ロウリア帝国……この国はロデニウス大陸と呼ばれるパーパルディア皇国の南方に位置するオーストラリア大陸の半分程の面積を持つ大陸全土を領土とし、大東洋諸国からは『
さて、そんな帝国であるが、元々1年程前までは『ロウリア王国』と呼ばれる人口だけは多い大陸西部を領有する国家であった。
しかし、中央暦1639年4月12日。ロウリア王国軍は隣国クワ・トイネ公国へ侵攻を開始。圧倒的な軍勢により同日中に国境の都市ギムを占領。略奪を繰り返し、東部の要塞都市エジェイへを包囲。同時に、クワ・トイネ公国の経済都市であったマイハークへ4,400隻もの大艦隊が侵攻。僅か半日程で占領すると、エジェイとマイハーク両方面から公都クワ・トイネへ侵攻。公国最後の首相であるカナタ首相を始めとする公国政府の要人達を処刑すると、ロウリア本土及び占領下のクワ・トイネから、同じく隣国のクイラ王国の国境を軍により徹底封鎖。クイラ王国はクワ・トイネ公国より食糧資源を輸入していたため、兵糧攻めにより呆気なく降伏。
それによりロデニウス大陸は
その数ヵ月後、クイラ地下の一部の資源と引き換えに“ある国”からの援助を受けることとなり、軍の近代化を開始。実質的な宗主国であるパーパルディア皇国に警戒されぬ様慎重に、そして着実に軍は近代化へと進んでいた。
……だが、その試みは閉ざされることとなる。
何せ、現在このロウリア帝国の経済都市マイハークには、宗主国が敵に回した
中央暦1640年 2月15日
ロウリア帝国 経済都市マイハーク港 東方討伐艦隊旗艦『ハーリア』
ロウリア帝国の経済都市マイハーク。その沿岸部に位置するマイハーク港には、5,000隻を超える帆船の大艦隊が停泊していた。
これらの帆船は、全てロウリア帝国海軍東方討伐艦隊の所属であり、主にロデニウス大陸東部・北部地域に位置する小国への攻撃のために派遣するための侵攻艦隊である。
そんな大艦隊の旗艦である軍船『ハーリア』は、現在ロウリア海軍本部からの連絡により、5,000隻以上の軍船を連れ、北方方面へと移動する準備を行っていた。
「……壮観だ……」
東方討伐艦隊司令官を務めるシャークン・ドクリーテニアは、『ハーリア』の甲板から周囲の大艦隊を眺め、深く息を吐く。
マイハーク港は現在、一面がロウリア帝国が誇る大艦隊で埋め尽くされており、最早その全容を知ることは不可能だった。それほどまでに多い船の数であり、まさに“壮観”と形容する他に存在しない光景だった。
「提督。東方討伐艦隊5,600隻中、3,900隻が出港準備を終えました。残りの軍船も準備を進めており、明朝には全船完了する見通しです」
「そうか。確か目的地は……ニホン国、と言ったか」
シャークンは、この大艦隊の目的地を思い出す。
「ニホン国……聞いたことがありません」
「どうやら我が国の北に位置しているらしい。……北には国どころか群島の集落が点々としているだけの筈なのだが」
彼はロウリアの海軍司令部から提供された大東洋の地図を取り出し、広げる。
「やはりないな。はて、我々は一体何と戦うのだろうか」
彼は若干の不安を消し去ると、ブリッジへと戻る。
「では、私も最後の準備をしよう。この戦いが無事に終われば、皇帝陛下から勲章が授けられるだろうな」
「は、はっ!」
シャークンの呟きに部下は嬉しそうに返事をすると、自身の持ち場へと戻ろうとする。
と、そんな時だった。
彼等の動きが一瞬でストップした。いや、彼等だけではない。東方討伐艦隊の乗組員全員がの動きが時が止まったように固まったのである。
「……何だ……?この音とあの光は」
1人の乗組員がそう呟いた途端、彼等は一斉に騒ぎ出した。
それは、轟音を響かせた1つの光が、港に停泊していた20隻以上の帆船を一瞬にして沈めたためであった。
「な、何がどうなって……」
「て、提督!先程の光の矢により、『キュレイト』『アナーヒター』『ケルピー』など多数の船が轟沈しました!!!」
シャークンはその報告に唖然とし、更に続く幾つもの燃えながら接近する高速の矢を視界に収める。
「た、助け……ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「海に飛び込め!!そうすればきっと助か」
「誰か!!!ワイバーンを!!!!」
