巴マミは暗殺者   作:百乃綾香

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27時間目 湿気の時間

朝から雨が降る日の事、E組の教室では授業そっちのけである一点に注目が集まっていた。

 

『大きい』『大きいぞ』『なんか大きいぞ』

 

殺せんせーの頭が明らかに巨大化にしていた。俺の席は一番前の席だからより圧を感じてしまう。

 

「殺せんせー、33%ほど巨大化した頭部についてご説明を」

 

律が例の件を聞くと先生は説明をした。

 

「水分を吸ってふやけました。湿度が高いので」

「生米みてーだな!」

 

思わずツッコんじまったけど本トにどうなってんだよ、殺せんせーの体は。

 

「雨水は全部避けて登校したんですが湿気ばかりはどうにもなりません」

 

殺せんせーが顔をしぼって水分をバケツの中に出していく。そのバケツだけじゃなく教室中には雨漏り用のバケツが置かれている。E組のボロ校舎じゃ仕方ねーよな。

 

「先生帽子どしたの?」

「よくぞ聞いてくれました」

 

倉橋が疑問を投げかけると殺せんせーは嬉しそうに帽子をとった。

 

「先生ついに生えて来たんです。髪が」

「キノコだよ!!」

 

殺せんせーの頭には立派なキノコが生えていた。ギリ食えそうな色をしているのが少し腹立つ。

 

「湿気にも恩恵があるもんですねぇ。暗くならず明るくじめじめ過ごしましょう」

 

明るくねぇ。俺は後ろを振り向いた。渚を飛ばして杉野に目をやる。頬杖をついて殺せんせーに呆れている杉野の左手には例の指輪が光っていた。

 

 

 

先日、勘違いで神崎さんがさやかちゃんに疑われたのをきっかけに、杉野は他所の魔法少女への対抗手段として契約した。それ以前にも佐倉に襲われたり、高校生に拉致られたり、杉野が自衛の手段が欲しくなるのは当然だ。

矢田も危機感を持ったことをきっかけに弟の契約を交わした。

それとはまた別に自衛の手段はほしいけど肝心の願いが思いつかないと速水は語っていた。俺も同じ意見だ。自衛もそうだけど磯貝の助けになりたいとは思ってはいる。だけど命を懸けてまで叶えたい願いもない。

俺の望みは毎日女の子や友達と楽しく過ごせたらそれでいい。金持ちにはなりたいけど、それで一生戦い続けれるかっていうとない。まあ、いずれ時がくるか、と呑気に考えていた。

 

 

放課後

俺は玄関の前で人を待っていた。相手はC組の土屋果穂。校内での俺の彼女だ。2年の頃から付き合っている・・・んだけど最近なんかそっけないんだよなぁ。

と考えていると玄関から2人の女の子が出て来た。あれはさやかちゃんと・・・

 

「よ、また会ったなさやかちゃん!」

「あ・・・どうも。こないだはご無礼を・・・」

 

さやかちゃんがこちらに気が付き、少し固めに返した。まあ出会い方が悪かったしなぁ。

 

「あの・・・さやかさん、こちらどなたですか?」

「あーうん、この学校の先輩?この前道端で出会って・・・まあ色々と、名前は・・・」

「俺、前原陽斗。よろしく志筑仁美ちゃん」

「わたくしの名前、憶えてくれたのですか?」

「当り前よ。俺人の名前覚えるの得意だし。どうしたのもう一人の男は知り合い?上条恭介だっけ?」

 

俺が友好的に話しかけると、さやかちゃんと仁美ちゃんは顔を見合わせて怪訝そうな顔をしていた。なんか警戒されてる?

 

「あ、あのあたしたちその恭介待っているので・・・」

「君たちも?俺も人待ってるんだよね。待っている間、話とかしない?」

「話って・・・話すことなんか・・・」

「君たち転校生だろ?俺が色々教えてあげるからさ」

「間に合っているんで結構です」

「そんなこと言わずにさぁ」

 

すると突然後ろからぐいっと引っ張られる感覚がしたので振り返ってみると、巴が俺のカバンのヒモを引っ張っていた。

 

「もう、探したわよ前原君。補習すっぽかしちゃダメじゃない。先生探していたわよ」

「補習?今日そんなのあったか?」

「ほら、教室戻るわよ」

「え?いや、待てよ・・・」

 

視線を前に戻すとさやかちゃんと仁美ちゃんは既におらず、バシャバシャと音を立てて逃げていくのがわかった。

 

「あー!おい、巴。なにすんだよ」

「それはこっちのセリフ!美樹さんたち迷惑そうにしてたわよ。気が付かなかった?」

「ちょっと待ち時間にお喋りしようとしただけだろ」

「ちょっとだけって言うけどねぇ・・・」

 

 

ぶつくさ文句を言ってる巴を無視して、ふと玄関の下駄箱あたりを見ると、果穂が出てくるのがわかったので迎えにいくことにした。

 

「そんじゃ巴、また明日なー!」

「あ、前原君まだ話が・・・」

「おまたせ前原くーん」

「お疲れー果穂、じゃあいくか!」

 

