異世界日本国召喚   作:丸太餅

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第6話「ウンブル平野の戦い」

中央暦1640年 1月21日

パーパルディア皇国 属領プバスト ウンブル平野 日本侵攻軍司令部

 

自治区と属領プバストの国境が接続しているウンブル平野と呼ばれるこの地で、皇国皇陸軍による日本侵攻軍が編成され、司令部が設置された。

 

日本侵攻軍司令に任命されたモマンリンは、後方で待機する計4万人の陸軍兵士部隊を眺め、笑みを浮かべる。

低文明圏外国家相手に過剰戦力では無いかとモマンリンは思っていたが、これだけの戦力なら確実に勝利するとも思っていた。

 

「ふん、蛮族共め。偉大なる我が皇国を挑発するとは。ニホン国の民が可哀想だ」

 

モマンリンは、下品な笑みを浮かべながら占領下に置かれる(予定の)地域の民をどうしようかと考えながら、兵士全員を招集し、目の前で演説を始める。

 

「諸君よ!間も無く、この平野を超えた先にある蛮族国家ニホン国へ進軍する!彼奴等は列強たる我が国の軍に一度は勝った!が、相手は旧式兵器の属領統治軍!だが我々は第3文明圏最強の皇国皇軍である!調子に乗った低文明蛮族軍など、相手では無い!我等で、勝利を掴もうでは無いか!!」

うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!

「蛮族に死を!」

「我々パーパルディア皇国は無敵だ!」

「モマンリン将軍万歳!!」

「ルディアス皇帝陛下万歳!!」

 

モマンリンの演説に感動した兵士達は、士気を高め雄叫びを上げる。

 

「うむ、それでは総員、準備せよ!」

 

モマンリンは合図を下すと、兵士達はそれぞれの持ち場に戻り、自分達の準備をし始めた。

そしてその数十分後、準備が完了した日本侵攻軍の第1次侵攻部隊は越境を開始した。

 

 

 

 

 

日本国 江蘭自治区 ホットホール保安隊基地 司令室

 

国境部の異変を察知した監視ドローンは、ホットホール保安隊基地にそのことを連絡し、駐屯している保安隊第18・41保安連隊と援軍として駆けつけた周辺の18の諸侯領から1000人の領邦軍兵士と15騎のワイバーンが集結し、皇国軍による侵攻を今か今かと待っていた。

 

「現在、自治区・皇国国境部にてパーパルディア皇国軍と思わしき軍勢が集結しています」

「文明レベルは産業革命直前の近世程。ですが、相手も魔法を使うそうなので、油断自体は禁物です」

 

第18保安連隊長の『森岡』と、第41保安連隊長の『布施』はそう説明する。

 

日本の転移後に発生した『日江戦争』時、旧エラン帝国軍の魔法攻撃を侮った陸自の戦車部隊の大部分に損害が出てしまった事例があった。それ以来、日本は旧エラン帝国や友好国の研究者と共に魔法に対する研究を続けていた。

だが2度目の転移当初、当初は魔法は魔法でも世界が違う為この世界の魔法について何も知らなかった。だが、この世界の魔法と言う物を転移直後に救出された『とある船の乗員』から聞いていた。

 

「ですが一応、この世界の魔法攻撃という物自体は、あまり威力は高くないそうです」

「特に警戒する様な問題は無いと判断し、近世文明国家を相手にしていると思う位で良いと思います」

「ふむ。……了解した。では、我がエラン流魔法攻撃を、あの蛮国軍共に見せてやろうか」

 

コエントロ子爵領の領主である『ゴヒア・コエントロ』子爵は不適な笑みを浮かべ、そう呟く。

彼の友人である商人が不当にも拘束・処刑された為、皇国への怒りや恨みはこの参加者の中でも一番強かった。

 

と、その時。

 

「失礼します!パトロールドローン及び第1〜6監視塔から緊急連絡です!パーパルディア皇国軍が越境、侵攻を開始したのこと!!」

『!!』

 

司令室の扉が開くと、一人の職員が入室し報告する。

 

「……そうか。……よし、総員戦闘準備!配置に着け!!」

『了解!』

 

ゴヒアの言葉に頷いた参加者等は、それぞれの持ち場に戻って行った。

 

「……パーパルディアの馬鹿共め。我が日本とエランの怒りを思い知れ!!」

 

