巴マミは暗殺者   作:百乃綾香

48 / 60
お久しぶりです。
暗殺教室の新作映画が来ますね!しかもカットエピソードを公開してくれるとな!!

・・・推し(村松)の出番あまりなさそう・・・;;

でも楽しみです!!


46時間目 ビジョンの時間

話は一昨日、寺坂とシロが接触したところから話は始まる。

唐突にシロに急に話しかけられた寺坂はしかめっ面を示した。

ただでさえ、不本意に一人になっているところに不審者感満載の男が声をかけたものだから少しだけ眉間に皺をよせてしまう。

 

「んだよテメェ慣れ慣れしく話しやがって」

「まあまあ、ちょっと話を聞いて欲しいんだよね」

 

威嚇されたシロは淡々と、しかし目線を合わせるように寺坂に語り掛けた。

 

「寺坂君、君はあのタコを気に食わないと思っているだろ?だけど他のクラスメイトは受け入れている。それが気に入らない君はイラつくあまり、クラスで横暴な態度を取り、友達に当たり散ららした結果、孤立しているね?奴さえいなくなればいい、そう思ってないかい?」

 

出会い頭に本心を突かれ、寺坂は苛立ちながらも耳を傾けた。

 

「なら我々が手を貸そう。すぐにでも奴を殺し、元のE組へと戻してあげようではないか。なので私の計画に手を貸してくれ。もちろんタダとは言わない。協力した報酬はいくらか出してやろう。モチロン報酬の百億円も少しばかり分けてやろう。良い話と思わないかい?」

 

そう聞かれた寺坂はわりとすんなりとそれに首を縦に振った。

寺坂は誰が殺せんせーを殺そうがどうでもよかった。シロが殺そうがなんだっていい。それであの忌々しい暗殺ごっこが終わるのなら万々歳だ。

それにシロの話はあの白ダヌキことキュゥべえと比べてもまっとうにも思えた。一回の奇跡で永遠かもしれないバケモノ退治させられるよりかは一回ちょっと手を貸すだけでお金が貰える。その方が賢い選択じゃないだろうか。

そう考え、寺坂はシロと手を組むことにした。

 

何か教室に変化がなかったかと聞かれ、プールが新たに設置されたと答えるとシロは翌日にさっそく作戦を立て、寺坂に指示を出した。

頼まれたのはプールの破壊と自然な流れでの薬剤散布。

寺坂は早朝にさっそくプール破壊にこぎつけた。友達(ツレ)も呼んで一緒に破壊しようと呼びだしたが案の定反応が悪かった。呼び出してから30分くらい待たされて、2人がどこか納得してない顔でやってきたときにふつと怒りが湧いた。

ここ最近自分に素っ気無く、ラインの返事も遅い。明らかに自分から距離を置こうとしてるのがわかってしまう。

それはそれとして、だ。

寺坂は思う存分にプールを破壊した。4月からのストレスを発散するかのように。俺はお前の思うようにはらない。そんな意思表示もこめて。しかし2人はまるで乗ってこない。しぶしぶとでもいうかのようにただゴミを捨てるだけだった。

結果はというと全く効果はなかった。破壊したところでタコがすぐに直してしまうのでいやがらせにもならない。

一応はシロの目的は別にあるようで即直されても問題ではなかった。

しかし、寺坂にとって問題はそこではなかった。

村松も吉田も、明言はできないが狭間もいつのまにやらタコに心を開いて懐いていた。どこかうっすらと感じ取っていたことをこうも目の前で見せつけられると怒りが込み上がって来る。怒りに任せて木製バイクを蹴り倒した結果、吉田を含めた皆から批難豪語に合ってしまった。よりイライラしたが、いい機会だと思いシロから受け取ったスプレー缶を取り出し投げつけた。教室中がスプレーからあふれた煙にまみれ、流石に殺せんせーに咎められたが寺坂は咎めた手をはじいた。

 

「気持ちわりーんだよ。テメーも、モンスターに操られて仲良しこよしのE組(テメーら)も」

 

