昨日は投稿日時間違って2話同時でしたけど今日が1ヶ月目です!
おにいちゃん、どうしたの?
「ん、ああいやなんでもないよ」
僕の横で大人しくてを繋がれてる女の子が不思議そうに首を傾げる。どうやら少しだけ意識が無くなっていたらしい。全く、隣に守らなきゃいけない子がいるのに情けない話だ。しかも、こんな人が作ったことが分かりきってるお化け屋敷で気をやる、だなんて。
ただ、少しだけ言い訳をさせてもらうと最近のお化け屋敷は案外とても怖くできているのだ。
遊園地のものとなればそれはもうお金がかかっているものだから怖がらせる手段にも富んでいるのだろう。背景が透けている幽霊も、夏真っ盛りに感じる冷気も、突然耳元で囁かれたりも。全部全部、迫真のものだった。しかもなかなかこれが大きな設備なのだ、行き止まりもあって中々ゴールに辿り着ける気がしない。
だからこそ、こんな小さな女の子をここに置き去りにした保護者には怒りを覚える。
隣を見ると、視線の先ではまだ幼女と言っていいほどの女の子が地面を見つめていた。え、なにそこに何かあるの、お兄さん何も見えないんだけど。
あ、てぶくろ、いや軍手か?1本目の指が黒く染ってる手袋。えー、ホラーにありがちな血とかなのかなぁ。
友人とお化け屋敷に入ったらいつの間にかはぐれて、歩いていった先には女の子がいた。
きっかけと言うほどでもないが、私がこの子を出口まで連れていこうと思ったまでの出来事はだいたいそんな感じだ。
はぐれる前に盛大にビビって1人で走って逃げたとか、最初女の子が幽霊と思ってビビったりとか、まぁ色々あるけどその辺は置いておいて。
とにかく、幼児でもない僕たちが怖がるほどなのだ、何より庇護の象徴である母親が居ないのはこの子にとっても心細いことだろう。
おにいちゃん、あっち行こうあっち。
……わりと元気だけどね?今はね?内心はどうだか分からないから!
消して僕がここから早く出たいとか、ワンチャンこれ事案では?とか思ってたりもしない。
女の子に手を引かれるまま、道を進む。時折、地の底から響くような思い呻き声やピトピトと上から水滴が垂れてきたりとしてきたが何とか耐えた。僕より小さな女の子が一切びびってないのに、僕が不安を与えるわけにはいかない。
「ミ゚ッ」
おもしろいよね、おにいちゃんって。
心做しか女の子の視線が何やら芸人でも見るようになってきたが、気のせいだろうきっと。
女の子に手を引かれながら道を進む少なくとも10歳以上は離れてそうな男という、発見する人によっては一発事案な絵を晒しながらも、奇跡的に今の所誰にも会わない。
というか、
「ねぇ、これどこに向かってるの?」
僕の問いかけに女の子が急に足を止める。
危うくもつれかける足を必死に鎮めて、女の子の様子に目を向ける。
もしかして急にお腹痛くなったのか?
どうしよう、この辺トイレとかないんだけど。
だが、それは杞憂だったみたいで女の子は実に素晴らしい、いや嘘ちょっと怖いけど口の端をニヤァァァァと持ち上げ笑う。
つぎのとこ。
声の調子と、その表情からお菓子を貰ったわんこくらい喜んでいるのは分かった。
が、如何せん子供の機微には詳しくない僕。
何がそんなに琴線に触れたのだろう、と頭を必死に回していると女の子がまた僕の手を引く。
さっきよりも結構強い。
まるで、今までは本気を出していなかったのだよ!とでも言うようにずんずんとスピードを早めていく。日頃の運動不足が祟った僕は時折足をもつれさせながら必死について行く。
少しでも足を緩めさせたくて(主に僕の膝が原因で女の子に怪我をさせそうなので)外聞をかなぐり捨てて女の子に色々話しかけてみるが、結果は芳しくない。というか返事がない。
それでもせめてこれだけは、と声をひねりだす。
「ねぇ、君、名前は!?」
その途端、あたりの影が大きく……いや、これは光が消えて
そう考えるのも許さないとばかりに闇が僕の意識さえかき消した。
そういえば、
あーあ、もうちょっとだったのに。
また遊ぼうね、おにいちゃん。
最後に女の子の声が聞こえた気がした。
どうしたのおにいちゃん?
あれ、僕は一体。なにか大事なことを忘れているような……。
いやそれよりも
「ん、ああいやなんでもないよ」
ふと地面を見ると2本の指が黒く染った手袋が落ちていた。