「もう五月かぁ。早いね一か月」
黒板に書かれた日付を見て茅野さんがそう呟いた。殺せんせーの暗殺期限まであと11か月
「というか先月が激動すぎたんだよ」
「暗殺に魔法少女に色々あったしね」
どこか呆れた感じの前原君と片岡さんに少し同意しつつも私はこの間から感じてる違和感について考えていた。
二年生のとき、原さんとお弁当食べていたときキュゥべえが現れたことがある。この時原さんには見えていなかったはずだ。だけどこの前、目の前に現れたときは原さんの目にもしっかりと見えていた。あとから見えたりすることあるのかしら・・・?
「しっかし、何か刺激的な出会いとかあるといいんだけどな」
「刺激的な出会いってどういうこと岡島君」
「そりゃ金髪巨乳美女との出会いとか?」
「また下衆な願いを・・・」
「いや、最近何見てもたたないからここらで刺激的なものをさぁ・・・」
相変わらずの岡島君の正直さには少し呆れてしまう。
「なら、僕に言えばすぐに叶えられるよ」
「うーん。いや、化け物退治がなきゃすぐにでもするんだけどなあ」
「へぇ、岡島君ならすぐにでも「ギャルのパンティおくれー!!!」っていうとでもおもったけど」
「別に人のモンパクッてまでほしくねーし、不破が言いたいだけだろそれ」
「バレたか」
そんな話をしているとチャイムが鳴ってHRの時間になった。各自席について殺せんせーを待っているとガラッと扉が開かれて先生は入ってきた。入ってきたはいいんだけど・・・。
『ほ、本当に来たよ金髪巨乳美女』
『口に出して見るもんだな』
『それはそれとして・・・なんでベタベタ?』
速水さんの疑問にもした通り、殺せんせーと金髪巨乳の美人さんと引っ付いて教室に入ってきた。ついでにどこかツッコみたそうな烏間先生も一緒に。
「今日から来た外国語の臨時講師を紹介する」
「イリーナ・イェラビッチと申します。皆さんよろしく!」
イリーナと名乗ったその女性は恥ずかしげもなく殺せんせーにベタベタとひっついて辺りにハートをまき散らしていた。なんなんだろうこの人・・・。
「本格的な外国語に触れさせたいとの学校の意向だ。英語の半分は彼女の受け持ちで文句はないな」
「仕方ありませんねぇ」
そんな大人たちの会話をよそに私たちはキュゥべえのテレパシーが使えるのをいいことにこそこそ話を続けていた。
『何度見てもデケーな』
『アンタはそれしかないんかい』
『しかしあのフィルムの先生によくベタベタできるね』
『本当にすごい先生来たね。殺せんせーに好意でもあるのかな?』
『うん・・・でもこれは暗殺のヒントになるかもよ。タコ型生物の殺せんせーが人間の女の人にベタベタされても戸惑うだけだ。いつも独特の顔色を見せる殺せんせーが戸惑う時はどんな顔かってね』
渚君は少し前から殺せんせーの弱点をメモ帳に取っている。このシチュエーションも何かの参考にはなるかもね。殺せんせーの顔色は・・・
ピンク色でニヤニヤしていた。
『普通にデレデレじゃねーか・・・』
『なんのひねりもない顔だね』
『うん、人間もありなんだ・・・』
・・・ひとまず、殺せんせーに色仕掛けは有効という情報だけは手に入れられた。とはいっても私は矢田さんみたいに胸の大きな生徒にはあの反応はしたことないから私たちには使えなさそうね。
「ああ、見れば見るほど素敵ですわぁ。その正露丸みたいなつぶらな瞳・・・、曖昧な関節・・・。私とりこになってしまいそう・・・」
『騙されないで殺せんせー!』
『そこがツボな女なんていないから!』
・・・今日はテレパシーツッコミが多く行き渡るなぁ。
それに私たちはそこまで鈍くない。この時期にこのクラスにやってくる先生なんて結構な確率で只者ではない・・・
「ヘイパス!」
「ヘイ暗殺!」
「ヘイパス!」
「ヘイ暗殺!」
「これなんの授業なんだろうね。体育じゃない事だけはわかるけど。原作沿いでたまに困るポイントよね」
「不破さん?」
