未知の戦士・仮面ライダーに変身してから3日後。
謎の怪人・ディストーグとの勝利し、犯罪者集団の親玉をひっ捕らえたグレン。
もう一人の功績者であるトツカは、グレンとの共同生活を始めたのであった。
『World famous Davies doughnuts shop』の住居スペースの一部を借りることになり、見事この街の住人の一人となる。
グレンにとっては異性の友人が増えることになった……だが、共に生活する上で問題だったのは……。
「おいこら、起きろ。朝だぞ」
「うーん、あと10分……ねむい」
「お前が昨日起こしに来いって言ったんだろ!?」
トツカの私生活がだらしなかった事だ。
朝が弱く、頼まれて起こしに来ても起きない、おまけにベットに寝ていない……このやりとりが既に3日目だ。
タンクトップにホットパンツという薄着姿で床に寝ていた所で起きながら、トツカは起き上がると、目を擦りながら大あくびをする。
「ふわぁぁぁ……おはよう」
「おう、グッドモーニング。今度は何作っていたんだ?」
「前に来てたを直してるの、ずいぶんと前に知り合いからもらったお古だし。私が14の頃から使ってた物だから無理が来ちゃってボロボロなのよ」
「14? 失礼だけどお前今いくつよ」
「21歳」
「21……って、お前」
グレンはトツカの体をよく観察してみた。
あの時は気づかなかったが、結構魅力的なボディラインをしている。
程好く肉付いた足、キュッとしまったお尻、括れた腰、豊かな胸元。
先程のライダースーツのせいなのか、これでよく男だと勘違いしていたと思ったな、とグレンは苦笑いを浮かべた。
「改めてみると美人と言うより美女だな、と」
「どうしたの?お世辞?嬉しいけどね」
「いいから服を着ろ。うら若き乙女が彷徨いていいファッションじゃねぇよ」
「ハーイ」
グレンの言葉をけだるい感じで返すと、トツカは頭を掻きながら洗面所へと向かった。
隣人の意外な一面を知ったグレンは作業台へ視線を移すと、そこにあったのはいくつものライドクォーツとトリニティドライバー。
ライドクォーツの方を見てみると、そこには初変身の時に使った深緑色の1号クォーツ、赤色のクウガクォーツ、黄色のゼロワンクォーツの三つ以外にも見慣れないライドクォーツが置いてある様子だ。
一体このライドクォーツは何なんだろうかと思いながら、グレンはもう一方においてあったトリニティドライバーの方を手に取る。
「しっかし、これで変身した事が少し信じられねえなぁ。いやまあ、最終的に受け入れる予定なんだけどよ」
その手に持ったトリニティドライバーを見回し、先日未知なる仮面の戦士・仮面ライダーゼクスへと変身した事を思い出した。
あの時はディーノが変身した怪人が相手で、自分だけの力では太刀打ち出来なかった。
ゼクスに変身した事でその場を何とか解決できたが、そこでいくつかの疑問点は残った。
それは、トツカが何者なのかということだ。
ゼクスに変身できるトリニティドライバーとライドクォーツが一体なんなのか、そしてそのドライバーを作った彼女自身は一体何者なのか。
グレンにとっては分からない事だらけだが、ひとまずはそれを確かめるべく問いただすことにした。
ふと、グレンは昨日トツカが言った事を思い出す。
それは、アドバンスドライバーを渡されたときに言った言葉だ。
『仮面ライダーの力を宿したライドクォーツと私が開発したトリニティドライバー【第4号機】。ディストーグを倒せるとっておき』
あの時トツカが口にした言葉の中で気になったのは、『4号機』という名称を付け加えた事。
自分が手に持っているトリニティドライバーは4号機、つまり……。
「似たようなドライバーがあと三つもあって、それに対応する仮面の戦士もいるってことか?」
