「渚君、聞きたいことあるんだけど、あのタコさぁ、タコとかいったら怒るかな?」
「うーん、むしろ逆かな。自画像タコだし、この前校庭に穴掘って顔出して『タコつぼ』って一発ギャグやってたし、先生にとってちょっとしたトレードマークらしいよ」
「ふーん。そーだ、くだらねーこと考えた」
「カルマ君、次は何を企んでるの?」
「俺さぁ、嬉しかったんだ。ただのモンスターだったらどうしようかと思ってたけど案外ちゃんとした先生で。ちゃんとした先生を殺せるなんてさ。前の先生は自分で勝手に死んじゃったから」
「・・・どういうこと?」
「あ、ごめん。俺、用事思い出したからこの辺で。じゃーね渚君」
「え、ちょ、カルマ君!!」
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結界を歩いていると声が聞こえてきた。
「やだやだやだぁー!!」
「な、なんなんだよこのバケモン!!」
「あれって倉橋と菅谷・・・?」
「なんで二人ともここに?」
「いけない!」
倉橋さんと菅谷くんを襲っている使い魔に一撃加えて払いのけた。
「大丈夫二人とも!」
「マミちゃん!こわかったよー!」
「こ、腰が抜けた・・・何なんだよココ」
二人の元へ駆け寄り怪我がないことを確認する。よかった、なんにもなくて。
「にしてもどうしてここにいるの?」
「えっとね~キュゥべえっていう子に案内されたんだ」
片岡さんの疑問に答えるようにキュゥべえが倉橋さんの後ろからひょっこりと顔をだした。
「アンタ、いつの間にいなくなってたの!?」
「君たちを付けている存在に気が付いていたからね。僕が二人を案内してあげてたのさ」
「案内って・・・それで二人に何かあったらどうするのよ!」
片岡さんがキュゥべえに怒りを示すけれど、キュゥべえはとくに反省とかはしてなかった。昔からそうなのよねぇ・・・
と、いうかもしかして・・・
「結界内にマミがいるのはわかっていたからね。現に助けに来てくれただろ?」
「現に・・・ってなんていうか、お前ってなんか無責任だな」
「ねぇ巴さん、コイツなんとかならないの?」
「え?」
ちょっと頭抱えていて、投げかけられた疑問に答えられなかった。
「ごめんなさい聞きたいことが・・・菅谷君、一ついい?」
「ん、なに?」
「もしかして・・・あなたもキュゥべえが見えてたりするの?」
「見えてるけど・・・え、見えちゃいけない奴?」
菅谷くんが怯えてキュゥべえを指さした。あ~、そっかぁ・・・倉橋さん菅谷君もか・・・なんだかますます頭が痛くなってきた。
「見える見えないでなんかあんのか?」
「・・・キュゥべえが見えるのは魔法少女の資格がある子だけなの」
「へー。特別って感じ?」
「そうね。それに男の子でも見えることあるんだー、って無邪気に思っていたけど・・・ここまで多いとは・・・」
「え、神崎さんも確か見えていたぞ」
「は!?神崎さんも!?」
岡島君の爆弾発言に一瞬クラッと来た。いや、男の子たちよりかは自然だけどねぇ・・・眩暈がしてくる。こうなったらいっそクラス全員にキュゥべえが見えるか聞いてみるべきね。・・・みんな見えてそうだなぁ、この流れだと。
「おう、なんかキュゥべえを見て死神みたいだって」
「死神ねぇ。なあ、キュゥべえ。願い事叶えるとかいって本当は俺たちの魂を獲ろうとか考えているんじゃないだろうな」
「それなら安心してくれ、三村航輝。別に僕たちは君たちの魂を獲ろうなんて魂胆はない。巴マミを見てみなよ。彼女は今でも元気に活動している。それは彼女の魂が彼女の元にあるって証拠にならないかな?」
「でも、死んだあとで奪うとか・・・」
「僕たちは魔法少女たちの魂を奪ったことなんて一度もない。それに魂は死んだら消滅する。僕たちの概念に天国も地獄もない。それだけだよ」
「よくわかんねぇけど・・・信用していいんだよな?」
「ああ、君たちの想像しうる死神像とはかけ離れているとは思うよ」
「って言ってるけどマミっち本当なの?」
呼びかけられて私は我に返った。あ、どうしよう。また話聞いてなかった・・・。
「え?ええ、キュゥべえは私の友達だから・・・」
