巴マミは暗殺者   作:百乃綾香

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29時間目 心配の時間

「マホウ・・・ショウジョ・・・」

 

眉間に皺をよせて、聞き慣れず言い慣れない言葉を烏間先生は口にした。信じられない現象に痛むだろう頭を抱え、険しい顔をする烏間先生を前に私たちは何も言えなかった。

 

昨日の前原君の仕返し作戦の最中、標的の二人が魔女の結界に巻き込まれたと全体ラインが入った。そのラインが殺せんせーに見られてしまい、現場を外側からだけど見られてしまった、ということらしい。ちなみに魔法少女の諸々の事は早とちりした奥田さんが白状したとのことだ。

 

で、翌日になり、先生たちからの聞き取りでクラス全員が知っていたと判明し今に至る。

 

「ハァ・・・」

 

眉間を摘み、深いため息を吐く烏間先生。

信じられないような目で私たちを見るビッチ先生。

汗をダラダラと流し何も言わない殺せんせー。

そして黙っているしかない私たち・・・

教室の空気が重い。

 

本当に面倒なことになりやがって・・・

とでも言いたげな寺坂君の視線が痛い。

 

「固くなるな。今回、この件(・・・)では俺は怒ってなどいない」

 

烏間先生はその場を収めるような事を言っているが心の持ちようが悪い。

 

「えっと・・・まとまると、アンタたちは私たちに内緒で魔法少女・・・女?として魔女と戦っていたってこと?」

「はい・・・」

「で、アンタたちは魔法が使えて、力はキューベーとかいうやつと契約して得たもの?」

「はい・・・」

 

話をまとめてくれたビッチ先生はそのまま遠い目をした。

 

「要は秘密裏に危険な行為を常時行っていたということか・・・」

 

また深いため息を吐く烏間先生の肩を殺せんせーが突いた。

 

「烏間先生、さすがにこれは…」

「ああ、そうだな。問題だな。とてもじゃないが感心出来たことではない」

 

目を鋭くさせて言う烏間先生を前に身が固くなってしまう。他のみんなも不安そうな顔であちこちを見ている。

 

私の責任だ。こんなにも仲間ができるだんて思わなくて・・・

磯貝君の祈りのおかげでもあるけど大勢が争わずにすむ環境になって・・・

長年の夢見てた仲間といっしょに魔女(あく)を挫く。

そんな現状に浮かれていたのは否定しない。でも、それが終わってしまうのかもしれない・・・。

 

『あたしは風見野に戻るよ。今までに世話になったね』

 

チームが解散してほしくなくて・・・先生たちに黙り続けていた。でもそれがバレてしまった。

 

「あの君た「申し訳ありません!」

 

殺せんせーが何かを言おうとしたところを遮ってかぶるように謝罪した。

 

「私が・・・私がみんなを魔法少女に誘いました。黙っておくようにいったのも私です。危険なのも承知で私が契約を勧めました。全て私の責任です・・・」

「巴さん・・・」

「でも、魔女を放っておくと人々に悪い影響を及ぼすのは言った通りです。それを放置することは例え先生方に言われてもできません。どうか・・・お許しを・・・」

 

自分でも言ってることが滅茶苦茶だと思っている。それでも、今の私の現状を失いたくなかった。私の勝手な我が儘だ。

 

「いやぁ・・・流石に「別に俺は魔女狩りを止めろとはいうつもりはないぞ」

 

烏間先生の言葉に私は思わず顔を上げてしまった。

 

「ええっ、ちょっ、烏間先生!?正気ですか!!??そんな危険なこと・・・」

「俺だってそう易々と認めるつもりはない。それに君たちに万が一の事があるとなるとこちらも放置することはできん。だがな・・・」

 

というと烏間先生は殺せんせーのネクタイを掴み

 

奇跡も魔法もあるっていうんだったら、それを使ってでも貴様を殺さなくてはならんのでなぁ

烏間先生・・・落ち着いて、怖い、怖いです・・・

 