「なーにぶつくさ言ってるのよ、グレン」
「うおっと!?」
アドバンスドライバーの事について思案をしていたグレンを後ろからトツカが話しかけてきた。
先程の
トツカはグレンの手に持っていたアドバンスドライバーをを奪い取ると、ジト目で睨み付けてくる。
「まだ調整中だから使えないわよ。あなたに合うようにしてるんだから」
「俺に合うようにねぇ、まあそう易々と使えるわけでもないか。仮面ライダーってのは」
「あーら物分かりいいよね?」
「あんなすごい力、ポンポン使えるなんて都合からいいからな」
トリニティドライバーを再び作業台の方へ戻すトツカを横目に、グレンは軽口を叩く。
そして振り向いたトツカに問いかける。
「お前の事や仮面ライダーの事、聞いてもいいか?」
「あら、謎めいた私の素性を早速聞きたいってわけ?」
「そりゃお前、聞かざるおえないしなぁ。アンデッド・グレンがアメコミヒーロー顔負けの超人に変わっちまったわけだし」
「まあいいわよ。別に隠すことでもないし、聞きたいなら話すわ。ああ、でも」
「でも?」
「おなかペコペコだから先に朝食取らない?」
苦笑気味の笑みを向けるトツカにグレンはつられて苦笑を浮かべると、二人は揃って部屋から出た。
バタリ、と閉めた扉の音がトツカの部屋に響き渡るのであった。
~~~~
場面は移り、World famous Davies doughnuts shop。
グレンとトツカはファミリー席に座っていると、カウンターの奥からやって来たデイビスからモーニングメニューである料理を差し出された。
「ベーグルドーナッツとミートボール入りトマトスープでございます」
「わはぁー! 美味しそう!」
「今日のモーニングはスープか」
「はい、いい牛肉と新鮮なトマトを手に入れましたので」
テーブルに並べられた新鮮なトマトのスープに浮かぶのはいくつもの大きなミートボール、その隣にはこんがりと焼かれたベーグル。
二人はトマトスープを口にした後、食事をとりながら話の続きをした。
「まず、私の事から話すね」
「ああ、そうだな。トツカ、お前何者なんだ?」
「うーん、端的に言ってしまえば、別の世界からやって来た人間ってところ」
「別の世界? SF映画みたい、というかそのものだな」
ミートボールを口に入れ、奥歯で噛み締めながらトマトスープのしみ込んだ肉汁を味わいつつ、グレンはトツカの話を聞いていた。
トツカの方はというと、美味しそうにトマトスープを口にしており、一頻り食べた後に再び話し始める。
「私はこっちの世界の人間じゃない。こことは別の並行世界で生まれて、その世界の人間として生きて、そしてわけ合ってこの世界にやってきたの」
「お前の生まれ育った世界ってどんなところなんだ?」
「フロネシス、私の世界はこの世界より科学技術がとても進んでいるの。私はそこで科学者やっていたの」
「ああ、どうりであんな路面電車を直せると思ったら、科学技術が進んでいる所でも優れた科学者だったからか」
ベーグルに齧り付きながらグレンはトツカと最初に出会ったときの事を思い出す。
あの時は専用の整備士でもないのに動かなくなった路面電車の故障した原因を突き止めて直したが、彼女が科学技術が進んだ世界出身でその中でも優れた技術を持っているならある程度説明がつく。
煌びやかな才能を持つ彼女だが、不意に彼女の表情が真剣に変わる。
「まあ、私の目から見ても平和な世界だったと思うけど……でも、それはある日変わってしまった」
「変わったって……」
「私達の世界フロネシスに異次元からの犯罪組織が侵略しにやってきたの。その名はラグナロク。奴らは色んな次元の世界へ秘密裡に侵入してグレイヴクォーツを生み出し、それを使って歪みの怪人ディストーグを生み出してばら撒いているの」
