寺坂の作戦でプールに入っていたマミたちは何者かによる爆破によって下流へと流されていた。
「・・・はっ!!」
流される中、マミは冷静に変身をしてリボンの網を張った。流される体はリボンによって受け止められ、崖に投げ出される心配はなくなった。その他水の流れを穏やかにしたり壁を張ったりなどして被害を小さく抑えて自力で脱出するものや、殺せんせーに救出される形で難を逃れたりとして幸いにも全員が無事に川から上がることが出来た。
「皆さん!!大丈夫ですか!?全員いますよね!?」
「はい、えっと・・・プールに入っていた者は全員います」
磯貝があたりを確認して殺せんせーに報告をした。それを聞いた殺せんせーはホッと胸をなでおろしている。その中でマミは今自分たちがいる場所を確認した。プールからだいぶ下流の方まで来てしまったか。轟々とと水がなだれ落ちる音がかなり大きく聞こえる。少しでも遅かったら・・・と思うと身が縮む思いだ。
「にしてもあの爆発は一体・・・?」
「寺坂がやったんじゃねーのか?」
「なんのために?」
全員が無事で安心したからなのか頭の思考が冷静になり、クラスの間でふつふつと寺坂に対する怒りが起ころうとしていた。寺坂の事情など知らないがゆえに寺坂に対する非難が所々で聞こえ、渚は少し複雑な思いでいた。
(本当に寺坂君がやったのかな?あの自分に自信なさげな顔、この事故、何か裏があるとしか思えないんだけど・・・)
と、その時だった。
「きゃあ!!」
原の悲鳴が聞こえ、声がした方をみると・・・原がいなかった。
「原さん!!」
殺せんせーが動くのが早く、その方向へ飛んでいき、白い触手が殺せんせーを捕らえた。その触手は殺せんせーを下へ引っ張り、何事かとマミたちがその現場にかけつけ覗いてみると・・・、そこにいたのは
「想定外の結果ではあったが一先ずは計画通りの結果に帰結した」
「さあ兄さん、どっちが強いか改めて決めよう」
シロとイトナだった。急に現れた2人にマミたちは驚きを隠せないでいた。
「シロにイトナ!なんでここに・・・」
「プールの爆破、黒幕はアイツらだって」
疑問に答えるように現れたのはカルマだ。カルマは先程寺坂が話したことから推測をして事の全容をマミたちに伝えた。騙されたことを知り、寺坂に対し一瞬でも疑ってしまった事を申し訳ないと思いつつも視線は2体の触手生物のバトルに向けられていた。
「・・・マジかよ。あの爆破はあの2人が仕組んでいたとは」
イトナが前回よりも素早くなった触手を振り回し殺せんせーに打撃を加えていく。対して殺せんせーは防戦一方で思うように動くことが出来ていなかった。それだけでなくイトナに引きずり降ろされた原が突き出た木にしがみ付きバトルフィールドの攻撃範囲内からでられないでいることで殺せんせーはより防御に回らざるを得なかった。
「なんか押され気味な気がする。原さんに気使ってるとはいえあの程度のハンデなんとかなるんじゃ」
「そう簡単にはいかねぇんだ」
そう言って寺坂が現れた。カルマに一発殴られ気持ちに整理がついたのか冷静に説明をした。
「昨日まいたスプレーに川に入ってる薬剤、それらはシロが用意したタコを弱らせる成分が入ってんだ。それにオメーらもわかんだろ?原が捕まってるところが戦っているところに近ぇーせいで一層集中できねーんだ。だいたいはシロの思惑通り・・・だろうけど原だけあんなとこに?」
「原さんは私が救ったんだけどイトナ君がね、原さんを引っ張って・・・」
「だれも人質に出来なかったから無理やりにってか。恐ろしい奴だな」
「呑気にいってんじゃねーよ寺坂!原がマジで危険だぞ!!おまえひょっとして今回の事全部奴らに操られてたのかよ!?」
前原に問われ寺坂は口角をあげた。
「あーそうだよ。目標もビジョンも無ぇ短絡的な奴は・・・頭のいい奴に操られる運命なんだよ」
それは開き直りともとれる笑い顔だった。けれどすぐに寺坂の顔は真剣なものになった。あまりみたことのない顔にみんな少し驚いてしまう。
