突如ディーノが変貌した電気の怪人・ケラウノスディストーグ。
危険を察知したグレンは咄嗟にケラウノスディストーグへ殴り掛かろうとする。
予め構えていた右拳をストレートパンチとして繰り出した。
「オラァ!」
「そんなもの効くか愚か者ッ!!」
「ぐぅ!?」
殴り飛ばそうとするがその胸板に受け止められ、逆にケラウノスディストーグに殴り返される。
勢いあまって近くの作業机に吹っ飛ばされ、工具を床へとぶちまけながら倒れ込む。
そこへトツカが駆け寄ってくる。
「グレン! 大丈夫!?」
「一応な……だが、なんだありゃ!? 本当に怪物に変貌するとは!」
「あれはディストーグ。さっきの石みたいなものによって変貌した超人……というとり、怪人よ!」
グレンを立ち上がらせたトツカは無理やり立ち上がらせると、咄嗟に物陰へ引っ張った。
その瞬間、先程まで自分達がいた場所に落雷が落ちた。
いやそうではない、ケラウノスディストーグの背中の突起物から電気が走り、電撃として撃ちだされたのだ。
飛び道具にしては威力が強すぎるそれに肝が冷えながらグレンは口を開いた。
「随分とそのディストーグとやらに詳しいようだが」
「あれが私の探し物。グレイヴクォーツがばら撒かれている世界を追ってここへやってきたの」
「何のために?」
「モチロン、ばら撒いている関係者一切合切ぶん殴るため!」
「強欲なこった……なんでそこまでやる必要があるんだよ!」
ケラウノスディストーグが放出する雷撃を掻い潜りながら、グレンとトツカは物陰から飛び出して走る。
すぐ後ろでは雷が焼き尽くさんと降り続ける中、トツカは自分の思いを口にする。
「許せないからよ、せっかく人間が発明した英知の結晶を誰かの不幸のために使うってことが」
「お前……」
「だから私は、私達は戦う事を決めた。そのためにここまで来たんだもの」
真っ直ぐとした瞳で語るトツカを見て、何かを感じるグレン。
放電される落雷の雨を一気に走り抜けた二人を見て、ケラウノスディストーグは高笑いをする。
「ハッハハハハハ! 貧弱な人間の貴様らがこの俺に勝とうなんて考えないことだなぁ!」
逃げるしかない二人に対してケラウノスディストーグ雷撃を放つ。
近づくことすら危うい状況の中、グレンはトツカへと言った。
「たっく、そこまで聞かされちゃあほっとくわけにはいかないなぁ」
「え?」
「俺にもその悪党退治、一つ噛ませろよ。腕っぷしは折り紙付きだぜ」
自慢げに協力の言葉を口にしたグレン、それをトツカは心底驚いたような表情を浮かべた。
暫しの間グレンの顔を見つめると、ふふっと笑い越えを噴き出した。
「あなた、変な人ね」
「な、なんだよ」
「でもそんな変なあなただからこそ素敵だって思うのよ」
グレンに対し、したり顔な笑顔を向けたトツカは腕につけていたスマートウォッチを手を伸ばし、起動させる。
すぐ傍にはこちらへと迫るケラウノスディストーグの姿があり、その手には稲妻が迸った手を地面へと殴りつけようとしていた。
「ふぅん! 焼き焦げろ!!」
「「ッ!?」」
身構える二人へ、ケラウノスディストーグが地面へ向けて高圧電流を流そうとした瞬間だった。
けたたましい排気音と共に、トツカの乗っていた赤いバイクが現れ、その前輪でケラウノスディストーグを殴りつけたのだ。
勢いよく吹っ飛ばされるケラウノスディストーグを他所に、駆け付けたバイクへトツカは駆け寄り、後部に取り付けられたアタッシェケースに手をかける。
――中から取り出されたのは、一台の大き目のバックルをしたベルトと、三つの立方体のアイテム。
ベルトの方は三つの液晶画面が横についた長方形のバックルで、上部には三つの装填口のようなものが取り付けられている。
立方体の方はそれぞれ深緑色、赤色、黄色と分けられており、先程にベルトへ入れられそうだと本能的に悟った。
トツカから受け取った二つのアイテムを手にして、グレンは質問する。
「これっていったい?」
「仮面ライダーの力を宿したライドクォーツと私が開発したトリニティドライバー第4号機。ディストーグを倒せるとっておき」
「はぁん、何だかわからねえが今は緊急時だ。ありがたく使わせてもらうぜ」
グレンは受け取ったアイテムのうちの一つの『トリニティドライバー』を腰部に宛がうと、そのままベルトが伸びて装着される。
次に渡された三つの立方体型アイテム『ライドクォーツ』をそれぞれ装填していく。
【Trinity-Driver】
【1GO・KUUGA・ZERO-ONE】
【
装填を知らせる電子音と、鼓動を揺るがす待機音声が流れる中、トツカが叫ぶ。
「合言葉はこう! 変身!」
「こうか? ――変身!」
グレンの掛け声と共に、ベルトから三体のホログラムが映し出される。
正面には深緑色を基調とした飛蝗の戦士――仮面ライダー1号。
右前には赤い装甲と赤い複眼を宿す超古代の戦士――仮面ライダークウガ。
左前には黄色のボディアーマーを有する最先端科学の戦士――仮面ライダーゼロワン。
三人の仮面ライダーのホログラムはグレンの体と融合し、その姿を変えていく。
銀色のラインが走った黒いアンダースーツに赤と黄色で彩られた装甲、四肢には赤い石がはめ込まれた腕輪・足輪。
触覚が生えた頭部は飛蝗の口を模したクラッシャーと赤い複眼が光り輝く。