それは寺坂の本音だった。友達ですら手籠めにしてキャキャとしているのが大層不快に感じていた。寺坂にクラスメイトたちは軽蔑や戸惑いの目を向ける。そんな中カルマが寺坂に問いかけた。

 

「何がそんなに嫌なのかねぇ・・・。気に入らないなら殺しゃいいじゃん。せっかくそれが許可されている教室なのに」

「何だカルマ。テメー俺にケンカ売ってんのか?上等だよ、だいたいテメー最初から」

 

いつものノリでカルマに反論しようとズカズカ近づいた所、バっと認識できない速さで口を塞がれてしまう。

 

「ダメだってば寺坂。ケンカするなら口より先に手ェ出さなきゃ」

「・・・ッ!!放せ!くだらねー」

 

寺坂はカルマの手を払いのけてそのままカバンを抱えて教室をでていってしまった。そのまま家に帰るのも憚れるので適当にゲームセンターで時間を潰すことにした。この時間だと客はそうそうおらず、いるとすれば偏差値が低そうな見るからに不真面目な高校生ぐらいだ。自分がいえることでもないが。

 

「おい、リュウジと連絡がつかないってマジかよ」

「マジだっつてんだろ。次の獲物見つけたとかいってそれっきり」

 

そんな話を聞き流しながら寺坂はメモを取り出して次の指示を確認した。アナログであれば律の目も欺けられるということで。

次の指示は「深夜、一斗缶を裏山の上流から流せ」

あの怪物は今日の夜は他の生徒の補習とかで不在。律も夜は起動しないのでバレる心配はない。メモをグシャリと握りしめその辺のゴミ箱に捨てておいた。よそのゴミ箱に捨てればあの怪物も気づきようがない。

指示通り寺坂は深夜、日付が変わったころに裏山へと赴き一斗缶を倒した。こんな深夜に出歩いたりして親は何か言ってこないのかと言われるが、寺坂の親は両親共に深夜まで帰ってこないことの方が多い。妹はいるが今は仲が悪く、自分の行動にどうこういってはこない。非常に都合がいい。

 

「なにせあのタコは鼻が利く外部の者が動き回ればすぐ察知してしまう。だから寺坂君、君のような内部の人間に頼んだのさ。イトナの性能をフルに活かす舞台作りを」

 

いつからみていたのか、こちらに合流したシロが何やら演説をしているが寺坂は聞かず、焦点が合ってるのかあってないのか判断つかない目で空を見上げるイトナを見つめていた。ふと、彼の変化に気が付いた。

 

「・・・なんか、変わったな。目と髪型か?」

「その通り寺坂君。意外と繊細なところに目が行くな。髪型が変わった。それはつまり触手が変わったことを意味するんだ」

 

シロは続ける。

 

「先日も話した通りこの計画が成功すればE組は元の落ちこぼれ集団に戻る。それに君はお小遣いが手に入る。悪い話じゃないだろ?」

 

元にもどる、とはいうものの魔法少女という荒唐無稽なものがクラスに入ってきてしまった以上は元のE組に戻ることはないのは寺坂もわかってはいた。それでも、苛立ちの最大要因であるあのタコがいなくなれば多少は元のどんよりとした教室に戻る。巴マミも元は周囲に壁をつくり孤立をしていた。こちら側の人間と大して違いはなかった。

そう考えている寺坂にイトナがグン、と詰め寄った。

 

「な、何だよ」

「お前は・・・あのクラスで弱い方だ」

 

それに寺坂は絶句した。マミの正体は兎も角、力量を見破ったやつだ。クラスの奴が魔法みたいな力を持っているのもわかったいるのだろうか?一応は禁止事項としているのだが。

よそ者の魔法少女に対してロクな思い出がない寺坂は少し背中に冷たいものを感じた。

 

「馬力も体格もトップクラスだろうに。なぜだかわかるか?」

 

イトナは寺坂の目をかっぴらいた。

 

「お前の目にはビジョンがない。勝利への意志も手段も情熱もない。目の前の草を漠然と喰っているノロマな牛は・・・牛を殺すビジョンを持った狼に勝てない。ビジョン・・・それだけでいい」

