巴マミは暗殺者   作:百乃綾香

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杏子襲来後編

今回は寺坂視点です


23時間目 不審人物の時間

23時間目  不審人物の時間

 

「不審者情報があります。この近辺でおおきな体に黒い服の人物が目撃されてます。そういった人物を目撃した時はすみやかに先生に連絡してください」

「いや、その不審人物って殺せんせーじゃね?」

 

図星だったらしくタコはにゅやっとリアクションした。タコの奴は目に見えてあせっていた。

 

「そ、そんなはずは・・・先生は清廉潔白に行動していますので、そのような不審人物扱いな事は・・・」

「どう聞いてもアンタの事だったわよ」

 

そこに口を挟んできたのはビッチだった。

 

「表向きの副担任として参加してたけど、どう聞いてもアンタの事だったわよ。全く、なぜか居心地が悪かったわ」

「うう・・・先生はただやましい事はなくエンジョイしているだけなんですけど・・・」

 

タコは身を縮こまってウダウダして言っていた。なんか変なことしてんな。

 

「国家機密な上に実質指名手配犯なんだぞ。ちょっとは行動を慎め」

「そんなぁ・・・お金返したのでご勘弁を・・・」

 

烏間に厳しい事を言われ、タコはヘコヘコしていた。これが月を破壊したとかいう怪物だというんだから驚くやら呆れるやら。

 

「しくしく・・・あ、それと今日茅野さんはお休みです。季節の変わり目ですので体調管理はしっかりとしましょう」

 

他の奴らが呑気に「はーい」だの返事をしたあと、タコがある一人に目を向けた。

 

「ところで三村君、さっきから脇腹をおさえてますが・・・何かあったのですか?」

「あ・・・いえ、昨日机におもっきりぶつけちゃったんで・・・大したことないんで平気です」

「・・・・・・・・・・・・・・・そうですか。・・・お大事に」

 

詳しい話は知らねぇけど、ただ机にぶつけたワケじゃねぇのは俺にでもわかる。それを鋭いタコが気が付かないわけがない。

魔法ナンタラとか暗殺や勉強と同じようにどうでもいいとはおもっているが、そのことがバレるとこっちにまで火の粉が降りかかりそうで迷惑だ。面倒ごとは魔法少女(ソッチ)内で片づけてほしいもんだ。

横目で魔法少女のことを広めている張本人である巴に目をやると俺の視線の意味に気が付いたのか申し訳なさそうにペコリと頭を下げた。

 

 

 

放課後

俺は友達(ツレ)共といっしょにコンビニに立ち寄っていた。

 

「あ、そういえばこの辺で強盗があったらしいわよ」

 

狭間に何気ない一言に吉田と村松の顔がひきつっていく。

 

「そんなことでビビってんじゃねーよ」

「いや、怖いだろ!?」

「ただでさえ実はおっかねーバケモンがいるっていうのにビビらねー方がおかしいべ!」

「あのタコ脅してきたのは最初くらいであとはしょーもーねことしかしてねーだろ」

「そっちじゃねぇ!!」

 

ぐだらねーなと思いつつ、会計を済ませていつものゲーセンにでも立ち寄ろうとしたときだった。

 

「よぉ」

 

前から赤い髪をポニーテールに縛った同い年(タメ)くらいの女が声をかけて来た。口にはうんまい棒をしてサクサク食っていた。

 

「ん?誰だテメェ。知り合いか?」

 

後ろにいるツレに聞いても誰も首を縦に振る者はいなかった。

 

「なんだよ。何の用だよ」

「別に男どもに用はねーよ。用があんのは後ろにいる女だよ。ケガしたくなかったらそこの女置いてとっとと消えな」

 

うんまい棒を食い終わった女は手で野良犬でも追い払うようにしっしと払いのけた。狭間に用があるとか言っていたが、狭間にはあの女を知っている様子はない。それにだ、あの女の用がただの用件ではないのはわかる。

 

「置いていけっかよ。狭間はテメーのこと知りもしねーみてーだし、だいたい何のようがあるってんだ」

 

俺が一言申し出ると女は「はぁー」とため息をついた。

 

「ああそうかい・・・。あんなことしといて知らばっくれるとはね・・・。アンタらも知ってるのか知らねーけど・・・落とし前つけねーとな!!!」

 

その女が俺らに向かってきた。俺らは構える間もなくあっという間にのされてしまった。一応体育の時に烏間のセンコーに受け身は習ってはいたからたいしたケガもなさそうだが・・・俺らは障害になることもできずに狭間の元に女をむかわせてしまった。

 

「よくもアタシの腹に穴を開けやがって・・・あれ?」

 

狭間の襟をつかんだところで女の動きが止まった。

 

「あれ?あれ?あれー????おっかしいな・・・顔が違ぇし魔力も違うというか・・・あ?なんだコレ」

 

その女は狭間を掴んだ手を離すと

 

「人違いだ。悪かったな」

 

といいやがった。

 

「はぁ!?どういうことよ」

 

