巴マミは暗殺者   作:百乃綾香

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ついに50話め突入!
少し書けない時期も経てここまできました。最後まで書ききりたい・・・
頑張ります


50時間目 期末の時間

2週間後に期末テストを控える私たちは裏山で殺せんせーがマッハで分身に教わりながら勉強していた。その様子に先生は満足そうに笑っていた。

 

「ヌルフフフ。皆さん一学期の間に基礎がしっかりできてきました。この分なら期末の成績はジャンプアップが期待できます」

「殺せんせー。また今回も全員50位以内を目指すの?」

 

渚君がそう質問すると殺せんせーは首を振った。

 

「いいえ先生あのときは総合点ばかり気にしていました。生徒それそれに合うような目標を立てるべきです。そこで今回は・・・この暗殺教室にピッタリの目標を設定しました」

 

殺せんせーの発言にみんな息を呑む。

 

「大丈夫!!寺坂君にもチャンスがある目標ですから!!」

 

・・・言及しなくてもいいのに

 

「さて、前にシロさんが言った通り先生は触手を失うと動きが落ちます」

 

殺せんせーが銃で自ら触手を弾けさせた。そのまま分身をするとその分身体のいくつかに奇妙な異変が見られた。

 

「一本減っても影響は出ます。御覧なさい全ての分身が維持できず子供の分身が混ざってしまった」

 

分身ってそんな減り方するのね・・・

 

「さらに1本減らすと・・・子供分身が更に増え・・・親分身が家計のやりくりに苦しんでます」

「なんか切ない話になってきたぞ・・・」

「もう一本減らすと・・・父親分身が蒸発し、母親分身は女手ひとつで子を養わなくてはいけません!」

「重いわ!!」

 

ちょっと昔の苦労話の寸劇の形を取って触手を失うダメージを紹介していたけど、分身別でコスプレしなかったある程度は楽になるんじゃってツッコんだらだめかしら・・・?殺せんせーは分身を止め、話を続ける。

 

「色々試した結果、触手一本につき、先生が失う運動能力はざっと20パーセント!

そこで本題です。前回は総合点で評価しましたが、今回は皆さんの最も得意な教科も評価に入れます。教科で一位を取った者には・・・答案の返却時、触手を一本破壊する権利をあげましょう」

 

触手を破壊する権利・・・?暗殺においてそれはとても大きなアドバンテージだ。それはクラス全員が理解していた陽だ。

 

「チャンスの大きさがわかりましたね。総合と5教科全てでそれぞれ誰かがトップをとれば6本もの触手が破壊できます。これが暗殺教室の期末テストです。賞金百億に近づけますよ」

 

この先生は殺る気にさせるのが本当にうまい。

裏山での勉強会のあと私たちは教室へともどり話し込んでいた。話題はもちろんあのご褒美についてだった。

 

「すごいこと考えるよねー殺せんせー」

「そうね。ウチでも1教科だけなら上位ランカー結構いるから・・・皆もかなり本気でトップ狙ってるわね」

「なーにいってるの巴ちゃん。アンタも元々学年の上位勢だったじゃない。総合1位ねらえるかもよ}

「そんな冗談よしてよ。さすがにカルマ君には敵わないわ。でも英語だったら一番自信あるし狙ってみようかしら」

「お、いいね。私も英語狙いだし、一緒にトップ取ろうぜ!」

「それ許されるの2人で100点取った時ぐらいじゃない?」

「それぐらいの気合でいかないと!」

 

そんな話をしていると教室のどこかでスマホのバイブ音が鳴った。どうやら杉野君のものらしい。

 

「おう進藤か」

 

進藤君?一体なんの用かしら?会話をしていた杉野君の表情がやや険しくなり即座にスピーカーに切り替えた。

 

「A組が全員集合して自主勉強会を開いているんだ。こんなの初めて見る。音頭を取るのは五英傑と呼ばれる我が校が誇る天才達だ」

 

スピーカーからすぅーと大きく息を吸う声が聞こえる。次に聞こえて来たのはテレビで聞くような変な声のの実況だ。

 

「中間テスト総合2位!圧倒するマスコミ志願の社会知識ぃ放送部部長あるぁぁぁきてっぺぇい!!