マイハーク港に停泊する数千の内、300隻程の木造船に火が延焼し、それ等の船に乗っていた乗組員達は、次々と火の手から逃れるため海に飛び込んで行く。
「……クッ。東方討伐艦隊全船に魔伝!!すぐに港を出港し、敵を見つけ次第反撃を開始せよ!!!」
「なっ。提督!無茶です!未だに出港準備が整っていない船もあります!!」
「無茶でもやらなくては全滅だ!!事態は一刻も猶予を争う!!それと、マイハーク郊外の第6竜騎士団に出撃命令を出せ!!」
部下はシャークンの言葉に取り敢えず納得をすると、魔伝を使い全体連絡を行う。
「頼むぞ……」
彼は、火と船の残骸と肉片が浮かぶ海を眺め、そう呟いた。
数分後
ロウリア帝国 経済都市マイハーク郊外 第6竜騎士団飛行場
「急げ急げ!!」
「マイハーク港及び東方討伐艦隊が攻撃を受けている!!被害多数、敵の正体は不明!!!」
経済都市マイハークの郊外には、旧クワ・トイネ公国軍第6飛竜隊が使用していた飛行場があった。戦後、ロウリアはその飛行場に目を付け、マイハークとその周辺を行動範囲とする新たな部隊第6竜騎士団の司令部を設置。ワイバーン数80騎を誇るこの部隊の司令部には、現在緊急の連絡が届いていた。
マイハーク港への大規模な攻撃。
それは、旧クワ・トイネ公国軍の飛竜隊員で構成される第6竜騎士団には許しがたい行為だった。別に彼等はロウリアの地がどうなろうと知ったことではない。
だが、例え祖国が滅亡し、ロウリア王国……否、ロウリア帝国の奴隷となったとしても、自らが守っていた祖国の地を見知らぬ何者かに攻撃されるのは、到底許されるべきではなかった。
「第6竜騎士団、出動!!」
未だに復旧作業が追いついていない滑走路から、第6竜騎士団ワイバーン80騎は、マイハーク港へと飛び立つ。
同時刻
ロウリア帝国 経済都市マイハーク沖合 国連軍南方方面艦隊 旗艦『むさし』
ロウリア帝国攻略作戦の一環として派遣された国連軍南方方面艦隊は戦艦2、空母3、巡洋艦・駆逐艦多数、補給艦3、輸送艦4で編成される機動部隊である。
この艦隊を指揮するのが、海自第2艦隊直轄艦部隊司令を務める神保である。
「神保司令。護衛艦『しぐれ』『いそなみ』、駆逐艦『ハワード』よりロウリア帝国海軍軍船520隻が出港。並びに航空戦力であるワイバーン80騎が本艦隊へ向け出動したと報告がありました」
「やはり内陸部に飛行場があったか。人工衛星の数が少ないことが仇になったな」
彼は「はぁ……」と溜め息をつくと、直ぐに指令を下す。
「『りゅうほう』『かいほう』『ロナルド・レーガン』より艦載機を発艦!並びに護衛艦、巡洋艦、駆逐艦は『むさし』『台北』両艦に続き前進を開始。艦砲とミサイルにより、出撃した木造船とワイバーンを海へ叩き落し、出港していない木造船とマイハークの軍事施設とその周辺を火の海に変えてやれ!!!」
同時刻
ロウリア帝国 マイハーク湾上空
彼の指令が下った空母3隻では、F-35J、F-2B、F/A-18E/F、F-35C戦闘機部隊が次々と発艦。発艦した戦闘機はワイバーン部隊を海に叩き落とすため、視認後にすぐさま空対空ミサイル20発を発射した。
発射されたミサイルは、マッハ4のスピードで外すことなく全発命中。周囲のワイバーンも巻き込み、30騎ものワイバーンが撃墜された。
「クソッ!!!一体何なのだあの鉄の竜は!!!意味の分からない光の矢を撃ってくるし何よりも速い……!」
「隊列を乱すな!!此方が混乱したら相手の思う壺だ!!総員火炎弾発射準備!!!」
第6竜騎士団長の指令に従い、残った50騎のワイバーンは口を開き火炎弾を形成。団長の発射命令を待つ。
「総員、撃てぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
団長の指令にワイバーンは火炎弾を発射。一直線で戦闘機群の方へと燃える弾が飛ぶ。
しかし、
戦闘機群は旋回し飛んでくる火炎弾を回避すると、ワイバーン部隊へ向け再度空対空ミサイルを発射する。
「また来たぞ!!回避ぃぃぃ!!!」
団長の命令に50騎のワイバーンは竜騎士の元、ミサイルを回避するためワイバーンの機動性を生かし散開する。
