巴マミは暗殺者   作:百乃綾香

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いきなりー!教えてくぬどん!

「やあ、みんな!僕くぬどんだよ!」

くぬどんさまー!

「今回は編入試験について解説するよ!

椚ヶ丘中学校に途中編入するには当然試験は必須!
入学試験より難しい試験に合格すれば晴れて!椚ヶ丘の生徒の仲間入り!」

途中介入ー!

「でも、三年生で基準に満たねー奴は即E組行きだ!ま、それ以下の自惚れ野郎もたまーにいるけどな!」

誇大妄想ー!

「ああそれと、E組になったやつでも高校の試験に合格すればまあ一応は椚ヶ丘高校に入れてやらんこともないけど…それができた奴はいないけどな!できるわけねーんだよな!落ちこぼれでクズのE組に最入学できるわけねーんだよな!」

どーせムリムリ!わー!!!



24時間目 避難民の時間

 

6月に入って私たちは月に一度の集会に出るべく、昼休みを使って下山していた。理由は二つ。私たちE組の旧校舎から体育館まで距離があるから時間をかけなきゃいけないということ。もう一つはE組はどのクラスよりも早く並ばないといけない、並ばなかったら罰を受けることになっているからだ。

 

「先月は大変だったわよね」

「特に岡島が」

 

先月は近道をしようとして罠だらけの道を行って散々な目にあってしまった。主に岡島君がだけど。

 

「アニオリ展開で面白いからいいんだけどさ、よく考えたらあの殺意高めの罠ってフツーに問題だし烏間先生も殺せんせーも放置してるのおかしいよね」

「不破さん?言ってることが危ないような・・・」

「渚君、私はこういうキャラなの」

「そうなの?」

「そうこう言ってるうちに・・・ついたぞ」

 

カルマ君を除いて全員が無事について並ぶことが出来た。それでもこの集会はE組にとっては気が重くなるイベントだ。集会の間、E組いびりが続くし、私たちに対するとげとげしい視線をずっと受け続けなければいけない。

前回の集会ではわざとプリントが配られなかったことがあった。殺せんせーがいたことでそのいやがらせ無効になったのはよかったけど、そのあと渚君がD組の二人に絡まれてちょっとだけ大変だったみたい。

 

「皆さん、6月になりました。雨が良く降る季節になりましたね」

 

校長先生の長くて中身のない話を聞き流す。

『はぁ~、つまらんねぇ』

『黙っときましょ、ここで聞いてないとか思われると何を言われるか・・・』

『とはいっても中身がないかE組(わたしら)をバカにするかのどっちかでしょ?理事長のいいなりみたいだし、傀儡校長とでも呼ぼうかね』

『なによそれ』

 

そういえば・・・校長先生の話にE組の話題が出てこない。いつもは必ずといっていいほどしているのに・・・なんなら隣のクラスはE組(わたしたち)をすぐにでもバカにしたくてニヤニヤしているし。

 

「さて皆さん、先々月の見滝原での災害では多くの人が亡くなりました」

 

校長先生の言葉に私は思わず耳を傾けた。災害の事は知ってはいるけどここで話題になるとは思っても見なかった。

校長先生は話を続けた。被災者に対するお悔やみとか万が一の災害に備えようとか少し彼には不似合いな話を校長先生は話していた。

 

「そして我々椚ヶ丘中学校も見滝原の被災者を受け入れることになりました!では浅野君、紹介を」

 

校長先生が生徒会長であり理事長の息子である浅野君にマイクを渡した。浅野君はマイクを受けとるとキラキラと爽やかなオーラを発しながら言った。

 

「我が椚ヶ丘が受け入れることになったのは3人の中学2年生のの生徒です。では、入ってください」

 

その紹介と共に3人の生徒がステージに現れた。それは1人の男の子と2人の女の子だった。

 

「2年A組に編入することになりました。志筑仁美です。これから椚ヶ丘のみなさんにはお世話になりますのでよろしくお願いします」

 

ふわふわの緑色の髪の女の子が深く丁寧にお辞儀した。

 

「2年B組に配属されることになりました。上条恭介です。よろしくお願いします」

 

銀色に近い髪の男の子が姿勢を正して頭を下げた。

 

