いつかいつかと夢に見ていたことがある。
それはものすごく有名になって色んな人からチヤホヤされたい、といった小さいのか大きいのか、願った私でさえわかんない望みだ。
ただ、曖昧な目標であろうとその為に努力を欠かしたことはない。毎日貧マナでぶっ倒れるくらいに魔法を使って容量を増やしたり、色んな呪文を覚える為に7日間ぐらい最低限の食料を持って図書館に入り込んでぶっ倒れたり、防御魔法の練習で強い敵に挑んでぶっ倒れたり。
まぁとにかく色々なことはやったし、その辺にいる人たちに威張れるくらいには頑張ってる。
その結果が出てる、とはどうしても言えないけどさ。
だけど、近づけなかった訳じゃないからこのまま続けてりゃ、なんとか届くんじゃないかとか思ってたんだよ。
でも結果は違った。
いや、全く違う訳じゃないんだけど……
「「「マリエル〜!!!!」」」
「みんな今日もありがとー!」
ステージ下の大量のファンにウインクとありったけの感謝を伝える。私がここに立っているのは紛れもなくファンのおかげだ。
だけどさ、
「マリエルの新曲、みんなに好評で嬉しい!
さぁて、それじゃ最後の曲いくよー!」
魔法使いの私がアイドルで大人気なんて、どこの夢小説の内容だろうね?
きっかけは確か魅了魔法の研究の為に、最近巷で話題のアイドルを調べ始めた時。
何でも異世界から来た勇者様が広めた文化らしいんだけど、今まで娯楽が少なかった民衆にやったらめたら刺さったらしいんだよね。
あ、先に言っておくけど、魅了魔法は諦めたよ。だからこの人気は魔法の悪用とかじゃない。
で、たまたまどこかのアイドルのコンサート会場に行った時に、マネージャーさんからスカウトを受けたんだよね。
正直、怪しかったし断っても良かったんだけど、まぁ何かあっても私はそこそこ強いし?とか思ってたし、研究の一環にはなるかと思って軽く引き受けちゃったんだよね。
結果、アイドルのレッスンって今までやってこなかったことだから案外大変でさ。魅了魔法なんて遠くの彼方にほっぽり出さなきゃならないぐらい。
んで、厳しくて大変な修行を終えた私は、勇者様が泣いて感動するぐらいにはすごい仕上がりになったみたい。元々努力に苦を覚えないタイプだから、教えてもらったこと全部めちゃめちゃ練習したせいもあるんだと思う。
そのまま初コンサートに出た結果がこれだよ。
ちなみに今回は10回目。
「もうこの後、どれだけ魔法使いとして大成してもアイドル素養が全部の所作に染み付いてそ〜う」
机の上にぐてぇっとしながらボヤく。
マネージャーは苦笑いしながら私の好きなしゅわさわやかなドリンクを置く。
ちなみに今のマネはスカウトした人とは別だ。
あの人は社長になって今は勇者様が私のマネージャーだ。
魔王倒したからってそんなことしてていの……?とは思わなくもないけど、この人以上にアイドルの取り扱い方が完璧な人はいないのだから仕方ない。
仕方ないか?
萎れた私を見かねたのか、マネちゃんはにっこり笑顔で私に話しかけてきた。
「そういえば、マリエルさんの喜びそうな話題がありますよ」
「えー、アイドル関係?」
「実は魔法使いマリエルとして2つ名が出回ってるんです」
「え」
なにそれ、めっちゃ嬉しい。
なんだかんだ有名な大魔法使いには色んな2つ名がついている。2つ名がある=超有名と言っても過言じゃない。
でも、最近は魔法使いとして活動してなかったんだけどな……。あれか?前に書いた論文とかが評価されたのかな?
「ねぇねぇ、どんな名前ついてるの!?」
「うわ一気に元気になりましたね」
推しの子みたいな目の輝き方してる、とかよくわかんないことを呟くマネちゃん。
異世界の言語か作品なのか分からないなりに気になるがそれよりも。
「いいから早く聞かせてよ!」
「はいはい、マリエルさんの二つ名はー、
デデン!【万雷】のマリエルです!」
ええ〜、シンプルだけどネーミングセンス良すぎ、カッコよすぎ!老獪だけど技術に優れた魔法使い感ある〜!
感激のままマネちゃんに尋ねる。
「ちなみに、何きっかけでついたのか聞いてる?」
「あー、えっと、ですねぇ」
急に歯切れ悪くなったな。こんなわかりやすいのちょくちょく見てる。
だいたい私にとって都合の悪いことなんだけど……?
「怒らないでくださいね……?」
「なによ、かっこいい二つ名ついてるから全然怒らないけど?」
「あの、万雷の喝采、拍手からなんですよね」
喝采?拍手?
おかしいわね。
そんな魔法を使ったおぼえは……あっ。
「アイドルとして大成してるからってこと!!?」
コクリ、と頷くマネちゃん。
絶望のあまり、いや2つ名ついたこと自体は嬉しいのに素直に喜べないモヤモヤを消化するべく私は絶叫した。
私の夢よ。もうちょっとまっててね。絶対魔法使いとして有名になるからね。でも妥協はしないから。
私の夢への意思はマイクよりかたいので、これからも私は努力を続けるだろう。
アイドルもちゃんと頑張った上で魔法使いとして大成してやると、もう一度心に誓った。