巴マミは暗殺者   作:百乃綾香

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あすなろ市広報

行方不明の情報が出ています。

飛鳥ユウリさん
杏奈あいりさん

ともに同市の中学生でーーーーー

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あすなろドームでのX月X日のイベント以降姿がみえなくなったとされています

お心当たりのあるかたはあすなろ警察署までご連絡ください

あすなろ警察署電話番号
0XXXーXX-XXXX


20時間目 転校生の時間

20時間目 転校生の時間

 

就学旅行から帰った翌日

 

「あーあ,今日から通常授業か」

 

私の前をいく杉野君のぼやきになんとなく笑いながら聞いていると後ろから声をかけられた。

 

「おはよう巴さん」

「マミちゃんおはー」

「片岡さん倉橋さんおはよう」

「ねぇ、烏間先生からの一斉送信メールみた?」

 

烏間先生からのメールにはこんなことが書かれていた。

 

『明日から転校生が一人加わる。多少外見で驚くだろうが、あまり騒がず接してほしい』

「あの文面だとどう考えても殺し屋よね」

「ついに来たんだ。転校生暗殺者!どんな子かな~」

 

倉橋さんがワクワクして転校生について話していると、前にいる渚君たちの話が聞こえて来た。

 

「そこでよ、気になって顔写真とかないですかって聞いたのよ。そしたらこれが返ってきた」

「おお女子か!」

「なんだよ、フツーにかわいいじゃん。殺し屋に見えねーな」

「あーなんだか緊張してきたー!仲良くなれんのかなー?」

 

なんとも浮かれ気味な岡島君にあきれつつだべっている男子たちを通り過ぎて校舎内へと入って行った。

 

「そういえば巴さんも転校生だったよね?」

「うん。あの時は両親が亡くなったりで色々あったからあまり友達もできなかったし・・・」

 

でも、こうして向かえ入れる側になるとなんだかそわそわしてきた。殺し屋であろうとなかろうと「転校生」というのは双方に期待と不安が入り混じってくる。どんな子なんだろう。どんな暗殺をするのかな。すごく興味がわいてくる。

 

「お?一番乗りーぃ?」

 

意気揚々と教室に入った倉橋さんは突然固まってしまった。

 

「どうしたの倉橋さ・・・ん?」

 

心配になって教室に吐いてみると・・・教室の隅に謎の黒い大きな箱が鎮座されていた。

 

「さーて、来てっかな転校生」

 

杉野君たちも教室に入って私たちと同じように固まってしまった。おそるおそるその箱に近づいてみると、プゥンと起動する音が鳴った。黒い箱にはモニターが備えられていて、そこに女の子の顔が映しだれていた。

 

「おはようございます。今日から転校してきました“自律思考固定砲台”と申します。よろしくお願いします」

 

それだけ言うとモニターはプツンと切れて反応を示さなくなった。

 

「「「そ、そうきたか!」」」

 

想像以上に奇想天外な転校生。その姿にみんな言葉にならなかった。

 

 

 

 

HRの時間になって殺せんせーが入ってきた。なぜだか赤い顔をして。

 

「皆さんに大事な話があります。ミルクティーは本場のモノがいいですか?それともその辺で買える物で作るべきですか?はい、中村さん!!」

「ええ・・・どっちでも・・・いや、せっかくなら本場のモノが飲みたいかなー?」

「そのとーり!味の違いじゃないんです!飲食とは雰囲気が大事なんです!くれくぐれも皆さんは味の違いがわからないのなら何飲んでも変わらないなどという大人にならないように!以上!」

「「「何の話だよ!!」」」

 

ひとしきり愚痴って満足したのか殺せんせーの顔色は元の黄色に戻っていた。

 

「ふぅ・・・では烏間先生、転校生の紹介をお願いします」

「いるのか今のやり取り!」

 

烏間先生はツッコんだあと、大きなため息をついて黒板に転校生の名前を書きだした。

 

