ぎゃるげー・ざ・ろっく!   作:ドラクマzeq

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♪11 山田リョウ、星夜鷹。問題児二人。ただし最強。

 

 『この店で待ってるから来て』

 

 そう、一言だけ書かれたロイン通知が届いたのでスマホを開くと、そのメッセージにはLa Chic(ラシック)というカフェの位置情報が送りつけられていた。

 送り主の名はリョウ。アイコンには謎に傾いたはにわが使われている。

 山田さんからロインが来たのは初めてだな。直前の会話とか『あ』だし。俺も『い』って返してる。

 

 にしても休日に呼び出しとは……もしかして、このお洒落っぽいカフェで奢ってくれるのかな。今月はSICK HACKのせいで金がもうないし、奢ってくれるなら是非もなし。勝手にクズっぽいとか思っててすみません。

 

 『すぐ行きます』と猫のスタンプを添えてメッセージを返した後、俺はメッセージ通り、すぐに出かける準備を始めた。

 

 

 

 

 ▽

 

 

 

 La Chic(ラシック)に到着すると、まず、カフェの入り口に飾られてある華やかな花々が俺を迎え入れた。いかにもお洒落カフェですって感じだ。

 店内へと足を踏み入れると、山田さんが奥の方の窓側席に一人で着席しているのが目に入る。

 

「あっ、星。こっちこっち」

 

 俺は、山田さんに手招きされ、隣の席へと着く。

 

「待ってたよ」

 

 山田さんは気持ちの悪い笑みを浮かべて、むしゃむしゃとカレーを頬張っている。こんなに笑みを浮かべる山田さんを初めて見たからそう感じるのか、それとも俺の勘が警鐘を鳴らしているのか。その答えは神のみぞ知るだが、いずれにせよ俺の胸には言いしれない不安がよぎる。

 

「珍しい……ってか初めてですよね。二人で話すの。何か俺に特別な用でもありました?」

 

 緊張しながら、山田さんに問いかけると、山田さんは一瞬だけ真剣な表情を見せたが、すぐにまたあの独特な笑みを浮かべた。

 

「後輩を労うのも先輩の仕事」

 

 山田さん……! 俺、山田さんの事勘違いしてたよ。バイトで店長さんに怒鳴られまくってる俺のことを見て、俺には失望してるものだと思ってたけど、こんなにも俺のことを気にかけてくれてたなんて……

 

「山田さん……俺、期待に応えられるよう頑張りますよ!」

 

「……? まぁ、頑張れ」

 

 山田さんはそう言いながら、もっきゅもっきゅとカレーを食べ続けている。まるで私のことなど気にするなと言わんばかりの食べっぷりだ。今日は奢りだ。そんな声が口に出されずとも聞こえてくる。

 

「マジで感謝します! 山田さん! いただきます!」

 

 そう言って俺は、ウェイターさんが運んできてくれたカレーに口をつける。ふわりと広がるスパイシーな香りと、豊かな味わいに一口で心を奪われた。濃厚で深みのあるカレーソースが絶妙に絡んだご飯が、口の中でほどよい熱さと共に広がり、疲れた心と体が一気にリフレッシュされる。

 

「めちゃくちゃ美味いですね! このカレー!」

 

「気に入ってもらえてよかった。ゆっくり楽しんでね」

 

 ああ……伊地知さんに山田さん。俺はなんて良い先輩を持ったんだ。前世でどれだけ徳を積めば、こんなにも素敵な人達に巡り合えるんだろう。

 

 それからは俺と山田さんは無言でぱくぱくとカレーを食べ続けた。どこかフィーリングがあったんだろう。基本、俺は誰と無言でいようと特に気にならない(というか存在自体を気にしない)が、山田さんといると、その無言の時間が妙に心地よく感じられる。

 

「「ごちそうさま」」

 

 カレーをしっかり平らげた後、山田さんと互いに視線を交わす。さりげない満足感が漂う中、山田さんはにっこりと笑って「ごちそうさま」と再度俺に言った。何故?

