かんかんごとり、こんがとり。
今日も今日とてハンマーを振り下ろす。
いつもだったらもう少し強く音が鳴るのだけれど、今日は特別に下処理したから大丈夫。前の時は騒音で危うく追い出されそうになっちゃったから気をつけたのだ。
ハンマーを振っていくと遂に▫▫から目当てのいちごがころりころり落ちてくる。
今日はどんなかな、昨日よりもどんなかな。いつも見るいちごより綺麗なものなら嬉しいな。
ワクワクしながら落ちたいちごに手を伸ばし、潰れないように大事に拾う。
それはいつもよりも赤みが増している。
蛍光灯に透かして見つめてみると、薄明るく光が漏れる。
その様はまるでほんもののルビーのようだ。ああ、とってもきれい。
この仕事を何年も続けているが、1度たりとも変わらない角度と速さで振るっているが、今日みたいに出来のいいのは初めてだ。嬉しいことだ嬉しいことだ小躍りがしたい。
嬉しいついでに続けて振っていく。
とんとんからりとんからり。
しばらく無心で振っていると、いつものように赤みが増してくる。尚も専心して振るうと、ついには光に反射して輝きが。
さらにさらにと求めるならば、とろみのある光沢へと変わっていく。
素晴らしい、ああとても素晴らしい。
恐らく、今までで1番の出来だろう。いやきっとそうに違いない。
滴り落ちた液体を水筒にすくう。ついでとばかりに香りを嗅ぐと、なるほど暗雲が晴れ渡るような澄々とした気分がある。これは今日の定食に合うだろう。思わず鼻歌さえ歌ってしまいそうだ。ついでにとタッパーに少し本体を切り分けておく。
そこで鏡を見た私は、自身が汚れているのに気づく。
あちらにもこちらにも液体が飛び散っていて、全身汚れだらけ。それに床とか、本体も……。
後処理をしなくちゃならないな。最後なんだからできるだけ丁寧にやってあげよう。
手早くシャワーで自身の汚れを落とし、浴槽にはブルーシートをかけておく。いくらバスルームでもいつまでも丸見えは恥ずかしいだろうから。心做しか感謝を感じる。
私の方こそ、ありがとうと伝えたいのに。
全ての処理を終えて、玄関に着く。
ふと後ろを振り返ると、住人が居ない家の中は何かもの寂しく感じた。未練を断ち切るように荒っぽく靴を履いて、扉を開く。
暗い室内から日光が降り注ぐ中へ。少し眩しい。
最後は大事に鍵をかけ、中にいる彼女の為に誠心誠意頭を下げた。今まで本当にありがとう。
光に慣れると世の中は素晴らしく鮮やかに見えた。
ああ、次はどんな人を好きになれるかな。