中央暦1640年 2月15日
パーパルディア皇国 皇都エストシラント 外務局監査室
列強パーパルディア皇国最大の都市であり、皇都でもある都市エストシラント。
その中心部に位置するパラディア城内に入っている外務局監査室。その所属の皇族であり、皇帝ルディアスの特別な人になる予定の人物……そして地球人やエラン人を虐殺し、宣戦布告と殲滅戦を
日本からの特使への怒りで、皇帝からの命令と偽った勝手な宣戦布告と殲滅戦を行ってしまった彼女は、自身がトップを努める過激派総出でルディアスを
これで手柄が入る……そう考えたレミールであったが、蓋を開けてみれば皇国軍からの連日の撤退報告、そして幾つもの属領の失陥。更に今度は第3外務局所有のフェン島の失陥。
レミールがブチ切れるのも無理はなかった。
「おのれ蛮国ニホン国めぇ……我が皇国をどれだけ貶めれば……」
彼女自身、自身がしてしまった失態は、皇帝への報告なしで殲滅戦の宣言をしてしまったこと
つい先程まで、皇国軍最高司令官と臣民統治機構長官に対し激怒したところであったが、未だ怒りは収まらない。
兎に角、皇国の失態を他国に知られるのは不味い、と彼女はこの情報を皇国政府内のみに留めることとした。
漸く怒りが収まったレミールは思考を切り替えると、穏健派筆頭の第3外務局長カイオスと、それに尻尾を振る連中共をどうするか、彼女は考え始めるのだった。
同時刻
パーパルディア皇国 皇都エストシラント 第3外務局 局長室
場所は変わり、文明圏外国家への脅迫外交を担当する第3外務局。その所有の施設の最上階に位置する局長室では、第3外務局の最高責任者であるカイオス・ランゲルトは、第3外務局が唯一皇都外に有する土地、フェン島から送信された報告書を読み、怒りよりも先に絶望の表情となっていた。
「……な、何なんだ……これは……」
【第3外務局所有地フェン島へのニホン軍による上陸及び陥落について】
カイオスは、そう書かれた報告書を破り捨てたくなる気持ちを必死に抑え、報告書を机の上に置く。
「……率直に聞きたい。一体何故、こうなった?」
カイオスは震える声で、呼び出した幹部の1人の東部所有地連絡部長のエウにそう尋ねる。
「わ、私もわかりかねるのですが……どうやら数日前にニホン軍は、フェンの湾岸都市ニシノミヤコへ上陸。其処から本部のアマノキまで短期間で制圧したとのことで……」
「では、監察軍に関しては?」
今度はエウの横で、青ざめた表情をしている監察軍司令部連絡係長のシガールに、そう尋ねる。
「そ、其方に関しては、私も全く把握出来ておりません……。何しろ、それぞれの部隊の責任者である、東洋艦隊のポクトアール提督や、第31騎兵師団のガゼーエフ陸将なども、全くの行方知れずとのことでして……」
カイオスは2人からの報告を聞き、頭を抱える。
「……これ以上の報告は?」
「……ありません。何度も魔信での交信を試しましたが、一向に反応はなく……。恐らく、出張所の職員も捕まるか、殺されたか……」
「……それが妥当だろう。何せ、我が皇国はニホンに宣戦布告に加え殲滅戦まで発したのだ。此方側が殲滅されても、文句は言えない」
国連側はそれをわかっており、基本的にフェンや自治区に国境を面した属領の統治軍兵士に対しては、降伏する前に殲滅していた。
「しかし、一番厄介な問題なのが、1点ある」
「……レミール様、ですか……」
3人は1番の厄介事を思い出し、顔を顰める。
現在、第3外務局は第1外務局と外務局監査室……主にレミールに目の敵にされている。それは文明圏外の蛮族を担当しているから……と言うのもあるが、実際にはそれぞれのトップの派閥が違うからだろう。
外務局監査室の皇族は、基本的には過激派に属しており、トップはレミールが努めている。第1・2・3外務局も基本的にはそうである。
しかし、第3外務局長を努めるカイオスは穏健派。蛮族には容赦はないが、文明国の影響下の国々には場合によれば態度を緩和させている。列強の保護下の場合は当然。
しかし、過激派は“列強だろうが何だろうが皇国こそ最強!!”と叫んでおり、兎に角自尊心が強い連中の集まりであり、皇国政治の腐敗の象徴である。それでも問題にならないのは、元々穏健派寄りだった皇帝ルディアスが丸め込まれ、政府の大多数が過激派揃いのため。第1外務局・国家戦略局・財務局・農務局は一部、第2外務局・内務局は半分以下、第3外務局・外務局監査室・臣民統治機構はほぼ全員が過激派所属……と言ったところだろうか。
「現に、第3外務局内での穏健派への風当たりは強く、一部ではカイオス局長を局長の座から引き摺り下ろし、過激派の主要人物を局長の座に置こうと企んでいる様です」
「クソッ、あの
外交と言うものは互いの駆け引きが重要だが、過激派は態度とプライドと権力と地位だけはデカいためか、良い気になっている。
しかし、パーパルディア皇国は自他と共に認める世界最強の神聖ミリシアル帝国や2位のムーの様に産業革命は起こっていないし、3位のエモール王国の様に国民の魔力が高い訳ではない。
精々列強内で良い気になれる国は、既に滅亡したレイフォル位である。
「……フェンの陥落は既に政府内に知れ渡っているだろう。既に幾つもの属領を失陥した臣民統治機構と同レベルとなった。……はぁ、全く……。これでは例の計画が……」
「例の計画……ですか……。しかし、今はまだ、その時ではないかと。寧ろ、悪化してしまいます」
「わかっている。……国家戦略局長には話をつけ、憲兵隊と皇陸海軍の最高司令官を何とか説得した。あの4人の協力がなければ、計画も検討段階で止まっていただろうな」
例の計画……それは、穏健派の主要人物しか知り得ない計画であり、まだ知る時ではない。
「……兎に角、今後の対策を考えなければならない。何か案は……」
「カイオス局長!失礼します!!緊急の報告が!!!」
「何だ?」
カイオスは突然入室して来た職員に問いただす。
「駐ロウリア帝国大使館及び駐トーパ王国大使館から報告!!ロウリアの経済都市マイハーク、そしてトーパの湾岸都市ランノムに謎の軍隊が上陸、同都市を占領したと!!」
「「「は???」」」
日本の魔の手は、大パーパルディア同盟各国にも浸透していく。
次回は日本国の設定です。
誤字脱字報告ありがとうございます!
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