まどか先輩による今までのあらすじ
私を救うためループを重ねるほむらちゃん
たどり着いたループ先ではなんと!マミさんが見滝原にいなかった!ほむらちゃんはマミさん抜きで見滝原の一か月を過ごし、そして失敗してまた別のループへと旅立っていった・・・
一方その頃!マミさんは椚ヶ丘で暗殺をしていた!
アサシンマミさんかっこいー!
椚ヶ丘中学での差別や魔女たちをクラスの仲間たちを手を取りながら戦う日々!
そんな中、クラスメイトの渚君が暗殺者としての才能をフル発揮して暴力教師に打ち勝ったのだった!
そして魔法少女の運命が一歩一歩近づいていく中、マミさんは、E組のみんなはどうなってしまうのか!!
ちなみに男子も含めてクラスメイト全員キュゥべえが見えてるんだって。不思議だねー?
絵本に出てくるようなフワフワキラキラした世界。それが母親が求める世界。
私はそれが苦手だった。
フリフリの服を無理やり着せられ、抵抗すると喚いて無理やりにでもいう事を聞かそうとする。そんな環境で私は幼いながらに捻くれていった。まわりが明るくキャッキャッと過ごす中、私は一人薄暗いところで本を読んで過ごしていた。父親の仕事の影響で本に触れることが多くて、誰とも喋らずに本を読んでいるとざわざわする心を落ち着けることが出来た。
そんな中で魔女の話がとてもはまった。
シンデレラに出てくる希望を与えてくれる方ではない。白雪姫に出てくるような薄気味悪い魔女に私は憧れを抱いた。最後にはやられてしまう話が多いけれど、私にとってはその悪い魔女が希望のようなものだった。
たしか幼稚園の誕生会の時に黒が欲しいと言って幼稚園の先生から変な顔をされたことがあった。黒色ではなく、妥協として紫色の画用紙の王冠を被ったのを覚えている。
小学校になると、その不気味さが原因でいじめも起きた。ミス肝試し日本代表とかいうセンスが妙にあるあだ名もこの時につけられた。わりと気にってはいるけど、やられたことはひどいものだった。復讐心を燃やして呪いやら呪術的な物にも詳しくなっていった。実は何度か軽めなものも試したことがある。効果のほどは・・・言わないでおくわ。
そんなこんなで6年生になる頃には私に近づくものはおらず、一人で気楽に過ごしていた。ただ、担任も私を面倒くさそうにしていたので公立に行きたくなく、私は私立を受験することにした。椚ヶ丘にしたのは書物の充実さだけで選んだ。E組制度のことは正直どうでもよかった。
中学になってもクラスの人で私に近づく人はいなかった。勉強で忙しいというのが大きな要因だろうけど、陰気なオーラを放つ人に近づきたくないという目線も確かにあった。気づかないわけがない。
そんな一人の2年生になったある日の事、ペットのアシュラの待ち受けを見ていると声をかけられた
「それ、タランチュラ?飼ってるの?」
同じクラスだった倉橋にそう尋ねられ、私は少し黙ってしまった。
生き物をこよなく愛する倉橋は犬や猫といった女子が好きそうなものだけでなく、男子でさえ嫌がりそうな虫まで好きだというのだから侮れない。
私は倉橋が苦手だ。別に悪い奴ではない、かなりいい奴なんだけど。
誰にでも臆することなく明るく接せれるその眩しさが私の体質に合わなさすぎる。彼女と喋ると私の中の闇が蒸発して消えてしまいそうな感覚になってしまう。だから彼女に話しかけられても私は最低限の会話しかしなかった。
そんな対応してきたのにこれだ。彼女としては生き物の話がしたいんだろうけど私はあまり彼女と話はしたくなかった。
だから
「アンタに見せる気ないから」
そういって私は倉橋は突き放した。倉橋は残念そうに「気が向いたら見せてね」と言って離れていった。
これでいい。私とあの子とではすむ世界が違う。関わらない方が私にとってもあの子にとってもいいんだ。