流石にいつも斜に構えてる狭間でも腹がたったのか、いつもよりまあまあ大きめの声で抗議した。

 

「いや、なんか似てるって思ったから間違えちまったわ。本当に悪かったよ」

 

そういって女は懐から駄菓子を出して俺らに雑に投げつけた。

 

「じゃ、そういうことで」

「ちょっと待てよ!!!」

 

女を呼び止めたのは吉田だった。

 

「ぶん殴っといて間違えましたー、でこんなもんで済むと思ってんのか!」

「だーかーら、悪かったっていってるだろ。ごちゃごちゃうるせーんだよ。それでおあいこ。アタシは機嫌が悪いんだ、もういいだろうが」

「おあいこ?こんなものがよ」

 

と吉田が駄菓子を投げ返そうとしたら、吉田の手首をつかむ奴がいた。

 

「おい、経緯はどうあれ食べモン粗末にしてんじゃねーよ」

「お、おお・・・悪いな村松」

 

クソまずいとはいえ腐ってもラーメン屋だからかそういったことには厳しいんだよな、村松は。あのクオリティのラーメン提供している方が食べ物粗末にしている気がするが。

 

「寺坂てめぇ・・・失礼なこと思ってんじゃねーよ」

「ナチュラルに地の文読むなや!!!」

 

全く、店の悪口には鋭いんだよなコイツ。

 

「へぇ、そこの金髪のアンタいいじゃん。気に入ったよ」

「ハァ?褒められても嬉しくねーよ」

 

女がニヤニヤしている所で狭間が口を開いた。

 

「ところでアンタ・・・魔法少女ってやつ?」

 

その言葉に女の眉がピクリと上がった。

 

「なんでだよ」

「知り合いにでもいるのよ。似たような指輪してるし」

「おい狭間、マジかよそれ」

「あの指輪が必ずしもそうだとは限らないけど・・・巴のに似てんのよ」

 

俺と狭間がコソコソ話してるのが聞こえたのか、女の様子がおかしくなった。

 

「アンタら・・・巴マミの知り合いかなんか?」

 

どこか何かが気にいらないといった感じで俺らを見ていた。

 

「な、なんだよ」

「別にぃ?ただちょーといいこと教えてあげようかなって」

「ちょっといいこと?」

「巴マミのことだよ」

 

巴に対して思う所がないわけではないが、何を言いたいんだこいつは」

 

「魔法少女のことを知ってるってことはアイツに色々吹き込まれているってことだよな。契約する気があるかは知らねーけどやめときな。マミの奴は戦力がほしいだけだ。アンタらが滅茶苦茶になってもどうだっていいんだよ」

 

巴とはE組になってから初めて会ったぐらいの関係性しかないが、テキトーに貶めてくる女を見てると少しだけ腹が立ってくる。

 

「別に巴とは仲良くはないけど結構な言い草ね。丸で昔から知ってるみたいで」

 

狭間の言葉に女はしかめっ面をした。

 

「けど、私らからすれば勘違いとはいえいきなり襲ってきたアンタの方が信用ならないわよ。そんな奴に巴の悪口いわれてもねぇ」

 

女は言い返せずグッと黙ってしまった。

 

「だから悪かったって言ってるだろ!・・・チッ、マミの周りには変な奴が多いな。もうアンタらの前には現れねーよ」

 

女はそう言い残してどこかへと去って行ってしまった。

 

「なんだってんだよあのアマ・・・」

「知るか。明日巴に文句いってやらねーとな」

 

 

 

翌日

 

「巴、話がある」

「え?急にどうしたの寺坂君」

 

こちらから話しかけられるのが意外だったのか、巴は少し驚いた顔をしていた。

 

「昨日テメェの同業者にケンカ売られたんだよ、一方的によ。なんかやったりしたのか?」

「ええっ!?いや流石に一般人である寺坂君に危害加えるような魔法少女(ひと)はそうそう・・・それってどんな子?」

「俺っていうか狭間が誰かに勘違いされてだけどな。確か・・・赤い髪のポニテ女だったはず」

「・・・佐倉さん?」

「名前は知らねーけど」

 

心当たりがあるようで巴はぶつぶつ呟いていた。

 

「佐倉さんいくらなんでもそれは・・・本当に変わっちゃったのね・・・・・・・・・

そういえば勘違いって言ってたけど、その襲った子何かいってなかった?」

「あ?ひでーことされたとしか言ってなかったな・・・。その襲った奴は狭間に似てるだとか言ってたな」

「狭間さんに似た魔法少女かしら?この町に他にもいたのね。誰なのかしら」

「オッハヨー!!」

 

突然後ろから元気な声がして、見てみると昨日休んでいた茅野がピンピンして教室に入ってきた。

 

「茅野さんおはよう。体調はどうなの?」

「うん?昨日しっかり休んだから元気だよ!心配かけてゴメンね」

 

と言って茅野はそのまま自分の席に向かっていった。

 