「なるほど。まるで銃器や違法薬物をばら撒いているマフィアやシンジゲートみたいだな」
「私達フロネシスの一部の人達はなんとか対抗していたのだけど、相手は悪魔の石で変身する怪人……そううまくは行かなかった」
真剣に張り詰めた顔をした彼女の顔を見て、眉を顰めるグレン。
ディーノが変貌したあの電撃の怪人……ケラウノスディストーグでさえ常人が対応するに手を余る戦闘能力を引き出していた。
それが犯罪の如く蔓延れば、今の警察や裁判所が対応できなくなり、いずれはそのラグナロクの思うままになってしまう。
そう思ったグレンに対し、トツカはある物を取り出す。
それは最初ゼクスに変身したときに使った物とは別のライドクォーツだった。
赤と青で彩られたそのライドクォーツを手元で握りながらトツカは話を続ける。
「そんな時、ある人がこのライドクォーツを作り出したの」
「あん? それってまさか……」
「そうライドクォーツ、このアイテムの中には『仮面ライダー』と呼ばれる別の世界の戦士の力が秘められていたの」
「仮面ライダー……それ、あの時変身したヤツの名前だったよな」
「そう、私達フロネシスすら知らない次元で戦う戦士・仮面ライダーの力を秘めたこれに合わせてトリニティドライバーを作り上げたの」
先程の真剣な表情から一転、自信満々な笑みを向けるトツカ。
彼女から伝わるその態度を見て、余程自信作なのだと嫌でも伝わってくる。
湯気の立っていたトマトスープが半分を越してあと少しの残りになった所でトツカはフォークを向ける。
「そうしてフロネシスで誕生した仮面ライダーによって、何とかラグナロクと対抗できるようになった。それはよかったけど、ラグナロクが侵略しようとしていた世界は他にもあった」
「それって、地球や他の世界みたいにか?」
「うん、いくらディストーグを倒しても他の世界からやってきた尖兵達がフロネシスへの侵略してくるだろうし、ただでさえ対抗手段は別の世界も奴らの手に落ちる可能性もあった」
そう言いながらトツカはスープの皿の中に残っていたミートボールをフォークで差し向ける。
自分達のいる世界の他にも、もう一つの世界があるように例えている様子だ。
「私はこの世界へやってきた理由は一つ。ラグナロクの動きが一番活発なのはこの世界なの」
「そりゃまたなんでだ? 俺達の世界に何か特別なものでもあるのか?」
「そうかもしれない。詳しい事はばら撒いているヤツをぶん殴ってでも聞きださないといけないけど」
そう言いながらトツカはスープを飲み干し、綺麗に平らげた皿をテーブルの上に置いた。
同時にグレンも食べ終えると、タイミングよく黒く濁ったアイスコーヒーが注がれたグラスが置かれる。
見上げるとにこやかな表情を浮かべたデイビスがこちらへ食後のコーヒーを差し出していたのだ。
「小難しい話を繰り広げているようですが、ともかくコーヒーを飲んでから行動を移してからでも遅くはないですよ」
「デイビスさん……」
「ま、難しい話は違いはないけどよ。お爺の言う通り一旦ゆっくりして待とうぜ」
出されたコーヒーカップを手に付け、グイグイと飲み始めるグレン。
つられてトツカも口につけ、冷えたコーヒーを飲もうとした。
そんな時だった、カランカランとベルを鳴らしながら誰かが店内へ入ってきたのは。
入店した人物を見ながら、グレンはニヤリと口元を歪める。
「トツカ、いい事教えてやる。俺にとっては事件は舞い込むものだ」
「迷い込む? 何が?」
「ここはサンフランシスコ、太陽の光が降り注ぐ街だ。善人にも悪人にもな……お前の追っているラグナロクの尖兵の手がかりも掴めるってわけさ」
ニヤリと不敵な笑みを浮かべるグレンに、怪訝な表情をトツカは浮かべた。
こうしてグレンとトツカの二人は次なる事件に遭遇するのであった。