また書き溜め期間入るので次回更新は遅れます
「さて、始めましょうか」
「「「な、何を・・・?」」」
目の前に現れたのは大量に分身をした殺せんせーだった。
「学校の中間テストが迫ってきました」「そうそう」「そんなわけでこの時間は」「高速強化テスト勉強を行います」
分身がそれぞれ喋ってる・・・あの子の魔法とは違って物理的に分身してるのはスゴイわよね、改めて。・・・幻影と分身は違うものっちゃ違うものだけど。
「先生の分身が一人ずつマンツーマンでそれぞれの苦手科目を徹底して復習します」
先生が私たちの席の前に1体ずつ分身して立っていた。私の席の先生の鉢巻きには「数」の文字。数学は苦手という訳ではないけど他と比べると理系科目は若干劣るのよね。
「下らね・・・丁寧に科目別にハチマキとか・・・って何で俺だけNARUTOなんだよ!」
「寺坂君は特別コースです。苦手科目が複数ありますからねぇ」
そんな訳での殺せんせーによる特別授業。クラス全員分の分身なんてちょっと前まで三人ぐらいが限界だったのに。と考えていると目の前の先生の顔が突然歪んだ。
「急に暗殺しないで下さいカルマ君!!それ避けると残像が全部乱れるんです!」
「意外と繊細なんだこの分身!!」
カルマ君は舌を出してそっぽ向いていた。
「でも先生、こんなに分身して体力持つの?」
「ご心配なく。一体外で休憩させていますから」
「それむしろ疲れない!?」
放課後
「今日はいつもに増してスゴかったね。殺せんせー」
「そうだね茅野。・・・この加速魔法的なパワーアップは・・・一年後に地球を滅ぼす準備なのかな」
「・・・でもテスト前の私たちにとっては心強い先生だよねー」
私はあたりを見回し、クラス全員がいること、先生方がこの場にいないことを確認した。
「ちょっといいかしら?みんな少し話したい事があるから裏山の方来てくれる?カバン持っていいから」
裏山に全員が集まったのを確かめ、私は話すことにした。
「話は私の願い事についてよ」
「願い事って今じゃなきゃダメなのか?」
「ええ、誰かテストでいい点とりたいなんて願わないように忠告するためにね。出ないと、いずれ後悔することになるかもしれないから」
私はゆっくりと過去の話を始めた。
「私ね、見滝原から転校してきたの。一年の頃同じクラスだった人は知ってるでしょうけど」
「見滝原って・・・この前大規模災害のあった?」
「ええ、そこで私は交通事故にあったの」
頭によぎるのは、あの日の出来事。ケムリのにおい、漏れたオイルのにおい、体の痛み・・・。
「私はそこでキュゥべえに出会って咄嗟に契約を交わして生き延びることが出来た。・・・「生きたい」って願ってね。だけど両親は助からなかった」
風の音が強く感じる。
「とても悲しくて辛かった。だけど戦う運命を背負った以上いつでも悲しんではいられないからある時私はこう思ったの。魔女や使い魔のせいで誰かが死んでしまったらきっと同じように悲しむ人がいる。そして自分が命を救われることで魔女と戦う力を手に入れたのなら、私は魔女によって悲しむ人を一人でも多く減らすために戦い続けるべきなんじゃないか・・・って」
「だから・・・私たちを魔女から救ってくれたんだね」
「矢田さん・・・見てたの?」
「見てたというより・・・推測?」
少し話題がずれたのを戻して話を続けた。
「だからみんなに言ってきたの。あなたたちには時間があるんだから焦らずじっくり考えて、後悔しない願いをしてほしいって」
「巴さん・・・」
すると狭間さんが「ククッ」っと笑った。
「まあ、不可思議なものに願いを叶えてもらうとロクな事がないってのは昔からよくある話よ。「猿の手」って知ってるかしら?」
「「猿の手」ぇ?なんじゃそりゃ」
「昔、主人公がとある人物からおみあげに貰った猿の手。それには願いが三つ叶えられるっていわれがあったの。主人公は「ローンの半分のお金を下さい」って願った。そしたらどうなったと思う?主人公の息子が事故にあって死亡して、その見舞金が例のローンの半分と同じ額だった。そんな話よ」