「だがよ、操られる奴はぐらいは選びてぇ。奴らはコリゴリだ。賞金持って行かれんのもやっぱり気にいらねぇ。だからカルマ!テメーが俺を操ってみろや。その滑稽なオツムで俺に作戦与えてみろ!カンペキに実行してあそこにいるのを助けてやらぁ!」
寺坂に胸を叩かれカルマは不敵に笑う。
「良いけど・・・実行できんの俺の作戦?死ぬかもよ?」
「やってやんよ。こちとら実績持ってる実行犯だぜ」
意気揚々に進む寺坂にカルマが呼び止めた。
「あーちょっと聞きたいことあんだけど」
「あ?なんだよ」
「シロとイトナって魔法少女のこと知ってそう?」
それに寺坂は首を振った。
「いや・・・。多分知らねぇと・・・。でもイトナは白ダヌキを叩き殺したけど」
「ええ!?そんなの聞いてないけど・・・でもキュゥべえ今日も元気だったわよ?」
「別個体だろ。ソイツが元からいる奴か新しく来た奴かは知らねーけどな」
「ええ・・・」
「ふぅーん・・・。だったらさ、イトナって契約とかしてそう?」
「いや、指輪はしてなかったはず・・・けどそれがなんだよ」
カルマはうんうんと頷くと掌に拳をポンと置いた。
「お、なんか作戦できたのか?」
「うん、聞いて欲しいんだけど・・・
まず、原さんは助けずにほっとこう」
その作戦にみな呆れたのか静まり返り、風と崖下の戦闘音だけが聞こえる。
「おいカルマふざけてるのか?原が一番危ねーだろうが!ふとましいから身動きとれねーし、ヘヴィだから枝も折れそうだ!」
ギャンギャンと騒いでカルマに意見するがカルマは特に聞かず寺坂の襟をつかんだ。
「寺坂さあ、昨日と同じシャツ着てんだろ?同じとこにシミあるし、ズボラだよなー。やっぱお前悪だくみとか向いてないわ」
「あァ!?」
「でもな、頭はバカでも体力と実行力持ってるからお前を軸に作戦立てるの面白いんだ。俺を信じて動いてよ。悪い事にはならないからさ」
「・・・バカは余計だ。いいから早く指示よこせや」
怒っても仕方ないとふんだのか寺坂はふてくされながらもそう言った。
一方その頃
イトナの猛攻に合い、殺せんせーの触手は膨れ切っていた。対しイトナの触手はヌルヌルとピンピンしており結果は一目瞭然だった。
「トドメにかかろうイトナ。邪魔な触手を全て落とし、その上で心臓を「おいシロ!イトナ!」
寺坂の叫ぶ声が聞こえ、シロは視線をそちらに向けた。寺坂はイトナたちを睨みつけ怒りに震えていた。
「寺坂君か。近くに来たら危ないよ?」
「よくも俺を騙してくれたな」
「まあそう怒るなよ。ちょっとクラスメイトを巻き込んじゃっただけじゃないか。E組で浮いてた君にとっちゃ丁度いいだろ?」
「うるせぇ!てめーらは許さねぇ!!」
寺坂は川に飛び込みシャツを脱いでイトナの前に出た。
「イトナ!テメェ俺とタイマン張れや!!」
イトナは何も言わずに寺坂を見つめる。無謀な事を、と呆れているのだろうか・・・。流石に殺せんせーも慌てて寺坂を止めに入る。
「やめなさい寺坂君!!君が勝てる相手じゃない!!」
「すっこんでろふくれタコ!!」
「クス、布切れ一枚にイトナの触手を防ごうとは健気だねぇ。黙らせろイトナ」
ムチのようにイトナの触手は強くうねり寺坂に向かって振るった。布越しに強い衝撃を腹に食らいながら寺坂はしっかりと耐え、しかし膝をついた。
「よく耐えたねぇ。ではイトナ、もう一発だ」
その時だった。
「くしゅん」
突然イトナがくしゃみをし、それは止まることはなかった。イトナ自身もなにが起きているのか分かっておらず訳もわらかずズルズルになった触手を見つめるほかなかった。
「おい、触手ってこんなものかよ。大したことねーな。どうせなら体ごとかかってこいよ」
膝をついて倒れていたはずの寺坂が背筋をまっすぐに立ちはだかり、余裕そうに煽っている。それに目の前が真っ赤になったイトナがシロの指示も聞かずに寺坂に向かって突撃。しかしイトナの体当たりはバァンと透明な壁に阻まれてしまう。ぶつけた鼻を擦っていると背後から水の壁が迫りイトナに襲い掛かった。