総合3位!人文系コンクールソウナメぇ!生徒会書記、さがきヴぁるぁあああ・れぇん!!

総合5位!赤羽への雪辱に燃える暗記の鬼ぃ、生物部部長こやまぁなつひこぉ!!

総合6位!漏らしたって語学力に関係ナッシン!生徒会議長、セオトモヤァハァ!」

「誰がお漏らし英語だボケがぁ!!!」「瀬尾、わざわざ反応しに行くな。だから未だに弄られるんだぞ」

 

ガラガラと窓を閉じる音が聞こえ、教室はなんとも言えない空気に包まれていた。進藤君のよくわからない紹介といい瀬尾君のツッコミといい反応に困るものばかりだ。

 

「えっと、進藤お前さっきの口でいってたのか?」

「あ、うんやってみたかったんだこういうの」

 

コホンと息を整える声がきこえ進藤君は話を続ける。

 

「そしてトップをかざるのが

総合1位!全国模試1位!まさに、パーフエークト。生徒会長、浅野学秀!」

 

さっきツッコミをいれてた人ね。あの理事長の一人息子、その人が立ちあがったんだわ。杉野君のスマホからは進藤君がこっそりスマホを差し込んでるのか勉強会の様子が聞こえてくる。

 

「浅野君!この問3なんだけど・・・」「ああ、それムズイよね。じゃあ一度平方完成やり直そうか」

「一日に千里の道をいくよりも君と一里を行くが楽しさ。学ぼう、美しい言葉が君の動脈を満たすまで」

「おい、そんな文法LAじゃあお漏らし野郎以下だぜ」

「自ら恥を晒しに行くな。もはや持ちネタ状態だぞ」

「・・・えーと、大事なのはその出来事がもたらした変化の大きさ。瀬尾君に気を取られてると君、社会から置いてかれるよ?」

「お前もまあまあ気を取られてるけどな」

「死ぬ気で詰めこめ!中高の理科は暗記だけで十分だ!」

 

彼らが教えていく様子がスマホから聞こえ、その手腕の良さが伺える。様子を聞いていた不破さんが口に手を当てて驚き慄いていた。

 

「なんて恐ろしい・・・特に浅野君」

「うん、わからないに寄り添いつつ理解までの道筋を丁寧に示してくれてるよね」

「いいえ、勉強を教えつつも同時にツッコミまで出来てる!恐ろしい子!」

「感心するとこソコォ!?」

 

ミニコントしている2人はほっておいて進藤君の話は続く。

 

「ただでさえ優秀なA組の成績が更に伸びる。このままだとトップ50はほぼA組で独占だ。奴らはおまえらE組を本校舎に復帰させないつもりだ」

 

進藤君は私たちのことが気がかりなのだろう。彼割と素直だしね。そのことは杉野君もわかっているようでそれに明るく返事をした。

 

「ありがとな進藤。口が悪いが心配してくれてんだろ。でも大丈夫。今の俺らはE組を脱出()ることが目標じゃないんだ。けど、目標のためにはA組に負けないくらいの点数を取らなくちゃならない。見ててくれ、頑張るから」

「勝手にしろ。E組の頑張りなんて知ったことか」

 

言い方はあれだけどなんだかんだで私たちを応援してくれてるのは伝わった。ふと殺せんせーの方を見ると嬉しそうにヌルフフフと笑っている。殺せんせーも本校舎の生徒と仲が良くなってるのが嬉しいのだろう。ほんのちょっとだけだけど本校舎と旧校舎の間に吹く風が爽やかさを帯びるようになったのかもしれない。

 

 

放課後、帰ろうとする私たちに磯貝君が声をかけて来た。

 

「渚、茅野、巴。今日の放課後空きなら図書室で勉強しないか?」

 

そういって見せてくれたのは図書室の利用チケットだった。

椚ヶ丘の図書室は学習書が数多く揃えられており利用者も多く、図書室で勉強する際は予約必須となる。それを聞いた美樹さんは「聞いたことない。そんな制度・・・」と理解できないという顔をしていた。そんな図書室利用はE組は基本後回しにされるのでその利用チケットがどれだけ希少なものか。そしてそれが期末前に利用できるという奇跡はたいしたものだ。

