コロッケ食べたことある?それもお肉屋さんのやつ。
サクサクとした衣に、おいもと油のコラボレーション。普通のコロッケならそれだけでも美味しいには美味しいんだけど、お肉屋さんのやつはお肉の味もしっかり感じられてより美味しいの。とは言っても都会とか逆に田舎の方だと周囲にそういうお店がなくて、あんまり食べたことないって人の方が多いと思う。
だから、私がここでしっかりと魅力を宣伝することによって見かけた時に食べたいな、って気分にさせておくんだ。
「あさがお、誰に向かって話しかけてんだいあんた」
「あ、おばちゃん」
熱い宣伝に励んでいると後ろから、呆れた声が飛んできた。
そう、この人こそはこの「肉のししだ」の店長、ガキ大将も震えあがる肝っ玉おかみさんのししだおばちゃんだ!
「そんな大仰な口上あたしには不十分さ、よしときなよ」
「おばちゃんでも照れるんだ〜」
「あんたの頭にガキ大将並みのコブが出来ないうちにね」
「ジェノサイドおばちゃん……」
さすがだ照れ隠しも大胆なおばちゃんかっこいい。
「そもそもあんたはここに何しに来たのさ、友達と遊んでる時間だろ」
「自由課題だよ〜、地域のお店にインタビューしてきてねって!」
なのにどうして宣伝になったのかコレガワカラナイ。や、まぁ楽しかったんだけど。
おばちゃんからしたら急に来て挨拶したあとからおかしくなった変なやつ扱いだ。
今もお金数えながらそういう目してる。
「インタビューって何するんだい、そもそも」
「おばちゃんのお店はどうやったら儲かりますか」
「余計なお世話だよ、クソガキ」
おかしいな、かくしんとやらを突いた質問だったはずなんだけど。しっしっと手だけで追い払う仕草とうへぇって顔までされた。
「でもでも、いっぱい儲かってくれなくちゃ困るんだよ!」
「はいはい、うるさいよこわっぱ」
「私、将来は仕事終わったらここ来てコロッケ食べておばちゃんと話してってしたいんだもん」
この前読んだ本にそういうのが書いてあったからちょっと憧れなんだ。もちろんアニメみたいにキラキラしたお話も憧れだし、何がいいかも分からないんだけど。
でもなんかいいなーって思っちゃったんだ。
ただ、肝心のおばちゃんは私のお話を聞いてピタリと止まった。そしてより一層面倒そうにため息をついた。そんなにやだったのかな、とか考えると少し悲しくなる。いやだいぶ悲しい。
おばちゃんの反応が気になって道路沿いの方を見てしまう。この辺りもチェーン店とかがいっぱい出てきちゃって、なんかこういうのって地域のお店を無くしちゃうって聞いたから、おばちゃんの店がなくなったらと思うと余計に悲しくなった。
と。
俯いていた私の前に袋に入ったコロッケが差し出される。
「ほれ、サービスだよ」
「……いいの?」
「いいよこれぐらい。こんなガキに心配されるなんてあたしもまだまだだね」
そう言うと、おばちゃんは私の頭をゆっくり撫でる。温かさと大きさとどことなく安心感を感じる。
「いいんだよ、あんたはあんたのやりたいことをやりな。あんたがいつ帰ってきてもいいようにあたしも、ここ守っておくからこっちは心配しなくていいよ」
そうしてむしろ、あっちの方こそ安心したとでも言うぐらいの、いつものおばちゃんらしくないけどとってもいい優しい笑顔を浮かべた。
私があげて、おばちゃんがお店にずっと飾ってあるあの朝顔みたいに。