「2年D組の新たな仲間になります!美樹さやかです!よろしくお願いします!」

 

青いショートカットの女の子が元気そうにお辞儀した。

 

「一時的にですが、新たな仲間となる3人に拍手を!」

 

体育館中が温かい拍手で包まれる。隣のクラスも戸惑いつつも笑顔で転校生たちを迎えているようだ。彼らは一応は普通の中学生だからいつもいじわるな嫌な生徒達というわけでもないのよね。

 

「ああそうだ、君たちに伝えなければいけないことがあるね」

 

浅野君は転校生となる3人に目を向けた。

 

「君たちには忠告しなくてないけない。君たちにどんな事情があろうともこの学校は学業優先、サボってばっかりいるとそこの隅にいるE組のようになってしまうから注意するように」

 

その生徒会長の言葉と共に体育館中が嘲笑で響き渡った。さっきまで暖かな空気とは違い、冷たい嫌な空気が私たちを囲ってくる。隣のクラスは待ってましたと言わんばかりにこちらに邪悪な顔を向けて笑っている。ああ、始まってしまった・・・。

 

「な・・・何よコレ・・・あの、これって」

 

ステージ上では転校生の3人がドン引きした様子でこの光景を眺めていた。

 

「何を驚いているんだい?君たちもウチでの校則(ルール)を受け入れてここにはいったのだろう?ここではE組は勉強についてこれなかった落ちこぼれの証、君たちもああなりたくなかったらきちんと勉強するように」

 

生徒会長になにか抗議をしたかった言葉を飲み込んで転校生たちは顔を青ざめたまま私たちを眺めていた。

 

転校生たちが壇上から降りたあともE組に対する嫌がらせは続いた・・・

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

集会終わり

 

「本当に申し訳ありません!」

 

体育館の脇で仁美はさやかと恭介に謝罪していた。

 

「成績によって扱いの差があるとは聞いていましたがここまでとは思わず・・・」

 

避難先での学校選びを決めたのは仁美である。ヴァイオリンに精通し、足を悪くした恭介のため、福祉が充実し部活動も強いこの椚ヶ丘を選んだのではあったのだが・・・この選択を間違ったと仁美は自分を責めていた。

 

「別に志筑さんは悪くないよ」

「そうだよ!ついてく選択したのはあたしたちなんだし」

 

平身低頭な姿勢を崩さない仁美にさやかと恭介はフォローを入れた。

最初さやかは見滝原に留まるつもりであったが仁美の説得でさやかはついてく選択をした。結果この椚ヶ丘に来たのだが・・・仁美も悪気があったわけではないので責める気にもなれなかった。

仁美は少し気が楽になったので顔を上げたがその表情はまだ暗いままだった。

 

「せめてまどかさんもいてくれたら良かったのですけど・・・」

 

仁美の悲しそうな声にさやかは何も言わずに下を向いた。その表情は誰にも見えなかった。

 

「鹿目さんは災害に巻き込まれて亡くなって・・・転校生だった暁美さんは行方不明、だっけ?ほかにもクラスの「ああもう、その話はやめよ」

 

さやかは恭介の話を遮った。それは暗い話を切り替えるというよりかは耳すらしたくない、といったものだった。

 

「これから新しい学校生活が始まるんだし、うじうじしていたらまどかに失礼だよ。前を見よ前を!」

 

えへへと笑うさやかを見て、仁美と恭介はお互いを見あって笑みが零れた。

 

「さやかのいう通りだ。生きているんだから前を向かないとね」

「その通りですわ。でもさやかさん、編入試験ギリギリだったのでしょう?あの先輩方を貶める言い方はしたくないのですが、以前みたいにだらだらしているとあのE組に落ちてしまいますよ。わたくし、さやかさんにあんな目にあってほしくないですわ」

 

うぐっ・・・とさやかは言葉がつまり「はい・・・」としょんぼり返答した。その様子を陰から観察しているものがいた。

 

「やれやれ、その程度の覚悟で来たのか・・・」

 

その正体は浅野理事長だった。編入生である彼らに何か不審な動きがないか、己の目で確かめに来ていたのだった。現にこの学校の根幹となるシステムであるE組制度にある程度の反感を持っていた。編入手続きの資料に書いてあったにも関わらずに、だ。