 

「前から期末を狙って予約してたんだ。俺の他に5人利用できるからお前らもどうだ?」

 

磯貝君に誘われて渚君と茅野さんは興味深々にしていた。

 

「いいよ。僕行くよ」「私もー!」

「私も参加しようかな。巴ちゃんもいくでしょー?」

 

磯貝君の後ろで話を聞いていた莉桜さんも手を挙げた。それと同時に行くよう促されたけど・・・

 

「お誘い嬉しいけど・・・今日は親戚が帰ってくる日だからパスするわ。他誘って」

「そっか・・・それは仕方ないね。じゃあこっちでやっとくよ」

「ごめんなさいね。じゃあまた明日」

 

みんなに別れを告げ、私は待ち合わせのファミレスにむかった。何事もなくファミレスに入店するとそこで見知った顔をみかけた。しかも4人。

 

「で、どれが可能性ありそうよ?」

「そうねぇ・・・」

 

あれは寺坂君たち?寺坂グループの4人が頭を付け合わせて何かひそひそ話をしている。期末に向けての作戦会議かしら?私は気になったのでこっそり彼らの隣のテーブルに座り、話を盗み聞くことにした。

 

「保健とかどうだ?俺が得意なの体育だしよ」

「バカ言うんじゃないわよ。保健の授業でうたた寝してるくせに」

「しかも今回の範囲人体の構造答えろとかもあるんだぞ。俺、骨の名称答えられる気がしねぇ」

「んじゃ家庭科どーよ?裁縫は今回のテストにはでねーし、寺坂でもいけんべ。それなりに料理はできんだし」

「でもあの安井がどうでるかだよなぁ。アイツわりと癖あるだろ?技術じゃだめか?」

「それこそ専門用語が多すぎて寺坂じゃ無理よ。美術は正直実技が予測不能だし」

「だったら音楽はどうだよ?歌なら任せとけ!」

「「「一番ない」」」

「というのはともかく範囲的には音楽の歴史が主立ってるからどっちにしてもアンタにはムズイわよ」

「それに楽譜読めみたいなの来たら終わるな。寺坂が」

「カラオケの音程バーすら読めねぇ奴が楽譜読める訳ねーべ」

「お前らぁ・・・」

 

彼らが話をしているのは副教科についてだった。確かに期末試験には副教科のテストもある。だけどなんで副教科の教科書広げて会議なんかしてるんだろう?と眺めているとバチと寺坂君と目が合ってしまった。

 

「おい巴!!何見ていやがんだ!!」

 

寺坂君に怒鳴られ、他の3人も一斉に私の方に顔を向け目を丸くした。私はぎこちない笑顔を見せながら4人の前にでることにした。

 

「ゴメンなさい覗いちゃって・・・。ところでどうして副教科の教科書を広げているの?殺せんせーが言ってたのは五教科よ?」

 

そう聞くと寺坂君はフンと鼻を鳴らした。

 

「これか?今日タコが言ってたろ?5教科でトップを取れたら触手破壊させてやるってよ。でもよ、あのタコはどの(・・)教科かは明言してなかったよな?俺らはそこに目をつけた。副教科で4人トップをもぎ取ってやろうってな。多分1教科ぐれーは落とすだろうしよ。タコが言ってただろ。2本目の刃を持てってな」

 

その寺坂君の計画を聞いて私は素直に感心していた。なるほど、それは殺せんせーは想定していないだろうし、仮に5教科全て落としても副教科でトップという保険があるなら余裕も持てる。しかも寺坂君の計画が上手くいけば最大9本もの触手を破壊できる。なかなかやるじゃない。

 

「てことだ巴!聞いちまったからにはオメーも共犯だ。俺らの作戦に協力してもらうぞ」

「別に脅さなくても協力するわよ。いいじゃない、副教科作戦」

 

そう答えると寺坂君たちはいじわるそうにニヤニヤと笑った。だけどどこか爽やかな空気も感じる。あの事件以来寺坂君も付き物が落ちたように態度が以前よりは改まりクラスにあっという間に馴染んでいった。

そんなことを思いながら私はふと、あることにおもい至った。そういえばあの時殺せんせーなんて言ってたっけ?