私たちが何をやっているかというとサッカーと暗殺を絡めたスポーツをしている。サッカーボールとナイフの斬撃とBB弾が飛び交う中、イリーナ先生が手を振りながらやってきた。
「殺せんせー!烏間先生から聞きましたわ。すっごくお速いんですって?」
「いやぁ、それほどでもないですねぇ」
殺せんせーは分かりやすくデレデレしているなぁ・・・。
「お願いがあるの。一度本場のベトナムコーヒーを飲んでみたくて、私が英語を教えてる間に買ってきて下さらない?」
「お安い御用でです。ベトナムにいい店を知ってますから」
ウキウキでベトナムへと飛び去った先生を見届けるとチャイムが鳴った。
「・・・で、イリーナ・・・先生?授業始まるし教室戻ります?」
「授業?・・・ああ、各自適当に自習でもしてなさい」
さっきとは態度を全く変え、私たちに冷たい視線を送っていた。
「それとファーストネームで気安く呼ぶのやめてくれる?あのタコの前以外で先生を演じるつもりもないし、「イェラビッチお姉さま」と呼びなさい」
な、なんなのこの先生。
「・・・で、どーすんの?ビッチねぇさん」
「略すな!」
こういう時に切り込めるカルマ君はちょっと頼もしく思える。
「あんた殺し屋なんでしょ?クラス総がかりで殺せないモンスターをビッチねぇさん一人で殺れんの?」
「・・・ガキが。大人にはね、大人の殺り方があるのよ。潮田渚ってアンタよね」
先生は渚君に近づこうと思ったら・・・急に口づけをしてきた。思わず顔を覆ってしまった。しかも長いし・・・。長い事キスされた渚君は脱力してしまって、先生の豊満な胸に埋められてしまっていた。
「後で教員室にいらっしゃい。あんたが調べた奴の情報聞いてみたいわ。ま・・・強制的に話させる方法はいくらでもあるけどね」
その先生の目は目的のためにならなんでもするという、どこか恐怖を感じた。
「その他も!有力な情報持ってる子は話しに来なさい!いい事してあげるわよ。女子にはオトコだって貸してあげるし、技術も人脈もあるのがプロの仕事よ。ガキは外野でおとなしく拝んでなさい。あと、少しでも私の暗殺を邪魔したら殺すわよ」
先生の「殺す」の言葉の重みは彼女が本物の殺し屋なんだと実感した。・・・だけど、テレパシーを使わなくてもわかる。クラスの大半が同じ事を思っている。この先生は・・・嫌いだ、と。
その先生の該当授業の時間。黒板には「自習」とだけ書かれていた。先生はタブレットをいじくるだけで何もしてくれていない。授業前に教員室を覗いたら渚君にせまって何かを吐き出させていた。暗殺には必要なことだろうけど・・・。表向きの仕事ぐらいはしてほしいわ。こっちは受験生なんだし・・・。
「なービッチねぇさん。授業してくれよー」
しびれを切らした前原君が苦情を口にした。
「そーだよビッチねぇさん」
「一応ここじゃ先生なんだろビッチねぇさん」
と次々に口にしていく。先生の逆鱗に触れたのか、キレて来た。
「あー!ビッチビッチうるさいわね!まず正確な発言が違う!bitchじゃなくてvic!あんたら日本人はBとVの区別もつかないのね!正しいVの発言を教えてあげるわ。まず歯で下唇を軽く噛む!」
みんな言われた通りに下唇を噛んだ。
「・・・そう。そのまま一時間過ごしていれば静かでいいわ」
そう言い残して先生はフルシカトでタブレットの方に向いてしまった。
『なんなんだよ、この授業・・・』
『ふざけているにもほどがあるだろ』
『仮にも先生のふりするならもっとマシなのいたでしょ』
『ナメやがってこのクソアマ・・・』
『殺せんせーにチクんぞ・・・』
こういう時、テレパシーがあるのはありがたい。嫌な気持ちを共有できて多少は落ち着けられる。かといってあの先生に対する嫌悪感がなくなることはないけど。
昼食の間、殺せんせーは朝より一層に浮かれてたようでご飯食べていた。
「殺せんせー。異常に浮かれてますけど、何があったんですか?」