 

「生半可な気持ちで来られると本校舎の生徒にまで影響を及ぼしかねない。彼女とはまた訳が違うからね・・・。ここでの生活の仕方を彼らに教育しとかねば。

懸念点を考えるのなら・・・巴さんだな。彼女も見滝原出身。下手に接触して親近感を持たれたら・・・」

 

理事長はそう考えながらその場をあとにした。どこか畏怖を感じさせるオーラを発しながら・・・

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

教室に帰ってみると、話題はあの三人の事で持ちきりだった。

 

「見滝原からの避難民かー」

「というか、あんな大げさに紹介するっけ?転校生って」

「わが校は避難民も受け入れる懐の深い学校ですよー、ってアピールしたいんでしょ?」

「にしても転校生の子チョーかわいくなかったか?特に緑髪の子!」

「いやいや、青い髪の子もなかなか捨てがたいぜ!」

「転校生転校生って・・・私も転校生ですよ!二年生のことばかり語らないで下さい!」

「ごめんごめん律」

 

いろんな意見はあるが、みんなどこか浮かれ気味で楽しそうだった。違う学年だし、割と他人事で楽しめるものね。校舎が違うからこそ好き勝手言えるのだろう。

そんなやり取りを私はなんとなく遠巻きに聞き入っていた。

 

「みんな学年違うのに夢中だね」

「そういや巴ちゃん見滝原出身だよね?もしかして会った事あったり?」

「うーん・・・流石にないわね。中学だって一瞬しかいなかったし」

「それもそっか」

 

そんな会話をしていると烏間先生がため息をついた。

 

「ん?どうしたんすか?烏間先生」

「いやな、見滝原といえば防衛省(ウチ)で少々問題があってな」

「どんな問題が・・・?」

「これから話すことは暗殺の件同様他言無用だ。本来なら君たちにも流すことではないが、万が一彼らが関係者だった場合君たちにも影響を及ぼす可能性がいるので知っておくべきだろう。

そして君たちのここ数か月の口の堅さを信用して話すことにする。そのことを頭に入れて聞いてくれ」

 

烏間先生のいつになく真剣な声と言葉にバラバラに過ごしていた私たちはそれぞれの席に座って姿勢を正して話を聞くことにした。

 

「ここだけの話、数が月前に見滝原駐屯地や付近の米軍基地で武器の窃盗が発生した」

 

烏間先生の口から出た想像をはるかに超えた物騒な話だった。教室中がざわめいた。

 

「ええっ!?それヤバくないですか!??」

「もしかして・・・テロ組織とか?」

「我々も真っ先にその線を追ったが、どうにもそうではないらしい。日本と関わりのない所まで殺せんせー(コイツ)が調べ上げたが、盗品はどこにもなかった」

「先生がマッハでじっくりねっとり調べたあげたので間違いはないです。ついでにお手入れもしてね」

「・・・いいの?殺せんせーが調べたりして」

「我が国も色々手を使ってこの学校に赴任させたからな。このぐらい利用しても当然だろ。そして更に問題のがその武器がどうも見滝原で使われた形跡があるとのことだ」

「えっ!?」

 

私は思わず聞捨てならない話に立ち上がってしまった。ただ災害があっただけと思っていたのだけれども・・・テロもあったの?

 

「それ・・・本当ですか?」

「詳しい話は俺も把握してない。わかっているのは見滝原での大災害に乗じてテロを起こした奴がいるいうことだ」

 

な・・・なんでそんなことを?見滝原になんの恨みがあってそんな事を?

 

「よく大事になりませんでしたね。普通そんなこと起きたら責任問題とか起きませんか?」

「竹林君の疑問はもっともだ。しかし、盗まれた武器が人がいるところではなく人のいない虚空に撃たれていたこと、そのことで人的被害がない事。それと我が国は殺せんせー(コイツ)の抹殺を遂行しなければならないので首を挿げ替えてる暇がないという様々な事情や思惑が重なって盗難の件は世間には伏せる事になった、ということだ。

巴さんには故郷のアレコレはあまり聞き苦しい話だったな。申し訳ない」

「いえ・・・大丈夫です」

 

私はそういってゆっくりと着席した。

 