それに・・・嫉妬心もどこかにあったと思う。彼女はフワフワの髪にパッチリとした目が絵本のお姫様を思わせる。まさに母親の理想といってもいいだろう。彼女みたいだったら楽だっただろうにな。そんな暗い感情を彼女にひそかに向けていた。
けれど、縁というか運命というか奇妙なことに私と倉橋は共にE組に落ちる事になってしまった。
流石に倉橋もダメージくらったのか彼女に溢れていた陽のオーラは減少していた。山奥の教室ということで虫を触れ合ったら即座に回復してたけど。
そんな子でも集団自殺の一人になったんだから人はわからないものだ。この自殺未遂には私も関わってるし、後でカラクリを知ることになるんだけど。
このクラスに来て劇的な変化があったとするなら、付き合う人間が出来たという事だろう。
きっかけは近くの席に座る寺坂という校内でそこそこ有名な不良に話しかけられたことだ。そこから色々あってつるむようになったわけだけど今回は話を省かせてもらう。
そんなクラスで過ごして4月になり、なぜだか私たちは月破壊犯の暗殺を任されるはめになった。なんでそんな面倒くさいことしなくてはいけないのか、そもそも私はあまりこの世界を守る気も起きなかったのでほぼ静観という形でこの暗殺教室を過ごすことにした。
寺坂たちがバカをやったのはさておいて、私はあの教師が気に入らず距離を取っていた。けれど、行動の一つ一つが面白く、なんとなくたまに揶揄ってやるくらいにはほだされていた。
そんな時に片岡から女子会ラインに入らないかと声をかけられた。
4月に誘われたときは断ったのだけれど、その時は寺坂達と絡むのに少し飽きた時だったから了承した。返信に期待するなと忠告も添えて。
女子と関係を持つようになっていくにつれ寺坂がだんだんとイライラしだして取り巻き二人も寺坂から距離を置くようになり、村松からの発案で寺坂抜きのグループを作成した。ハブるためではなく、寺坂との付き合いを話し合うためだと本人はいっていたが、顔に寺坂に飽き飽きしているのが露わになっていた。
「あんたは何も気を使わなくてもいいわよね」
ペットのアシュラにエサをあげながら私はそう呟いた。被差別クラスで奇妙な状況とはいえ人間関係はあるもので、人との関わりを極力避けて来た私にとってはやはり息苦しいものだった。本校舎のときよりかはマシだけど。
一人は落ち着く。何も気を使わなくてもいい。趣味の真っ黒の黒い部屋が私に安らぎを与えてくれる
もそもそと食事をしているアシュラを眺めていると何か違和感に気が付いた。
「あら、何かしらこの白いの・・・少し穴開いてるし・・・」
じっと見つめているとふと、ある日の授業を思い出した。
「虫の卵には卵のうというおくるみに包まれて産まれます。中に1000個も卵が入っており、君たちの中にはカマキリの卵を持ち帰って気づいたら大量発生みたいなことありましたよね?え?ない?そうですか・・・」
この白いのってまさか・・・アシュラの卵・・・?なんで?
そこに下から絹を引き裂くような甲高い悲鳴が聞こえて来た。慌てて降りてみると母親が発狂しながら棒を振り回していた。
言葉にもならない悲鳴を上げながら暴れ倒す様をみて私は青ざめた。彼女の首筋には奇妙なマーク、魔女の口づけがある。もしかしてアシュラの産卵もこれが原因?冗談はほどほどにしてほしい。
魔女がどこにいるかは知らないけど巴あたりに連絡でもしないと、とラインを開いたところで不気味な視線を感じた。
「き~ら~ら~・・・」
母親が私に視線を向けて棒を振りかざした。
「アンタ、アンタがやったの~ぉ?アンタが放ったのぉ~?」
「違うわよ!流石にこれはっ!」
そう抗議したけれど母親は聞く耳を持たず、私に向かって棒を振り回していく。やばい、殺される・・・!