私の銃撃をサッとかわしてもなお、殺せんせーはフワフワ浮かれていた。
「五時間目にイリーナ先生と倉庫でお話があるそうで、そりゃあもう楽しみで楽しみで」
今日一日中殺せんせーは浮かれっぱなしだ。裏で私たちが苦汁をなめさせられているとも知らずに・・・。
「・・・殺せんせー、話が」
と片岡さんが立ち上がると、顔になにかポインタみたいなのが当たった。その光源の方をみると、あの人が怖い顔で片岡さんを睨みつけていた。片岡さんは納得がいかないと思いつつも
「・・・なんでもないです」
と席についた。
『殺せんせーにだけいい顔しやがって』
『あんなわかりやすい女のどこがいいのよ』
『胸だけじゃない。あの人』
『あの性格じゃなきゃうらやましいんだけどな』
『ホント嫌だあの先生』
「・・・?皆さん何か?」
「「「別にー」」」
五時間目
「気になってしまうのは理解する。だが目の前のやるべきことをしっかりやるように。では、射撃訓練始め!」
みんな言いたいことを飲み込んで訓練を始めた。すると三村君があるものを見つけた。
「おいおいマジか。本当に2人で倉庫にしけこんでくぜ」
あの人に連れられて倉庫に行く殺せんせーの顔色はピンク色。何があるのかも知らないのかもしれない。
「なーんかガッカリだな殺せんせー。あんな見え見えの女に引っかかって」
もうみんなテレパシーを使うことなくあの人に対する不満や愚痴が口から出ていた。
「烏間先生、私たち・・・あの人の事好きになれません」
「・・・すまない。プロの彼女に一任しろとの国の指示でな。だが、わずか一日で全ての準備を整える手際、殺し屋として一流なのは確かだろう」
「・・・わかりました」
烏間先生にそういわれたら引き下がるしかない。腕だけは本物なのはなんとなくわかる。・・・だとしても納得はいかないし、彼女の事を認めたくない。
「巴さん、ちょっといい?」
「どうしたの渚君」
「殺せんせーってこのBB弾しか効かないのかな?魔法の弾丸とか効いたりしない?」
渚君の疑問に少し悩みながら私は答えた。
「効かないっぽいのよ。一番始めに使ったのは魔法で作った銃だったんだけど・・・消えたのよ、魔法の弾丸」
「・・・そんなんアリ?」
「アリなのよ・・・。多分実弾なんて」
その時だった。
ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ
倉庫の方から大量の銃声が轟き、みんなその音がした方を見た。
「さっきのって本物の銃声?」
「大丈夫なの殺せんせー・・・」
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「残念ですがイリーナ先生、私には鉛の弾は効かないのです。体内で全て溶けてしまうのでねぇ。そして私の顔をよく見てください」
「目が・・・四つ?」
「いいえ、どれか2つは鼻です」
「まぎわらしい!!」
「昨日まで倉庫になかった金属の臭い、成人男性の加齢臭。その違和感に鼻が思わず開いてしまう。罠にかかったフリをすれば簡単に暗殺者をあぶり出せます。もっとも、生徒たちから聞かずとも好くない感情を向けられている以上、警戒すべき人物だと思ってましたけどね」
「くっ・・・あのガキども!」
「要するにあなたはプロとしての暗殺の常識に捕らわれすぎた。私の生徒達の方がよほど柔軟で手強い暗殺をしてきますよ。そして知ってますか?私の暗殺者への報復は・・・手入れということを」
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「いやあああああああああ!!!!」
銃声がおさまったと思ったら次に聞こえてきたのは悲鳴とヌルヌル音だった。何があったのか様子見していると
「いやああああ・・・」
ヌルヌルヌルヌル
・・・・・・
「いやああああ・・・」
ヌルヌルヌルヌル
・・・・・・・・・なにが起こってるの?