 

イトナは背を向け立ち去った。イトナにいいように言い捨てられた寺坂は先程の戸惑いを忘れ、屈辱に震えていた。その道中彼の頭の触手がうねり、どこかへと強く叩きつけた。それを見た寺坂はさっき生まれた怒りがふと消えてしまった。そして生まれたのはまたしても戸惑いだった。

 

「なんなんだあの野郎。本トに意味がわかんねぇ・・・」

「まあまあ。私の躾が行き届いてなくて悪かったね。まさか不必要な威嚇までするとはね・・・。それは置いといて、我々は戦略的パートナーだ。クラスで浮きかけている今の君なら・・・不自然な行動も自然にできる。我々の計画を実行するのに適任なんだ。じゃあ・・・・頼んだよ」

 

シロは寺坂にあるものを渡して、次の計画を説明し去って行った。シロを見送った寺坂はふう、と一息吐いた。これでいい、これで今日をやりすごせば快適になる。そう思いながらそれ(・・)を懐にしまった。

一人になったところで寺坂はあるもののもとへ向かった。先程イトナが触手を叩きつけたところ。シロの目には見えてないが、寺坂にはハッキリと見えていた。いつの間にやらこちらの様子を伺っていたキュゥべえが触手によって叩きつけれて肉塊と化してしまっていた。寺坂自身キュゥべえに対して全く快く思ってなく、毛嫌いしていた。が、流石に死んでほしいとまでは思ってはいない。なので埋めてやるかぐらいの気持ちで近づいた。しかし、白い肉塊に白いものが覆いかぶさってうごうごと蠢いている。それに寺坂は半歩下がってしまった。死んだはずのキュゥべえの肉塊をもう一体のキュゥべえが喰っている。

 

「と・・・共食いしている・・・?」

 

見られていることに気が付いたキュゥべえは顔をあげ、少しだけ寺坂を見つめると顔を降ろしてあっという間にがつがつと食い尽くしてしまった。そして可愛く座るとげっぷをする。

 

「・・・キュウっぷい」

「いや、誤魔化されるかぁ!!!!」

 

寺坂のツッコミを聞かないでもいうように前足でネコのように顔を洗っていた。

しかし冷静に考えてみると魔法少女は椚ヶ丘だけではなく少なくとも県を跨いだ見滝原と風見野にもいる。巴に推測にすぎないが京都にもいるだとか。だとしたら複数匹いても何も不思議ではないか。

 

「おい、白ダヌキ。沢山いるのかよ」

「なんでそう思ったんだい?」

「美樹とか佐倉とかいうやつがこの街と同じ奴と契約したとは思えねーしよ。それよりもだ・・・巴にチクったりしねーよな。さっきのことを」

「何を心配しているか僕にはわからないけど、特にマミたちに今のやり取りを話したりはしない。僕は中立だからね」

「けっ、妙な奴だ」

「でもいいのかな?彼らに協力したところでE組が元のクラスに戻るとは思えない。何事も不可逆なんだ。君にとって居心地のいいクラスになるのかな?」

「うるせー!!元に戻らない可能性があるとすればテメーが原因だろうが!吉田を嵌めやがって!」

「僕は彼を危機から救ったんだよ。あの強盗団は魔女と何も関係がない」

「・・・黙って巴の所にでも行ってろ」

 

キュゥべえは言われた通りに立ち去ろうとし、振り返った。

 

「僕は忠告した。後は君の責任だ。何があろうと知ったこっちゃない」

 

そう言って目の前から消えていった。寺坂は一人残された裏山は静寂に包まれる。三日月からの光が寺坂を照らす。この後の波乱を示すかのように。

 

「チッ・・・ヘンテコ白ダヌキが上から偉そうなことを・・・」

 

 

その日の昼休み

 

「はぁ~烏間先生いないのつまんないなぁ~」

「緊急会議だってね。大人は色々あるのよ」

 