大慌てで部屋に戻って鍵をかけた。どんどんと扉を叩きつける振動が伝わってくる。冷静を保ちながらラインで巴に連絡を送ると、目の前に、奴がいた。
「やあ、狭間綺羅々」
「キュゥべえ・・・!」
私たちが自殺未遂をした原因は魔女なんだという。それを退治するのが魔法少女、巴がそうなんだとか。そして私たちもその素質があると目の前のやつがそういった。うさん臭さがぬぐえないそいつの言葉にどこか不信感を覚えて極力無視してきたけど、こうして極限状態でくるだなんて・・・。
「まさか、アンタがこれをやったの?」
「そんなわけないよ。それより、大丈夫かい?」
背中の扉はいまだにバン、バン、と強く叩きつける振動を音が伝わってくる。明らかに私に対して強い殺意を感じさせる。
「このままだと、君は危ないよ。それに魔女もご察しの通り近くにいる」
「そういって私と契約させる気?アンタって結構せこい手を使うのね」
「だから僕は何もしてないんだけどなぁ」
「だとしてもよ。そうやって危機に陥ってる奴に手を差し伸べるつもりで契約させてるでしょ。巴にしたって」
「そういってる場合かい?なんとかしないと・・・」
扉越しから聞こえる恨みこもった母親の声。小さいころから可愛げのなかった私に不満を沢山覚えていたのだろうか。魔女に操られてその感情が露わになったと見える。
「殺してやる・・・」
小さいながらに、はっきりと聞こえたその声に背筋に寒気を感じた。
「失敗だった・・・アンタを産んだのは・・・」
その言葉に私はなぜか冷静だった。何時しか母親は私を見るたびにため息を吐くことが多かった。明らかに、「こんな子産むんじゃなかった」と言いたげに。
それでも親としての責務は果たしていたわけだけど、魔女に操られている今、あの人がしようとしていることは・・・。
あの人のやろうとしている事を理解して背中に冷や汗が流れる。暑苦しい時期なのに寒気が止まらない。命の危機ってこういうことなのだろうか。
目の前には白い妖精が何も言わずに見つめている。ドンドンという音は次第にメリという木が千切れる音と混ざるようになった。
何をすればいい?この部屋で何が出来る?・・・ダメだ、頭が回らない。震えるばかりで何も出来ない。こんな時に普段読んでる本の知識も暗殺の訓練も何も役に立たない。
「殺してやる、殺してやる、殺してやる・・・」
なにかないか。あの人を止める物が。ナイフ?銃?あれが効くのはうちの担任だけだ。人間には脅しにもならない。呪術に使う塩?目つぶしなんてきくのだろうか。それにやったことなんて訓練でも一回もない。本を投げつける?興奮した人間にそんなことをやったら逆上されないか?
ダメだ、いい手がおもいつかない。こんなことならもっと真面目に暗殺に取り組むべきだったか?そうすればもっといい案が、
ふと、私の目にアシュラが捕らえられた。
・・・アシュラを危険な目に遭わせたくない。下手したらアシュラが殺されるかもしれない。・・・どうしよう。
「どうしたんだい綺羅々。何を悩んでいるんだい?」
ああ、こいつに頼るのは論外だ。・・・でも、アシュラに何かあった時には・・・
私は飼育箱のふたを開けてアシュラを取り出した。大丈夫、この子には毒はない。なんとか、あの人を止めてくれるだけでも・・・
バキッと音がした方をみると、母親であるはずのひとが鬼のような形相で棒を握り、私を睨みつけていた。
「アシュラ・・・ごめんなさい!」
アシュラを母親に向かって投げようとした、その時だった。
「ダメーーーーーー!!!!!」
可愛らしい叫び声がして私はアシュラを掴んだまま訳も分からずに押し倒されてしまった。
何が起きたの?理解しようと押し倒した人物の顔を見た。
「よかった・・・キララちゃんも、タランチュラの子も無事だった・・・」
涙を私の頬に落としながら、明るい髪色の少女、倉橋がそう笑って言った。
なんでアンタが私の部屋にいるの?というか、母親は?母親はというと目線が私ではなく少し上の方、つまりは倉橋の方を見つめていた。
「・・・・・・・・・」
母親は掲げた棒を降ろして片手を倉橋の顔に触れた。アンティークの人形にでも触れるように。でも、どこかさっきまでの殺気は消えていた。そして少し嬉しそうな顔をして倒れてしまった。
呆然とする私に倉橋はにっこりを笑いかけ、手から逃げたしたアシュラを優しく捕まえて元の飼育箱にもどしてやっていた。
「倉橋・・・なんでアンタがこの部屋にいるのよ。契約もしてないでしょ」
「なんでって・・・ラインで助けてって言ってたじゃない」
「え?」
ライン画面をみてみると慌てて誤字が多いけれど、アシュラが子供を産んだという文が女子会用のラインに乗っていた。
「でも、これじゃ部屋にいた理由が・・・」
倉橋が困った顔で窓を指さしていたのでその方を見ると、黄色い頭の担任がほっとした表情でこちらの様子を伺っているのが分かった。言わなくてもわかる。あの担任が何かしたのだろう。
「・・・来てくれたのね」
「当り前だよ。助けてって言ってるんだから」
「ラインまともに返したことないのに」