怒りのオーラ全開で殺せんせーを睨みつける烏間先生。殺せんせーはそんな烏間先生にタジタジになっていた。

 

「と、まあそういうことだ。君たちの活動を認めよう」

「ほ、本当ですか!!?「ただし!」

 

烏間先生の言葉は続けた。

 

「魔女退治は必ず複数人で行う事。一人で魔女退治にでもいって死なれたら困るのでな。

それと、契約するしないは君たちの自由だ。君たちの選択だからな。ただ、責任は持て。

強くは止めはしないが契約したことは報告するように。

それともう一つ、そのグリーフシードとやらはこちらで管理する。話によれば衝突の原因にもなりかねないものらしいな。クラス分裂を避けるためにもこのような処置を取らせてもらう。

以上のことが守れないのであれば魔法少女活動は禁止とさせてもらう。いいか?」

 

みんなはお互いに顔を見合わせた。

思わぬ回答に戸惑いつつも一先ずは認めてくれたと判断し、

「ハイ!」と返事をした。

 

「・・・仕方ありませんね。正直、先生としては君たちを死地に行くのを黙っておくわけにはいきませんが・・・ここは烏間先生のメンツと今までの無事を考慮して認めましょう」

 

殺せんせーは少し困った顔をしていたけど、続けていいと許可をしてくれた。

 

「あ、ありがとうございます!」

「必ず、必ず生きて帰り、死人を出さない事。約束してくれますね?」

「ハイ。みんなは死なせたりしません」

 

私がそう答えると殺せんせーは大きく頷いた。

 

「時に巴さん」

「ハイ。なんでしょうか?」

「そのキュゥべえとやらは・・・信用できるものですか?」

「はい、モチロン!私の長い友達です。たまに変なこと言ってたりするけど」

 

私がそう答えた瞬間、殺せんせーの表情が強張った。後ろを振り向くとなにやら烏間先生となにかを話している様子だった。

 

「・・・あの、殺せんせー?」

「あ、いえいえ。しかし先生からこれだけは言わせてください」

 

 

 

「キュゥべえは信用しすぎないように」

 

 

 

その言葉に私は困惑した。なんで?なんでそんなこというの?

 

「緊急議題はこの位にしよう。体育でのメニュー変更もあるからな。続きはその時にな。ここから本題に移らせてもらう」

「えっ。緊急議題って・・・この話が本題じゃなかったんですか?」

 

三村君がそう聞くと、烏間先生は「ああ」と頷いた。

 

「これから名前を読み上げる。以下のものは特別室に来るように。

磯貝君、岡野さん、奥田さん、茅野さん、倉橋さん、渚君、菅谷君、杉野君、千葉君、速水さん、前原君、矢田さん。

名前を呼ばれなかったものは教室で自習してなさい。おい、貴様もだぞ首謀者が

 

殺せんせーは体をビクっとはねらせ、烏間先生の方をみた。私の席からはよく見えないけど烏間先生の顔は・・・ド怒りなきがする。

観念したのか殺せんせーはおずおずと教室をでていき、扉が静かに閉まった。

 

「ま、自習ってことで私が特別授業を「いらないでーす」「なんでよ!」

 

莉桜さんに弄られて怒るビッチ先生をよそにカルマ君は私に話しかけて来た。

 

「ね。俺の言った通りでしょ?」

「そうね。でも、殺せんせーはあまりいい顔しなかったわ」

「そりゃ危ない事してるからねぇ。万が一ってことがあったら気が気でないだろうし」

「そんなこと言ったってカルマ君も基本はソロでしょ?烏間先生が言ってたように今日からは私たちと一緒に来てよね」

「オッケーまかせて」

「すでに大人数じゃねぇか」

 

脇で聞いてた寺坂君が嫌味たらしく言ってきた。

 