「マミっち・・・頭痛そうだけど大丈夫?もしかして体調悪いの?」
「大丈夫。ちょっと候補の子が多すぎて眩暈がしてきただけだから・・・」
みんなは戸惑ったような、困惑したような顔をしていた。
「魔法少女が多すぎると何か問題でもあるのか?」
磯貝君の質問に答えるべく、私は体制を整えて話を始めた。
「杉野君と不破さんには話したんだけど、魔女を倒すとそれなりの見返りが来るの。それを巡って他の魔法少女とトラブルになることが多いの。だからこの人数が一気に契約するとなると内ゲバが発生しそうで・・・ちょっと嫌なのよ」
「見返りってグリーフシードだっけ?それってそんなに大事なの?」
「ええ、必要よ不破さん。グリーフシードは魔法少女の魔力を回復してくれるアイテムなの。魔力が枯渇すると戦いに不利になって命を落としかねない・・・。だからグリーフシードを優先で動く魔法少女もいるの」
「つまり・・・貴重なMP回復アイテムってことか?」
「そう思ってくれたらいいわ。それの奪い合いって殺し合いになりそうなことも・・・」
「ますます任侠映画だな・・・」
「だから増えすぎるのも困るってことなの」
みんなにそんな説明をしていると、キュゥべえがこっちに顔を向けた。
「マミ、君は以前、魔法少女の仲間が増えるのは喜ばしいことだと、ムギュ」
「キュゥべえ!余計なこと言わなくていいの!いくらなんでも限度ってもんがあるわ」
「わかったよ」
キュゥべえの口を塞いでいた手を放して自由にさせると、今度は矢田さんの質問が来た。
「それじゃあ、他の魔法少女とは仲良くできないの・・・?」
「・・・そんなことないけど、結局は離ればなれになることばっかりなの。・・・前は弟子とかもいたんだけどな」
「巴・・・」
・・・少し暗くしちゃったわね。気合、入れなおさないと。
「私の昔話はいいから、とっとと魔女のところに行くわよ。ぐずぐずしてると魔女に逃げられるわ」
みんなは顔を見合わせてふっっと笑った。
「おう!しっかり案内してくれよ!巴・・・先輩?師匠?」
「巴でいいわよ。もう、調子いいんだから」
それでも、なんだか嬉しくなっていた。私は倉橋さんと菅谷君を加えた11人を誘導しながら奥へと進んでいった。
「な、なかなか当たらねぇ!」
「敵の動きをよく見て!この鈍いのに当たらなかったら殺せんせーだって殺せないわ」
「すげぇ。烏間先生みたいなこと言ってる」
「そりゃそうよ。似たような事言うに決まってるわ。・・・そういってるうちに・・・ついた、ここね」
魔女の反応を強く感じ取り、その先をマスケット銃でこじ開けて突破する。魔女への道が切り開かれ、私はみんなに静かについてくるように促した。
最深部までたどり着き、開かれた空間にでた。下を見下ろして目にしたのは足元の泥をぐちゃぐちゃとまき散らす、煌びやかな衣装に包まれた悪趣味全開のダチョウのような魔女だった。幸いにもこちらには気が付いてないみたい。
「見て、あれが魔女よ」
「うわっ・・・キモ・・・」
「あんな鳥みたことない・・・」
「マミちゃん。あんなのと戦っているの?」
「大丈夫、負けるもんですか」
リボンを解き放ち、みんなを守るためのドームを作り出した。
「見てて、そこなら安全だから」
私は颯爽と下りて魔女と対峙する。不愉快な奇声が私の耳をつんざく。けど、それくらいじゃ私は怖じ気つかない。帽子を外してマスケット銃を沢山生成していく。
さぁーて、すばしっこい子には罠を張り巡らせておきましょうかね?
マスケット銃を手に持ち、まずは威嚇射撃を一発放とうとしたときだった。
うしろから悪魔が持ちそうな三叉の槍が飛んできて魔女を串刺しにしてそのまま壁に突き刺さった。魔女も何が起きたのか理解できずにじたばたと蠢いていた。な、なにがあったの・・・?
「い、今のは・・・」
「へぇ、あれが魔女?」
聞いたことのある声がして、振り向いた。そこにいたのは
黒いマントに紫の服、赤い矢印型のソウルジェムを胸元につけた男の子・・・。
「あ、ど~も。昨日契約したばっかだからさ、色々教えてくれない?巴先輩?」
「か、カルマ君!?」
な、なんでカルマ君がここに!?