「関係ないよ。それより、アシュラちゃんの子供はどこ?」
「えっと・・・下の階にいったみたいだけど・・・」
「わかった。殺せんせー、手伝って!」
そういって倉橋は担任を連れて下の階へと降りて行った。部屋には私と母親が残されている。魔女のせいなのか母親はぐったりとして動かない。こういう状態なのはむしろ助かった。正直、正気に戻ろうともこの母親と会話できる気がしない。ちょっとふてくされていると窓にまた人影が見えた。
「狭間さーん・・・?大丈夫だった?」
巴がひょっこりと顔を出してこちらの様子を伺っていた。
「別に平気よ」
「部屋の扉おもっきり壊されているけど?」
「魔女の呪いでちょっとあったのよ」
「・・・お母さんに何かあった?」
倒れている母親に目線をやる。首筋のマークは消えていてもう魔女の影響はないようだ。でも、あの言葉は彼女の中にあったものだと私は確信して言える。対して驚きも失望もない。わかっていたことだから。
そんなことを思っていると階段を上がって来る音が聞こえてくる。
「キララちゃーん。アシュラちゃんの子供連れて来たよー」
ニコニコで倉橋が戻ってきた。通り抜けたと同時に同行していた担任がマッハで扉を直してくれてたのを見届けると倉橋は袋を掲げた。彼女の手に持つ袋の中には白い小さなクモがワサワサと蠢いていてそれが袋一杯に詰まっている。その袋の中身を見た巴が絹を引き裂くような悲鳴を上げた。
「イヤーーーーーーー!!!!」
「お、落ち着いて下さい巴さん!この子らには毒はありませんので」
「無理、クモは無理なのよぉーー!!!」
「ご、ゴメンね。虫苦手だった?」
「謝りながら近づけないで!!!」
半泣きになっている巴から倉橋は離れて袋の中にいるアシュラの子供を私に見せてくれた。
「どうする?赤ちゃん他に譲るっていうなら伝手あるけど?」
「まかせるわ。そんなにバンバカ飼える環境でもないし、今回のことで親から色々言われるかもだし」
「そっか。まかせて、ちゃんと最後まで飼ってくれそうな人見つけるから」
ニコニコと笑う倉橋に私は一つの疑問を投げかけた。
「なんで私にそんな馴れ馴れしくできるのよ」
倉橋はその疑問に「えー」と当たり前とでもいうかのように感嘆符を入れ、
「だって、仲良くしたいからさ。虫好き仲間としてさ」
そう答えてくれた。
はあ、そんなところか。部屋とは真反対の明るいオーラが彼女から放たれる。やっぱり苦手だ。
「もうアシュラを見て満足したでしょ?その子たち連れて帰りなさい」
「うん、また遊びにきていい?」
今の文脈でなんでそんな回答になるんだ。これだからコミュ強は・・・。まあ、世話にもなったから一度くらいはいいか・・・。
「・・・勝手にしなさい」
「いいの?じゃあまた来週来るね。卵について話したいことあるし」
倉橋はそう笑いかけて担任と共に部屋を去って行った。
「じゃあ私も帰るわね。またね」
「・・・・・・ええ」
巴も帰ろうとしたが、何かが気になるのか、窓の前で立ち止まった。
「狭間さん、ご家族と何かあったら遠慮なくいってね?私がダメでも殺せんせーがいるから」
何か意味ありげな顔を私に向けているけど、何か勘違いしてない?今回の事は魔女の影響だろうし、母親がおかしいのは今に始まったわけじゃないし。
・・・でも、流石に今回は命の危機を感じたし、助けに来てくれたのは心から感謝している。これをいい機会だと契約を迫った妖精もいつの間にかいなくなっていた。
「大丈夫よ。きにしなくていいから。・・・またね」
巴は頷いて窓から去って行った。さて、どうしたものか。母親が起きてきたらどうしようか。と考えているとコツコツと音がして担任がこちらの様子を見に戻ってきていた。
「今日は来客が多すぎじゃないの?」
「それだけ狭間さんが心配ということですよ。君がクラスから大切されてるかわかりましたよね?」
「・・・まあ、確かに助かったけど」
「それでいいのです。君は一人の方が落ち着くでしょうが、たまには他のクラスの人と話をするのも良いですよ。人との関わりが読書に深みを与えることもありますから。親ともです、たまには面と向かって話をして自分を確かめて下さい。重要なのは自分の中にある譲れないことを譲らせないことですよ」
それが言いたかったのか、担任・・・殺せんせーは飛び去って行った。
凄く長く感じたし、あっという間だった気もする。でも、私の心はさっきより穏やかだ。なんでだろう。ほだされたのかしら。
後ろでうーん、と唸る声が聞こえて母親が頭を押さえながら起き上がった。
「・・・あら?なんで私ここにいるのよ」
母親はそう言って私に目もくれずに去っていった。呼び止めもしなかった。ああ言われたけれどまだ面と向かって話す気にはなれない。
だけど、少しだけ前を向けている気がする。
来週、倉橋来るって言ってたわね。ああいったら本当に来そうだし、何かおやつでも用意しておこうかしら。案外イモリの黒焼き気に入ったりして。若干口を緩ませながら私はアシュラの方を見た。アシュラはただ、巣に納まっているだけだった。