下々の皆様、ご機嫌麗しゅう。私は、お父様の七光りと私自身の努力で学園カーストトップを維持しております、華章院朱美と申しますわ。
突然ですが、皆様方はオーバーオールはご存知?
世界一有名な配管工様がお召になっているつなぎのようなもの、と言うと伝わりやすいかしら。例えとしては、高貴なものにふさわしくは無い俗っぽさですが、伝わりやすさ重視。ビジネスや社会では小難しい理屈はタイミングを図り、TPOを意識して言葉を繰るのがマストですわ!
で、件の衣服なのですが。
私は今こちらを着て、走っているのですがクッソ走りづらいですわね。脱ぎ捨てたいですわ!今まで着たことの無いタイプの衣服なのも、鬱陶しさに拍車をかけておりますの。
特に下半身の蒸れが控えめに言ってサウナ以上の蒸し暑さを醸造してくださいますの。もしこんなになるまでこの衣服でおダッシュされる方がおられましたらいかれておりますわ。私のことですが。
それでもそのように、この炎天下の中大逃走をくりひろげなければならない事情というものがございまして。
そうあれは、学校祭の準備をしている時でした……
「私が、こちらの衣服を?」
「うん、華章院さんの役のイメージにピッタリだから」
渡された布を手に、私は少々奇妙な表情をしていたと思います。なぜなら作業員の方が着るような上下がくっついた衣服というものは私の人生において縁がなかったものでしたから。
せいぜいパーティに着ていくドレスかしら。ですがお互い比べられるのも失礼なくらい用途も見た目も違いますもの。カウントには含めませんね。
とはいえ、普段着ないものです。
私も多少気持ちが上向きになっていたことは否めません。更衣室と割り振られた教室にて、いそいそと着替えた私は帽子さえ被ればなんとも下町の少年作業員と見えなくもありません。
内心大はしゃぎで写真を撮りましたとも。
で、写真だけじゃなく、ちょっとしたヤンチャもしたくなりましたの。そう、ほんのちょっとした。
具体的に言うと、本格的に男装した上で、どなたかがいらっしゃる更衣室に突撃してみましたの。
すぐにネタバラシをする予定でしたが、そこで狂いました。本職の女警察様が何の因果かそこにいらっしゃいまして。
あとはもう、学内を巻き込んだ大逃走の始まりですわ。
というか、今思えば途中で適当な誰かに捕まってしまえばよかったのですが、案外運動神経が良すぎたおかげで中途半端に逃げ切れちゃってるのですのよね。
だから、最早遠距離攻撃を兼ね備えた連中まで加わってしまい……私も痛い思いをしたくありませんので、終わらないのです。
「止まりなさいっつってんでしょクソ男がぁ!」
ほんと、泣いていいですか?
自業自得?確かに確かに。