「・・・とにかく、他のみんなにも伝えておくから。情報ありがとうね」

「別に情報提供のつもりじゃねーよ」

 

 

 

 

 

 

 

同時刻、コンビニにて

 

杏子はおかしコーナーでキョロキョロと見渡していた。本日の食料を調達するためにコンビニに来ていた。ちなみにお金は持ってない。家も家族もいない彼女にとって万引きがどうのと言ってる余裕はない。いざとなれば魔法でどうこうするつもりだ。もっとも失った幻覚魔法を取り戻せたらより楽にはなるのだが現実はそうもいかないらしい。

 

「こんなもんかな、さっさとお暇するか」

 

手慣れた様子で杏子はポケットにつめこんだお菓子をレジにも通さずに店を後にした。

 

「さーて、今日の収穫は・・・あれ?」

 

ない

確かに入れてたはずのお菓子がいくら探してもない。

 

「ありがとーございましたー」

「ヌルフフフフ。給料が入った後でのコンビニでの買い食いほどいいものはないですねぇ」

 

店から出た客らしき声がご機嫌に聞こえて来た。

 

「このお金を出して買ったこの新作プリン!あーん・・・にゅやー!生クリームとプリンの生地の絶妙な柔らかさのハーモニー!これは触手の柔らかさの完全再現です!」

 

意味不明な食レポが聞こえてくる。というかプリン?杏子がこっそり収穫したもののひとつだ。まさかポケットからとっさに取って購入したとでもいうのか?・・・ふざけるんじゃない

 

「てめぇ・・・アタシのプリンを」

「あなたもそう思うでしょ?盗んで得た食べ物には勝てないでしょうね」

 

振り返った目の前にいたのは

大きな頭にバレバレのかつら、丸い鼻、黒いアカデミックドレス。腕からのびる腕は関節があいまい。そしてその正体は人間とは思えないくらい巨体だった。

 

「ま、魔女!?」

 

ザっと構えかけたが、ソウルジェムに反応はなかった。魔女でもなければ使い魔でもない。ならばこいつは・・・?

 

「あ、あれ・・・?魔女じゃない?」

「魔女?」

 

謎の怪物は杏子の出した単語に首を傾げた。

 

そう、私は魔女っ子♡殺子♡」(裏声)

「急にきめぇコスプレすんじゃねぇ!!」

 

目にもとまらぬ速さでひと昔前のようなアニメのコスプレをした怪物に思わずツッコミをいれてしまった。

 

コンビニで万引きする悪い子には魔法をかけちゃえ~♡」(裏声)

 

怪物は無駄に凝った手作りの杖をくるくると振った。

 

ヌルヌル☆ヌメヌメ★ヌメリンポン☆品行方正な優等生になぁ~れ ♡」(裏声)

「は?何ふざけ・・・はぁぁぁ!!!????」

 

気が付くと杏子の服装はカジュアルなものから膝丈スカートのセーラー服にグルグル眼鏡をかけられていた。しかも髪型もポニーテールからみつあみに変えられていた。

 

「は?何が起きた!?」

これでいい子になった♡ところであなたの学校はどこ? 」(裏声)

「その裏声やめろ!どこでもいいだろうがよ!!」

 

普段着の上から着せられていたセーラー服を脱ぎ棄て、魔女のコスプレをする怪物を睨みつけた。

しかし、さっきの早着替えのスピードを考えるととてもじゃないが敵う相手ではなさそうだ。魔女でもないのになんなんだこいつは

 

「くそうぜぇ・・・ここは退散するか」

「そうそう、忘れ物ですよ」

 

そう言われ、ふと、右手に重みを感じたので見てみるとコンビニの袋が握られていて、中身を見てみると杏子がかっぱらおうとした菓子類が入っていた。

髪型もいつまにか元のポニーテールに戻ってもいた

 

「今回は先生のおごりです」

 

怪物はいつの間にかさっき見たアカデミックドレスに着替えていた。

 

「君ぐらいの年頃の子供がこの時間帯に学校に行かず、制服も着ずにブラブラしている。それにお腹には痛々しい傷も見える。何か家庭内事情があったと察せられます」

 

傷に関しては外れているが概ね当たりなので杏子は黙っていた。

 

「まあ、どんな事情があろうともお店に迷惑をかけるのはいただけませんけどねぇ。次見かけたら今回のような手入れでは済ましませんよ」

 

そう言って怪物はヌルフフフフと笑ってた。

 

「あ!HRの時間に遅れる!!」

 

と言って怪物はどこへともなく飛び去っていった。そのスピードは自分達魔法少女にはとうてい追いつけれるようなものではなかった。

 

男の魔法少女に黒い正体不明の魔法少女(多分女)その上魔女でもない言葉をしゃべる怪物ときたもんだ。

目の前で起きたことが受け入れられず混乱する杏子が出した結論はこうだった。

 

「・・・一旦、風見野に帰るか」

 

杏子は体を強張らせてぎこちなく椚ヶ丘の街をあとにするのだった。

 

 




殺せんせー大百科

超記憶力

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