「もうひとつあるのだが・・・大したことではないが対先生(コイツ)用武器にも手をつけようとした形跡があった。こちらは無事ではあったのだが・・・やや気になってのでな」

「俺らが使っている武器って奴ってことっすか?」

「ああそうだ。ぶちまけられていたが、破壊まではされてはいなかったんだ」

「ただのモデルガンだもんね~。犯人ガッカリしたんじゃない?まさか超生物を殺すための武器なんて思わないだろうし」

 

少し馬鹿にしたようにカルマ君が椅子をゆらゆら揺らしてそういった。

 

「でも怖くない?どこの国のテロ組織ともかかわりのない窃盗犯がなぜかどこにも売らずに、誰も狙わずに虚空に撃った・・・だなんて目的がなにもわからない。それに見滝原での活動だけとは限らないしね。殺せんせーですら追えず、実態をつかめない犯人がまだどこかにいる・・・。そいつが殺せんせーを狙ってくるかもしれないのにね」

 

カルマ君は指でっぽうをして殺せんせーに目掛けて撃つ動作をした。多分日米が総力をあげて調べ上げて殺せんせーを使ってもなお捕まらなかった窃盗犯。見滝原を滅茶苦茶にした上に殺せんせーを狙っているとしたら・・・許せない。

・・・日々、殺せんせーを狙っている私たちが言えた事じゃないけど。

 

「手掛かりがないわけではないが、指紋がついているにも関わらず監視カメラにその姿は一切映ってなかった。盗んだ量も常識を超えていてな・・・」

「ええ・・・なにもかも常識で説明できないことばかりで・・・

 

    まるで魔法にでもかったようで・・・

 

こんなことありえますかね?」

 

魔法。その言葉を聞いた時、クラス全員・・・律を除いてだけど・・・同じことを考えた。

 

『犯人、魔法少女じゃね?』

 

 

 

放課後、

いつものように魔女退治に集まり、人気のいないところに移動してキュゥべえを囲んだ。

 

「さてと、キュゥべえ」

「なんだい、マミ」

 

キュゥべえは表情のわからない顔でこちらを見つめていた。

 

「烏間先生がいってた窃盗犯の話、私が思うに魔法少女が絡んでるとしか思えないんだけど・・・何か知ってたりしない?」

 

キュゥべえは少し間をおいて

 

「僕からは断言出来ないけど・・・該当しうる人物の検討はついてる、とでも言おうかな?」

 

と伝えた。

 

「やっぱり・・・」

「そいつどんな奴だよ!」

 

杉野君に詰められるけどキュゥべえは少し困った感じで答えた。

 

「どんな奴と言われても、僕にはその該当者と契約した覚えがないんだ」

「はぁ?覚えがない?お前が契約したんじゃないのか?」

「違うともいえるしそうとも言える」

「なんじゃそりゃ」

 

木村君のため息にキュゥべえは説明を加えた。

 

「その子は極めつけのイレギュラーって事さ。僕にも彼女の行動は予測できないし、今どこで何をしているのかもわからない」

 

キュゥべえですら予測不能な相手・・・もし、その子が椚ヶ丘に来たのなら、

 

「そいつが駐屯地やらに侵入して盗んだって事でいいのか?」

「僕はそう推測している。彼女ならやりかねない」

「殺せんせーを狙う可能性は?」

「否定しきれない」

 

みんなは怪訝そうな顔でお互いの顔を見合わせた。佐倉さんの事もあってよそ者の魔法少女に対して少し敏感になっている。

日米の軍事部と殺せんせーを欺くということは、そうとうな魔力の持ち主なのだろう。明らかに脅威だ。

せめてその窃盗犯だという彼女の正体がわかればいいのだけれども。

 

「それで、その子の名前は?」

 

キュゥべえに窃盗犯だという子の名前を尋ねたときだった。

 

「見つけた」

 

どこからか声が聞こえた。

 

「そんなところにいたのか、暁美ほむらぁぁぁああああ!!!!」

 

突然現れたサーベルを持った青い髪の女の子。その子が神崎さんに切りかかろうとしていた。

 

「神崎さん!」

 

咄嗟に隣にいた杉野君が神崎さんを助けるべく手を伸ばした。

 

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