「ノルウェーから来た自律思考固定砲台さんだ」

 

眉間に皺を寄せ、青筋を立てながら冷静に紹介する烏間先生。なんだか気の毒に思えてしまうわ。

 

『こっちもこっちでツッコミどころしかない』

『烏間先生も大変だなぁ』

『俺、あの人だったらツッコミきれずにおかしくなるわ』

『というか・・・キュゥべえ見えないからって乗っかってんじゃねぇ!!』

 

少し久々にテレパシーツッコミがたくさん行きかっている。対して先生方はというと、ビッチ先生は何か言いたげに黙っていて、殺せんせーは笑っていた。

 

「さっきまでトンチンカンなコントしていた奴に笑う資格ないぞ。同じイロモノのくせに」

 

烏間先生はふぅーと体勢を正した。

 

「言っておくが、「彼女」は思考能力(AI)と顔を持ち、れっきとした生徒として登録されている。あの場所からずっとおまえに銃口を向けているが、おまえは彼女に反撃できない。「生徒」に危害を加える事は許されない。それがおまえお教師としての契約だからね」

「・・・・・・なるほどねぇ。契約を逆手に取ってなりふり構わず機械を生徒に仕向けたと。いいでしょう。自律思考固定砲台さん。あなたをE組に歓迎します!」

 

新たな生徒・・・生徒?を加えての初めての授業。殺せんせーが授業する中、みんな内容があまり入ってないのか、どこか落ち着きがなく、少しそわそわしていた。殺せんせーが後ろを振り向いた瞬間、転校生の機体に変化があった。

側面部分から瞬時に6門の砲台が組みだされ、そこから大量のBB弾が放たれた。BB弾の弾幕をいつものように殺せんせーは避けていく。高速移動で避けていき、チョークで弾いていく。

 

「ショットガン4門機関銃2門、濃密な弾幕ですがここの生徒は当たり前にやってきてますよ。それと授業中の発砲は禁止ですよ」

 

殺せんせーの指導に転校生は「気を付けます。続けて攻撃に移ります」と聞く耳も持たず銃を体内に戻し、内部でキィィンと機械音を鳴らした。

 

「弾道再計算。射角修正。自己進化フェイズ5-28-02に移行」

 

そのシステムメッセージが終わると共に、転校生からさっきとは違う銃が展開され、また大量の弾幕が張られていった。それでも殺せんせーはなんなく避けていく。殺せんせーがこの中の一つをチョークで弾いた、と思ったら先生の指がはじけ飛んだ。

 

「は・・・何が起こったんだ?」

「隠し玉をしました。全く同じ射撃の後に見えない一発だけ追加しました。結果、右指先破壊、増設した副砲の効果を確認しました」

 

そう説明した転校生は銃をしまった。

 

「次の射撃で殺せる確率0.001%未満、次の次の射撃で殺せる確率0.003%未満、卒業までに殺せる確率90%以上」

 

転校生からはじき出された確率はどういう計算かはわからないけど説得力があった。

 

「よろしくお願いします殺せんせー。続けて攻撃に移ります」

 

プログラムの笑顔で微笑みながら転校生は次の進化の準備を始めた。

 

「2発の至近弾を確認、見越し予測値計測のため主砲4門増設し、続けて攻撃に移ります」

 

 

 

 

授業の間、転校生の暗殺は続いた。その間私たちは後ろから放たれ続くBB弾とその散弾音に授業に集中ができなかった。そんな中、1時間目の終了のチャイムが鳴ると

 

「1時間目の予定プログラム終了。引き続き2時間目の授業に入ります」

 

といって転校生の液晶は黒くなった。やっと静かになった教室を見渡すと転校生のまき散らしたBB弾で散らかっており、私たちは唖然としていた。

 

「・・・これ・・・俺たちが片すのか」

「掃除機能とかついてねーのかよ、固定砲台さんよぉ」

 