 

「……ごちそう、さま、でした」

 

 おかしい。声が震える。

 

「今日はありがとう」

 

 違和感。

 

「星のおかげで、助かった」

 

 違和感――

 

「どういう、意味ですか?」

 

「今日お金ないから奢って」

 

「殺す」

 

 

 

 ▽

 

 

 

「…………」

「…………」

 

 あれから俺と山田さんは、一息つこうと、とりあえずコーヒーを頼んで黄昏ていた。カフェの静かな空気の中、互いに無言でコーヒーをすする時間が流れる。フィーリングってのは悪い意味で合っていたらしい。今は先ほどと打って変わってこの無言の時間が腹立たしい。

 

「まさか星もお金がないとは。ロックだね」

 

「山田さんと一緒にしないでくださいよ。というか、なんでお金もないのに外食なんて贅沢を?」

 

「いつもは虹夏が助けてくれる」

 

「伊地知さんに謝れ」

 

「前は来てくれたんだけど、今日は来てくれなかった」

 

 そりゃ毎回奢らされてたら来るものも来ないだろう。

 

「「はぁ」」

 

 俺と山田さんの溜息が重なる。溜息をつきたいのはこっちだ。先輩に奢ってもらえると思って釣られたら、まさか逆にたかられるとは思わなかった。

 

 だがしかし、この状況。なんとかしなければならないのは明確だ。

 こうなったら……もう――

 

「「逃げるしか」」

 

 声が、重なる。まさか、この人……俺と同じことを……? この危機的状況の中、真っ先に思い浮かべたのが無銭飲食だって……? そんなのもう――

 

 俺と山田さんの目が、ぱちりと合う。否、重なる。

 そして、その瞬間、俺と山田さんの脳内に流れる、三年間の青い春。

 

 

 

 

『虹夏、お金貸して』

 

『伊地知さん、セパタクローしよう』

 

『虹夏、ご飯作って』

 

『伊地知さん、今日泊まるね』

 

『虹夏』

『伊地知さん』

 

 

 

 そうだ――俺たちは、二人で最強だった。

 

 

 

「「ッ!」」

 

 ガシっと俺と山田さん、否、リョウはお互いの手を掴み合う。言葉は不要で、ただその握手に込められた力強い意志が、これからの共闘の証となった。

 

 そうだ――俺たちは、親友で最強なんだ。

 

「リョウ、逃走経路は?」

 

「店長が他の客の注文を取った時がチャンス」

 

「よし、外に出たら二手に分かれよう。俺が右で、リョウが左」

 

「待って。それじゃ私が捕まる。流石に身体能力で夜鷹に勝てない」

 

「安心しろ。俺が捕まってもリョウのことは絶対に言わねぇ」

 

「私は言う」

 

「てめぇこの野郎!」

 

「なにをぅ!」

 

 

「お客様、店内ではお静かにお願いします」

 

 

「「すみません」」

 

 店員さんの静かな注意を受けて、俺たちは一瞬で現実に引き戻された。

 

「閑話休題」

 

「使い方間違ってるし、むしろこっちが本題だろ。どうするよ。俺らどっちも金ないじゃん」

 

「虹夏に頼るしかない」

 

「俺呼ぶ前に断られてるんだろ? 無理だろ」

 

「夜鷹から言えばいけるかも」

 

 それを聞いて、確かにそうかもしれないと思い、ロインを開いて伊地知さんへとメッセージを送る。

 リョウは今まで散々迷惑かけた分断られただけだろうし、俺ならギリ……

 

 『伊地知さんへ。助けてください。お金がなくて、店から出られません』

 『星君は一度、痛い目を見るといいよ』

 

「詰んだわ」

 

「ぷふっ、虹夏からの信頼ゼロ」

 

 お前も笑ってる場合じゃねぇよ。

 

「え、どうすんのこれ」

 

「お、お、お、お、おつちいて。夜鷹」

 

 お前が落ち着け。

 

「店長さんに頼むとか……?」

 

「許してくれるかな」

 

「ここのじゃねぇよ。星歌さんだ。この時間、まだスターリー空いてないだろ?」

 

 スターリーのチケット販売時間は午後五時から。現在時刻は午後二時丁度。休日に昼まで寝てる人だろうと、起きててもおかしくはない時間帯だ。

 

「店長、起きてるかな」

 

「流石に起きてるだろ。電話してみる」

 

 俺は電話帳の数少ない登録者の中から、星歌さんを探し出し、連絡する。数回の呼び出し音の後、ようやく店長が電話に出た。

 

