マミさんのパーソナルなところの解決はまだ少しかかります。
昼休みの裏山にて、殺せんせーがワッフルを片手にくつろいでいた。
「本場ベルギーのワッフルも捨てがたいですが・・・先生はこの日本のふわふわのワッフルの方も好みですねぇ。神戸の行列に並んだかいがありました。この上品な甘さがいいですねぇ」
そこに潜む影がいつくかあった。
『いい?打ち合わせ通りに』
『『『了解』』』
矢田さんに前原君が回避魔法をかけ、彼女が先生にひっそりと近づいていく。斧を手に持って殺せんせーの背後目掛けて振り下ろした。
「矢田さん。随分と隠密行動がうまくなりましたね。ですが・・・」
回避して矢田さんに指導しようとしているところに木村君の両手銃による弾丸が一気に向けられる。当たれば動けなくなる洗脳魔法を込めた弾丸を撃ちまくるけど、殺せんせーは余裕でかわしていく。
「木村君、狙いがだいぶ定まってきましたが、先生を殺すにはまだまだですねぇ」
避け続ける殺せんせーにいくつものナイフが飛んでくる。
「魔法のナイフに交えて対先生ナイフでの攻撃。よく考えられてますが持ち替える所を見られては意味がありませんよ?」
その頭上から対先生用に作ってもらったかぎ爪を装備した岡野さんが襲い掛かった。
「はああああ!!!」
殺せんせーはあっさりとうしろにかわし、透明な壁にぶつかった。ガン!と鈍い音がして一瞬の隙が出来た。
『巴!今だ!』
先生がひるんだ瞬間を逃さず準備していたティロ・フィナーレを静かに撃ちはなった。すかさず対先生弾を構えた瞬間、私は頭上に気配を感じ、そこに目を向けると、
ヌメヌメの触手が私の首と脇回りに巻き付いて体を持ち上げられてしまった。
「キャアアアアア!!!」
「巴!」
私を持ち上げた触手の正体、殺せんせーが顔だけを出してニヤニヤと笑ってこう言った。
「攻撃に攻撃を重ね、指定の場所へ誘導してのとどめ。岡野さんのとっさの魔法に先生うっかりやられちゃいました。
なにより、作戦おみごとです巴さん。月に一度の脱皮もイトナ君との対戦で使ってしまってるのを知った上での作戦でしょうが・・・残念ながらエスケープの方法は脱皮ひとつではありません」
どうにか解放されようとしているけど手首も触手で動けなくされて何にもできない。そんな中殺せんせーは話を続ける。
「体中を粘液でまとい、服を身代わりにすれば脱皮のような脱出も可能です」
その言葉に先ほどまで先生がいたところを見てみると粘液まみれになった先生愛用のアカデミックドレスが残されていた。
「残念でしたねぇ。心の中でカッコよく叫んでたでしょう?「ティロ・フィナーレ」って」
体を降ろされながら殺せんせーに緑のしましまの顔色で煽られて、私は恥ずかしいやらムカつくやらで顔が赤くなってしまった。それにみんなにも申し訳ない。かなり自信をもった作戦だっただけに、少しだけ情けなく感じていた。
他のみんなもくやしそうな顔してたけど、岡野さんの目線は殺せんせーの服へと向けられていた。
「ここに服があるってことは・・・今、殺せんせーって裸?」
岡野さんのつぶやきに誰もがハッとして服を回収しようとしたけれど、殺せんせーの方が早くてマッハでとられてしまった。
「ふぅ、危ない危ない。一張羅を放置するとは・・・危うくR-18になるところでした」
「普段あんだけコスプレしまくってんのにそれ一張羅かよ」
「殺せんせーの裸ではR-18にはならないでしょ」
そんなよくわからないやりとりはありつつも肩を落として教室に戻ろうとしたとき、殺せんせーに呼び止められた。
「巴さん。一言よろしいですか?」
「ハイ、なんでしょうか?」
「先生と君は似た物同士です。予想外の動きや急激な環境の変化に弱い。そうでしょう?」
殺せんせーと似ているかはともかく、己の弱点をまじまじと指摘されて、私は返す言葉がなかった。
「うっ・・・、はい」
「加えて君はカッコつけたがりで調子に乗りやすいとみました。自分がクラスメイトをひっぱってる、そう思ってません?」
「そんな思い上がったことは・・・思ってないですけど、みんなを死なせないように気を配っておかないと・・・」
なぜか言い訳がましいことを言ってると殺せんせーは優しい顔で首を振った。
「別に先生は牽引することが悪いとは言ってません。ですが、もう少しだけでもいいので皆さんに甘えてみてはいかがですか?君が完全に面倒を見切らないといけないほど弱くはないでしょう?」
「それは・・・そうですけど」