 

 

 

 

パーパルディア皇国 属領プバスト ウンブル平野 日本侵攻軍司令部

 

「将軍!先遣隊によるニホンの土地への侵攻は順調です!」

「そうかそうか、それなら良い!……しかし、何だ。ニホン軍の姿が何処にも見当たらないらしいじゃないか。それどころか民の一人もいないのもどこかおかしいぞ…」

 

日本侵攻軍を率いるモマンリンは、日本軍どころか日本の民の一人も見当たらないと言う報告に、疑問を浮かべる。

 

「恐らく、我々皇国軍が来るとわかって逃げ出したのでは無いでしょうか?」

「だと良いがな」

 

侵攻前まで、彼程余裕そうにしていたモマンリンは、何故か不安を抱いていた。

これまでの経験から、これ程戦闘も無く侵攻が順調に行われて来たのは無かった。無論、皇軍に被害が無いのは良いことなのではあるが、多少の戦闘も無いことに若干の不安があった。

 

「将軍!先遣隊から魔伝!遠くで謎の飛竜が上空を飛行しているのを発見!」

「飛竜?ワイバーンじゃないのか?それ位のことで一々報告するな」

 

てっきり日本軍が来たかと思っていたモマンリンは、少し苛立つ。

 

「いえ。それがワイバーンとは違うらしく、不気味な音がその飛龍から鳴っているそうです」

「彼処が異世界の土地だからじゃないのか?意味不明の生物がいたって可笑しくはないだろう」

 

モマンリンは苛立ちながら部下の報告を一蹴する。

 

「了解しました。では、先遣隊にはその様に報こ「失礼します!!大変な事態です!!!」」

「今度は何だ!!つまらない報告だったら容赦しないぞ!!」

 

モマンリンは苛立っていたのにも関わらず、更に別の報告が飛び込んで来たのに対し怒りが爆発する。

しかし、報告をして来た部下の顔は真っ青だった。

 

「そ、それが……先遣隊との魔伝が途絶したとのことです……!」

「あ?途絶した?どう言うことだ?」

「わ、私にもわかりません。唯、謎の飛竜の報告の後に突如途絶したと……どうしましょうか……?」

 

モマンリンは部下の報告に先程までの苛立ちが収まり、疑問と不安が一気に押し寄せて来た。

何故かはわからないが今直ぐ此処から退避した方が良い、と思って来てしまう。

 

「……一旦進軍を停止し、先遣隊への調査を開始しろ。判明次第、再度進軍を開始する」

「了解しましブゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥンッ!!!!!?!?」

「何だ!?」

 

モマンリンと部下は天幕から飛び出し、音が発生した上空を見上げる。

其処には……。

 

「飛行機械?」

 

上空にはワイバーンの様な生物では無く、人工的な物体……第2文明圏列強ムーが保有している様な飛行機械が4機、上空を飛行していた。

 

「何故飛行機械が?ムーの観戦武官か?」

「いえ。本国からは、ムーの観戦武官が此方に来るとは聞いていません」

「じゃあ何故飛行機械が?……まさか……」

 

モマンリンは何かに気付くと部下に命令を下そうとする。

だが、モマンリンの命令の言葉が発する前にその『飛行機械』は行動を開始した。

 

シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドカァァァァァァァァァァァァァァァァァンッ!!!!

 

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「あの鳥共、何か降らせて来たぞぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

「助けてくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

その飛行機械……否、日本国保安隊飛行隊部隊所属F-2A戦闘機4機が、搭載された99式空対空誘導弾やクラスター爆弾を投下し、皇国軍兵士等を殲滅して行く。

 

「あ……あ……あぁぁぁ……」

「しょ、将軍!直ちに避難を……!!」

 

モマンリンは爆散する兵士達と爆弾を投下するF-2Aを見上げ放心状態となるが、部下の声に現実に戻される。

 

「……はッ、命令だ!ワイバーン全騎を上げよ!相手の飛行機械を撃ち落とせ!!陸上部隊はそのまま撤退!!」

「……!?……は、はッ!!」

 

部下はモマンリンの命令を受けると、魔伝で各兵士に命令を下す。

命令を受けた陸上部隊は撤退を開始し、ワイバーン部隊は全騎が大空へと飛び立つ。

 

モマンリンは飛び立つワイバーンを見上げていた。だがその時……。

 

「頼むぞ……。……ん?何だ?」

「将軍!!こ、これは……!!!」

「……ま、魔法陣!?!?」

 

 

ピカッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドカァァァァァァァァァァァァァァァァァンッ!!!!