 

ー総合と5教科全てでそれぞれ誰かがトップをとれば6本もの触手が破壊できますー

 

あの言い方だとつまりは・・・うん、これは殺せんせーに一泡吹かせられるわ。

 

「巴と合わせて5本だ!5本の触手を奪ってやろうぜ!」

「いいえ寺坂君、6本よ。私が上手く頑張れば6本分ゲットできるわ」

 

私の宣言に寺坂君たちは何がなんだかわからない、という顔をしていた。私は得意げに4人に作戦内容を伝えた。その作戦を聞き、4人特に寺坂君がいい悪い顔をして私に笑いかける。

 

「・・・どう?」

「優等生のテメーらしいな。そこは任せた。しくじんなよ」

「任せて頂戴」

 

 

 

次の日

 

「か、賭けだぁあ!!?」

 

朝から前原君の絶叫が教室中に響き渡った。その原因である磯貝君は申し訳なさそうに苦笑いをしていた。

 

「なんで図書室で勉強してただけでそんなことになるんだよ!」

「昨日図書室で五英傑とばったり会ってな。そこでトラブルというか、煽られたというか・・・ちょっと軽めに反撃したらそんな話になってな」

「すみません・・・。ついムキになって私が言い返したらこんなことに」

「奥田さんは悪くないよ。だいたい賭けの話自体向こうから言い出したんだし。反撃もそのあとだよ。奥田さんも磯貝も悪くないって」

 

話によれば図書室で勉強していたら浅野君を除く五英傑がやってきてE組を追い出そうとしたらしい。そこで奥田さんが啖呵を切り、それに何を思ったのか五英傑から賭けの話が出たとのこと。何も言わずにしてたら命を懸けてもいいとか言ってきたのでちょっと脅したらこんな事態に・・・ということだとか。

 

「命賭けていいって・・・俺、アイツの命のために契約したんだぞ。何考えてんだ」

「恩知らずにもほどがあるよ」

「まあ、向こうは知らないわけだし。それでさっきA組からメールが来たんだけどな、賭けのルールを明確にしてきたんだ」

 

磯貝君が見せた携帯のメール文にはこう書かれていた。

 

・勝負は5教科。より多くの学年トップを取ったクラスを勝者とする。

・勝った方は負けた方に一つだけ命令を下せる。

 

と随分と簡潔なものだった。

 

「なんでもひとつだけ?」

「なんかえらい少ないな」

 

そう話しているとチャイムが鳴り、私たちはバラバラと自分の席に着席した。全員着席したところで殺せんせーが教室へと入って来る。

 

「おはようございます。今日は皆さんに大事な話があります」

 

殺せんせーの顔色は真剣な物だったけれど、この言い回しに既視感を覚えた。

 

「今日の先生のごはんはロシアでぺリメニがいいですか?オーストラリアでカンガルーのミートパイがいいですか?はい、中村さん!」

「本気でどっちでもええわ!!」

「その通り!どっちでもいいのです!」

 

なんか前にも見たことある流れだ・・・。そんな流れに呆れつつ片岡さんが手を挙げて尋ねた。多分聞きたいのは私も思っていることだ。

 

「あの殺せんせー。このしょうもない二択の話があるってことは転校生が来るという事ですか」

 

そう聞かれた殺せんせーはすっ、と元の表情に戻り

 

「転校生・・・とはちょっと言いずらいですかね。入ってきなさい」

 

殺せんせーに呼ばれて1人の女の子が入ってきた。髪はピンク色で目は小さく、大きな丸鼻にはニキビ跡が付いている。はりぼったい唇に張ったエラ。悪いけどお世辞にも美人とは言い難い少女。そんな彼女は教卓の目の前に立つと元気よく大きな声で挨拶をした。

 

「おはようございます!自・マチルダ・律と申しますダス!よろしくお願いするダス!」

 

挨拶が済み、彼女は頭を上げるが、私たちは何もリアクションできなかった。代わりに心の中で叫んだ。

 

「誰!!??」

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