雑談をしながら教室内で昼食を取る者たちの耳にドロリドロリと粘り気のあるものが流れる音が響いていた。流石に我慢ならなくなったのかイリーナが殺せんせーに問いかけた。

 

「なによ。さっきから意味もなく涙流して」

「いいえ、涙じゃなくて鼻水です」

「まぎわらしい!!」

 

そんなコントじみたやり取りを寺坂は廊下から冷徹に見ていた。

 

「どうも昨日から体の調子が少し変です。夏風邪ですかねぇ・・・」

 

その呟きを聞き、寺坂が教室へと入ってきた。これにすかさず反応したのが殺せんせーだった。

 

「おお寺坂君!!今日は登校しないかと心配でした!昨日君がキレたことならご心配なく!!もう皆気にしてませんよね?ね?」

 

鼻水を涙のように垂れ流し寺坂をフォローする殺せんせーに一同は引いてしまった。

 

「昨日一日考えましたが、やはり本人と話すべきです。悩みがあるなら後で聞かせてもらえませんか?」

 

そう尋ねられた寺坂は昨日のシロの言葉を思い出した。

 

『昨日、君が教室にばら撒いたスプレー缶は奴にだけ効くスギ花粉みたいなものだ。触手生物の感覚を鈍らす効果がある。奏した上で誘い出せ』

 

寺坂は顔に掛けられた粘液を拭い、殺せんせーを指さした。

 

「おいタコ、そろそろ本気でぶっ殺してやんよ。放課後プールへ来い。弱点なんだってな、水が」

 

寺坂はクラスメイトがいる方を向き続けた。

 

「テメーらも全員手伝え!俺がこいつを水ン中に叩き落としてやっからよ」

 

反応は冷ややかだった。唯一反応を示したのは前原だった。前原は立ち上がり寺坂を睨みつけた。

 

「・・・寺坂、おまえずっと皆の暗殺には協力して来なかったよな。それをいきなりお前の都合で命令されて・・・皆ハイやりますって言うと思うか?」

 

そう批難されても寺坂はどこ吹く風でニタニタ笑っている。

 

「ケッ別にいいぜ来なくて。そん時ゃ俺が賞金百億独り占めだ」

 

そういい放って寺坂は出ていきピシャリと扉が閉められた。寺坂が出て行った教室は静まりかえり嫌悪といってもいい空気に包まれていた。

 

「・・・なんなんだよあいつ」

「もう正直ついてけねーわ」

 

昨日まではなんやかんや付き合ってきた吉田と村松でさえこの態度。他の生徒も言わずもがなであった。

 

「私、行かなーい」

 

倉橋がそう発したのに合わせて次々と同意の声が聞こえる中、マミだけが別の意見を発した。

 

「私は・・・行こうかな」

「え!?別に付き合わなくていいよ巴ちゃん」

「別に寺坂君の暗殺計画に乗るわけじゃないわ。ロクに暗殺の訓練もしていない寺坂君が危なっかしい計画を立ててないか見ておきたいのよ。ケガされてもいい気がしないし」

 

そう語るマミに対し、中村は一瞬だけ複雑そうな顔をした。何かあるのかとマミが問おうとしたが足元に異常を感じた。何か粘液性のあるものが纏わりついている。

 

「巴さんもそういってるんだし皆さんも行きましょうよー」

 

いつの間にやら殺せんせーの鼻から溢れでる粘液が教室の床を多い。多くの生徒がそれに捕まっていた。

 

「せっかく寺坂君が殺る気になったんです。皆で一緒に暗殺して仲直りです」

 

そう語る殺せんせーの顔面は粘液に覆われていた。

なんやかんやで殺せんせーに泣きつかれてしまったこともあり、E組はカルマを除いて寺坂の計画にしぶしぶながら参加することにした。

 

そして放課後

プールに水着姿のE組たちが集まっていた。

「そんなかんじでプールに満遍なく散らばれ!」

 

ほぼ全員が入っている中、寺坂だけは制服姿のままで偉そうに支持を飛ばしていた。

 

「・・・ねぇ、これで殺せんせーを殺せるって思っているの?」

 