全ての変化が終えたころにはグレンの姿は先程映し出されたホログラムの戦士達とよく似た姿へと変わっていた。
【BEGINING-STORM】
変身完了を知らせるかのように頭部の複眼が赤く光った。
仮面の戦士となったグレンは自分の姿を見てみると、トツカに尋ねた。
「なあ、コイツの名前、あるのか?」
「仮面ライダーゼクス、
「なら、今から俺は仮面ライダーゼクスってことだな」
トツカの自信満々な笑顔に仮面の下で笑いながら、変身を遂げたグレンは向き直った。
そこに立つのは今までの
異世界からもたらされた技術によって変身した、一人の仮面ライダー。
その名は『ゼクス』、『仮面ライダーゼクス』。
今ここに異国の地に降り立ったのだ。
ようやく起き上がったケラウノスディストーグが見てみると、そこに立っていたのは見慣れない異形の戦士であるゼクス。
一歩一歩こちらへ近づいてくる余裕ぶった態度が気に入らないと思い、再び電撃攻撃を仕掛ける。
「ふざけるなよ、この……ダホガァァァァァァ!!!」
背中の突起物から繰り出された電撃はゼクスへと飛んでいく。
その光景をいち早く察知したゼクスは、地面を思いっきりけり、そこから姿を消した。
驚くケラウノスディストーグは突如姿を消した相手を探すべく周囲を見回すが、背後から声をかけられる。
「後ろだ」
「何ッ!?」
「オラァ!」
振り向けばいつの間にかゼクスが背後に回っており、繰り出された鉄拳が思いっきり顔面へと炸裂する。
人間のパンチでも効きはしなかったはずなのに、駆け抜ける激痛がケラウノスディストーグの心を焦られる。
「な、なんなんだ貴様ッ!? この俺に攻撃なんて通じないはずだ!!」
「ハッ、こりゃいい。トツカの発明もなかなかいいもんじゃねえか!」
今まで聞かなかったケラウノスディストーグへ攻撃が通じ始めたことを喜ぶと、ゼクスは殴り掛かっていった。
右フック、左ストレートパンチ、足払い、かかと落とし。
ゼクスが繰り出した格闘技が次々と決まり、瞬く間に追い詰められていくケラウノスディストーグ。
「このッ、調子にのるなぁぁあ!!」
激昂したケラウノスディストーグは背中の突起物から稲妻を放ち、無作為に放電を始める。
こうなれば近づけまい、と思ったのかニヤリと笑うが、ゼクスはバク転をしながら距離を置くと、片手を拳銃のような形に構えた。
すると、ゼクスの人差し指から生まれたのは空気で作られた弾丸だった。
「ペガサスフィンガー!」
勢い良く投げた風の弾丸は不可視の速度となって、ケラウノスディストーグの背後へと向かう。
目にも止まらぬその速さにケラウノスディストーグが気づいたときにはすでに遅し、背中の突起物はゼクスが繰り出した空気の弾丸『ペガサスフィンガー』によって破壊されていたからだ。
これでは自慢の電撃が撃てない……ケラウノスディストーグは跪いて叫ぶ。
「ぐぁ!? き、貴様ァ! このディーノ・オルトランドに泥をつけたな!?」
「へっ、俺はまだなんもしちゃいないぜ? 泥をつけるのは……今からだ!」
ケラウノスディストーグに余裕ぶった声でゼクスは答えると、トリニティドライバーの側面部に備え付けられたスイッチを押す。
それと共にドライバーから電子音声が発せられた。
【BEGINING-STORM……VORTEX-POWER】
「逆転劇の始まりだ、トゥ!」
必殺の一撃を決めるための音声が鳴り響くと、ゼクスは大きく高く飛ぶ。
ケラウノスディストーグは逃げようとするが、その前にゼクスが光の速さとなって動く。
黄色、赤、緑の軌跡を描いて向かっていき、必殺の一撃を叩き込むべく片足を差し出す。
そしててケラウノスディストーグへ、勢いを利用したゼクスの必殺キックが炸裂しようとしていた。
「トライサイクロンブレイカー!」
エネルギーが蓄積された右足を繰り出す一撃『トライサイクロンブレイカー』がケラウノスディストーグへと直撃。
ゼクスの一撃を浴びたケラウノスディストーグは空中で大爆発。爆炎の中から気を失ったディーノが排出され、その首根っこをゼクスが掴み、彼を回収した。
上手く地面へと着地したゼクスはぽつりと呟いた。
「ほう、仮面ライダーか。なかなか悪くない」
ディストーグを倒した仮面ライダーの力に感心するゼクス――グレン。
ふと振り向けば、そこには勝利したことに喜ぶトツカの姿があった。
「Nice Fight!」
まるで自分の事のように喜ぶトツカの姿を見て、何処か笑わずにはいられなかったゼクスは仮面の下でほほ笑むのであった。
こうしてバルダーシティに束の間の平和な朝が取り戻せたのであった。
~~~~
――数時間後。
あのディーノが捕まり、警察に引き渡された事がバルダーシティの内部は持ちきりであった。
捕まえた人物は賞金首のグレン・ウォーダインで、これには警察を始めとしたさまざまな業界が驚いていた。
これから先、グレンの前に大きな敵が立ちはだかるかもしれない。
これはその予兆でもあり、超えなければいけない一つの試練。
だが、心配することはない。
何故なら彼の隣には、かけがえのない相棒がいるからだ。
「ねぇ、グレン」
「あん、なんだよ」
「一緒に戦ってくれること、感謝してるからね。とっても」
「フッ、まだ解決したってわけじゃないんだろ? 付き合うぜ、逆転劇はこれからだ」
賞金首の不死身の紅蓮な男の物語はまだ終わらない。
その傍らには、一人の不思議な科学者と共に。