「これ以上増やしてもしょうがねーだろ。UMAもいんのにファンタジックなやつらがまで増えてやがって」

「寺坂がフリフリな衣装着てもねぇ」

「なに想像していやがる気持ち悪ぃ!」

 

ああ、また始まった・・・。この二人隙あらば喧嘩するのよね。勘弁してほしいわ。席替え要望しようかしら。

 

「・・・なぁ巴。そんだけ人いたらよぉ、人手足りてる感じなのか?」

 

恐る恐ると村松君が私にそんな質問を投げかけた。

 

「村松・・・お前・・・」

「聞いてみただけだろ!」

 

2人が言い争っているのをよそに私は質問に答えてあげることにした。

 

「そうね・・・。足りてるちゃあ足りてるけど、それでも魔女の数は体感増えている気がするわ。

それに暁美さんや正体不明の魔法少女のこともある。

今の状況なら戦力が多いにこしたことないわ」

「ほーん。大変だな」

 

ギャアギャアしたのが治まったのか、ビッチ先生がこんなことを聞いてきた。

 

「そういえばなんだけど、誰かそのキューベーに「あのタコを殺してくれ」とか願おうとか思わなかったの?」

「それやったらこのシリーズ終わっちゃうでしょうがぁ!!!」

「不破さん?」

「それにタコの抹殺願ったとしてもそのあともバケモン退治はしなくちゃいけねぇとかだろ。バカバカしい」

 

そんな意見を聞いたビッチ先生の顔は安堵と言ったものだった。

 

「そう、よかったわ。アンタたちが意外と冷静で」

「どういうことですか?」

「奇跡だなんてタダじゃないってことよ」

 

そういうビッチ先生の目は真剣そのものだ。

 

「奇跡なんてそうそうあるわけじゃないの。最善に最善をつくしてそうやっていくうちにたまーに転がっていくもの。簡単に手に入るだなんて売り歩く奴の言う事なんて聞くもんじゃないわよ」

 

私は後ろにいるキュゥべえに目をやった。キュゥべえは何も言わなかった。

 

「あのタコだって同じ意見だろうし、カラスマだって暗殺のことがなかったら全面的に禁止しているわ。そのことは自覚しなさい」

「ハイ・・・」

 

私はビッチ先生の言葉が染み入って感じた。契約に関して忠告は続けて来た。戦闘のサポートもしてみんなを死なせないようにしてきた。

それと同時に仲間が増えていくことに心を躍らせていた。

みんなを巻き込んでいるという罪悪感に蓋をしながら。

 

「戦い続けるってそんな甘いものじゃないの。その覚悟がないならそのソウルジェムとやらは捨てなさい」

 

ビッチ先生からの厳しい言葉。ソウルジェムを捨てる?そんなことできるわけ・・・。

 

「お言葉ですが、今はこの力を捨てる訳にはいかないんです」

「・・・どうして?」

「他の魔法少女に襲われる可能性があるからです」

 

片岡さんの告白にビッチ先生はギョッとした。

 

「なんでそれを今言うのよ!」

「伝えるタイミングがなくて・・・烏間先生のお説教が終わり次第2人の先生にもお伝えします」

 

ビッチ先生は苦い顔をして

 

「・・・まあ、身を守る手段っていうならムリには言わないわよ。てか思ったよりめんどくさいわね」

 

と言ってると、ガヤガヤと声がして仕返し班が戻ってきた。

 

「あ、カラスマ。他に伝えておく話があるって」

「先程聞いた。推定ではあるが、先の窃盗犯の魔法少女の話もな」

「そっち聞いてない!」

 

なぜかビッチ先生が怒っていると少しへこんでる殺せんせーが入ってきた。

 

「なんとまぁ色々とあるんですね・・・。律さん」

「ハイ、なんでしょうか?」

「暁美ほむらについて調べていただけますでしょうか?出来れば現在の居場所まで」

「了解しました!いい結果が出せるよう頑張りますね!」

 

体育の時間

 