マミにそう問いかけられた寺坂は苦虫を噛むような顔をして睨み返した。

 

「細かい説明は教えてくれないし、だいたい配置が偏りすぎているわ。もう五人くらいは落とす役に回した方がまだ勝率が」

「いちいちうるせぇんだよ!!いいから入りやがれ!」

 

寺坂に強めの張り手をされたマミはプールに突き落とされる形で入水。信じられないというような顔で寺坂を見た。そのやりとりをみていた竹林はメガネを上げて苦言を呈した。

 

「疑問だね僕は。君に他人を泳がせる器量なんてあるのかい?巴さんをむりやり突き落とすようなやつが」

「うるせー竹林!!お望みならテメーも突き落としてやらぁ!!」

 

竹林を蹴り落して無理やりながら寺坂が求めるフォーメーションが出来上がった。が、やはり皆いい気はしていなかった。呆れた様子で三村と木村がこそこそと話をする。

 

『すっかり暴君だぜ寺坂の奴』

『ああ、あれじゃあ一年二年の頃と同じだ。学年中の嫌われ者。浮きすぎなんだよこの学校じゃ』

 

1,2年の頃の横暴さに被害を受けずとも軽蔑しているのは2人だけではない。3年になっても改めない寺坂に心底呆れ果てるクラスメイトたち。

そんな声が聞こえる中、殺せんせーはあたりを見回す。

 

「なるほど。先生を落として皆に刺させる計画ですか。それで君はどうやって先生を落とすんです?ピストル一丁では先生を一歩すら動かせませんよ」

 

寺坂は何も答えずに殺せんせーに銃口を向けた。

 

「覚悟はできたかモンスター」

「もちろんできてます。鼻水も止まったし」

「ずっとテメーが嫌いだったよ。消えてほしくてしょうがなかった」

「ええ知ってます。暗殺のあとでゆっくり二人で話しましょう」

 

寺坂の眉がつり上がった。これを引けば全て終わる。憎しみやらなんやらの感情をこめてトリガーを引いた。

その瞬間

 

 

ドガァァン!!

 

 

けたたましい音と共にプールの排水口が爆破されプールに大きなうねりが産まれる。水の流れはマミたちを巻き込み下流へと押し出していく。

 

「皆さん!!」

 

殺せんせーは慌てて生徒が流されてく方へ飛んでいき、寺坂が一人残された。彼は何が起きたのか分からず持っていたモデルガンを見つめ、その手は震えていた。

 

「・・・嘘だろ?コレ、こんなことするスイッチだなんて聞いてねーよ」

 

シロにはこう聞かされていた。寺坂が持っている銃はシロたちに合図を送る発信機。準備ができたら引き金を引き、イトナが駆けつけ水に落とす作戦だと。

けれど実際は爆破のスイッチであった。呆然とする寺坂の元に小さな白い影がやってきた。

 

「やれやれ、大変なことになったね」

「・・・白ダヌキ・・・テメェ知ってたんじゃねぇのか?」

「流石に知らなかったよ。でも、何か裏があるとは予測していたけどね」

 

生意気にも小さなため息を吐いて寺坂の方を見つめた。張り付いたような不気味な赤い瞳に見つめられ寺坂はたじろぐ。

 

「でも、どうするつもりだい?」

「ど、どうするって・・・」

「僕は忠告した。この作戦は君のためにならないって。でも君は聞き入れなかった。その結果がこれだ」

 

寺坂は何も言わずに拳を握りしめている。

 

「マミたち魔法少女たちは大丈夫だろうけど、契約していない子たちは無事じゃすまないだろうね。あの教師の助けが間に合わないかもしれない。そうなれば爆破のスイッチを引いた君の責任だ。君は殺人犯だ。おっと、そんな怖い顔しないでくれ。でもたったひとつの解決法がある。なんだと思う?