果穂が俺の腕に抱き着いてきたので彼女が濡れないように相合傘をして学校を後にした。

 

『もう、どうなっても知りませんからね!』

 

テレパシー飛ばされて忠告されたけど無視無視!果穂と一つ傘の下、たわいもない世間話をする。クラスも居心地がいいし、友達と仲いいし、こうして彼女と下校できるし、女の子と遊べるし、俺は今充実してる。これ以上奇跡を望むってのもなぁ。気がかりと言えば磯貝達の無事なんだけどさ・・・

 

「みずたまりあるよ。避けよ」

「あ、ありがと~前原君って紳士だね」

「これぐらい大したことないって」

 

うん、やっぱ俺幸せだわ。

 

「あれぇ?果穂じゃん。何してんだよ」

 

ふいに俺らに声をかけるものがいた。振り向くとそこにいたのは・・・確かA組の瀬尾だったか?俺らに何の用で?ていうか・・・果穂?

 

「あっ!せ、瀬尾君!」

 

果穂は俺を突き飛ばして瀬尾に親し気に駆け寄った。

 

「生徒会の居残りじゃ・・・」

「あー、意外と早く終わってさ・・・ん?そいつ確か・・・」

 

瀬尾が俺の方に目を向けると果穂は「前原君とは関係ありません」とかいうように俺には目もくれずに瀬尾にすり寄った。自分は悪くない、近づいたのは俺の方だとか言い訳を並べている。うん、これって・・・

 

「あー、そゆことね」

 

俺、浮気されてたな。

 

「最近電話しても出なかったのも、急にチャリ通学から電車通学に変えたのも。で、新カレが忙しいから俺もキープしておこうと?」

 

二股が発覚したので瀬尾は果穂を睨みつけた。果穂は罪悪感からかぼそぼそ言い訳を述べている。

けど、急に果穂の表情はオドオドした顔から一瞬邪悪な顔を経由して真っ直ぐにキリッとした俺を貫くような目に変わった。

 

「あのね、自分が悪いってわかってるの?努力不足で遠いE組に飛ばされた前原君」

 

果穂がそんな話を急に言い出した。え・・・そりゃそうだけどさ・・・今、関係あるか?それ。

 

「それにE組の生徒は椚ヶ丘高校進めないし、遅かれ早かれ私たち接点なくなるじゃん。E組落ちてショックかなって思ってさ気遣ってハッキリ別れは言わなかったけど、言わずとも気づいて欲しかったなァー」

 

果穂の口から出てくるのは言い訳にもならない逆切れと責任転嫁の嵐だった。

 

「けどE組の頭じゃわかんないか」

「はははは」

 

果穂は俺を嘲り笑うように瀬尾に抱き着いた。瀬尾もなんだか勝ち誇った顔をしている。

俺には浮気に関して文句を言える立場とかにはないかもしれない。だけど、自分の浮気を他の人のせいにするのはおかしくないか?

 

「・・・おまえなぁ、自分のこと棚に上げて」

 

果穂に対して文句を言いかけたとき、瀬尾に蹴り飛ばされた。俺は水浸しの地面にしりもちをついてしまった。傘も手から離れてしまい土砂降りの雨が俺に直接降りかかってくる。

 

「わっかんないかなぁ。同じ高校に行かないってことはさ、俺達おまえに何したって後腐れないんだぜ」

 

瀬尾がそういって一蹴り入れてくる。ひでー事されているのに頭が追っつかない。周りにいた奴も瀬尾に乗じて蹴りを入れてくる。反撃したいのに体がなぜか強張って出来ない。

 

「やめなさい」

 

どこか、畏怖を感じる声がその場を一瞬で支配した。すぐ近くの道に黒い高級車が停まり、そこから出てきたのは理事長だった。

 

「ダメだよ暴力は。人の心を・・・今日の空模様のように荒ませる」

 

瀬尾たちは流石に理事長には逆らえないのか、俺に対する暴力を止め、震えながら道を開けた。

 

「これで拭きなさい。酷い事になる前で良かった」

 

理事長は俺の近くに来てハンカチを渡してくれた。地面が濡れているのに膝をついて。

 

「危うくこの学校にいられなくなる所だったね、君が」

 

慈悲を含みつつ圧をかけてくるその瞳、俺は抗議も助けの声もあげずにハンカチを受け取る他なかった。

 

「じゃあ皆さん。足元に気を付けてさようなら」

 

理事長はそう言うと、さっきまでの事がなかったかのようにさわやかな笑顔で車に戻り去って行った。

 

「人として立派だなぁ理事長先生」

「あの人に免じて見逃してやるよ間男。感謝しろよ」

 

一方的に蹴ってきたのはそっちのくせに、自分だって果穂の被害者のくせに、勝気な顔で瀬尾は俺にそういってきた。

 

「嫉妬してつっかかって来るなんて・・・そんな心が醜いとは思わなかった。二度と視線を合わせないでね」

 

ゴミを見るかのように果穂は俺を見下し、何もなかったように瀬尾たちと仲良さそうにその場をあとにしていった。

 