狭間さんの解説にみんな絶句してしまった。あまり猿の手に詳しくなかったから、その話に息を吞んでしまう。
「ようは願いを叶えると必ず代償がつくって話よ。うまい話には裏があるってね」
「でも僕はその猿の手みたいな歪んだ形で叶えたりしないよ。もっと安全で健全だ」
「あら、じゃあアンタは大金がほしいっていわれたらどうやって叶えるのよ」
「宝くじがあたるようにするのがセオリーだね」
「・・・確かに見舞金より安全で健全だわ」
・・・確かに「願い事」自体はキュゥべえはちゃんと叶えてくれる。両親が助からなかったのは・・・私がそう願わなかったせいなんだし・・・。
「それに代償に関しては僕はずっと提示してきてるよ。「魔女を倒してほしい」ってね」
次に質問したのは神崎さんだった。
「その魔女を倒すって・・・なんで倒してほしいの?その魔女退治に終わりはあるの?」
「いい質問だね神崎有希子。ひとつずつ答えていこうか。なんでたおしてほしいか、それは魔女が人間に害をなす存在だからだ。ほっておいたら君たちの大切な人が犠牲になるかもしれないよ。次に終わりがあるか、魔女は人間の負のエネルギーから生まれるものだ。人間がいる限り魔女退治に終わりはないよ」
「それって・・・一生続くってこと?」
「魂が尽き果てるまでね」
一生・・・尽き果てるまで・・・。覚悟はしていたけど、ずっと続くとなると少し考えてしまう。
「別に魔女退治を止めたければやめてもいい。常に決定権があるのは君たちだからね。無理強いはしないよ。願いを叶えたままトンずらしても僕は責めたりしない。ある程度は催促はするけどね」
「磯貝・・・よかったのかよ、契約して」
前原君に顔を青くしながら訊ねられ、磯貝君は迷いを振り切るように首を振った。
「いや、むしろ給料を発生してくれって願っといてよかったと思っているよ。お金を得るってそういうことだし、ある程度は納得は出来る・・・はずさ」
そんな風に爽やかに答える磯貝君は本当にイケメンだと思う。早くカッコいい技身に着けてほしいな。私がとびっきりカッコいい技名つけてあげたいし。
「じゃあ大金貰えるなら契約せずに殺せんせー暗殺できればいいよな」
「うん、殺せんせーの方が安全ってマミちゃんいってたしね」
岡島君と矢田さんの諦めたような言葉にキュゥべえは少しつまらなさそうにしていた。
「そうなのかい?大抵の子は二つ返事で了承してくれるんだけどな」
「その二つ返事しようとしたら巴に銃で脅されたんだが・・・」
「そりゃアンタらの願いってロクなものじゃなかったからでしょうーが!」
「・・・これで私の話はおしまい。ひとまず明後日のテストに向けて頑張りましょ」
そこで解散し、私も帰路に立ったときだった。渚君がある人を発見した。
「あ、理事長だ」
浅野理事長が旧校舎からやってくるのが見えた。こんなところに何をしにきたのだろう?と、理事長と目が合った。
「やあ君たち!中間テスト期待してるよ!頑張りなさい」
とても乾いた「頑張りなさい」は私たちをエンドのE組だと自覚させられるものだった。
「・・・巴さん、いい指輪をしているね」
「え?これは・・・その」
「校則内のいい指輪だ。気を付けて帰りなさい」
私は理事長に対して何も言えなかった。
「理事長って・・・魔法少女の事知ってるのかな?」
「・・・まさか、ありえないわ」
翌日
「更に頑張って増えてみました。さぁ授業開始です」
昨日より2,3倍も増えた殺せんせーの分身が私たちを取り囲んでいる・・・
『増えすぎだろ!』
『残像もかなり雑になってるし』
『雑すぎて別のキャラ混じってね?』
「・・・どうしたの殺せんせー?なんか気合入りすぎじゃない?」
「んん?そんなことないですよ?」
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「この世の中には・・・スピードで解決できない問題もあるんですよ」
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今日の授業が終わり、殺せんせーはバテバテの様子で教卓にもたれ掛かっていた。
「・・・流石に相当疲れたみたいだな」