「!!!」
水がすぐに引き、振り払ってイトナが見たものはさっきとは違いすっきりとした触手で原を救出する殺せんせーの姿だった。
何が起こったのかわからないがコケにされたのは分かった。何が何でも一発喰らわせたいとイトナは動こうとするが足がまるで動かない。何か指示をとシロを見るがシロは何も言葉を発さない。八方ふさがりのイトナにあちこちから水しぶきがあがる。E組たちが一斉に飛び込んで来たことによって降りかかる水にイトナの触手は吸いきってしまった。それをカルマは悪魔のようにケタケタと笑う。
「殺せんせーと弱点一緒だもんね。薬品入りの水を吸ったからあんたらのハンデがなくなったし、みんなのおかげで殺せんせーも回復できた」
催眠が溶けたようにシロはハッとあたりをみまわし、スッキリとした殺せんせーを怪しむように睨みつけた。
「・・・いくら奴でもそんなすぐには回復しないはずだ。何をした」
「うちの先生の規格外っぷりはアンタらのほうがよく知ってんじゃねーの。ただ、隙をみて回復した。それだけだよ」
シロから反論の言葉は出なかった。ただ、生徒たちをみまわし黙りこくっている。
「で、どーすんの?俺らも賞金持ってかれんの嫌だし、そもそも皆あんたの作戦で死にかけているし、ついでに寺坂もボコられてるし。まだ続けるなら、こっちも全力で水遊びさせてもらうけど?」
掌やらその辺のゴミやらで汲んだ水をイトナに向ける。全ての触手が動かなくなり、打つ手がないイトナは悔しそうにするしかなかった。
「してやられたな。丁寧に積み上げた策略がたかが生徒の作戦と実行で滅茶苦茶にされてしまった」
シロはE組に背を向けた。
「ここは一旦引こう。触手の制御細胞は感情に大きく左右される危険なシロモノ。この子らを皆殺しにでもしようものなら・・・反物質蔵がどう暴走するかわからん。帰るよイトナ」
イトナの表情は険しかった。寺坂の乱入からコケにされ続けたイトナは屈辱に震えている。それに殺せんせーが優しく声をかけた。
「どうです。皆楽しそうな学校でしょう。そろそろちゃんとクラスに来ませんか?」
イトナは黙っていたが返事一つせずに去って行った。イトナの頭は怒りで満ちていた。俺の方が強い、俺の方が強い、頭の中で何度も呟く。魔法に頼らずとも俺は強さを手に入れた。なのになんでそういった力がなさそうな
その帰り道、イトナは視界の端に白いものを捕らえた。その白いものは何も語らずイトナを見つめている。イトナは思わず足を止め、考え込み視線を外してシロを追った。
そんなやり取りを知らず、川辺にいる生徒たちは一安心とばかりに掌の水を放したりゴミをほったりした。
「ふぃー、なんとか追っ払えたな」
「良かったね殺せんせー。私たちのおかげで命拾いして」
「フルフフフ。もちろん感謝しています。それに伏せられていた吉田君と村松君の能力も判明しましたしねぇ」
そうニヤニヤする殺せんせーに対し、吉田と村松は悔しそうにしている。
「しゃーねーだろ!出し惜しみしている場合じゃねーんだし!!」
「原やテメー助けるために必死だったんだよ!!」
「もちろん正しい力の使いどころをした君たちにも感謝してます。ただ・・・鼻水がぶり返すのは頂けないですよぉ」
今の今まで我慢していた鼻水が一気にあふれかえりドロドロとした粘液が足元になだれ落ちていく。それを見た生徒達もすぐさま距離を置いた。
「丸一日だけなんだよ。戻せんの」
「ぐじゅ・・・もう一回戻してしてくれませんか」
「試した見たけど無理だったしそもそも汚ねぇからやだよ!!」
と色々とやり取りをしている後ろで渚がカルマに尋ねた。
「ねぇ、魔法を使ったのは分かるんだけど・・・何したの?」