村松君にそう聞かれても転校生は何一つ反応しなかった。

 

「チっ、シカトかよ」

「やめとけ。機械相手に絡んでも仕方ねーよ」

 

みんなため息をつきながら箒片手に掃除を始めた。最初こそやっていたクラス全員による弾幕攻撃。それをしなくなったのはこの片付け大変だからというのがある。ただ、自分たちで放った弾幕の片付けならともかく、転校生が勝手に放った弾を片づけなきゃいけないのは何とも言えない。

その後、転校生の攻撃は宣伝通りに続いた。授業中にずっと砲撃、その間私たちはBB弾とその騒音でまともな授業は受けれず、授業終わりに半強制的にBB弾の片付け。また授業中の砲撃、授業が終われば私たちで片付けと・・・。理不尽な対応をさせられクラス中で身勝手な転校生に対する苛立ちが募っていった。

4時間目終わりの昼休み、とうとう寺坂君たちが掃除をボイコットしてしまった。

 

「ちょっとアンタたち!どこいくのよ!」

「あ?メシだよメシ。昼休みなんだから出てってもいいだろうがよ」

「みんな掃除してるんだよ。アンタたちだけサボるなんて許されるわけないでしょ」

「なんでそもそも俺らが掃除しなくちゃいけねーんだよ。ずっと迷惑しかかけてねーのに申しわけねーとか教育(プログラム)されてねー奴にそんな義理かけてやる理由がねーよ」

 

寺坂君の正論にみんな押し黙り、道具を見つめると何人かは掃除もせずに道具をしまい始めてしまった。

 

「ちょ・・・前原君!ひなたも!みんな!」

「なんか転校生の世話してやんのバカバカしくなってきたわ」

「もう世話すんのやめよメグ。転校生なんて弾切れ起こして困ればいいのよ」

 

片岡さんに何も言い換えぜず俯いてしまった。こんなやり取りがクラスで起きているのに転校生は知らん顔で何もリアクションを起こさなかった。

 

「こんなときにでも転校生はダンマリか」

「ま、所詮は機械だよ。俺らの気持ちなんて気にやしない。・・・俺も掃除やめよかな」

「わたしも~」

「巴ちゃん一緒にお昼食べようぜ!」

「え、でも、せめて掃除は」

「ほっとけほっとけあんなの」

「え、みんな掃除しないの!?」

 

教室から出ようとしているみんなを片岡さんは止めたけど逆効果なのか転校生への苛立ちが少しだけ片岡さんへと向けられてしまった。

 

「はぁ~・・・なんで片岡は庇うんだよ」

「それは・・・一応はクラスメイトだし・・・よくないよ、こんなの」

「みんな、俺と片岡でやっとくから」

「磯貝もほっとけよ。迷惑な転校生つけあがらせるだけだぞ」

「何もそこまでいわなくてもいいだろ」

 

クラス中がいや~な雰囲気になったところで殺せんせーがやってきてマッハで転校生のBB弾を片づけてくれた。何人かに「俺らの時もやれ!」と抗議されたが「自分の始末は自分でしなさい!」と言って去って行ってしまった。

 

五時間目は体育だったので転校生は起動することはなく、被害はなかった。

6時間目はなぜかビッチ先生と授業を交代して英会話になった。当然転校生は起動せず、午後はただの黒い箱として鎮座しているだけだった。ちなみに英会話では私たちのためなのかビッチ先生によるストレス発散ディープキスを受けたけど・・・むしろストレスがたまった気がする。

 

ーーーーーーーーーーーーー

「6時間目イリーナと交代したんだな」

「ええ。本来は小テストの予定でしたが・・・彼女の様子から察するに忠告を無視して攻撃してくるでしょう。流石にテストの邪魔をされては生徒たちの怒りも爆発して学級崩壊が起こってしまう。これ以上生徒に負担をかけさせないためにも一旦は引くべきかと」