契約だ。君が願えばこの悲惨な結果をなかったことにできる。誰も君に責任を負え、なんて言われることもない。だからー」

 

言葉が続く間もなく寺坂はキュゥべえの首を鷲掴みにした。

 

「お、俺は悪くねぇからな!!」

 

その声は殺せんせーに怒られたときのようにたどたどしく大きいだけの弱弱しい声だった。声を振るえ荒げキュゥべえにどうしようもなく叫び散らす。

 

「俺はなぁ、シロに、シロにイトナを呼んで突き落とす作戦って聞いてたんだ。まさかクラスを巻き込むやつとは聞いてねーよ!!」

「へぇ、そういうことね?自分で立てた計画じゃなくて、まんまとあの2人に操られたってわけ」

 

寺坂の後ろから声がした。振り返るとそこにいたのはカルマだった。カルマは呆れた顔でプールサイドから飛び降りて寺坂を睨んだ。唯一作戦をバックレていたことで難を逃れていたカルマ。そのカルマに寺坂が助けを求めるがごとく縋り付いた。

 

「話聞いてんならわかるだろカルマ!!こんな計画やらす方が悪ぃーんだ!!皆が流されたのも全部奴らが・・・」

 

青ざめた顔で自己弁護をするがその話を遮るように寺坂にパンチが飛んできた。

 

「標的がマッハ20でよかったね。でなきゃお前大量殺人の実行犯にされてるよ。流されたのは皆じゃなくて自分じゃん。人のせいにする暇あったら自分の頭で何したいか考えたら?」

 

カルマはそう言い残して下流の方へ急いだ。寺坂には目もくれず。またしても一人残された寺坂にキュゥべえが話しかけてくる。

 

「カルマはああ言ってたけど、契約による奇跡はそういうことを一切気にしなくていい。さあ、僕と契約して」

 

膝をつき地面を見つめる寺坂の脳裏に過去が駆け巡った。

 

小さな頃からガタイが良くそれだけで大抵のことは有利に進んでいた。勉強もできることもあって大して先生に責められもせず、何も考えもなしに進学校へと進んでいった。

そこで壁にぶつかった。自分以上に勉強できる者が大半で、自分のガタイも大きな声も通用しなかった。先々を見越して努力する奴が無計画な奴を支配する。それに気づいてしまった寺坂は己を顧みることなく自分がしたいままに過ごした。どれだけ後ろ指をさされようと気にも留めなかった。どうせ、努力しても意味はない、と思い。

その結果当たり前ながらE組へと落ち安心していた。自分と同じなんの目標もないやつの集団にいれば惨めな思いもしない。しかし4月から状況は一変した。月を破壊したとかいう怪物が現れクラスに目標を与えてしまった。

 

寺坂はまたしても取り残されてしまい、孤立した結果甘い考えを利用されクラスメイトに被害を与えてしまった。

 

そして、目の前のコイツも・・・

寺坂の中でキュゥべえとシロの姿が重なる。寺坂はしつこく話しかけてくるキュゥべえを睨んだ。表情が読めない顔に無害そうな装いで勧誘してくる。こちらに利益があるように語るこいつはやはりいけ好かないタヌキだ。

寺坂はすくっと立ちあがった。そしてキュゥべえを真っ直ぐ見つめ

 

「どうしたんだい?」

 

首を傾げるキュゥべえに力強い蹴りがさく裂した。

 

「ぎゅぇっ!」

 

キュゥべえの体は弧を描いて吹っ飛び、木の幹に叩きつけられた。叩きつられたキュゥべえはズルと地面に落ち、ピクピクと痙攣をしている。

 

「俺は・・・俺はもうテメーらみてーなのに操られるのはコリゴリなんだよ!!」

 

キュゥべえを睨みつけ、やや泣きそうなのをこらえながら叫ぶように吐き捨てた。そして寺坂も下流へと足早に歩を進めた。

誰もいなくなりキュゥべえは体をブルブルと震わせ元に戻すと下流の方を見つめた。

 

「人間はよくわからないな。認識の違いから生じた時必ず相手を批難する。そして己の失態を認めたくなくて第三者にあたり散らす。訳がわからないよ」

 

そういってキュゥべえもまた下流の方へと向かっていった。




この話のキュゥべえは悪いことしてないです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。