「君の責任感は大変立派です。人の育て方も身に着けている。あの佐倉さんの戦闘も君が教えてたのでしょう?よく育っています。ですが、君に必要なのは自分自身が甘えることです。
この教室で正しい甘え方を学びましょう。これは巴さんに送る期限無制限の宿題です」
そういって殺せんせーは教室へと戻って行った。
正しい甘え方?・・・どういうこと?頭に疑問を持ちながら私は教室へ戻って行った。
5時間目の授業中、殺せんせーに言われたことを思い出してぐるぐると思いめぐらせていた。
甘え方って・・・前よりは余裕をもってるつもりなんだけどな。魔女退治だって全面的に任せて休息日とかもできているんだけど。
これ以上休めって先生はいいたいわけではないしょうに・・・どういうことなんだろう。
「じゃあ・・・マミ。さっきの返事をアンタなりに返して見なさい」
急にビッチ先生に指名されて私は我に返った。しまった授業聞いてなかった・・・。
「え?えっと・・・」
「はい、時間切れ。アンタが話聞いてないんて珍しいわね。おしおき特別コースよ」
舌なめずりをしながらビッチ先生がこちらに近づいてくる。やっちゃったなぁ。正解してもディープキスなんだけど。
ビッチ先生は私の肩を掴んで逃げられないように固定した。未だに恥ずかしくて顔を背けたけれど、背けた先にビッチ先生の唇がくっつき振動が伝わってくる。舌を入れられたくなくて唇をキュっと結ぶけど、ほんの少し開いた隙間にビッチ先生の舌先が入り込んで歯茎をなぞって体が震えてしまう。このままビッチ先生のされるがままになるのはご免なので口内にまでやってきたビッチ先生の舌を迎え撃って絡みついた。舌をうちながらビッチ先生の舌を刺激してるけど、先生の方が上手でだんだん押し負けるように私の方が刺激されてしまった。
満足したのか最後に一押しをして私の唇から離れてにやりといじわるそうに笑った。
「8hit。アンタの負けん気の強い攻めっ気大好きだけど片意地張りすぎなのよ。別にとって食おうってわけじゃないんだから、もう少し身をゆだねることを覚えなさい」
ビッチ先生はそういって満足そうに黒板の前に戻って行った。
英会話のスキルはともかく、このディープキスは本当に慣れないし、勘弁してほしい。
でも、殺せんせーと似たようなことを言われてしまった。私って片意地張りすぎなのかな・・・。
授業後のHRの時間になって殺せんせーがお知らせをしていた。
「さて、今日は予告していた通り模試直前ヌルヌル強化学習です。希望者はこの教室に残って下さい。先生が個別プリントを配りますので」
その先生のお知らせでHRは終わり、それぞれが帰ろうとしたり残ったりと過ごしていた。
今日は強化学習に出る人が多めだし、稼働人数少な目だから気を引き締めないと。
廊下をでると奥田さんに声をかけられた。
「すみません巴さん。薬品の調合を進めたいので今日の魔女退治お休みしてもよろしいですか?」
「大丈夫よ奥田さん。薬品は急いでつくるものでもないし。ちなみに何を作ろうとしているの?」
「はい!魔女退治用の硫化水素とカルマ君に頼まれた臭化化合物です!」
純粋そうな目で危険な薬物の名前を語る奥田さん。彼女の科学力は魔女退治においても頼りにはなるけど、ちょっとマッドサイエンティスト入ってるのが心配なのよね。うーん、いいのかしら。
「というかカルマ君に頼まれたの?臭化化合物を?」
「はい、悪い事には使わないと」
奥田さんは基本的に疑ったりしたりすることはしない。だから使用用途が明らかに危険そうなカルマ君の頼みも素直に引き受けちゃうんだろうなぁ。カルマ君が奥田さんになんとなくなついている理由がわかるわ。
「あと、殺せんせーに醸造を禁止されているのですが、作ってみたい薬物があるんですよね」
「何を作ってみたいの?魔女退治に有効そうなら私から殺せんせー説得するけど」
「あの、メチルフルオロホスフィン酸イソプロピルという、一般的にはサリンと呼ばれる有機リン化合物です!」
お菓子を作りたいといったノリでかなり危険な毒物を作りたいと語る彼女の言葉を聞いて私はすこし頭が痛くなったようなきがした。
確かに奥田さんのテレポートと合わせて毒物を魔女に投げつけるって戦法は最近やっているとはいえ、ねぇ・・・。大事件にもなった毒物をそうそう殺せんせーが許可するとは思えない。
殺せんせーも大変よね・・・。
「それかVXもつくってみたいのですが、殺せんせーから使用した場合私たちやクラスの皆さんに危険が及ぶので止められいるんです」
「魔法少女も人間だから毒ガス吸っちゃう危険性あるしね・・・。できるだけ話すだけ話してみるわ・・・」