「えっとね、まず巴さんにリボンで寺坂の腹を巻いておく。そのリボンを菅谷に肌と同じ色に塗ってもらい、そこに三村の注目の魔法と村松の硬化の魔法をかけておくんだ。で、リボンを巻いた状態でイトナを挑発。寺坂に触手をくらってもらうけど、プロテクターのおかげで大したダメージは入らない。でも大ダメージのフリをしてもらって倒れてもらう。寺坂のシャツは殺せんせーを駄々洩れにした成分のスプレーがたっぷり付着しているからイトナも駄々洩れになる。そこで寺坂にフツーに立ってもらって更に挑発。その瞬間に岡野さんに透明な壁を張ってもらい、万が一に備えて前原にも寺坂のそばで待機してもらう。ついでにシロに矢田さんの戦意喪失をこっそりかけてもらうんだ。シロに変な指示させないためにね。イトナが透明な壁にぶつかったところで片岡さんの魔法で水をぶっかける水に気をとられているところに木村の洗脳魔法で『足が動かない』って思わせるんだ。で、そんなやり取りしている間に殺せんせーが原さんを救出するだろうからそこで吉田の魔法である巻き戻しの魔法で殺せんせーを元に戻しておく。戻す必要はないけど、シロとイトナを動揺させるにはうってつけだ」
「おおう・・・凄いね。一人魔法使ってないけど」
何はともあれ無事に原を救出し、なごやかな空気が流れ・・・
「そーいやさ寺坂君。さっき私の事散々言ってたね。ヘヴィだとかふとましいとか」
原がややひりついた表情で寺坂の後ろに立っていた。その気配に気づいた寺坂はまずいと思ったのかタジタジになる。
「い、いやあれは状況を客観的に分析してだな」
「言い訳無用!!動けるデブの恐ろしさ見せてあげるわ!!」
原に詰められてる寺坂をみてカルマは悪魔のように笑っていた。
「あーあ、ほんと無神経だよな寺坂は。そんなんだから人の掌で転がされんだよ」
「うるせーカルマ!!テメーも一人高い所から見てんじゃねー!!」
寺坂に引きずり降ろされたカルマは水辺にしっかりとつかりずぶぬれになってしまった。カルマは珍しく素になってキレた。
「はぁ!?何すんだよ上司に向かって!」
「誰が上司だ!触手を生身で受けさせるイカれた上司がどこにいる!!大体テメーはサボり魔のくせにオイシイ場面は持ってきやがって」
「あー、それ私も思ってた」
「この機会に泥水たっぷり飲ませようか」
前原、中村と追撃が加わりカルマを押し倒してずぶぬれにしてあちこちで笑い声が聞こえてくる。乱暴な形ではあるが寺坂がクラスに馴染むことができた。それは殺せんせーもマミも皆嬉しく思い・・・
ある一人の異常に気付くのが遅れてしまった。
「茅野さん!!」
バシャッと音と共に神崎の悲鳴が聞こえた。皆が振り返ってみると茅野が崩れ落ち、手を額に当てながら具合悪そうにしている。顔色も青ざめ、息も深々と吸ってはいてを繰り返している。
「茅野さん!?どーしたんですか!!?」
皆が慌てて駆け寄る中、渚だけがあることに気が付いた。
(あれ、茅野の髪の先・・・一瞬だけ黒くなったような・・・}
しかし目を凝らすと先まで緑色のままで渚は一人首を傾げる他なかった。
FM神浜
「画面の前のみんな、カミハマ~」
「不定期にやっているこのコーナーなんかすごい久々に感じますね」
「前書きでやってなかった?」
「まあ、あれは特別編ということで・・・お便りが早速届いてます!
ラジオネーム 俺!さん
吉田ってやつ、たいしたことなさそうだけどあんな強力な魔法もらっていいのかよ!メタ的に!
ということなんですが・・・」
「メタって言葉知ってたんだフェリs「本名は言わない約束ですよ!!あとちゃんと賢いです!人並みには、一応、赤点とって怒られてましたけど」
「ほぼいってるも同然だよね」
「・・・で、まどか先輩の見解はどうなんですか?」
「いろはちゃんって元々弱い魔法少女だったわけじゃない?それで巻き戻しの能力もってんなら吉田君にあってもいいよね。ってことだよ。2部終盤いろはちゃんほど強くないけど」
「悪口ですか?それ」
「どっちかというと某超能力高校生の能力ってとらえた方がいいかな?」
「さて、今回の話で茅野さんが倒れちゃいましたけど大丈夫なんですか?」
「気になる続きはしばし待て!」