しかし、ミサイルに搭載された自動追跡機能によりその試みは失敗。ミサイルからの攻撃を免れることは出来なかった。まず先頭の団長騎が撃墜され、それに続く様にミサイルがワイバーンの胴体に着弾。爆発を起こし次々と肉片が海に落ちる。
やがて、空を飛翔するのは戦闘機だけとなった。
ミサイルが尽きた彼等は母艦へと戻るため旋回するのだった。
そして、彼等と入れ替わる様に待機していた戦闘機群や空母や各艦からヘリコプターが発艦。更には艦対地ミサイル8発が発射され、燃え上がるマイハーク港と郊外の飛行場へ向け出撃するのだった。
同時刻
ロウリア帝国 経済都市マイハーク港沖合 東方討伐艦隊先遣部隊 旗艦『ポレウ』
マイハーク港から出港した軍船520隻の先遣部隊は
先遣部隊司令に任命されたアンドレーイは内心「絶対勝てる訳がない」と思いながらも、攻撃を開始する様各船へ伝達する。
「せめてあの巨砲にバリスタが当たれば良いのだが……」
彼はそう呟く。その間にバリスタ発射の準備が完了し、弓兵隊の兵士達が矢を射ると同時に岩が眼中の『むさし』へと投げ込まれる。
「さぁ、どうなるか……」
彼は目の前の戦艦を睨みつけながら、そう呟く。
しかし、『むさし』には届かず、途中で海に落ちてしまう。
「やはり届かぬか。総員!敵軍からの反撃が来るかもしれない!!要注意せよ!!!」
アンドレーイは魔伝を使い各船へ連絡を行う。
「し、司令!敵巨大船より発砲を確認!」
「何!!全船回避!!!!」
しかし、間に合わなかった。
『むさし』、そして後方から『台北』が接近すると、『むさし』の61cm電磁投射砲、『台北』の43cm四連装砲が火を吹く。
2隻の主砲から投射された23式レールガン誘導拡散弾と25式通常誘導拡散弾による攻撃を受けた船は乗組員を巻き込みながら炎上しながら急速に沈んで行く。
「クソッ!威力が強すぎる!!白旗を挙げよ!!前方の敵軍には敵わない!!!」
と、先遣部隊はマストに白旗を掲げようとするも、それを行う前に『むさし』の主砲に撃ち抜かれ、アンドレーイや乗組員と共に『ポレウ』は轟沈した。
旗艦を失った木造船群は旋回しマイハーク港へと戻ろうとするも、絶対に逃さぬと2隻の戦艦や護衛の艦艇の艦載砲を前に沈んでいき、やがて周囲は木片と肉片と煙の臭いが立ち込める海域となった。
同時刻
ロウリア帝国 経済都市マイハーク港
想像をも超える奇襲攻撃と、相手の正体である艦隊を漸く視界に捉えた時、東方討伐艦隊の乗組員の殆どが戦意を喪失した。それは、シャークンも同様だった。
何せ、相手は航空戦力であるワイバーンですら撃墜し、出港した520隻の軍船も目の前で沈めた。そして、その魔の手は再び彼等の手へと押し寄せていた。
そして、東方討伐艦隊は反撃をする余裕もなく蹂躙されていく。
3000隻以上の軍船には反撃は許されず、かといって降伏を示す白旗を掲げようにも、そのような軍船を見つけ次第、優先的に沈められていた。
結局、彼等に待っているのは『全滅』だけであった。そんなことを思いながら、シャークンは『ハーリア』と共に海へと沈んだ。
それは、マイハーク市内にも迫っていた。
マイハーク港の港設備はミサイルにより破壊され、マイハークの中心地にあるマイハークの塔は敵軍の施設であると判断され、戦闘機の対地ミサイルにより根本を破壊され、崩壊。周囲で逃げ纏っていた市民を巻き込み、巨大な土煙が上がる。
「上陸!!上陸!!!」
自衛隊海上輸送群第2海上輸送隊を編成するにほんばれ型輸送艦4隻とエアクッション艇8隻から陸上自衛隊第2水陸機動団と米海兵隊第3海兵連隊が
数時間の戦闘の末、マイハークの沿岸部に位置するマイハーク市庁舎の中で唯一形を保った第2庁舎の会議室で神保艦隊司令、第2水陸機動団長、第3海兵連隊長と死亡したマイハーク市長の代理として副市長が停戦交渉を開始。マイハークをロウリア攻略の拠点として国連軍に引き渡すことが決定され、此処にロデニウス沖大海戦およびマイハーク上陸作戦は終了した。
次の目的地は旧公都として栄え、クワ・トイネ統治機構の本部が置かれている都市クワ・トイネである。
本当は昨日投稿する筈だったのに遅れてしまった……。
誤字脱字報告ありがとうございます!
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