ありがとうございます。とお礼をいうと奥田さんはなんだか楽しそうに笑っていた。
「どうしたの?毒物作れるのが嬉しいの?」
「いえ、違うんです。こうしてみんなに頼られているのが凄く嬉しいんです、私。
前は気の利いた返答とかできなくてつまらないとか言われて友達がいなかったんです。でも、このE組に来て、私の好きを受け入れて貰えて、友達もできて・・・
私、
そう笑う奥田さんを見て、私はこの椚ヶ丘に来てからのことを思い出した。
両親を亡くし、慣れない椚ヶ丘にやってきた。
学校も近所の人も誰も知ってる人はいなかった。知らない人ばかりで心細い想いをしながらキュゥべえに言われるがままに魔女退治の日々。ある日の魔女退治で魔女に取り込まれた子供を私は助けられなかった。
私はその体験から戦い方を見直してリボンからマスケット銃を作る魔法を独学で見つけて、毎日魔女退治をして誰も犠牲にしないように立ち回っていた。
そんな日々で誰とも友達を作らず一人で過ごして、魔法少女同士では対立することも多くて・・・、それでも頑張って毎日椚ヶ丘を守った結果、言い渡されたのはE組行き。まわりのクラスメイトは私をE組行きっていうだけで嘲笑った。
けど、殺せんせーが来てからはガラリと変わった。
今のクラスがあるから私は頑張れている。このクラスを壊したくなくて頑張っているんだけど。
甘え方を学ぶ?・・・甘えてもいいのかな?私が。
「どうかしましたか?」
「ううん。なんでもないわ」
奥田さんは隣の特別室に入って行き、私は玄関へと向かった。甘えるということに悩みながら。
色々と悩みながら校舎を出ようとすると村松君とばったり会った。
「あら、村松君どうしたの?」
「巴。あ、いや、別に・・・教室に忘れモン取りに来ただけで・・・なんというか、その」
「今、強化学習中のはずだから行くならさっさといったほうがいいわよ」
「あ、ああ。タコがそんなこと言ってたような、気がするな」
と、なぜかしどろもどろで答えていてなんだか怪しい。
「・・・なんでそんなおどおどしているの?」
「別にヌルヌルが気になるとかそんなんじゃねーから。おら、さっさと帰れよ!」
とごちゃごちゃ言いながらすれ違いに
「寺坂にいうんじゃねーぞ」
と言って校舎へと入って行った。
「・・・受けたいなら素直にそう言えばいいのに」
普段悪ぶっているからああいう真面目なもの出るのが恥ずかしいのかしら?
・・・佐倉さんも本当は素直になれなくてああいう態度に出ているのかもしれない。自分の願いで家族を亡くして誰かに甘えられる状態じゃないのだからああいったことを。だから許されるとは思えないけど。
・・・甘える、ね。
そういえば私も両親を亡くしてから甘えた態度をとるわけにはいかないと気をはっていた気がする。そのことを殺せんせーは指摘したんだろうな。もっとみんなを頼れって。でも、正しい甘え方ってなんだろう。
いつもの駅前で集合を待っている間、私はなんとなく渚君に今回のことを話してみることにした。
「え?甘え方を学べ?」
「ええ。でも何をしたらいいかわからなくて・・・いつも殺せんせーを観察している渚君ならわかるかなって」
渚君はちょっとこまったように考えると、
「僕も正しい甘え方とか分からないから大したことは言えないけど・・・巴さんって先生みたいだなって思うんだよね」
「先生って・・・私同い年よ?」
「先生というか、後方から指導してる感じかな?磯貝君は周りを鼓舞する感じで、片岡さんは先導する感じだけど、その二人とはまた違ったものを感じるんだよね」
自覚してないからか、私は返事に困ってしまった。
「巴さんってみんなが危険な目にあわないようにしつつも特訓は厳しくしてるよね。この間なんか杉野に対してティロ・フィナーレ撃ってたでしょ?」
「杉野君の固有魔法の反射を有効活用しようとしてよ。決して杉野君に危害加えようとかじゃないからね」
「わかってるよ。でも、特訓で無茶ぶりするところとか殺せんせーに似てるなって」
「魔女との戦闘は命がけよ。無茶ぶりぐらいするわ。甘えたことなんて言えないわよ」
でも、似ている・・・殺せんせーにも言われたな。似た物同士って。
「多分、大人って甘えることがなかなか出来ないけど、巴さんはまだ中学生なんだからもっと甘えとけっていいたいんじゃないかな?」
「・・・その甘え方がわからないのよ」
「僕もどうしたらいいかわからないし・・・ゆっくり考えてみれば?期限ないんでしょ?」
「そうね。卒業までに答えが見つかればいいかもね」
殺せんせーに出された私だけの課題。自分の答えが出るといいな。