「・・・決して己の身の安全のためではなく?」

「もちろんです。・・・本当ですよ?信じてください!この党利なんで!!!」

「ええい!うっとおしい!絡みつくな!!まあ、さっきも生徒から抗議を沢山うけたからな。妥当な判断だ」

「そうですとも。なのでこの時間にイリーナ先生の授業で彼らに休息をね」

「・・・あいつの授業は休息になるのか?」

「・・・ならないでしょうね。彼女の暗殺に巻き込まれるよりかはマシかと」

「俺も上にかけあっておく。暗殺の場とはいえ、仮にも教室だからな。生徒にボイコットでもされたら身もふたもない」

「ええ、よろしくお願いします。生徒のためになるいい返事待ってますよ」

「なるべく期待には答えておく」

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

翌日

「今日もいんのかなー転校生」

 

昨日の午前中は転校生に散々な目にあったせいか、杉野君の態度にはどこかとげとげしい一面を隠そうともしなかった。それも仕方ないけど。

杉野君がボヤキながら教室の扉をあけると

 

「・・・なんじゃありゃ」

 

転校生の体はガムテープでぐるぐるに巻き付かれていた。

 

「これでいいだろ?」

 

声がした方を振り向くと寺坂君が頬杖をつきながら転校生の方を睨みつけていた。

 

「これ、寺坂君が?」

「アホみてーにバカスカ撃ちやがって迷惑でしゃーねー。ああでもしないと静かにならねーだろうが」

「・・・それもそうだな」

 

杉野君も隣で黙っていた渚君も何も言わずに席についた。

その後に来たみんなもグルグル巻きにされた転校生を見て、思う所あれど何もいう事はなかった。それはこっそり教室を覗いていた先生方も同じみたいだ。

HRの時間になって転校生が起動した。

 

「朝8時半、システムを全面起動。今日の予定、6時間目までに215通りの射撃を実行。引き続き殺せんせーの回避パターンを分析・・・!?」

 

ここで転校生が己に起こっている事態に気が付いた。グンと動かしてみても転校生の側面は開かず、がちゃんがちゃんを音を鳴らすだけだった。

 

「・・・殺せんせー、これでは銃を展開できません。拘束を解いて下さい」

「・・・うーん、そう言われましてもねぇ」

「この拘束はあなたの仕業ですか?明らかに生徒(わたし)に対する加害であり、それは契約で禁じられているはずですが」

「違げーよ、俺だよ」

 

寺坂君が転校生に向けて縛り付けていたガムテープを投げつけた。

 

「どー考えたって邪魔だろうーが。常識ぐらい身に着けてから殺しに来いよポンコツ」

 

「・・・ま、わかんないよ。機械に常識はさ」

「授業終わったらちゃんと解いてあげるから」

 

原さんにフォローはされつつもそのまま放置され、いつもどおりのHRが始まった。

 

「たまには寺坂もいいことするねぇ~」

「一言多いんだよカルマ。テメーは2時間目にはとっととトンズラこいてたくせによ」

「何度も言ってるけど私越しに喧嘩するのやめてくれない?」

「だってさ寺坂」

「そこがうるせぇつってんだよ!」

 

二人のいつも通りの喧嘩に頭を抱えつつもグルグル巻きの転校生に視線をやった。転校生は何を考えているか、画面の少女に変化はなさそうだ。

これ以上何かをするのなら、私も何か手を考えるべきかもしれないな。

 

 

 

 

 

 

 

椚ヶ丘の展望台。そこに一人の少女が望遠鏡を覗いていた。その望遠鏡は他のものとは違い、どこか場違いに派手なデザインになっていた。少女が見ている対象は山の上の学校・・・E組だった。

少女はそのクラスを見ていた望遠鏡を視界からはずしニヤリと笑っていた。

その手には卵型の宝石・・・ソウルジェムが握られており、少女が離れると望遠鏡は元のなんの変哲もない姿へと戻っていた。

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