「今なら殺れるかな?」
「なんでここまで一所懸命先生すんのかね」
「・・・ヌルフフフフ、全ては君たちのテストの点を上げるためです。そうすれば『もう殺せんせーの授業無しじゃいられない!殺すなんて出来ないよ』と君たちから尊敬の眼差しを向けられ、評判を聞いた近所の巨乳女子大生から教えを求められ・・・殺される危険もなくなり、先生にはいいことずくめ」
ビッチ先生が来てから割と煩悩丸出しになってるきがする。相変わらずね殺せんせー・・・
だけど、みんなの空気はあまりよくない。
「・・・いや、勉強はそれなりでいいよな」
「・・・うん、なんたって暗殺すれば賞金百億だし」
「百億あれば成績悪くてもその後の人生バラ色だしさ」
「にゅやっ!そういう考えしてきますか!」
昨日もそんな空気になっていたわよね。あまり関心できない・・・けど。
「俺達エンドのE組だぜ殺せんせー」
「テストなんかより暗殺の方が身近なチャンスなんだよ・・・一応」
正直わからなくもない。外的要因で落とされたとはいえ、落第生の落款を押されてしまった。悪い意味で影響され、以前よりやや勉強にやる気が落ちてしまった気がする。学年50位以内を取れれば本校舎へと戻れる・・・だけど今のE組にいるほうが魔法少女している身としては都合がいい場所。・・・勉強は毎日ちゃんとやってはいるし、いい点を取る気ではいる。だけどトップを取らなきゃなんて意識は正直ないかも・・・。だけど、みんな諦めすぎなんじゃ・・・
「なるほど、よくわかりました。今の君たちには・・・暗殺者の資格がありませんねぇ」
殺せんせーの顔にはバツ印が浮かんでいた。
「全員校庭へ出なさい。烏間先生とイリーナ先生も呼んでください」
そう言い残して先生は教室から出て行ってしまった。
「・・・?急にどーしたんだ殺せんせー」
「さあ・・・いきなり不機嫌になったよね」
校庭へいってみると殺せんせーは朝礼台やゴールポストを端へとどけていた。
「イリーナ先生、プロの暗殺者として伺いますがあなたは仕事をするとき用意するプランは一つですか?」
「・・・いいえ、本命のプランなんて思った通り行くことのほうが少ないわ。不測の事態に備えて予備のプランをより綿密に作っておくのが暗殺の基本よ」
「では次に烏間先生。ナイフ術を生徒に教える時、第一撃だけですか?」
「第一撃はもちろん最重要だが、次の動きも大切だ。強敵相手では第一撃は高確率でかわされる。その後の第二撃、第三撃をいかに高精度で繰り出すかが勝敗を分ける」
「結局何がいいたいん・・・」
「先生方のおっしゃるように、自信を持てる次の手があるから自信に満ちた暗殺者になれる。対して君たちはどうでしょう」
殺せんせーが校庭の中心で回り始めた。
「『俺らには暗殺があるからそれでいいや』と考えて勉強の目標を低くしている。それは、劣等感の原因から目を背けているだけです」
殺せんせーの回る速度が速くなって大風が吹き荒れていく。
「もし、先生がこの教室から逃げ去ったら?もし、他の殺し屋が先に先生を殺したら?暗殺という拠り所を失った君たちにはE組の劣等感しか残らない。そんな君たちに先生からの警告です
第二の刃を持たざる者は
暗殺者を名乗る資格なし!!」
中心に竜巻が現れて、私たちは飛ばされないようにするのに必死だった。
「・・・校庭に雑草や凸凹が多かったのでね。少し手入れをしておきました」
竜巻が治まった跡には校庭が綺麗に整備されていた。
「先生は地球を消せる超生物。この一帯を平らにするなど容易いことです」
この先生は普段ふざけているからわからなくなるけど・・・実力は本物だわ。おまけに魔法の攻撃は基本的に通用しないのが普段の暗殺からわかってる・・・。その気になれば私たちなんて一ひねりかもしれない・・・
「もし君たちが自信を持てる第二の刃を示せなければ・・・相手に値する暗殺者はこの教室にいないとみなし、校舎ごと平らにして先生は去ります」
「第二の刃・・・いつまでに?」
「決まってます。明日です。明日の中間テスト、クラス全員50位以内を取りなさい」
え!?いくらなんでも全員は無茶じゃない?