「カルマが魔法少女!?・・・少女?」
「呼び名としては“魔法少年”だね。彼もマミと同類といったところかな」
カルマ君はリボンのドームで守られているみんなをみて、ニタッと笑った。
「ねぇ、巴さん。クラスのやつら使い魔のエサにするつもり?」
「・・・え?何を言ってるの?」
「だって魔女退治なんて危険なものにあんな大勢巻き込むだなんて・・・どうかしてるとしか思えないよ?」
あまりに正論で言い返せない・・・けど、
「彼らはキュゥべえに選ばれたの。実態を見て決めるのも悪い事じゃないと思うわ」
「ふーん」
カルマ君はリボンのドームを見つめていた。
「んじゃ、思い知らせてやったらどうかな?」
いじわるそうな笑みを見せ、三叉槍をドームに向かって投げた。いけない!すぐにマスケット銃で槍を撃ち落として難を逃れることができたけど・・・
「あ、あなた何してるの!?」
「何って・・・魔女退治は危険だよって教えてあげたんだよ。それに当てるつもりはなかったんだけど・・・巴さんベテラン?ならわかんじゃない?」
「だからってそんなこと・・・それに私がベテランっていつ知ったの?」
「知ったというか・・・動きが歴長そうだなって・・・あってる?」
「・・・どこから見てたの?」
「巴さんが自殺しそになってたサラリーマン助けた所。大した正義感だねぇ~」
でもさぁ、とカルマ君は続けた。
「願い叶えてもらったからって無理して知らない人助ける必要ないよね?助けられる範囲なんて限られるわけだし。わざわざ出向いてまで魔女を見つけるとか・・・魔女に操られた人保護したり、なーんも見返りもない使い魔だけのも倒すとか・・・大層ご立派なヒーローだねぇ、巴さん」
『魔女に取りつかれようがつかれてまいが死にたがる奴は死んじまうんだ。そんなやつら命張って助ける必要あるのかよ?ほっといて使い魔に食わせてグリーフシードの元にしちまえばいいんだよ』
マスケット銃を持つ手が・・・震える。
「あなたも・・・自殺しそうな人は使い魔に食べられればいいなんて思ってるの?」
「いやいや、俺は巴さんの行動理念否定してるつもりないよ。それとも何、俺とやりあう?」
カルマ君は槍を肩に担いで挑発してきた。頭に血が上りそうになるけど・・・
「いいえ、銃を向けるべきはあなたじゃない。魔女よ」
串刺しにされた魔女はじたばたと蠢きながらなんとか脱出しようとしていた。
「ま、そりゃあね。じゃあ」
カルマ君が射線上に飛び出したと思ったら、飛び上がり魔女の頭に三叉槍を突き刺した。そのままひねりながら地面に降りて魔女の頭をねじ切ってしまった。ちぎれた首から黒い霧を出しながら魔女は爆散し、結界は崩れていった。
「なーんだ、大したことないや。まだあの「先生」の方が殺り応えあるわ」
そういって去ろうとしたカルマ君を
「おい・・・」
前原君が止めた。
「巴と対立する必要なかったろ。なんであんなこと言ったりしたんだよ」
「なんでって・・・俺としては忠告のつもりだったけど?それとも昨日契約したてのルーキーは何も口出すなってこと?巴さん本人ならともかく契約すらしてないアンタらにどうこういわれる筋合いはないけどねぇ」
「てめぇ・・・!」
前原君が何か言い返そうとしたのを止めて前にでた。
「なってないんじゃないの?口出すなっていうならみんなに攻撃する必要はなかったはずよ」
「わかってないな~。そんな大人数連れだって魔女退治とか観光ツアーじゃああるまいし。あ、そっか、巴さん自慢したいんでしょ?「私ってこんなにも強いんだよ~」って」
「そんなことない!」
「本当・・・?本当なら、」
カルマ君の背後にいくつもの槍が出現し、
「みんなを守りながら戦えるんだよね?」
一斉に飛んできたのだった。
「みんな!巻き込まれない内に逃げて!」
私も負けじとマスケット銃を出現させて飛んでくる槍を撃ち落としていく。喧嘩三昧とは聞いていたけど隙がない・・・。彼・・・私がリボンで何かしようとしてるの見破っているのかも。・・・みんなはちゃんと逃げれたのかしら。
「おおっと」
一瞬の隙を突かれ、一本の槍が高速で私の横を通り過ぎ、矢田さんと倉橋さんの逃げた先の頭上の壁に突き刺さった。二人ともしゃがんでいたし、刺さったところは矢田さんの身長には届かない位置だったけど・・・
「勝負アリ・・・だね」
背後でカルマ君がのど元に槍の先を向けていた。勝敗は誰の目にも明らかだった・・・。
「・・・私の負けよ。で、どうするの?縄張りでも奪う気?」
「まさか。これからも仲良くしよーね巴さん。次は足手まとい連れずに・・・・さ」