「うっ・・・みんなにこの恰好見せるの慣れたかと思ったけど学校で着るんじゃ羞恥心が違うっ」

「なんか学校って公共の場って感じだもんね」

 

体育の時間、魔法少女の力を確かめたいということで変身をして校庭にいるという状況だ。すごくシュールではある。

 

「では、始めますね・・・」

 

こんなところで放ったことないから・・・流石になんだか恥ずかしい。恥ずかしいから殺せんせーに標準をあわせた。

 

「え、ちょ、なんで先生!!?」

「ティロ・・・フィナーレ!!!」

 

私の放った魔法の弾丸はあっさりと殺せんせーにかわされ、やや細めの木に当たり、ボキと折れてしまった。

 

「ふむ・・・発射までにタイムラグがありすぎるな。奴の暗殺には扱いずらいだろう。それに撃ってから硬直しているのが気になる。技を撃ったあとでも警戒を怠るんじゃない」

『初見でツッコミもせず冷静に分析していやがる』

『もうなんでも受け入れそうな感じだね・・・』

「それと暗殺に使うのであればその・・・技名を叫ぶのを止めろ。標的(ターゲット)にバレバレだぞ。魔女相手にはいいだろうが、奴は言葉を理解してるんだぞ」

『『『ずっとうっすら思っていたことを言った!』』』

『・・・流石にさっきのはパフォーマンスよ。殺せんせー相手には叫ばないって』

 

割と失礼なやり取りをしていることを知っているのか知らないのか、烏間先生が質問をしてきた。

 

「で、普段はどんな訓練をしているんだ」

「ああ、えっと・・・」

 

私は普段使ってるドラム缶を運んだ。

 

「ほぉ・・・ドラム缶相手に訓練か」

「はい。固いですし、丁度いいかと」

「ふむ・・・」

 

烏間先生はドラム缶を撫でると拳を引き、真っ直ぐに突きをした。パギョンと音がして拳が引かれ、見てみるとドラム缶には穴が一つ開けられていた。

 

『開けおった・・・』

『拳一つでドラム缶に穴を開けおった・・・!』

 

烏間先生の拳は若干赤くなってるくらいで傷は全く負ってなかった。

 

「魔女がどのくらい強いかは知らないが・・・このくらいはやって貰わないとな」

「は、はぁ・・・」

『巴も苦笑いじゃねーか』

『あの人に魔女退治してもらった方が早くねーか?』

 

強いなぁ烏間先生・・・堂々と指導してもらう方がいいのかもしれないわね、これ。

 

「でだ。出来てはいるか?」

「はい、モチロン」

 

殺せんせーが持って来たのは手作りと思われる木製の武器だった。何人かを除いてのみんなの武器と同じ型の。

 

「個別でその武器の訓練を組み込もうかと思う。その際これを使ってくれ」

「「「て・・・手厚い・・・!」」」

 

禍を転じて福と為すというべきか。魔法少女の事がバレたことで逆に超人先生たちの手厚いサポートが受けられるようになるだんて。

この暗殺教室は何があってもただじゃ起きないどころか、どんなトラブルも授業にしてしまう。本当に変わった教室ね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「烏間先生、イリーナ先生。ちょっとよろしいですか?」

「なんだ」「どうしたのよ」

「あの、魔法少女の件ですが・・・、あのことはお二人が本当に心から信頼し、確実に外部に漏らさない、と断言できる人にだけお伝えください」

「・・・そのこころは?」

「あの力が世間にバレた場合、彼らに暗い未来を歩ませることになるからです」

「キューベーのことはいいの?」

「奴も私には見えない上に信用ならない。なにか裏があるとしか思えない。

が、それはそれとして私が怖いのは生徒たちの力が世間にバレることです。もし、知られでもしたら迫害を受けるか上の悪い人間に利用されるか・・・どちらにせよいい結果は起きません。

そうならないためにも私たちが彼らを守る必要があります。

キュゥべえからも、世間からも」

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