「前原!ヘーキか!」

 

すぐさま杉野達が駆けつけて俺に傘をさしてくれた。というか見てたろお前ら。

 

「上手いよなあの理事長。事を荒立てず、かといって差別もなくさず、絶妙に生徒を支配してる」

「そんな事よりあの女だろ!とんでもねービッチだな!」

 

杉野が果穂に対して怒りを示してくれた。そのすぐ後、「いやまぁ・・・ビッチならうちのクラスにもいるけど・・・」と、怒りの勢いは削がれていったけど。

 

「違うよ。ビッチ先生は職業(プロ)だから・・・ビッチする意味も場所も知ってるけど、彼女はそんな高尚なビッチじゃない」

 

渚はビッチ先生をフォローすると共に果穂に対する非難も混じえてるのだろう。

 

「・・・いや、ビッチでも別にいーんだよ」「いいの!?」

 

渚は驚いているけど、俺は本心から浮気されたこと自体は問題にしていない。

 

「好きな奴なんて変わるモンだしさ、気持ちが冷めたら振りゃいい。俺だってそうしてる」

「中三でどんだけ達観してんのよ」

 

岡野が呆れながらタオルを手渡してくれた。それを受け取って頭を拭く。

俺自身が浮気性だから相手に浮気されても、浮気がバレて怒らせて別れることになっても誰も恨みもしない。全部自己責任だ。それが色男の吟じっやつだ。

 

「けどよ・・・」

 

それでも納得できなかった。

 

「さっきの彼女見たろ?一瞬だけ罪悪感で言い訳モードに入ったけど、その後すぐに攻撃モードに切り替わった。「そーいやコイツE組だった。だったら何言おうが何しようが私が正義だ」ってさ、後はもう逆切れと正当化のオンパレード。醜いとこ恥ずかし気なく撒き散らして」

 

瀬尾だってそうだ。最初こそ果穂に怒りを示していたくせに俺がE組なのをいいことになんの躊躇いもなく俺に暴力を振るった。浮気されたことをなかったかのように果穂との関係を維持することにした。奪ってやった、と笑って。

 

「・・・なんかさ、悲しいし恐えよ。ヒトってさ皆ああのかな。相手が弱いと見たら・・・俺もああいう事しちゃうのかな」

 

俺の嘆きに皆は何も言わなかった。皆思っているのだろう。E組じゃなかったらE組のみんなにどう接していただろうって・・・。

 

「うわぁ!!殺せんせーふくらんでるふくらんでる!!」

 

渚の慌てる声で顔を上げると、殺せんせーの顔は風船のように膨らんでた。顔色は・・・赤かった。

 

「仕返しです。理不尽な屈辱を受けたのです。力無き者は泣き寝入りする所ですが・・・君たちには力がある。気づかれず証拠も残さず標的(ターゲット)を仕留める暗殺者の力が」

「・・・はは。何企んでんだよ殺せんせー」

「屈辱には屈辱を。彼女たちにとびっきり恥ずかしい目に遭わせましょう」

 

そう不気味に語る殺せんせーの後ろでは渚たちも同じように危険みを感じる笑いをしている。

 

こうして秘密の仕返し作戦が決行されることになったのだった。




FM神浜ラジオ

「ブラウザとスマホの前のみんな!カミハマ~」

「…どうしたんですか急に知らない挨拶?をしたりして」

「いやね、このコーナーって他と比べると始まり方地味だなって思ってアニメ版の挨拶取り入れたってわけ」

「なんとスゴイ!改革ですね!」

「生存戦略ってやつ?」

「このコーナー作者の気まぐれで始まるから生存戦略も何も・・・おたより読みますよ!

 RN きのこの子さん

「作中は梅雨になりましたね!梅雨といえばきのこ!暗殺教室できのこといえば三村君!ということで三村君の魔法少年としての情報をください!ついでに私がデザインした服も紹介してほしいです!」とのことですが・・・」

「このデザイン・・・相変わらず宇宙を感じるよね~。雪村先生は好きなんじゃない?」

「遠回しにディスってる・・・!」

「三村君の衣装はバーテンダーっぽい服って感じかな。武器はマジック道具。細部は特に決まってないよ!」

「服決まってなくても書けちゃうのが小説のいいところですよね」

「願いについてなんだけど・・・彼、ディレクターになりたいって夢持っているんだ。で、自分が作った番組とか映像を見てもらうためにはまず目に留まらせないといけない。そうじゃないとどんなにいい映像でも評価されないって考えたの。で、願ったのが「何かを注目させる力」ってわけ。
この能力簡単に例えるとカゲロウプロジェクトのモモって子の能力に近い感じよ。違うのは自分を注目から反らせられることかな」

「へー、なりたい職業のための魔法なんですね。素敵だなぁ」

「ついでに魔女退治にも暗殺にも使えるんじゃないかって算段も入ってるの。こっそり殺せんせーに試したんだけど・・・意外と警戒心強くて他に注目させても効果なかったみたい」

「ダメじゃん!」

「てな感じで今日はこの辺で」

「またお会いしましょう!」

「まったね~」
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