「めっちゃ執拗にヌルヌルされてるぞ!」
「行ってみようぜ!」
野次馬根性で倉庫へいくと、つぎはぎの服の殺せんせーが出て来た。
「殺せんせー!」
「おっぱいは!?」
「いやぁ・・・もう少し楽しみたかったですが・・・皆さんとの授業の方が楽しみですから。六時間目の小テストは手強いですよぉ」
「・・・あはは、まあ頑張るよ」
と、談笑してると倉庫からおっとり足で出てきたのは・・・見滝原時代みたいな体操服に着替えさせられたあの人だった。
「ビッチねぇさんが健康的でレトロな服にされている!!」
・・・え?レトロなの?
「まさか・・・肩と腰のコリをほぐされて、顔に小顔とリンパのマッサージをされて・・・早着替えさせられて・・・その上まさか・・・触手でヌルヌルであんな事を・・・」
どんな事されたのよ・・・
「殺せんせー何したの?」
「さぁねぇ。大人には大人の手入れがあるので」
殺せんせーは知らんぷりの悪い大人の顔をして答えを濁した。
「さ、まだ授業は続いているんですから、烏間先生の所に戻りなさい」
「はーい」とだれもが返事をしてあのひとには目もくれずに戻ることにした。
「にしてもブルマの体操服なんて俺、生で始めて見たよ」
「既にアニメかAVでしか存在しないだろうしね」
「え?」
「「え?」」
「な、なんでもないわ」
岡島君と竹林君の話が本当なら・・・
長くなったのでキリのいいところで切ります
FM神浜?ラジオ
「このラジオを聴くみなさん!はじめまして!」
「そして先週も聞いてくれたみんな、先週はいろはちゃんが」
「わーまどか先輩!勝手なこと言わないで!初回なんだし!・・・おほん、このコーナーでは魔女図鑑やくぬどんのコーナーでは語れないあんなことやこんなことを語っていきます!」
「この本編の感想や質問をどんどん送って頂戴ね。これ書いてる人少し寂しがってるのよ」
「では早速お便りを紹介しますね
RN(ラジオネーム) スライス秋山の一番弟子さんから
磯貝君が紙に複数かいて願い事を叶えさせたけどあれっていいの?」
「そこは専門家にお伺いましょう!で、どうなの?」
「全くの問題はないよ。「お願い100個にして」でも問題ないふげっ」
「何も問題ないわけないじゃない!何か裏があるんでしょ!」
「そうだぞ。裏は取れてるんだから洗いざらい吐きなさい!」
「仕方ないなぁ。正直に答えるよ。磯貝悠馬の例は彼の願いが概ね「報酬」の願いだったから問題なく叶えられているんだ」
「特に願いが叶ってないみたいなことはないのね。展開的に」
「メタ発言はやめましょうよ!」
「で、願い事を100個に増やしてくれって願いは実質的には叶えられる。けど、100個の願いは自分自身の魔力を使って自力で叶えてもらうことになるね。100個全て叶える前にだいたいは魔女になるよ」
「つまり欲張りはよくないってことね。これぞ世界の真理」
「このようにここでは色々な質問を答えていくので不定期にですが楽しみください!」
「お便りもジャンジャン送ってね~。それじゃあ、まったね~」