「あ゛?」

 

 寝起き悪! 声はかすれていて、明らかに眠そうだ。今の状態の店長さんに頼むのは悪手な気がする。

 

「あのー、お金って借りれます?」

 

 俺がテンパってそう言った瞬間、電話はぶち切られた。

 

「ごめん、なんかミスったわ」

 

「最悪」

 

 どうしたものか。これじゃあ本当に帰れない。

 

「ぼ、ぼっちに……」

 

 山田リョウ。こいつ外道すぎる……後輩を二人も地獄に連れ込もうとするなんて。流石に後藤さんが可哀そうだ。あの子言われたら本当に来そうだし、止めておこう。

 

「まぁ、待て。ここは最終手段を取るしかない」

 

「なに」

 

「泣き落としだ」

 

 

 

 

「「助けて! にじなつぅぅぅ!」」

 

「誰その女ぁ!」

 

 スマホの電話口からは、怒鳴りツッコミを決める伊地知さんの声が一つ。

 

「虹夏、あんまクズ共を甘やかすな」

 

 冷静に指摘する店長さんの声が一つ。

 

「いや、違うんです! 俺はリョウに騙されて! 詐欺ですよ! 詐欺!」

 

「ち、違う。私は一緒に食事しないか誘っただけ。私は悪くない」

 

「大体なんとなく分かったよ……二人してもう……迎えに行ったげるから! 大人しく待ってて!」

 

 天使だ。天使がここにいる。これからは伊地知さんを下北沢の大天使と名付けて敬おう。

 

 

 

 ▽

 

 

 

「二人とも、次はないからね」

 

「「すみません」」

 

 無事、La Chic(ラシック)から救出された俺とリョウは、伊地知さんと並んで三人で歩いていた。

 

「でも、二人。仲良くなったね?」

 

 伊地知さんが、軽く微笑みながら俺とリョウを見た。

 

「うん、マブ」

 

「マブなんだ……でもでも、親友は私だよねっ?」

 

 伊地知さんはリョウの顔を下から覗き込み、いたずらっぽく目を輝かせながら問いかける。

 

「もちろん。虹夏は親友。夜鷹は超親友」

 

「たった数日で超えられてる!?」

 

 伊地知さんが体を仰け反らせて驚きの声を上げると、リョウはクスクスと笑った。そのやり取りに、俺もつられて笑顔になる。

 

「嫉妬?」

 

「そんなんじゃないけどっ! でも、二人仲良いのいいなぁ~」

 

「虹夏も仲良くなればいい」

 

「え?」

 

 リョウのその言葉に、伊地知さんは俺を見て「そうだねっ! じゃあ私も星君のこと、夜鷹君って呼んじゃおっかな~!」と元気に笑いかけてくる。

 

「なら夜鷹も虹夏って言うべき」

 

「いや、ハードル高すぎ」

 

「私は呼び捨てなのに?」

 

「自分のハードルをよく見てみるといい。地の底すぎて飛び越えてたことに気づかなかったよ」

 

「酷い」

 

「本当に私より仲良くなってない……? 冗談だよね? リョウ~。それに、星君も。私そういう先輩! 後輩! みたいなの気にしないよっ」

 

 伊地知さんがちょっと拗ねたように言いながら、両手を腰に当てて顔をしかめた。

 とはいえ、リョウと違って伊地知さんは決して遠慮のいらないクズではない。むしろ真逆。大天使だ。そんな大天使に対して名前呼び……? 不敬すぎる。

 

「大天使ニジカエル……」

 

「何で!? 普通に呼んでよ~!」

 

 伊地知さんは、からかわれていると思ったのか、顔を少し赤くしながらも、涙目で名前を呼ぶよう促してくる。

 

 くっ、そんな顔されたら断れない……

 

「よろしくお願いします。虹夏……さん」

 

「ふふ、改めてよろしくね! 夜鷹君! あ、今回のご飯代はお給料から引いとくってお姉ちゃんが言ってたよ~」

 

 おのれ山田リョウめ。この恨みはいつか晴らしてやる。




呪術パロです。
ちなみに山田はちゃんと(テンションの)やばい時の星君を嗅ぎ分ける嗅覚があるので、本当にやばい時は逃げます。
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