 

突如として足元に禍々しい色をした魔法陣が出現すると、魔法が発動し陣の範囲内に太い炎柱が燃え上がる。モマンリンやその部下達、陣の中にいた兵士達は全員灰となり、クレーターが発生するのだった。

 

 

 

 

 

パーパルディア皇国 属領プバスト ウンブル平野上空

 

パーパルディア皇国皇軍ワイバーン部隊隊員の『モージ』は、愛騎のワイバーンに乗り込み地上から離陸した。

陸上部隊に所属している弟が、離陸直後に発生した『大規模攻撃魔法』に巻き込まれていないことを願い、上空で旋回するF-2Aを睨む。

 

「くそッ。ニホンめ……」

 

モージはその言葉を口にしながら、1機のF-2Aを追い掛けた。モージはワイバーンの手綱を引っ張ると、彼の愛騎の口に火炎弾が形成される。

 

「発射!!」

 

ドォォォォォォォンッ!!

 

愛騎から発射された火炎弾は、一直線にF-2Aへと向かって行く……が、直前で回避されてしまい、失敗に終わった。

 

「やっぱ当たらないか……」

 

モージはわかっていた様に溜息を吐くと、再度ワイバーンに火炎弾を形成させる。

だがその時、モージは空中に放り出された。理由は彼の愛騎が爆発したからだ。

 

「な……」

 

モージはそんな声を上げ、急速に地面に落下して行く。

彼が最後に見たのは、先程まで自分を追い掛けていたF-2Aとその後に続く15騎の皇国が保有している『ワイバーンオーバーロード』並みの大きさのワイバーン。

 

そして……燃え上がり、断末魔とバタバタと倒れていく兵士達や地竜『リントヴルム』と……それ等を追い掛ける日本軍と思わしき兵士達と、鋼鉄の地竜の姿だった。

 

 

 

 

 

パーパルディア皇国 属領プバスト ウンブル平野

 

 

ドォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!

 

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

ダァァァァァァァァァァァァァァァァァンッ!!!!

 

「ひっ!!!!」

「く、来るなぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダッ!!!!

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

「降伏だ!もう俺は降ふ……がはッ」

「死ぬなぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「に、兄さ……」

 

ドォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!

 

地上では、運良く『大規模攻撃魔法』から逃れられた兵士達が、保安隊・領邦軍による小銃や機関銃、戦車砲の雨に『炎弾(ファイアボール)』『地面爆破(グランエクスプローズ)』等の攻撃魔法の嵐に晒される。

 

更には……。

 

『目標確認』

『攻撃開始!二度と越境出来ない様殲滅してやれ!!』

 

ドォォォォォォンッ!!!!

ドォォォォォォンッ!!!!

ドォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!

 

F-2A戦闘機の援軍や、日本が旧エラン帝国軍が使用していたワイバーンを品種改良した生物『ワイバーン改』による火炎攻撃により、兵士は燃え、黒い物体と成り果てる。

当初4万人いたパーパルディア皇国軍は、2万人、1万人、5000人、3000人、1000人、700人、200人、100人、50人、30人と数を減らし……。

 

「……司令部へ。敵部隊、殲滅完了」

『了解。これより、当地域を占領下に置く。準備を』

了解(ラジャー)

 

日本とパーパルディア皇国間の戦闘は、日本の完全な圧勝と言う形で幕を閉じた。




適当な用語説明
・『大規模攻撃魔法』
旧エラン帝国政府及び断絶した有力諸侯の文書に掲載されていた攻撃魔法の一種。
詠唱完了後、指定場所に巨大な魔方陣が生成され、直後に巨大な火柱を立てる魔法。
尚、内部にいた生物は灰も残らない。

・ワイバーン改
言わばワイバーンオーバーロード以上の巨体を持つワイバーン。
旧エラン帝国軍が使用していたワイバーンを国連の研究機関が解析・品種改良を進め誕生した生物兵器。
ワイバーン改が放つ火炎弾は、戦闘機が密集して飛行していた場合、最大8機は一発で撃墜出来る。


誤字脱字報告ありがとうございます!

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