「君たちの第二の刃は先生が既に育てています。本校舎の教師たちに劣るほど先生はトロい教え方をしていません。自信を持ってその刃を振るってきなさい。仕事を成功させ恥じることなく笑顔で胸を張るのです。自分たちが暗殺者であることに!」
翌日の中間テスト
本校舎の先生が雑音を出して軽く妨害してくる中、私たちは魔女のように襲ってくる問題に向き合っていた。うちの学校のテストのレベルは凶悪。なんとかしないと・・・!
『ちゃんと教えたはずですよ。それは正体不明のモンスターではありません。よく観察してみましょう。一か所ずつ問題文を見極めて、それを繋いで全身をみれば・・・ね?なんてことのない相手でしょ?」
わかる。問題の重要な部分、解き方のコツ、全部殺せんせーがマッハで教えてくれた通り。この問題なら殺れる。次の問題も、次の問題も、次の・・・
次の瞬間、私たちは背後から見えない問題に殴り殺されてしまった。
「・・・やれやれ、人間の考えることは不思議だなぁ。この学校のシステム・・・E組を底辺として扱う制度を維持するため、E組を弱く、惨めな存在であるために出題範囲を全教科で大幅に変えるだなんてね。しかも変更部分にあの理事長自身が本校舎で教えたみたいだしね。ま、こういう差別は僕らは今までいくらでも見て来た。珍しいことでもない。誰かが僕に願えばこんな不条理もあの教師の無茶ぶりもクリアできたはずだけどね。安心すればいい、今烏間が抗議の電話をしている。彼の言い分が正しいだろうけど・・・聞き入られることはないだろうね」
「
テストの点数を見た。合計359点全体74位。途中までは手応えがあった。だけど、まるで結界にもう一体魔女が潜んでいることに気付かずに殺されてしまった・・・そんな気分だった。
教室に入った殺せんせーは後ろを向いて、私たちに背を向けていた。
「先生の責任です。この学校の仕組みを甘く見すぎていたようです。・・・君たちに顔向けできません」
私たちも何も言えなかった。殺せんせーの背中がすごく悲しそうにしている。頑張ってきたのに理不尽な罠に嵌まって成果が出なかった。魔女退治にそんな言い訳は効かない。だけれども人間の悪意はそれとは訳が違う。とても悔しい、なんでこんな目にあわないといけないのか・・・
背を向ける殺せんせーへ一本のナイフが投げつけられた。それを殺せんせーは寸前のところでかわした。
「いいの~?顔向けできなかったら俺が殺しに来んのも見えないよ」
「カルマ君!今、先生は落ち込んで・・・」
カルマ君は先生に投げ渡したのは・・・テスト?気になって見にいってみると、彼の答案用紙はほぼ満点、数学に至っては100点だった。
「うお・・・すげぇ」
「俺の成績に合わせてさ、あんたが余計な範囲まで教えたからだよ。だけど俺はE組出る気ないよ。前のクラス戻るより暗殺の方が全然楽しいし・・・で、どうーすんのそっちは?全員50位に入んなかったって言い訳つけてここからシッポ巻いて逃げちゃうの?それって結局さぁ、殺されんのが怖いだけなんじゃないの?」
殺せんせーの顔に青筋が出たのを見たみんなは目配せしている。ええ、やることはひとつよね。
「なーんだ殺せんせー怖かったのか」
「それなら正直に言えば良かったのに」
「ねー。『怖いから逃げたい』って」
「殺せんせー強がりなんだから」
「逃げる訳ありません!期末テストであいつらに倍返しでリベンジです!」
私たちに煽られて顔を真っ赤になった殺せんせーの宣言に思わず笑いが込み上がってしまい、クラスが笑いに包まれた。
中間テスト、私たちは壁にぶつかった。E組を取り囲む分厚い壁に。それでも私は心の中で胸を張った。自分がこのE組であることに。
???「クラス全員テレパシー使えるんならカンニングとかできたんじゃない?・・・え!?誰ひとりとして思いつかなかった!?あたしがバカみたいじゃん!」