」

 

 

 自身の左斜め後ろから声が飛んできた。それと同時にターフを踏みしめる鈍い音も聞こえてきた。その距離、約3バ身以内。

 

 まさか、そんなことが…

 

唖然としていると再び声が飛んでくる。

 

 

「勝ったと思ったのか?」

 

 舐めんじゃねぇ、と。背後を振り返ろうとした瞬間。

 

 

「勝負はァ!」

 

 

ズン

 

 

こっからだろ。

 

 

 

 

 

 

漆黒の狂風

 

 

 

 

「うおおぁああぁぁああ!!」

 

 

 

 抗う力など残っていなかったはずの源治が今、ジャングルポケットの隣に並んだ。

 

─ワァァアアアアア!!

 

 異様な最終局面を迎えたレースに会場は大いに盛り上がった。そして、これまで両者の対決を見守っていたポッケ一味と源治一味も様々な反応を見せた。

 

「な、なんやと…」

 

「……源治もか…」

 

「うっわ、まじかよ源治のやつ…」

 

「あそこで加速できんのかよ!?」

 

「無茶苦茶なやつ…」

  

「……驚いた。まさか、あそこまで離されていても尚食らいつけるなんて…」

 

 

 必死の形相でターフを踏み込み、追い抜かそうとする源治と、なんとか追い着かせまいと駆けるジャングルポケット。

 

「ウォオオラァァアアアアアアア!!!」

 

「ぐぁぁあぁあああああああああ!!!」

 

 

 

 

ズ…ズズ…

 

 

 

 

 

 

両者激しく競り合いながら、ゴール板を駆け抜けた─

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「かっ、勝ったのは…」

 

 ゴール判定の担当ウマ娘が声を震わせ、叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ジャングルポケットだァァァアアアア!!」

 

 

 

─ワァァアアアアアアアアアア!!!!

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…」

 

「はぁ……はぁ……」

 

 

 ぜぇぜぇと息を切らし、満身創痍といった様子でターフに倒れ込む2人。ギャラリーは王者の勝利に歓喜の声を上げていた。

 

 着差は1バ身。ほんの僅かな差であったが、あと一歩、届かなかった。しかし、源治の顔に敗北の悔しさの色は見えず、むしろ清々しささえ感じるほどの満面の笑顔であった。

 

 

 

 

 

「へ、へへ…やった、ぜ…」

 

「………負けたぜ、ポッケ…」 

 

「お前も…やっぱ速いな…源治…」

 

「あぁ…久々に熱くなったわ」

 

 

 勝負を終え、互いに称え合う両者。それから、ジャングルポケットはずっと疑問に感じていたことを源治にぶつけるのだった。

 

「…そういえばお前よぉ、なんでレース場来なくなったんだ?」

 

「あー、それね…」

 

「……やっぱ勝ち逃げか?」

 

「違ぇーよ。俺、お前との最後のレースのあと親にフリースタイル出てんのバレて出禁になったんだよ。」

 

「………は?」

 

 

 

 

 思っていた以上に─こう言うと何だが─しょうもない理由で思わず間抜けた声が出る。気まずそうに頭を掻きながら顔をそっぽへと向ける源治。

 

 

「…ふっ…ははっ…あははは!なんだよ、それ…ふふ…親にバレて出禁って…真面目かよ…くく…」

 

「うっせー」

 

 まさか親に出禁を言いつけられていたのは驚いたが、それ以上にこの男が親の言いつけを律儀に守っている事が面白くてしょうがなかった。なんせ、レースではどんなやつでも食ってやる、という猛禽類の如き獰猛さを見せていたのだから。

 

 これが俗に言うギャップ萌えとかいうやつだろうか?まぁ、萌えるかどうかは別としてギャップがあるのは違いないだろう。と1人で謎の納得をしていると、

 

 ただ、まぁ…と言いながら上半身を起こした源治は前を向いたまま「勝手に居なくなったことは悪かったと思ってる。……俺もお前と走りたかった。」とだけ言った。それを受けて、ジャングルポケットもまた上半身だけを起こした。

 

 

「……まぁ、お前にも事情あったんだし、仕方ねーよ。…さっきは勝ち逃げどーのこーの言って悪かったな。」

 

「おう。」

 

「……なあ源治。」

 

「「また走ろうぜ」」

 

「…へへっ、考えていることは…」

 

「同じみたいだな。」

 

 2人は笑いながら立ち上がり、それぞれの仲間の元へと帰るのだった。

 

 

「…なぁ源治。お前が自分の名前が広がるのを嫌がったのって、もしかして親にバレんの防ぐためか?」

 

「あぁ。俺の家は府中にあるからな。近所の人達には「ウマ息子のゲン」で通ってるくらいには有名だ。フリースタイルレースに本名で出走なんてしたらたちまちバレて大騒ぎだ。」

 

「ははっ、有名すぎんのも考えもんだな。」

 

「まったくだ」

 

 

 

 

─────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 こうして府中二強再びのレースはジャングルポケットの勝利で幕を閉じた。会場では未だ興奮冷めやらぬ中、密かに源治に目を付けている怪しい者がいた。

 

 

「…先日スイーツ店にいたあの人。確か…源治、だったかしら。あなたのお名前、覚えておきますわ」

 

  

 手入れがよく行き届いた、紫がかった芦毛の長髪を翻し、ギャラリー席を静かに後にする、名家のご令嬢のような気品さ溢れるウマ娘。

 

 

 

 

 

 

「なんとなく、いつもとは違う散歩道を歩いてきたけど、正解だったね。」

 

 

 滑らかに輝く茶髪をたなびかせている、白いミニハットが特徴の爽やかな印象のウマ娘。

 

 

「…無名、か。」

 

 確かめるように呟くと、ギャラリー席の手すりにもたれかかっていた体を起こし、芦毛のウマ娘2人─まさか、タマモクロスとオグリキャップだろうか?─と栗毛のウマ娘に囲まれている男…無名に視線を送る。

 

 

「いつか、一緒に走ってくれるかな?」

 

 その胸の内に好奇心と期待を抱き、足取り軽くレース場を後にした。

 

 

 






さて、これにてポッケ編はひとまず終わり。次からはまた主人公、タマ、オグリ、たまにポッケを中心とした日常が始まっていきます。たまに新しいキャラが乱入して来ます。

最後に少し出たキャラは…追い追い分かっていきます。

ルマちゃんの元ネタは「ノーブルマーズ」です。ジャンポケ産駒を漁っていたら見つけて、それから色々調べて「この子にしよう」と登場させた次第です。

新時代の扉で出てきたルー、メイ、シマはジャンポケ産駒と聞いたので、「源治に負けたL/Roarsのメンバーもジャンポケ産駒から出そう」と決めていました。

ルマちゃんと源治のレースの様子や、どうやって仲良くなったのかも書く予定です。
あと投稿頻度落ちます。(小声)
活動報告には10月初めにはバリバリ行けると投稿しましたが、やはり再来週になりそうです…
落ち着いたらまたボチボチ投稿していこうと思いますので、よろしくお願いいたします。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。