今日、教室を出たときみたいにカルマ君はにこやかな笑顔でその場を去って行った。姿が見えなくなったと同時に気が抜けてしまい、へたり込んでしまった。
「巴さん!!大丈夫!?」
「大丈夫。ケガとかしてないし・・・」
「それはよかった・・・」
隠れてたみんなが駆けつけてくれて、誰も、矢田さんも倉橋さんもケガがなくて少し頬がゆるんでしまう。
「ごめんね。カッコ悪いところ見せちゃったわね・・・」
「いいって!マミちゃんは悪くないよ」
「そーそー。カルマが謎に突っかかったりするから」
「もういいって杉野君。確かに目的が読めないのは怖いけど・・・彼が敵対しないっていうのなら・・・一旦は飲み込むしかないわ」
「いいのかよ、巴はそれで」
「また敵対してきたら・・・今度は容赦しないわ。だから心配しないで」
何人かは・・・片岡さんとかは納得のいかない顔をしていたけど、私の説得に憤りを飲み込んでくれた。
「私・・・カルマ君と同じクラスになるの初めてで彼の事よくわからないの。昨年同じクラスだったの・・・誰?」
「あたしと倉橋っちと岡島かな、この中だと」
岡野さんは腕組をして考え込んでした。
「うーん・・・話したことないかもなぁ。なんか、ほら大野先生っていたでしょ、数学の。アイツのおきにって感じだったけど急に見捨てたって感じ・・・だったかな?」
「私は・・・挨拶ぐらいしかないな~。ひなたちゃんみたいな詳しい話はないな~」
「俺は・・・体育で組んだことあるぐらいだな。でも喋ったことねーや。E組でカルマの事知ってんの渚くらいじゃね?」
「渚君?」
「おう、なんかよく隣にいたような・・・どうだったかな?」
渚君か・・・明日きいてみないとね。
その日はそのまま解散することになった。みんなの気がおちてしまったけれど・・・サラリーマンの人を助けられたんだから良しとしましょう。
翌日
「おはよー、みんな」
教室の扉は開けたとき、目に飛び込んできたのは教卓に上に串刺しにされたタコだった。既に来ている人たちは釈然としない顔で席についていた。
「どーよ、色つやのいいタコでしょ?殺したくなるぐらいに」
昨日とは打って変わってカルマ君がもうすでに席についていてタコを指さしていた。
「これ・・・カルマ君が・・・?なんで・・・」
「暗殺に使うんだよ。それとも巴さん、俺の殺し方に文句でもあんの?」
「・・・いえ」
何もいうことはない。私は黙って席についた。隣なの・・・やりずらいわね。
そんなこんなでHRの時間を告げるチャイムが鳴り、殺せんせーが入ってきた。
「おはようございます」
みんな例のアレのことで何も言えなかった。
「・・・ん?どうかしましたか、みなさん」
先生が教卓の上のタコを見つけてしまった。
「あっごめーん!殺せんせーと間違えて殺しちゃった。捨てとくから持ってきてよ」
「・・・わかりました」
先生はカルマ君の要求に素直に従ってタコをカルマ君の元へ届けてくれようとしていた。殺せんせー・・・本当にいいの?なんだか、納得がいかない・・・。
突然、先生の姿が消え、ミサイルやら小麦粉やらを持って再び現れた。
「見せてあげましょう。このドリル触手の威力と自衛隊から奪っておいたミサイルの火力を」
目の前でミサイルから火が噴き出し、そこに先生の触手が何か丸いものを突きながら高速回転で火に当てていた。
「先生は暗殺者を決して無事では帰さない」
カルマ君の口に嵌められていたのはアツアツのタコ焼きだった。・・・ミサイルでタコ焼き??マッハとかいう問題じゃないような・・・
「その顔色では朝食を食べていないでしょう。それを食べれば健康優良児に近づきますね」
カルマ君はアツアツのタコ焼きを吐き出してせき込みながら先生を睨みつけている。それでも先生は気にすることなく言葉を放った。
「先生はね、手入れをするのです。錆びて鈍った暗殺者の刃を。今日一日本気で殺しに来るがいい。そのたびに先生は君を手入れしよう」
それは・・・先生からカルマ君への宣戦布告だった。
「放課後までに君の心と体をピカピカに磨いてあげよう」
続きますよ
魔女図鑑
Inghel
錦の魔女 性質は見返し
煌びやかな結界に暮らす悪趣味で派手な飛べない魔女
結界の宝石や金よりも己がもっとも美しいと思い込み、今日も足元が泥だらけの結界で自慢をしに練り歩く。
この魔女を倒したければパンを渡すとよい
パンを踏み台にして泥を回避しようとする魔女は最後、泥のそこへと沈んでいく
そこに救いの手を差し伸べる小鳥は存在しない